2018年6月19日火曜日

佐賀県の温泉施設で燃料タンクから流出

 今回は、2018年6月13日(水)、佐賀県多久市の温泉保養宿泊施設「タクア」でボイラー室の燃料用の重油タンクから重油が流出した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
温泉保養宿泊施設「タクア」
(写真はNhk.or.jpから引用)
■ 発災があったのは、佐賀県多久市の公設民営の温泉保養宿泊施設「タクア」(Taqua)である。

■ 事故があったのは、施設にあるボイラー室の燃料用の重油タンクである。
事故のあった温泉保養宿泊施設「タクア」の周辺
(図はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年6月13日(水)午後3時45分頃、タクアの燃料タンクに給油中、重油があふれ出て、構外に流出したという施設の従業員から通報があった。また、午後4時頃、市民から立山橋付近で油流出との電話連絡があった。

■ 午後4時10分、現場に出動した消防が油流出を確認した。重油は近くを流れる山犬原川(やまいぬばる・かわ)に流出し、中通川(なかどおり・がわ)に合流する下流約3kmの東鶴橋付近まで達した。

■ 午後4時30分、多久市は河川にオイルフェンスの設置を開始し、前田地区・山犬原地区の水田への取水を控えるよう依頼した。市などでは、流域約3kmにわたってオイルフェンスを17箇所設置し、吸着マットを使用するなどの対応を行い、市や佐賀県、施設の運営会社が重油の回収を進めている。

■ 近くの住民は、「重油の臭いがひどくて、家の窓も開けられなかった。川も油で黒くて、底が見えない状態だった」と話している。

■ 消防によると、佐世保市の燃料配送業者が同日午後2時30分頃から施設のボイラー室の燃料用タンクへ給油をしていたところ、タンクの油量計の値の異常に気付き、燃料タンクの上部にある通気管から重油があふれ出ているのを見つけて通報したという。

■ 流出した重油量は約8,000リットル(8KL)である。多久市は川の水を農業用に取水しないよう呼びかけたが、水田1箇所に油が広がっているのが確認された。6月15日(金)時点で、水田約4・5ヘクタールで油膜が確認された。
                オイルフェンス設置状況     (図はCity.taku.lg.jpから引用)
被 害
■ 人的被害は無かった。

■ 環境汚染として約8,000リットルの重油が川へ流出した。このため、油回収が行われている。吹き出た部分が砂利であったため、相当量は地下にしみ込んだ。 

< 事故の原因 >
■ 事故の直接原因は、満杯であった地下式タンクに圧送によって重油を強制的に注入したため、高さ4mの通気管を通じて約8,000リットルの重油が流出した。間接原因としては、タクア従業員間の連絡不足が指摘された。

■ 6月15日(金)の多久市の対策本部において、つぎのように報告された。
 ● 重油配送業者が地下式タンクへ給油する際(給油口とタンクは離れているため目視できない)、自然圧で注入(通常運転)していたが、依頼された量(9,000リットル)の重油が入らなかったため、圧送により注入を行った。地下式タンクの場合、通常は圧送による注入を行う事はないが、高低差がある場合は、圧送する場合がある。
 ● 給油をする際は、双方の危険物取扱者の立会が義務づけられているが、タクア側は不在であった。
 ● タンクは前日の6月12日(火)に減っていたため、タクア社員が他のタンクから補給を行い、満杯状態であった。しかし、タクア社員同士の連絡が行われておらず、タンクにはほとんど注入できない状況であったが、重油配送業者へタンクへの9,000リットルの重油を注入するよう依頼した。
 ● その結果、圧送したことによって通気管(高さ4m)から重油が流出した。
 ● 佐賀広域消防局によるこれまでの調べでは約8,000リットルが漏れており、その一部が雨水排水の側溝を通り、県河川の山犬原川に流出した。また、吹き出た部分が砂利であったため、相当量が地下にしみ込んだと思われる。

< 対 応 >
■ 温泉施設タクアは、「早急に実態を把握して誠心誠意対応に当たりたい」とコメントを発表している。

■ 6月13日(水)午後5時、多久市は関係機関(武雄河川事務所、佐賀土木事務所、佐賀中部保健福祉事務所)へ緊急連絡した。また、午後6時40分、市は農業用水への影響を現地確認した。

■ 6月14日(木)午前8時10分、多久市は、下流域の高木川内、砂原、下鶴、撰分、宮ノ浦、石州分の6地区生産組合長に油流出事故を伝え、水田への取水を控えるよう依頼した。

■ 6月14日(木)午後3時、多久市は対策本部を設置して、第1回の対策会議を開催した。
佐賀県も14日(木)に情報連絡室を設置した。

■ 6月14日(木)夜、地元住民を集めた会合に運営会社のタクアの社長らが訪れ、事故について謝罪した。油の流出は業者による人為的なミスが原因だったと語った。タクアの社長は、「いろんなミスが重なって事故が起きたのは、我々にとって大きなダメージです。地域の住民にも期待を裏切ったのは非常に反省すべき点です」と語った。

■ 6月15日(金)午前10時10分、多久市は油流出事故の第2回対策会議を実施した。参加したのは、 多久市(23人)、佐賀広域消防局(3人)のほか、国土交通省(4人)と佐賀県(8人)である。会議では、事故原因の報告、対策の検討、河川流出の油除去方法、水田への対応、地下水対策、広報について協議が行われた。

■ 6月15日(金)、多久市は、事故で水田への取水を控えるように伝えていたが、同日午後7時から8地区すべてで取水できるようになった旨の報告をした。(8地区:前田、山犬原、高木川内、砂原、下鶴、撰分、宮ノ浦、石州分) なお、8地区には、水稲管理情報を提供している。

■ タクアでは、漏水工事などの影響で全面開業が7月8日(日)に延期されていたが、6月15日(金)に予定していた報道機関向けの内覧会は中止するものの、6月19日(火)のプレオープン、7月8日(日)の開業に変更はないという。

■ 6月16日(土)、多久市は、午前10時から第3回の対策会議を開催した。対策の実施状況および今後の対応を協議した結果、会議後、県管理河川の山犬原川の油除去作業の現地を確認し、午後1時から本格的な油除去作業を実施することとした。
 この対策を受け、前日午後7時以降、水田への取水を可能としていた流域8地区のうち、前田、山犬原地区については、6月16日(土)午前7時から再び水田への取水を控えるよう伝えた。今後、作業区域が下流側へ進むことから、作業により取水可能となる地区、一時的に水田への取水を控えるよう依頼する地区が発生する見込みだという。
(写真はSaga-s.co.jpから引用)
補 足 
佐賀県多久市の位置
(図はTaku-kankou.comから引用)
■ 「多久市」(たく・し)は、佐賀県中央部に位置する人口約19,000人の市である。消防は佐賀県中部広域連合佐賀広域消防局が所轄する。

■ 「タクア」(Taqua)は、2007年に閉鎖した「ゆうらく」を多久市が19億6,300万円をかけて改修、㈱長崎環境美化のグループ会社が運営する温泉保養施設である。なお、長崎環境美化は、側溝および暗渠清掃・貯水槽等の各種清掃、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物等の収集運搬を専門とする会社である。。
 「タクア」は6月19日(火)にプレオープンし、7月8日(日)に開業する予定である。季節を問わずに利用できる温水プールや大浴場、ビュッフェ形式のレストランのほか、式典や披露宴などで利用できるホールを完備し、年間10万人の利用を目指すとしている。大浴場やプールなどを備えた本館と宿泊棟があり、延べ床面積は14,650㎡である。客室は、標準的な広さの和室と洋室、広めの和洋室の3タイプで、最大155人を収容できる。駐車場は460台分を確保している。
 レストランは九州の旬の食材を使った創作料理を提供する。宴会向けの会席料理は、長崎県の老舗ホテルの元料理長が手掛ける。メインのプールは流水式でジェットバス、水深が浅い子ども向けもある。カフェやバーのほか、宴会場やカラオケルーム、エステサロン、ゲームコーナーがある。県内をはじめ、福岡や長崎など北部九州を中心に家族やグループ、ツアー客の利用を見込み、売上高は年間5億円を目指す。

■  一方、タクアは開業の問題点が続いている。
 ● 2017年11月、漏水で運営めど立たず、雇用契約先送り
  2017年11月13日、タクアが11月上旬に予定していた入社式を延期し、約20人との雇用契約を先送りしていることが分かった。施設地下室の漏水対策に関し、「市側の対策が不十分で運営開始のめどが立たない」と採用者に説明している。延期期間は明確にしていないという。
 関係者によると、入社予定者は運営管理業務などを担う。2017年10月17日付で採用者宛てに「入社日等のご案内」として11月1日午前10時からタクア内のホールで開催すると明記していた。実際に面談に訪れた40代の男性は、同社幹部から漏水の件を初めて聞かされ、「市から回答を待ち、後日連絡する」と雇用契約は先延ばしされた。多久市は、漏水について2017年10月の施設引渡し書に「引き続き、対策に応じる」と盛り込んでいた。10月13日の市議会勉強会で現状を報告、本格的な修理に向け工法など対応策を練っていると説明した。

● 2017年11月、宴会予約のキャンセル2,000人分
 2017年11月15日、タクアは、2017年12月以降の宴会予約のキャンセル通知を始めたことが分かった。タクアと親会社の長崎環境美化は、2017年9月の記者会見で、「2018年2月中にグランドオープンしたいが、忘年・新年会は12月から始めたい」と説明していた。しかし、予約キャンセルは30数件2,000人分とみられ、市に「同窓会を予定していたが、できなくなった」など、市民から戸惑いの声が上がっていた。タクアから、理由は説明されず「2,000人分の予約は全てキャンセルする」とだけ言われたという。市内の経済関係者は、「従業員がなかなか集まらず、漏水対策が進まない中で運営の見通しが立たなくなり、(宴会の)サービスの提供ができないと判断したようだ」と語る。多久市の担当課は、タクア側から予約キャンセルの説明があったと認め、「推移を見守る」とコメントした。 

● 2018年3月、多久市長、タクアの問題で減給4か月
  2018年3月30日、多久市議会は、タクアの事業費増額に対する市長の処分案について、議員が修正を動議し、2分の1の減給期間を原案より1か月間加重した修正議案を賛成多数で可決した。修正動議をかけた議員は「整備事業費について18億円の上限額を定めたにもかかわらず、約1億5千万円の追加工事と休業中の営業補償費(4,880万円)を派生させ、多額の公費を支出した責任は重い」と説明した。市長は、議会後の記者会見で、「議会の決定を重く受け止め、事業を推進したい」と頭を下げた。

● 2018年3月、内定取り消し者を採用、7月8日開業へ 
 2018年3月31日、 市議会が延期中の補償費4,880万円を盛り込んだ一般会計補正予算案の可決を受け、市側とタクアは覚書を交わす。昨年秋以降、漏水策の追加工事もあり、不透明になっていた開業時期が7月8日と決まった。事務職やホールスタッフなど従業員の募集はすでに始め、2017年11月に内定を取消された調理師ら49人に対しては「優先して採用する」として31人が雇用に応じているという。
 昨年9月にフランス料理から日本料理に変更した食堂は、長崎やハウステンボスに向かう観光客の昼食場所を目指す計画だという。4月中旬から宿泊や宴会などのインターネット予約の受付けを始めるほか、5月から従業員の研修を本格化させ、6月中旬には、市内の法人関係者や各種団体向けにプレオープンする予定であった。

所 感
■ 今回の事例は、地上式タンクと地下式タンクの違いはあるが、過充填による油流出事故である。近年、地上式タンクでは、過充填による油流出事例として、つぎのような事例がある。
 これらの事故はガソリンであったため、蒸気雲爆発を伴い、甚大な被害を出し、大きな教訓を残した。事故を契機に、API(米国石油協会)は、リスク・アセスメントに基づき「タンク過充填防止の規格」(API Std 2350)を改訂することになった。

■ 今回の事例を、失敗を防ぐために必要なつぎの3つの要素の観点で見てみる。
 ① ルールを正しく守る
 ② 危険予知活動を活発に行う
 ③ 報連相(報告・連絡・相談)を行い、情報を共有化する
● タンクへの給油法についてのルールがあるのか曖昧である。給油は、双方の危険物取扱者の立会が義務づけられているが、施設側は立会者が不在でいなかった。まして、給油口とタンクが離れているため目視できないような状態であり、どのような方法で安全を確保しようとしていたか不明である。
● 重油配送業者は、通常、自然圧で注入していたが、重油が入らなかったため、圧送により注入を行ったという。おそらく、短時間で給油を終わらせようと考えたようで、ここには危険予知活動を行う意識はみられない。一方、施設側には、給油を重油配送業者に任せっきりで、給油に関する危険予知が感じられない。
● 施設側では、他のタンクから補給を行い、当該タンクは満杯状態であったのもかかわらず、社員同士の連絡が行われていなかった。どのような方法で他のタンクから補給を行ったか、またその結果をどのように社内で情報を共有化していたかが分からない。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Saga-s.co.jp,   多久市の温泉宿泊施設から重油流出,  June  14,  2018
    ・Sagatv.co.jp , 多久市の温泉施設から重油9000L流出,  June  14,  2018
    ・Www3.nhk.or.jp , 多久市の温泉施設から重油流出,  June  14,  2018
    ・Asahi.com,  9千リットルの重油漏れ、川に一部流出 佐賀の温泉施設,  June  15,  2018
    ・Mainichi.jp, 重油漏れ 多久の温泉施設 川に流出 水田1箇所に油,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第2報)事故の状況など確認できた内容をお知らせします,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第3報)水稲管理情報,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第4報)本格的な油除去作業を実施,  June  16,  2018
    ・Saga-s.co.jp , タクア重油流出8キロリットル 多久市、対策本部を設置 周辺農家に注意喚起,  June  15,  2018
    ・Mainichi.jp, 多久の温泉施設 川に流出 水田1箇所に油,  June  15,  2018
  ・Mainichi.jp, 従業員の連絡不足が原因 タクア,  June  16,  2018 
    ・Sagatv.co.jp , 多久の温泉施設“油流出”社長が謝罪,  June  15,  2018
    ・Saga-s.co.jp ,  「タクア」19日プレオープン 7月8日本格開業  多久市の温泉保養宿泊施設,  June  13,  2018
    ・Saga-s.co.jp , タクア、宴会予約をキャンセル通知 2000人分  多久市民困惑「同窓会できない」,  November,  17, 2017 
    ・Saga-s.co.jp , タクア7月8日開業へ 内定取り消し者を採用  温泉保養宿泊施設,  March  31,  2018
    ・Saga-s.co.jp , 「タクア」雇用契約先送り 漏水で運営めど立たず,  November,  14, 2017
    ・Saga-s.co.jp , 多久市長、「タクア」で減給4カ月に  処分案、加重修正し可決,  March  31,  2018



後 記: 今回の事故の第一報を聞いたときには、円筒タンクの過充填による溢流であり、タンク液面の計装に問題があると思いました。調べてみると、地下タンクであることが分かり、少し状況が違うと感じました。多久市から本事故に関する情報が公開されていることが分かり、読んでみて驚きました。起こるべくして起こったという印象です。施設は改修してオープン前で、いろいろやることが多くて、忙しいことは理解できますが、大丈夫かなと思いました。さらに、調べてみると、施設は漏水問題で追加工事が発生し、雇用契約や宴会のキャンセル問題などが昨年から続いていました。観光に力を入れることは分かります。円滑な経営には、失敗を防ぐために必要な3つの要素を取り入れ、気を引き締めてかかる必要があるでしょう。

2018年6月16日土曜日

米国ペンシルバニア州のタンク・ターミナルで配管火災

 今回は、2018年6月7日(木)、米国ペンシルバニア州カンバランド郡ハンプデンにあるゼニス・エナージー社のメカニクスバーグ・ターミナルで起こった配管の火災事故について紹介します。
(写真はCbc.caから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のペンシルバニア州(Pennsylvania)南部のカンバランド郡(Cumberland County)ハンプデン(Hampden Township)にあるゼニス・エナージー社(Zenith Energy)のメカニクスバーグ・ターミナル(Mechanicsburg Terminal)のタンク施設である。

■ 発災があったタンク施設は、ウェズリーとシャイマンズタウンの間のシンプソン・フェリー通りにある。施設にはタンクローリー・ステーションが4基あり、ガソリン、軽油、暖房油をハリスバーグ市場に出している。貯蔵タンクは7基あり、貯蔵能力は378,000バレル(60,100KL)である。
   ゼニス・エナージー社のメカニクスバーグ・ターミナル付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真はWgal.comから引用)
■ 2018年6月7日(木)午後12時15分頃、メカニクスバーグ・ターミナルのタンク施設で火災が起きた。

■ 施設の従業員がガソリンを配管を通じてタンクから別なタンクに移送していたときに、火災が起こった。  当時、作業員が呼び径10インチの配管(パイプライン)のメンテナンスを行っていた。

■ 事故発生に伴い、消防署に通報が入り、消防隊が現場に出動した。消防隊は8台の消防車、2台のはしご車、1台の救助車で出動するとともに、カンバランド郡とダフリン郡からハズマット隊(HazMat)が出動した。このほか、カーライル陸軍施設とハリスバーグ国際空港の消防隊が出動した。空港消防隊は空港用化学消防車を待機させ、もしもタンク本体に延焼する事態になったら、消火用泡放射を行い、支援する体勢をとった。

■ 消防隊は、火災になった配管に隣接するタンクへの冷却に注力した。

■ およそ1時間の活動の後、火は消防隊によってその日の午後に消された。しかし、消火後も、ガソリンが配管の近くで漏れ出ていた。ハズマット隊(HazMat)が漏れを構内に限定させようと努めた。消火した後も数時間、消防隊は現場に待機し、タンクへの注水を行い、泡消火剤の補給を行った。

■ 事故に伴うけが人の発生はなかった。また、構内から避難する必要はなく、住民への危険も無かった。漏洩による水源への汚染はなかった。

■ ゼニス・エネルギー社は、関係するパイプラインを停止するとともに、ターミナルの操業を中止した。

■ 道路はウェズリー・ドライブとシーリー・レーンからラップ・アベニューまでの間、閉鎖されており、この地域で大きな交通マヒを引き起こした。

被 害
■ 呼び径10インチのガソリン配管が焼損した。付近の配管などの設備も被災しているが、損害状況は分かっていない。

■ 事故に伴う負傷者の発生はない。避難した住民もいない。

■ タンク・ターミナル前の公共道路が閉鎖され、交通マヒが起こった。。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は分かっていない。調査には、数週間かかるとみられている。
(写真はPennlive.comから引用)
(写真はWgal.comから引用)
          待機する空港用化学消防車  (写真はPennlive.comから引用)
(写真はPennlive.comから引用)
< 対 応 >
■ 火災対応に出動した消防隊員など緊急対応人員は約70名だった。
  
■ ゼニス・エナージー社の広報担当は、「ハンプデン消防署、地方警察、その他の自治体当局に対して迅速な火災の消火に感謝を申し上げる。また、道路閉鎖による交通マヒによって車のドライバーに多大な迷惑をお掛けしたことを陳謝します」と語った。

■ 同タンク・ターミナルでは、2013年7月、家庭用暖房油で満杯の200万ガロン(7,560KL)タンクが落雷によって壊れた事例がある。この事故では、環境災害を回避するため、損傷タンクから燃料油を排出した。そして、約300人の人々が4時間にわたって自宅から避難した。
                 20137月のタンク事故 (写真はLowerallenfire.comから引用)
補 足 
米国におけるペンシルバニア州の位置
(図はNizm.co.jpから引用)
■ 「ペンシルバニア州」(Pennsylvania)は、米国の北東部に位置する州で、人口約1,270万人である。 
 「カンバランド郡」(Cumberland County)は、ペンシルバニア州の中央部南に位置し、人口約235,000人の郡である。
 「ハンプデン」(Hampden Township)は、カンバランド郡(Cumberland County)にある町で、人口は28,000人である。

■ 「ゼニス・エナジー社」(Zenith Energy Inc.)は、北米、欧州、中南米においてタンク・ターミナルを有する石油物流会社である。タンク・ターミナルは自社で建てるほか、購入することが多く、現在、世界で24箇所のタンク・ターミナルを所有している。
 ハンプデンには、16エーカーの土地に貯蔵能力378,000バレル(60,100KL)のメカニクスバーグ・ターミナルを保有している。タンク・ターミナルはガルフ・オイルからアークライト・エナージー社へ売却され、さらに最近、ゼニス・エナジー社が購入したものである。
 発災場所に隣接するタンクは、グーグルマップによると、直径約13mと直径約22mの2基である。それぞれ、高さを約15m、約26mと仮定すれば、両タンクの容量は2,000KLクラスと10,000KLクラスとなる。
         メカニクスバーグ・ターミナルの発災場所付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
所 感 
■ 今回の事故は、ガソリンタンクのパイプライン関連の配管事故である。施設の従業員がガソリンをタンクから別なタンクに移送していたときに、火災が起こったという一方、作業員が呼び径10インチの配管(パイプライン)のメンテナンスを行っていたという。この両者の作業が関連しているかどうかは分からない。いずれにしても、人為的なことが関係していると思われる。また、タンク・ターミナルは、最近になって2度も経営者が変わって おり、事故の背景になっていることも考えられる。

■ 消防活動がどのように行われたか詳細には分からないが、発災現場から約20km離れたところにあるハリスバーグ国際空港の空港用化学消防車を待機させたのは、適切な判断である。結局、配管の火災だけで済んだので、無駄な待機だったと言えるが、事故では、最悪の事態を想起しておくことが必要である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Abc27.com,  Fuel Tank Fire Extinguished in Hampden Township,  June 07  2018
    ・Fox43.com ,  No Injuries Reported after Fire at Energy Facility in Cumberland County,  June 07  2018
    ・Pennlive.com,  Fire at Cumberland County Fuel Facility,  June 08,  2018
    ・Hazmatnation.com,  Pennsylvania Crews Battle Fuel Storage Fire ,  June 08,  2018
    ・Cumberlink.com ,  Crews Quickly Control Fire at Fuel Storage Facility in Hampden Township ,  June 07  2018
    ・Wgal.com,  Fuel Storage Tank Catches Fire in Mechanicsburg,  June 07  2018
    ・Firedirect.net , USA – Large Fire At Fuel Storage Facility – Updated,  June  11,  2018



後 記: 最近、感じていることは、米国の事故情報は速いのですが、内容が伴っていないというか、正しい情報ではないことが多くなってきたように思います。その要因はふたつあると思います。ひとつはインターネット情報のため、速さを競うのではないかと思います。もうひとつは、報道関係の人員が減っているのではないかと思います。このため、読み手のことを考えるのではなく、速ければよいという風潮になっているのではないでしょうか。例えば、今回の事例でいえば、消防活動時間が報道によってバラバラです。数時間かかったというものから8分で消火したというものまで、いろいろです。発災時間(消防への通報時間)については記載がありますが、消火時間について書かれたものはありませんでした。このブログを書く立場からすれば、悩みの多い状況ですね。


2018年6月11日月曜日

石川県の製紙工場において溶剤タンクで死者3名

 今回は、2018年6月6日(水)、石川県白山市にある中川製紙㈱の製紙工場においてマシンチェストと呼ばれる溶剤タンク内で男性3名が死亡するという事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、石川県白山市にある中川製紙㈱の製紙工場である。中川製紙㈱は、色付段ボールや機能紙などの高付加価値の製品を製造している特長を有する会社である。

■ 事故があったのは、製紙工場の古紙再生プロセスのマシンチェストと呼ばれる溶剤タンクで、円柱状の高さ(深さ)約5m、容量は約80KLである。工場床の開口部(約50cm四方)からはしごで中に下りる構造である。
事故のあった中川製紙 松任(まっとう)工場の周辺
(図はGoogleMapから引用)
 <事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年6月6日(水)午前3時45分頃、中川製紙の工場で、「タンクに人が転落した」と消防署に通報があった。消防隊員が現場に駆けつけたところ、マシンチェストと呼ばれる溶剤タンク内で男性3人が倒れており、その場で死亡が確認された。

■ 死亡したのは、いずれも同社の従業員で57歳、49歳、27歳の男性3人である。当時、タンクに混入した異物を取り除くため、中に入った57歳の男性が倒れ、助けようとした49歳と27歳の男性次々に巻き込まれたとみられる。警察によると、タンク内で水や希硫酸を混ぜて粘土状になった古紙が詰まりを引き起こした可能性があるため、男性ひとりが中に入ったものの倒れ、その後、助けに入った男性ふたりも次々と倒れたという。工場は24時間稼働しており、三交代制のシフトを組んでいる。死亡した3人は6日午前0時から午前8時まで勤務する予定だった。

■ タンクは、古紙に水、希硫酸、マグネシウムを混ぜて溶かし、濃度を調整するものであったが、事故当時はタンク底に深さ約20cmの溶液が溜まっていた。

■ 現場に到着した消防隊がタンク内で硫化水素を検知した。消防が駆けつけた際、タンク内には、致死量の濃度を下回るものの硫化水素が発生しているのが確認されたという。

■ 強い雨が降る中、家族が慌ただしく駆け付けた。「何も状況が分からない」と従業員の家族は不安な表情で次々と工場に入っていった。警察官が現場を規制するなど周辺は物々しい雰囲気に包まれた。
 中川製紙の社長は、「基本はタンク内に入らないが、今回は何かの異常があったからだと推測している」と語っている。

■ 同社によると、従業員が中に入って作業することを想定しておらず、マニュアルを作成していなかった。ただ、従業員に立入りの禁止は指示していなかったとしている。

 被 害
■ 人的被害として死者3名が発生した。

■ 物的被害や生産・出荷への影響は不明。有害物質の漏洩はなく、環境への影響はない。 

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、硫化水素の発生した可能性のあるタンク内へ防護策をとらずに降りたため、硫化水素中毒、または溶剤が揮発したことによる酸素欠乏による死亡とみられる。また、この男性が倒れたのを見て、防護策をとらずに降りた男性2人も同様に硫化水素中毒または酸素欠乏による死亡とみられる。

■ 6月10日(日)、警察は、司法解剖の結果、3人の死因を急性硫化水素中毒と発表した。
(硫化水素は無色のガスで刺激臭があり、高濃度で吸うと意識混濁や呼吸マヒの症状が現れる)

< 対 応 >
■ 6月7日(木)、警察は安全管理を怠った疑いがあるとして業務上過失致死容疑で捜査に乗り出した。警察は中川製紙を家宅捜索した。中川製紙は、タンク内に入る際の安全マニュアルなどが無く、安全管理の不備を認めている。
 一方、金沢労働基準監督署は、今回の事故の原因が安全管理の不備など法律違反によって引き起こされた疑いもあるとみて調べを進めている。

■ 金沢市内の別の製紙業者は、「再生紙を作る工程でタンクに入る可能性はあり、その際には『送風機で酸素濃度を高める』などと定めたマニュアルを用意している」と話す。労働安全衛生法に基づいて酸素欠乏危険作業主任者を置き、安全性が確保されない場合は作業を中止するという。 

■ 北國新聞の6月8日(金)の社説では、「製紙工場で3人死亡 安全対策に不備なかったか」という題でつぎのように指摘している。
 ● 白山市の製紙工場で3人の従業員が死亡した事故は、安全対策の欠如が重大な結果を招くことを痛感させる。3人は再生紙の製造に使うタンクの中で死亡した。内部では硫化水素が発生していた可能性がある。タンクには、古紙や水とともに希硫酸が入っていた。他の製紙会社では、タンクの中で作業する際は事故が起きないように対策を講じているという。タンク内で発生した硫化水素が原因で死亡事故に至った事例は過去にもある。それなのに、今回の事故を起こした中川製紙の社長が硫化水素の危険を認識していなかったと述べたのは、なぜなのだろうか。

 ● 3人の死亡を受けて、石川県警は業務上過失致死容疑の捜査を本格化させた。金沢労働基準監督署は労働安全衛生法違反の観点から調べている。事故を防げなかったのはなぜか。安全対策に不備はなかったのか。事実と原因の徹底解明が求められている。

 ● 危険なタンク内で作業を行うときは、酸素欠乏危険作業主任者の資格保有者が指揮し、安全に配慮するように法などで定められている。中川製紙によると、事故発生時に、この資格を持つ従業員は現場にいなかった。タンク付近に有毒ガスの感知器はなく、作業マニュアルも作成されていないという。安全意識が足りないと言わざるを得ない状況である。中川製紙では、1995年にも段ボールの原料液を混ぜる装置で死亡事故が発生している。当時の教訓が事故防止に生かされなかった背景を調べて、再発を防ぐ必要がある。

 ● 石川県内では労働災害で毎年10人前後が亡くなっている。2017年は死傷災害が前年比で増加に転じており、労災防止は重要な課題になっている。製造現場の人手不足が深刻なときに、安全対策を拡充するのは簡単でないかもしれない。化学物質を扱う事業場では、有害性の認識と危険回避の対策がどこまで進んでいるのだろうか。石川労働局は製造現場の実態把握に努めて、労災防止策の実効性を高めてほしい。今回の事故で浮かび上がる課題を検討して、対策を強化する必要がある。 

補 足
■ 「白山市」(はくさん)は、石川の南部に位置し、人口約11万人の市である。2005年、松任市(まっとう)など1市2町5村が合併してできた。金沢市の南部に隣接するため、ベッドタウンとして人口が急増し、住宅都市化が進むとともに、工業都市としても急成長している。

■ 「中川製紙株式会社」は、1937年創業、1952年設立され、現在、従業員約70名の特殊製紙会社である。段ボール、雑誌、新聞紙などの紙を溶かし、不純物を取り除き、新たな紙となる原料を作っていき、顧客からの要望に応えるために、求められる風合い、機能、強度等の紙質確立のため、実機での試験抄造を行い、求められる産業用特殊紙を生み出す会社である。
中川製紙の製品の例
(写真はNakagawa-paper.co.jp から引用)
■ 中川製紙の「製紙工程」は、古紙原料に含まれる異物を精選除去し、古紙パルプを製造する「原質工程」と精選された古紙パルプから段ボールライナーを製造する「抄紙工程」の2つがあり、同社のウェブサイトに掲載されている。事故のあった「マシンチェスト」の位置が書かれていないが、おそらく、パルパー、サイクロン、スクリーンを通った後のタンクと思われる。事故のあったタンクは、高さ(深さ)が約5mで、容量が80KLとあり、これから直径は約4.5mの大きさである。
 製紙業界では、パルパーやスクリーン等の各装置から板紙原料とならない粕(PS)の発生が課題のひとつである。また、色ライナーを製紙する際、色違いや原料・マシントラブルによって製品にならず、その間に使用される原料や染料がロスとしてカウントされるので、色の調整や色合わせをすることなく、初回で製品ができたときは従業員のやりがいに通じることになるらしい。
中川製紙の原質工程
(図はNakagawa-paper.co.jp から引用)
近代の製紙工程の例
(図はSlideshare.netから引用)
■ 「マシンチェスト」内における硫化水素による人身事故は、つぎのような事例がある。
 ● 「タンクの清掃時における硫化水素中毒」 (マシンチェスト内の状況は図を参照)
 この事例では、最初に入った人は硫化水素で亡くなったが、倒れている人を発見した人は、換気を行い、酸素濃度を確認した後、ロープで引き上げ、2次災害を回避できた。この事例でも、酸素欠乏危険作業主任者の職務が履行されていなかった。
マシンチェストにおける人身災害事例
(図はAnzeninfo.mhlw.go.jpから引用)
所 感
■ 今回の事例は、善意の行動が裏目に出た事例である。本来であれば、前工程のスクリーンやサイクロンで取り除かれているべき異物(紙詰まり)が発生したため、次工程で支障になるので、タンク内に入って除去しようと考えたのだろう。使用される原料や染料がロスとしてカウントされるという経営的判断が働いたと思う。このような改善意欲は日本人によく見られ、これが最初の善意の行動である。
 そして、2番目の善意の行動は、最初に倒れた人を助けようとして、すぐに入った2番目・3番目の人の行動である。深さ20cmとはいえ、内部に液が溜まっている状態であり、とにかく、急いで助けなくてはならないという思いで行動したのであろう。

■ しかし、換気が十分でない高さ(深さ)約5mのタンク内へ降りるという行動は、酸素欠乏危険作業であるという認識があれば、躊躇(ちゅうちょ)しただろう。少なくとも、2番目・3番目の人身災害は回避できていた。事故を防ぐためには、つぎの3つの要素が重要である。この3つがいずれも行われなかった場合、事故が起こる。
 ① ルールを正しく守る
 ② 危険予知活動を活発に行う
 ③ 報連相(報告・連絡・相談)を行い、情報を共有化する
 
■ 今回の事故では、「危険予知活動」と「報連相(報告・連絡・相談)による情報を共有化」が行われていれば、事故は回避できていただろう。しかし、タンクへの入槽作業に関するマニュアルが無かった点をみると、基本である「ルールを正しく守る」ことができない状況のようである。この観点でみれば、北國新聞の社説で指摘されているように、まず、「ルールを正しく守る」ことに焦点を当てる方がよいと思う。
 ● タンク内ヘの入槽作業のマニュアル化
 ● 硫化水素の発生の恐れ
 ● 酸素欠乏危険作業主任者の配置

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Mainichi.jp,   石川 製紙工場、溶剤タンクで作業員3人死亡,  June  06,  2018
    ・Sankei.com , 石川・溶剤タンク3人死亡、未明の事故に家族「何も状況分からない」と不安,  June  06,  2018
    ・Hokkaido-np.co.jp , 立ち入り作業のマニュアルなし 製紙工場タンク死亡事故、石川,  June  06,  2018
    ・News.tbs.co.jp,   石川・白山の製紙工場の溶剤タンクで男性従業員3人が死亡,  June  06,  2018
    ・Asahi.com, 製紙会社の工場で男性3人死亡 タンクに転落か,  June  06,  2018
    ・Nhk.or.jp, 製紙会社のタンク内で3人死亡 石川 白山,  June  06,  2018
    ・Hokkoku.co.jp,  今日の社説「製紙工場で3人死亡 安全対策に不備なかったか」 ,  June  08,  2018
    ・Ishikawa-tv.com,   製紙会社事故 業務上過失致死で捜査,  June  07,  2018
    ・Mainichi.jp , 白山の製紙会社転落事故 3人死亡 業過致死疑いで捜査 白山署が見分 ,  June  08,  2018
    ・Asahi.com,  3人の死因は急性硫化水素中毒 石川の製紙工場事故,  June  10,  2018


後 記: 今回の事故の情報を調べていると、報道によって少しづつ内容に差があり、すべてをつなぎ合わせると、見えてくるものがありました。マシンチェストという製紙業界の言葉を使っているところは一社のみでした。しかし、この用語をきっかけに調べてみると、分かったことは多いものでした。また、事故発生から二日間は、発災事業所のウェブサイトが開けませんでした。事故関係で開けないのかと思っていましたが、どうやらそうではないようです。開いたウェブサイトでは、事故の話はもちろん、最新の情報が昨年7月のものであり、改訂されていないと分かりました。それでも、製紙工程などの情報を知ることができました。警察が業務上過失致死容疑で捜査し始めたとあり、発災事業所からの情報公開は望めそうもないので、不明な点がありますが、一旦区切りをつけてまとめることとしました。