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2020年1月24日金曜日

徳島市の油槽所で油受入れ中の灯油タンクが爆発(再発防止策)

 今回は、2019年5月16日(木)に徳島市で起こった油槽所の灯油貯蔵タンクの爆発事故について、10月21日(月)に事故原因となり得るすべての可能性を抽出して講じた再発防止策が発表されたので、この内容について紹介します。
 なお、同事故の発生当時については徳島市の油槽所で油受入れ中の灯油タンクが爆発」を参照。
                 事故タンク (写真はHeadtopics.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、徳島県徳島市末広1丁目の徳島石油㈱のタンク施設である。タンク施設には、10基の貯蔵タンクがあった。

■ 発災があったのは、徳島石油末広油槽所にある灯油用の貯蔵タンクである。タンクは直径約8.8m×高さ約9.1m、容量500KLで、事故時にはタンクの半分ほどの灯油が入っていた。
            徳島市の徳島石油末広油槽所付近 (矢印が発災タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年5月16日(木)午前7時40分頃、油槽所にある灯油用の貯蔵タンク1基で爆発が起こった。タンクから黒煙が上がり、火災となった。

■ 消防署に複数の周辺住民から「タンクが爆発した」との通報が相次いだ。

■ 発災により、市消防局の消防隊が消防車13台を伴い出動した。

■ 現場は住宅地に隣接した商業施設が集まる地域で、周辺道路は警察による交通規制や周辺住民に対する避難誘導がおこなわれ、一時、騒然となった。

■ 消防隊は、タンクを冷却するとともに、泡薬剤で消火に努めた。その結果、発災から約1時間45分後の午前9時25分までに鎮火した。

■ 事故による負傷者は出なかった。また、周辺の建物への被害も無かった。

■ 出火当時、油槽所近くの新町川に止まっていた船から、地下配管を通じて油槽所に燃料を移送する作業が行われていた。

被 害
■ 容量500KLの灯油タンク1基が爆発・火災で破損した。内液の灯油が一部焼失(量は不詳)した。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。
(写真は、左;Twitter.com右; Topics.or.jpから引用)
< 事故の原因 >
■ 事故原因は、徳島市消防局、徳島海上保安部、徳島県警察で調査中とみられる。

■ 2019年10月21日(月)、徳島石油は、事故原因となり得るすべての可能性を抽出して再発防止策を講じている。これから逆に類推される要因はつぎのとおりである。
 ● 引火源は、灯油タンクへの受入れ中の流動帯電による静電気だとみられる。
 ● 当該タンクが立管構造をしており、タンク上部から油を充填することになり、油の飛散・噴出や液面での跳ね返り、 泡の発生等により静電気の帯電が促進したとみられる。
 ● 作業マニュアルでは、静電気の発生を少なくする送油の流速制限について明示していなかった。
 ● 爆発混合気は灯油だけでなく、もっと軽質な油がコンタミ(混合汚染)でタンク内に入った可能性を否定していない。   

< 対 応 >
■ 5月17日(金)、市消防局や県警は現場検証を始めた。近くの新町川岸壁からタンクに伸びる送油管の状況などを確認した。総務省消防庁消防研究センターの職員を含む約30人が現場検証に当たった。タンカーを新町川岸壁に接岸させて燃料油出口を調べたほか、岸壁に設置された注入口やタンクに至る送油管の敷設状況に異常がないかなどを調査した。18日(土)以降は爆発したタンク付近を確認した。
 
■ 徳島市は、徳島石油に対して施設の使用停止命令を出した。

■ 2019年10月21日(月)、徳島石油は再発防止策を示し、同日から末広油槽所の稼働を再開する旨、ウェブサイトに掲載した。内容はつぎのとおりである。
 「徳島市消防局、徳島海上保安部、徳島県警察の協力のもと原因究明を進め、今後、決して同様の事故を再発させないためのタンクおよび配管の仕様を改修する工事について関係機関の指導に基づき進めてきた。また、業務作業手順等についても設備の改修と同様に重要なこととして抜本的な見直しを行い、企業としての安全に対する意識と行動を刷新した。今後、同様の事故を発生させないため、関係機関からの指導のもと、事故原因となり得るすべての可能性を抽出し、油槽所全般において安全対策措置を講じた」

< 再発防止策 >
① タンク内配管の改修等(静電気対策)
 ● これまでの調査結果により、事故を起こしたタンクは立管構造を用いていることが判明 した。(独)労働安全衛生総合研究所の「静電気安全指針2007」 によると、タンク上部から油を充填すると、油の飛散・噴出や液面での跳ね返り、 泡の発生等により静電気の帯電が促進されると記載されている。これらの帯電を防止するため、事故を起こしたタンクと同様の立管構造を採用しているタンクについてはボ トム・ローディング型へ改修した。
 ● 作業マニュアル内において、送油速度について明文化し、より静電気の発生を少 なくするように作業内容を改善した。
        タンク内配管の改修等(静電気対策) (図はTokuseki.co.jpから引用)
② マニュアルの見直し
 ● 燃料受入れ時や払出し時における作業マニュアルを見直した。
 ● マニュアルを順守するよう、作業時における安全チェックリストを導入した。 

③ 船舶受入配管の改修(コンタミ防止対策)
 ● 船舶からの受入れ時に使用している配管が一部共有していることから、コンタミ(混合汚染)のリ スクが発生し得る配管構造であったため、それぞれを独立した配管とし、ハード面にお けるコンタミを完全に防ぐ改修を行った。
           船舶受入配管の改修(コンタミ防止対策) (図はTokuseki.co.jp から引用)
④ 教育・訓練の実施
 ● 業務に携わるスタッフに対して教育を行った。

⑤ 消耗品の更新
 ● 消耗が見受けられるフロートワイヤー、パッキン等の部品を交換した。

⑥ 逆止弁の設置
 ● タンクから配管への油の逆流を防止するため、逆止弁が設置されていないタンクにおいて逆止弁を設置した。
 
⑦ 施設点検の実施
 ● 油槽所の再開にあたり改修工事とは別に施設の点検を行った。
   ・ 配管類の気密性の確認
   ・ 通気管の引火防止網の損傷、目詰まりおよび腐食の確認
   ・ アース抵抗の測定
   ・ 泡消火設備のバルブ作動状況と配管からの消火剤噴出状況の確認
  以上の点検を行い、各設備が正常な状態であることを確認した。

補 足
    徳島県の位置 (図はJmap.jpから引用)
■「徳島県」は、四国北東部に位置し、人口約73万人の県である。
 「徳島市」は、徳島県の東部に位置し、人口約25万人の都市で県庁所在地である。

■「徳島石油㈱」は、1931年に設立し、徳島市と高松市を中心に東四国全体をネットワークする石油製品の総合商社で、直営サービスステーション32箇所などを擁し、ガソリン、灯油、軽油、重油、LPGを供給する。徳島市末広に、地上式貯蔵タンク9基、総容量2,450KLの油槽所を保有している。
(写真は、左;GoogleMapのストリートビュー、右;Anzendaiichi.blog.shinobi.jpから引用)
■ 発災のあった「灯油タンク」は、直径約8.8m×高さ約9.1m、容量500KLで、事故時にはタンクの半分ほどの灯油が入っていたと報じられている。グーグルマップで確認すると、直径は報じられた値であり、容量500KL級の固定屋根式タンク(コーンルーフ・タンク)である。被災写真を見ると、タンク屋根は噴き飛んでおらず、屋根の一部が側板から外れているだけのように見える。従って、故意に接続部を弱くするタンクの設計どおりであり、また爆発力はそれほど大きなものでは無かったと思われる。

■ 「灯油」は、比重0.79~0.85、引火点40~60℃、燃焼範囲が1.1%~6.0%の可燃性流体であり、灯油ストーブに使用され、同種類のケロシンはジェット機の燃料にも使われ、ガソリンなどに比べて比較的に安全な石油製品である。一方、石油製品は導電率が低く、静電気が生じやすい流体であり、特に灯油は静電気が蓄積しやすいといわれている。
 石油貯蔵タンクは静電気対策がとられており、ひとつは接地によって静電気が蓄積しないように大地へ流すことである。もうひとつは、できるだけ静電気が生じないように入荷配管の流速を制限する。米国では、従来、各社ごとに流速制限を設け、例えば、液深さが6フィート(1.8m)になるまで流入液の流速を
3フィート/s(0.9m/s)に抑えるといった対策例である。現在、API(米国石油協会)の静電気対策の推奨基準であるAPI RP 2003「Protection Against Ignitions Arising Out of Static, Lightning, and Stray Currents」では、つぎのような基準を推奨している。
 ● 受入時の初期流速は、充填配管の直径の2倍または61cmの深さ(どちらか小さい方)に浸漬するまで、1m/sに制限する。
 ● 初期流速の制限が終われば、受入流速を増加してもよいが、静電気の蓄積を最小にするため、最大流速は7m/s~10m/sとするのがよい。
            タンクの静電気発生を示す例  (図はLaw.resource.orgから引用)
所 感
■ 前回の所感では、「事故の原因は灯油タンクへの受入れ中の流動帯電による静電気だと思われる」として、つぎのような推測と疑問点を挙げた。
 ● 受入れ始めの初期流速は1m/sを超えていたのではないか。事故当時はタンクに半分程度入っていたというが、受入れ始めのタンクはどういう状態だったか。「充填配管の直径の2倍または61cmの深さ(どちらか小さい方)に浸漬するまで、1m/sに制限する」は満足していたのだろうか。
 ● 油槽所は受入れ始めの初期流速の制限事項を知っていたのだろうか。 
 ● 初期流速の制限が終わったとして、その後の受入流速が速かったのではないだろうか。「最大流速は7m/s~10m/s」の範囲になっていたのだろうか。
 ● 油槽所は荷揚げ時の最大流速を定めていたのだろうか。「最大流速は7m/s~10m/s」の範囲にしていたのだろうか。
 ● タンクの接地はされていたのだろうか。接地されていても、正しく保全されていなかったのではないか。

 これに対して、再発防止策の中で、「作業マニュアル内において、送油速度について明文化し、より静電気の発生を少 なくするように作業内容を改善した」とあり、発災当時、流動帯電や流速制限について認識が無かったために事故が起こった。一方、「アース抵抗の測定」が行われ、問題なかったことにより、タンクの接地は問題なかったと思われる。

■ 爆発混合気については、前回の所感で「タンク内の蒸気空間から考えてみると、受入れ前の蒸気空間はほとんど空気で、灯油ベーパーはわずかと思われる。(満杯のタンクから灯油を払い出しており、代わりに空気が流入している) 灯油を受入れ始めると、空気が出てゆき、灯油ベーパー成分が増えていく。灯油ベーパーの燃焼範囲は1.1%~6.0%であり、この範囲になったとき、蓄積していた静電気で火花を発し、引火して爆発したと思われる」と指摘したが、今回、灯油のほかに軽質な油のコンタミ(混合汚染)が起こったかは明確でないが、設備的にコンタミの起こるような問題が存在していたことが明らかになった。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Rescuenow.net,  徳島市の徳島石油末広油槽所でタンク爆発火災、現在は鎮火,   May  16,  2019
    ・Topics.or.jp,  徳島市で石油タンク1基が爆発し出火、消防車13台が出動,   May  16,  2019
    ・Anzendaiichi.blog.shinobi.jp,  2019年5月16日 徳島市の油槽所で船から灯油を500KLタンクに荷揚げ中、タンクが爆発し火災発生、けが人なし,  May  23,  2019
    ・Nhk.or.jp , 油槽所のタンク火災 一時騒然,   May  16,  2019
    ・Eitokun.com , 徳島市末広でタンク爆発火事情報[今日の火災速報]ツイッター動画や画像で現在の場所は【2019年5月16日リアルタイム速報】,   May  16,  2019
    ・Topics.or.jp, 徳島市のタンク爆発 現場検証で送油管の状況確認,   May  18,  2019
    ・Kore-shiri.com, 徳島市末広1丁目徳島石油の火事原因や場所、被害は!画像動画を調査,   May  16,  2019
    ・Tokuseki.co.jp, 当社末広油槽所火災事故について,   October  21,  2019


後 記: 今回の情報は、最近の日本で起こったタンク火災について、その後の状況を調べてみたことから知った情報です。原因は継続して調査中ということですが、民間会社としては油槽所を再開するニーズがあることから、「事故原因となり得るすべての可能性を抽出して再発防止策を講じた」という変則的な過程でした。前回の後記で「教訓は広く開示してもらいたいものですね」と述べましたが、事故原因がややボーとしていますが、世の中の油槽所の関係者にとって教訓は開示されています。それにしても、大きな大気開放型タンクの「立管構造」というのは初めて知りました。逆流防止やコンタミ防止を狙ったのでしょうが、荷揚げ時の流速が速ければ、静電気発生を促すありえない設計です。タンクのボ トム・ローディング型に改修したといっても、「荷揚げ時の流速制限を守る」ことが肝要なのは勿論です。いままで事故が発生していない方が不思議なくらいで、マーフィーの法則 「起こる可能性のあることはいつか実際に起こる」の典型例だと感じながらまとめました。









2020年1月16日木曜日

神奈川県の東亜石油の重質油熱分解装置で火災、負傷者1名


 今回は 20191224日(火)、神奈川県川崎市にある東亜石油()京浜製油所の重質油熱分解装置で起こった火災事故を紹介します。貯蔵タンクの事故ではないですが、年末の首都圏で起きた事故でテレビでも取り上げられたので、取り上げました。
(写真はNhk.or.jp から引用)

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、神奈川県川崎市川崎区水江町にある東亜石油(株)の京浜製油所である。

■ 事故があったのは、重油を熱分解して付加価値のあるガソリンなどを取り出す重質油熱分解装置である。事故のあった装置は、3年に一度行われる2か月間の定期点検を終えて12月から再稼働していた。
                     川崎市川崎区水江町付近(矢印が発災場所)   (写真はGoogleMapから引用)
            川崎市水江町の東亜石油(株)重質油分解装置付近  (写真はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年12月24日(火)午前7時05分頃、東亜石油の京浜製油所の重質油熱分解装置で火災が発生した。

■ 消防署には、東亜石油の設備で煙があがっているという通報が相次いで寄せられた。黒煙は、一時、大量に立ち昇った。

■ 発災に伴い、自衛消防隊と消防署の消防隊が消火に当たった。公設消防署は消防車16台が出動した。

■ 事故に伴い、従業員1名が負傷した。負傷は手首と足に火傷を負ったもので、病院に搬送され、治療を受けたが、意識はあるという。負傷した人は「作業中に重油を浴びた」と話しているということで、火傷の程度は重いとみられる。当時、装置を担当する部署の従業員は十数人いたという。

■ 発災に伴い、 東亜石油(株)は関連の装置を停止した。ガソリン、軽油、灯油などの石油製品の出荷は停止しているが、在庫や他の製油所から代替供給しているおり、石油製品供給への影響はないという。

■ 東亜石油(株)は、24日(火)、事故発生の状況とともに、近隣住民や取引先などへのお詫びを同社のウェブサイトに発表した。

■ 火災は、約3時間半後の24日(火)午前1045分に鎮火した。


■ 現場は、羽田空港国際線ターミナルの南西約4.5kmのところにあるが、国内線・国際線ともに運航への影響はないという。 

 被 害
■ 人的被害として、1名が負傷した。

■ 重質油熱分解装置の一部が焼損した。範囲や程度は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 消防署など関係機関が調査を行っている。

■ 東亜石油の装置は40年以上にわたって使用されており、1991年に同様の火災が1件発生していたという。 
 (写真はAasahi.comから引用)
(写真は、左;Sankei.com右;Okinawatimes.co.jpから引用)
補 足 
■「川崎市」は神奈川県北東部に位置する政令指定都市で、7区の行政区をもつ人口約153万人の市である。

「東亜石油(株)」は、1924年に日本重油株式会社として設立し、1942年に日米砿油を合併し、東亜石油株式会社に社名を変更した石油会社である。その後、共同石油グループ、昭石シェル石油グループを経て、現在は出光興産の子会社である。
「京浜製油所」は、原油精製能力70,00バレル/日で、分解装置装備率が高く、一般的な製油所が処理する原油だけでなく、他製油所から重質原料油(原油を処理した後に発生する残渣油)を受け入れ、処理することができる。装置の構成は図を参照。
                             東亜石油京浜製油所の装置構成  (図はToaoil.co.jpから引用)
(表はPref.chiba.lg.jpから引用)
■「重質油熱分解装置」は、C重油基材やアスファルトの原料である減圧残渣油を高温で熱分解し、付加価値の高い白油(ガソリン、灯油、軽油)を生産することができる。装置はフレキシコーカーと称し、日本では東亜石油の装置が唯一の設備であり、40年以上の稼働実績がある。
 フレキシコーカーは分解率(白油化指数)が98%と分解装置の中では最も高い。日本で多く見られる流動接触分解装置(FCC)の2層流動層に加えて、コークのガス化(燃料化)を目的に3層流動層のプロセスとなっている。しかし、分解油の安定性が悪く、コークス・低カロリーガス等の処分の課題があり、日本などではなかなか選択されにくい。この点を改善するため、東亜石油では、2003年に水江発電所を建設し、副生される燃料を有効活用する電力供給事業に参画している。
                                        フレキシコーカーの例 (図はSlideserve.comから引用)
            重質油の各種処理プロセス (表はPref.chiba.lg.jpから引用)
              東亜石油(株)の水江発電所の構成 (図はToaoil.co.jpから引用)
所 感
■ 火災の原因は調査中で分かっていない。
 発災箇所も重質油熱分解装置というだけで、どの部分から発災したのかも分かっていない。負傷した人が「作業中に重油を浴びた」 と語っているようなので、重質油分解装置の原料配管または塔底部ではないだろうか。定期点検を終えて12月から再稼働していたというので、装置立ち上がり時の高温移行時のフランジなどからの漏れではないと思われる。

■ 日本で唯一の装置であるが、流動接触分解装置など同種の装置に活かすべきことはあると思うので、事故原因の公表を望みたい。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Okinawatimes.co.jp,川崎の製油所で火災、男性やけど 東亜石油、重油分解装置から出火, December  24,  2019
    ・Toaoil.co.jp,  当社 京浜製油所の火災発生について(第二報), December  24,  2019
    ・Tokyo-np.co.jp,  川崎の製油所で火災、男性やけど 東亜石油、重油分解装置から出火, December  24,  2019
    ・Jiji.com, 石油工場で火災、1人負傷 重油分解中に出火か―川崎, December  24,  2019
    ・Sankei.com,  出光、川崎のコンビナート火災で陳謝, December  24,  2019
    ・Nhk.or.jp, 石油精製設備で火災 煙は収まる 社員1人重いやけど 川崎, December  24,  2019
    ・Kanaloco.jp, 製油所の工場から出火、男性1人重傷 過去にも同様の火災, December  24,  2019
    ・Asahi.com,  川崎の石油工場で火災 30代の男性1人がけが, December  24,  2019


後 記: 首都圏で起こった事故なので、ヘリコプターが出て大きく報道されました。貯蔵タンクの事故ではないようですが、このブログで取り上げることとしました。しかし、年末の出来事ということで、各メディアの対応は火災が起こったという事実を紹介するだけで、事故概要のわかる内容ではありませんでした。地元の人の声を伝える記事もなかったですね。“働き方改革” と言って休みをとろうという雰囲気の時代ですが、当該事故の調査や対応にあたる人たちは休めなかったでしょう。一方、このブログでとりあげた年末の事故はつぎのとおりで、世界規模でみると、年末年始をゆっくりと過ごしていない人たちが意外に多いことがわかりますね。
 ● 1988年12月25日、フランスで製油所の熱油タンクが突然、破壊
 ● 1989年12月24日、米国バトンルージュの貯蔵タンク複数火災における消火活動
 ● 2014年12月25日、リビアでロケット弾による原油貯蔵タンク火災
 ● 2016年12月25日、イスラエルの製油所でガソリンタンク火災

2020年1月9日木曜日

インドのクジャラート州でメタノール・タンクが爆発、死亡者4名


 今回は、 20191230日(月)、 インドのクジャラート州カッチ地区にあるインディアン・モラセス社のタンク・ターミナルで起こったメタノール用貯蔵タンクの爆発・火災事故を紹介します。
(写真はTimesofindia.indiatimes.comから引用) 

< 施設の概要 >
■ 事故があったのは、インド(India)クジャラート州(Gujarat)カッチ地区(Kutch)にあるインディアン・モラセス社(Indian Molasses Company)のタンク・ターミナルである。

■ 発災があったのは、カンドラ港近くのタンク・ターミナルにある貯蔵能力1,800トンのメタノール用貯蔵タンク(Tank No.303)である。この施設から500mのところには、インディアン石油のタンク・ターミナルがある。
         クジャラート州カッチ地区のタンク・ターミナル付近 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年12月30日(月)午後1時30分頃、タンク・ターミナルにあるメタノール用貯蔵タンクが爆発し、引き続いて火災になった。

■ 事故に伴い、作業員4名が死亡した。

■ 発災に伴い、消防隊は消防車10輌を伴って現場に出動し、消火活動に当たった。参画したのは、ディエンダヤル・ポート・トラスト(Deendayal port trust)の消防隊、インディアン・モラセス社の自衛消防隊、ターミナル関連の消防隊である。

■ 会社の従業員1名と作業員3名が補修のため、タンクにいたとき、突然、タンクが爆発し、タンク屋根が噴き飛んだ。爆発の勢いは激しく、犠牲者全員がタンク屋根から遠くへ吹き飛ばされていた。犠牲者のひとりは海で発見された。作業員は溶接工事に従事していたとみられる。

■ 消防隊は火災タンクに対して泡による消火作業を行った。火災拡大を防止するため、周辺タンクにはタンク冷却用散水設備による冷却を行った。また、予防措置として、隣接タンクは内液を抜いて空にされている。

■ 発災場所の近隣住民に避難指示が出された。 

■ 火災は24時間を経過しても燃え続けている。
(写真はNews18.comから引用)
(写真はHindinewsonline.goldwingsartsinstitute.com Indianexpress.comから引用して合成したもの)

(写真はAmarujala.comから引用)
被 害 
■ 貯蔵能力1,800トンのタンクが1基損壊し、内部のメタノールが焼失した。被災の程度や量は不詳である。

■ 事故に伴い、4名の死亡者が出た。

■ 発災場所の近隣住民に避難指示が出された。 

< 事故の原因 >
■ 原因は分かっていない。

< 対 応 >
■ タンクは31日(火)も燃え続けており、燃料が燃え尽き、消えるまでに2日かかると見込まれている。

■ 2002年に、ケサル・ターミナルで同様の事故が起こり、制圧するのに3日間かかった。
(写真はTwitter.comから引用)
補 足
■「インド」(India)は、正式にはインド共和国で、南アジアに位置し、インド亜大陸の大半を領してインド洋に面し、人口約13億3,400万人の連邦共和制国家であr。首都はニューデリー、最大都市はムンバイである。
「クジャラート州」(Gujarat)は、インドの西端に位置し、インダス渓谷文明の中心地域のひとつとして歴史があり、人口約6,000万人を超える州である。
「カッチ地区」(Kutch)は、グジャラート州の西部に位置し、人口約200万人の地区である。
(写真はameblo.jpから引用)
 当ブログで取り上げたインドにおける事故情報は、つぎのとおりである。

■「インディアン・モラセス社」(Indian Molasses Company)は、1935年に設立し、主に液体バルクの物流事業に従事している。カンドラ、ムンバイ、ゴアなど14箇所にタンク・ターミナルを保有し、石油製品、液化ガス、石油化学製品、酸など貯蔵能力は100万KLを有している。

■「発災タンク」は貯蔵能力1,800トンの円筒式タンクというだけで、直径や高さなどの仕様は分かっていない。内液がメタノールなので、内部浮き屋根式のコーンルーフ・タンクではないかと思われる。発災写真とグーグルマップを比較して見たが、タンクは特定できなかった。
      インディアン・モラセス社のタンク・ターミナル付近 (写真はGoogleMapから引用)
■「メタノール」は、化学式CH3OH でアルコールの一種である。メチルアルコールとも呼ばれ、日本では、危険物第四類アルコール類に指定されており、揮発性が高く、引火の危険性の高い液体である。メタノールは、接着剤、農薬、塗料、合成樹脂、合成繊維の原料など多岐に使用されている。泡消火は泡がメタノールに吸収されてしまうので、泡消火薬剤を用いる場合は耐アルコール性の泡消火薬剤を用いる必要がある。注水消火は、薄められたメタノールが溢れて、火災の広がる可能性があり、極少量の火災以外には用いるべきではない。
 メタノールに関わるタンク事故はつぎのとおりである。

所 感
■ 爆発・火災の原因は分かっていない。発災現場には、事業所のインディアン・モラセス社の従業員1名のほか、作業員3名がおり、溶接作業を行っていたとみられるので、タンクの工事中における事故の可能性が高い。米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)のつぎの項目のいずれかが欠けたと思われる。
  ①代替方法の採用、  ②危険度の分析、 ③作業環境のモニタリング、
  ④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督

■ コーンルーフの外部屋根が噴き飛び、内部浮き屋根が露出しているタンク屋根火災だとみられる。昼と夜のタンク火災写真を比較しても、タンク側板の焼け跡の高さが余り変わっていないので、内部浮き屋根上での火災でタンクとしての燃焼速度は遅かったとみられる。それにも関わらず、消火に時間がかかっているのは、消火戦略・消火戦術が的確でなかったからではないだろうか。メタノールでは、耐アルコール性泡消火剤を使用し、注水消火は避けなければならないが、通常の石油タンク火災と同様の対応をしていたため、泡がメタノールに吸収されてしまい、注水してもメタノールに薄められて屋根上の火災エリアが広がってしまったのではないか。

■ 他にも消火戦術上で適切ではなかった点は、隣接タンクの内液を抜いたことである。タンク側板にはりっぱな冷却散水設備が設置されて機能しており、対応はできているにも関わらず、内液を抜けば、液に接触していない金属面の熱曝露は大きくなる。タンク屋根火災で隣接タンクへの輻射熱は大きくなかったが、もしタンク全面火災であれば、隣接タンクへの延焼のリスクは大きくなっていた。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Firedirect.net, India- Five Dead In Methanol Fire At Gujarat’s Kandla Port & Refinery Chemical Storage Terminal, January  01, 2020
    ・Hindustantimes.com,  4 dead in blast at Gujarat methanol storage tank,  December  31, 2019
    ・Mumbaimirror.indiatimes.com, Gujarat: Fire in methanol storage tank near Kandla Port still,  December  31, 2019
    ・Indianexpress.com, Four dead as blast in methanol tank sparks fire at Kandla port,  December  31, 2019
    ・Ahmedabadmirror.indiatimes.com,  Methanol tank catches fire after blast near Kandla Port; four dead,  December  31, 2019
    ・Thequint.com, 4 Dead at Gujarat’s Kandla Port as Fire Rages On 24 Hours Later,  December  31, 2019
    ・Navbharattimes.indiatimes.com, गुजरात: कांडला बंदरगाह पर मिथेनॉल टैंक में लगी आग, चार की मौत,  December  30, 2019
    ・Aajtak.intoday.in, कांडला केमिकल स्टोरेज टर्मिनल में लगी आग, 5 लोगों के मरने की आशंका,  December  31, 2019


後 記: 今回の事故は曖昧な情報の多い事例でした。まず、死亡した人数が1人だったり、5人だったり、メディアによってバラバラでした。ブログでは4人にしましたが、死亡した人の氏名を公表した点をとりました。それから、タンクの貯蔵能力が、2,000トン、1,800トン、1,700トンに分かれました。根拠はなく、真ん中をとって1,800トンにしました。また、被災者らがタンクに上っていたのは、定期検査のためというのがありましたが、何もせずにいてタンク上で突然爆発するというのは、不自然ですので、溶接作業をやっていたという記事を信じることにしました。12月30日という年末の所為で、結局、火災が消えたのかどうか分からないまま、メディアの続報はなくなりました。