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2020年1月16日木曜日

神奈川県の東亜石油の重質油熱分解装置で火災、負傷者1名


 今回は 20191224日(火)、神奈川県川崎市にある東亜石油()京浜製油所の重質油熱分解装置で起こった火災事故を紹介します。貯蔵タンクの事故ではないですが、年末の首都圏で起きた事故でテレビでも取り上げられたので、取り上げました。
(写真はNhk.or.jp から引用)

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、神奈川県川崎市川崎区水江町にある東亜石油(株)の京浜製油所である。

■ 事故があったのは、重油を熱分解して付加価値のあるガソリンなどを取り出す重質油熱分解装置である。事故のあった装置は、3年に一度行われる2か月間の定期点検を終えて12月から再稼働していた。
                     川崎市川崎区水江町付近(矢印が発災場所)   (写真はGoogleMapから引用)
            川崎市水江町の東亜石油(株)重質油分解装置付近  (写真はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年12月24日(火)午前7時05分頃、東亜石油の京浜製油所の重質油熱分解装置で火災が発生した。

■ 消防署には、東亜石油の設備で煙があがっているという通報が相次いで寄せられた。黒煙は、一時、大量に立ち昇った。

■ 発災に伴い、自衛消防隊と消防署の消防隊が消火に当たった。公設消防署は消防車16台が出動した。

■ 事故に伴い、従業員1名が負傷した。負傷は手首と足に火傷を負ったもので、病院に搬送され、治療を受けたが、意識はあるという。負傷した人は「作業中に重油を浴びた」と話しているということで、火傷の程度は重いとみられる。当時、装置を担当する部署の従業員は十数人いたという。

■ 発災に伴い、 東亜石油(株)は関連の装置を停止した。ガソリン、軽油、灯油などの石油製品の出荷は停止しているが、在庫や他の製油所から代替供給しているおり、石油製品供給への影響はないという。

■ 東亜石油(株)は、24日(火)、事故発生の状況とともに、近隣住民や取引先などへのお詫びを同社のウェブサイトに発表した。

■ 火災は、約3時間半後の24日(火)午前1045分に鎮火した。


■ 現場は、羽田空港国際線ターミナルの南西約4.5kmのところにあるが、国内線・国際線ともに運航への影響はないという。 

 被 害
■ 人的被害として、1名が負傷した。

■ 重質油熱分解装置の一部が焼損した。範囲や程度は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 消防署など関係機関が調査を行っている。

■ 東亜石油の装置は40年以上にわたって使用されており、1991年に同様の火災が1件発生していたという。 
 (写真はAasahi.comから引用)
(写真は、左;Sankei.com右;Okinawatimes.co.jpから引用)
補 足 
■「川崎市」は神奈川県北東部に位置する政令指定都市で、7区の行政区をもつ人口約153万人の市である。

「東亜石油(株)」は、1924年に日本重油株式会社として設立し、1942年に日米砿油を合併し、東亜石油株式会社に社名を変更した石油会社である。その後、共同石油グループ、昭石シェル石油グループを経て、現在は出光興産の子会社である。
「京浜製油所」は、原油精製能力70,00バレル/日で、分解装置装備率が高く、一般的な製油所が処理する原油だけでなく、他製油所から重質原料油(原油を処理した後に発生する残渣油)を受け入れ、処理することができる。装置の構成は図を参照。
                             東亜石油京浜製油所の装置構成  (図はToaoil.co.jpから引用)
(表はPref.chiba.lg.jpから引用)
■「重質油熱分解装置」は、C重油基材やアスファルトの原料である減圧残渣油を高温で熱分解し、付加価値の高い白油(ガソリン、灯油、軽油)を生産することができる。装置はフレキシコーカーと称し、日本では東亜石油の装置が唯一の設備であり、40年以上の稼働実績がある。
 フレキシコーカーは分解率(白油化指数)が98%と分解装置の中では最も高い。日本で多く見られる流動接触分解装置(FCC)の2層流動層に加えて、コークのガス化(燃料化)を目的に3層流動層のプロセスとなっている。しかし、分解油の安定性が悪く、コークス・低カロリーガス等の処分の課題があり、日本などではなかなか選択されにくい。この点を改善するため、東亜石油では、2003年に水江発電所を建設し、副生される燃料を有効活用する電力供給事業に参画している。
                                        フレキシコーカーの例 (図はSlideserve.comから引用)
            重質油の各種処理プロセス (表はPref.chiba.lg.jpから引用)
              東亜石油(株)の水江発電所の構成 (図はToaoil.co.jpから引用)
所 感
■ 火災の原因は調査中で分かっていない。
 発災箇所も重質油熱分解装置というだけで、どの部分から発災したのかも分かっていない。負傷した人が「作業中に重油を浴びた」 と語っているようなので、重質油分解装置の原料配管または塔底部ではないだろうか。定期点検を終えて12月から再稼働していたというので、装置立ち上がり時の高温移行時のフランジなどからの漏れではないと思われる。

■ 日本で唯一の装置であるが、流動接触分解装置など同種の装置に活かすべきことはあると思うので、事故原因の公表を望みたい。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Okinawatimes.co.jp,川崎の製油所で火災、男性やけど 東亜石油、重油分解装置から出火, December  24,  2019
    ・Toaoil.co.jp,  当社 京浜製油所の火災発生について(第二報), December  24,  2019
    ・Tokyo-np.co.jp,  川崎の製油所で火災、男性やけど 東亜石油、重油分解装置から出火, December  24,  2019
    ・Jiji.com, 石油工場で火災、1人負傷 重油分解中に出火か―川崎, December  24,  2019
    ・Sankei.com,  出光、川崎のコンビナート火災で陳謝, December  24,  2019
    ・Nhk.or.jp, 石油精製設備で火災 煙は収まる 社員1人重いやけど 川崎, December  24,  2019
    ・Kanaloco.jp, 製油所の工場から出火、男性1人重傷 過去にも同様の火災, December  24,  2019
    ・Asahi.com,  川崎の石油工場で火災 30代の男性1人がけが, December  24,  2019


後 記: 首都圏で起こった事故なので、ヘリコプターが出て大きく報道されました。貯蔵タンクの事故ではないようですが、このブログで取り上げることとしました。しかし、年末の出来事ということで、各メディアの対応は火災が起こったという事実を紹介するだけで、事故概要のわかる内容ではありませんでした。地元の人の声を伝える記事もなかったですね。“働き方改革” と言って休みをとろうという雰囲気の時代ですが、当該事故の調査や対応にあたる人たちは休めなかったでしょう。一方、このブログでとりあげた年末の事故はつぎのとおりで、世界規模でみると、年末年始をゆっくりと過ごしていない人たちが意外に多いことがわかりますね。
 ● 1988年12月25日、フランスで製油所の熱油タンクが突然、破壊
 ● 1989年12月24日、米国バトンルージュの貯蔵タンク複数火災における消火活動
 ● 2014年12月25日、リビアでロケット弾による原油貯蔵タンク火災
 ● 2016年12月25日、イスラエルの製油所でガソリンタンク火災

2020年1月9日木曜日

インドのクジャラート州でメタノール・タンクが爆発、死亡者4名


 今回は、 20191230日(月)、 インドのクジャラート州カッチ地区にあるインディアン・モラセス社のタンク・ターミナルで起こったメタノール用貯蔵タンクの爆発・火災事故を紹介します。
(写真はTimesofindia.indiatimes.comから引用) 

< 施設の概要 >
■ 事故があったのは、インド(India)クジャラート州(Gujarat)カッチ地区(Kutch)にあるインディアン・モラセス社(Indian Molasses Company)のタンク・ターミナルである。

■ 発災があったのは、カンドラ港近くのタンク・ターミナルにある貯蔵能力1,800トンのメタノール用貯蔵タンク(Tank No.303)である。この施設から500mのところには、インディアン石油のタンク・ターミナルがある。
         クジャラート州カッチ地区のタンク・ターミナル付近 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年12月30日(月)午後1時30分頃、タンク・ターミナルにあるメタノール用貯蔵タンクが爆発し、引き続いて火災になった。

■ 事故に伴い、作業員4名が死亡した。

■ 発災に伴い、消防隊は消防車10輌を伴って現場に出動し、消火活動に当たった。参画したのは、ディエンダヤル・ポート・トラスト(Deendayal port trust)の消防隊、インディアン・モラセス社の自衛消防隊、ターミナル関連の消防隊である。

■ 会社の従業員1名と作業員3名が補修のため、タンクにいたとき、突然、タンクが爆発し、タンク屋根が噴き飛んだ。爆発の勢いは激しく、犠牲者全員がタンク屋根から遠くへ吹き飛ばされていた。犠牲者のひとりは海で発見された。作業員は溶接工事に従事していたとみられる。

■ 消防隊は火災タンクに対して泡による消火作業を行った。火災拡大を防止するため、周辺タンクにはタンク冷却用散水設備による冷却を行った。また、予防措置として、隣接タンクは内液を抜いて空にされている。

■ 発災場所の近隣住民に避難指示が出された。 

■ 火災は24時間を経過しても燃え続けている。
(写真はNews18.comから引用)
(写真はHindinewsonline.goldwingsartsinstitute.com Indianexpress.comから引用して合成したもの)

(写真はAmarujala.comから引用)
被 害 
■ 貯蔵能力1,800トンのタンクが1基損壊し、内部のメタノールが焼失した。被災の程度や量は不詳である。

■ 事故に伴い、4名の死亡者が出た。

■ 発災場所の近隣住民に避難指示が出された。 

< 事故の原因 >
■ 原因は分かっていない。

< 対 応 >
■ タンクは31日(火)も燃え続けており、燃料が燃え尽き、消えるまでに2日かかると見込まれている。

■ 2002年に、ケサル・ターミナルで同様の事故が起こり、制圧するのに3日間かかった。
(写真はTwitter.comから引用)
補 足
■「インド」(India)は、正式にはインド共和国で、南アジアに位置し、インド亜大陸の大半を領してインド洋に面し、人口約13億3,400万人の連邦共和制国家であr。首都はニューデリー、最大都市はムンバイである。
「クジャラート州」(Gujarat)は、インドの西端に位置し、インダス渓谷文明の中心地域のひとつとして歴史があり、人口約6,000万人を超える州である。
「カッチ地区」(Kutch)は、グジャラート州の西部に位置し、人口約200万人の地区である。
(写真はameblo.jpから引用)
 当ブログで取り上げたインドにおける事故情報は、つぎのとおりである。

■「インディアン・モラセス社」(Indian Molasses Company)は、1935年に設立し、主に液体バルクの物流事業に従事している。カンドラ、ムンバイ、ゴアなど14箇所にタンク・ターミナルを保有し、石油製品、液化ガス、石油化学製品、酸など貯蔵能力は100万KLを有している。

■「発災タンク」は貯蔵能力1,800トンの円筒式タンクというだけで、直径や高さなどの仕様は分かっていない。内液がメタノールなので、内部浮き屋根式のコーンルーフ・タンクではないかと思われる。発災写真とグーグルマップを比較して見たが、タンクは特定できなかった。
      インディアン・モラセス社のタンク・ターミナル付近 (写真はGoogleMapから引用)
■「メタノール」は、化学式CH3OH でアルコールの一種である。メチルアルコールとも呼ばれ、日本では、危険物第四類アルコール類に指定されており、揮発性が高く、引火の危険性の高い液体である。メタノールは、接着剤、農薬、塗料、合成樹脂、合成繊維の原料など多岐に使用されている。泡消火は泡がメタノールに吸収されてしまうので、泡消火薬剤を用いる場合は耐アルコール性の泡消火薬剤を用いる必要がある。注水消火は、薄められたメタノールが溢れて、火災の広がる可能性があり、極少量の火災以外には用いるべきではない。
 メタノールに関わるタンク事故はつぎのとおりである。

所 感
■ 爆発・火災の原因は分かっていない。発災現場には、事業所のインディアン・モラセス社の従業員1名のほか、作業員3名がおり、溶接作業を行っていたとみられるので、タンクの工事中における事故の可能性が高い。米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)のつぎの項目のいずれかが欠けたと思われる。
  ①代替方法の採用、  ②危険度の分析、 ③作業環境のモニタリング、
  ④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督

■ コーンルーフの外部屋根が噴き飛び、内部浮き屋根が露出しているタンク屋根火災だとみられる。昼と夜のタンク火災写真を比較しても、タンク側板の焼け跡の高さが余り変わっていないので、内部浮き屋根上での火災でタンクとしての燃焼速度は遅かったとみられる。それにも関わらず、消火に時間がかかっているのは、消火戦略・消火戦術が的確でなかったからではないだろうか。メタノールでは、耐アルコール性泡消火剤を使用し、注水消火は避けなければならないが、通常の石油タンク火災と同様の対応をしていたため、泡がメタノールに吸収されてしまい、注水してもメタノールに薄められて屋根上の火災エリアが広がってしまったのではないか。

■ 他にも消火戦術上で適切ではなかった点は、隣接タンクの内液を抜いたことである。タンク側板にはりっぱな冷却散水設備が設置されて機能しており、対応はできているにも関わらず、内液を抜けば、液に接触していない金属面の熱曝露は大きくなる。タンク屋根火災で隣接タンクへの輻射熱は大きくなかったが、もしタンク全面火災であれば、隣接タンクへの延焼のリスクは大きくなっていた。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Firedirect.net, India- Five Dead In Methanol Fire At Gujarat’s Kandla Port & Refinery Chemical Storage Terminal, January  01, 2020
    ・Hindustantimes.com,  4 dead in blast at Gujarat methanol storage tank,  December  31, 2019
    ・Mumbaimirror.indiatimes.com, Gujarat: Fire in methanol storage tank near Kandla Port still,  December  31, 2019
    ・Indianexpress.com, Four dead as blast in methanol tank sparks fire at Kandla port,  December  31, 2019
    ・Ahmedabadmirror.indiatimes.com,  Methanol tank catches fire after blast near Kandla Port; four dead,  December  31, 2019
    ・Thequint.com, 4 Dead at Gujarat’s Kandla Port as Fire Rages On 24 Hours Later,  December  31, 2019
    ・Navbharattimes.indiatimes.com, गुजरात: कांडला बंदरगाह पर मिथेनॉल टैंक में लगी आग, चार की मौत,  December  30, 2019
    ・Aajtak.intoday.in, कांडला केमिकल स्टोरेज टर्मिनल में लगी आग, 5 लोगों के मरने की आशंका,  December  31, 2019


後 記: 今回の事故は曖昧な情報の多い事例でした。まず、死亡した人数が1人だったり、5人だったり、メディアによってバラバラでした。ブログでは4人にしましたが、死亡した人の氏名を公表した点をとりました。それから、タンクの貯蔵能力が、2,000トン、1,800トン、1,700トンに分かれました。根拠はなく、真ん中をとって1,800トンにしました。また、被災者らがタンクに上っていたのは、定期検査のためというのがありましたが、何もせずにいてタンク上で突然爆発するというのは、不自然ですので、溶接作業をやっていたという記事を信じることにしました。12月30日という年末の所為で、結局、火災が消えたのかどうか分からないまま、メディアの続報はなくなりました。



2019年12月26日木曜日

米国テキサス州の油井施設でフラック・タンクが爆発・火災

 今回は、2019年11月21日(木)、米国テキサス州ミッドランド郡ミッドランド市にあるオアシス・トランスポーテーション&マーケティング社の油井施設でフラック・タンクが爆発して火災になった事故を紹介します。
(写真はYouTubeの動画から引用)
 < 施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)ミッドランド郡(Midland County)ミッドランド(Midland)にあるオアシス・トランスポーテーション&マーケティング社(Oasis Transportation and Marketing Corp)の油井施設である。ミッドランドは米国内で最も活発な原油生産地域のひとつで、米国最大のシェール・オイルを産するペルム紀盆地の一部が含まれている。
           テキサス州ミッドランド付近(矢印が発災場所)  (写真はGoogleMapから引用)
 
ミッドランドにあるオアシス・トランスポーテーション&マーケティング社の油井施設付近
(矢印が発災場所付近) (写真はGoogleMapから引用)

■ 発災があったのは、ミッドランド南東のフェアグラウンズ通り沿いにある油井施設のフラック・タンク(Frac Tank)とホット・オイラー・トラック(Hot Oiler Truck)である。フラック・タンクは、スラリーを保管したり移動する手段として使用される。ホット・オイラー・トラックは、油井からワックスの沈着物を除去するために使用される特殊な車両である。
(写真は、左;Alshurooqoil.com右; Dragonproductsltd.comから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 20191121日(木)午前1030分頃、油井施設でフラック・タンクの1基が爆発して火災になった。火災はホット・オイラー・トラックに広がった。
(写真はYouTubeの動画から引用)
■ 事故に伴い、ひとりが重傷を負った。

■ 発災に伴い、ミッドランド消防署などの消防隊が出動して火災への対応を行った。

■ ホット・オイラー・トラックの火災に対応するため、近くに消防車が配置された。そのとき、フラック・タンクに接続されているホースが破裂し、油が地面に流出し、1台の消防車の方に流れた。炎が広がり、消防車が火災に巻き込まれた。幸い、燃えた消防車にいた消防士は逃げ、無事だった。

■ 地面に流出した油によって炎が広がり、通常、水やプロパント(Proppant)を入れるフラック・タンク45基が炎に包まれた。このエリアには、合計1213基のフラック・タンクがあった。

■ 発災に伴い、現場近くの道路が閉鎖された。

■ 火災から約0.5マイル(800m)以内にある会社や住宅の人たちが避難した。

■ 激しい火災だったが、午後130分頃、制圧できる見込みとなった。

被 害

■ 油井施設のフラック・タンク5~6基が焼損した。ホット・オイラー・トラック1台が焼損した。消防車1台が延焼した。被災の程度や範囲は不詳である。

■ 事故によって1名の負傷者が出た。

■ 爆発現場から800m以内の会社や住宅の人たちが避難した。

■ 火災によって現場近くの道路が、一時、交通制限で閉鎖された。

< 事故の原因 >
■ 原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 火災は、消防士50名が600ガロン(2,270リットル)を越える泡薬剤を使用して、発災から7時間後に鎮火した。

■ 現場近くの閉鎖された道路の交通制限が解除されたのは、午後4時だった。

■ 米国安全衛生労働局(Occupational Health and Safety Administration;OHSA) 、テキサス州鉄道委員会(the Railroad Commission of Texas)およびミッドランド郡は、爆発前に安全規則が守られていたか調査に入った。
(写真はNewswest9.comから引用)
フラック・タンクの火災
(写真はYouTubeの動画から引用;画面を貼り合わせた)
                  火災にあった消防車 (写真はfirefighternation.comから引用)
 補 足
■「テキサス州」(Texas)は、米国南部のメキシコ湾に面し、メキシコと国境を接する人口約2,500万人の州である。
「ミッドランド郡」(Midland County)は、テキサス州西部に位置する人口約172,000人の郡である。
「ミッドランド」 Midland)は、ミッドランド郡の北西部に位置し、人口約142,000人の市で、ミッドランド郡の郡庁所在地である。市の一部が北にあるマーティン郡にかかっている。ミッドランドは1920年代から原油の生産が盛んで、近年も新たな油田が開発され、経済は依然として石油に大きく依存している。

■「オアシス・トランスポーテーション&マーケティング社」(Oasis Transportation and Marketing Corp)は、1996年に設立されたエネルギー会社で、ミッドランドに本拠地にし、原油・天然ガスの生産および卸売を営んでいる。

■「フラック・タンク」(Frac Tank)は、一時的で移動可能な貯蔵に使用される大型のコンテナである。通常、さまざまな形状とサイズのスラリーを保管でき、農家の肥料や廃棄物産業で使用されるほか、近年では原油・天然ガスの水圧破砕法(フラクチャリング)で用いられる。一般的には、10,00021,000ガロン(3880KL)の大きさのものが使用されており、移動は専用のトレーラーで行われる。

(写真はAlshurooqoil.comから引用)
■「ホット・オイラー・トラック」(Hot Oiler Truck)は、油や処理液を加熱するために使用されるトラックやスキッドに取り付けたユニットをいう。重質などの原油は坑口温度が低いと、ワックスが沈殿するので、坑井の上部からワックスの沈殿物を除去するために使用される。

「プロパント」(Proppant)は、原油・天然ガスの採掘技術である水圧破砕法において地層に形成させた亀裂の閉塞を防ぐために、亀裂の内部に埋め込む支持材をいう。一般的に砂やセラミックなどを原料として粒状に加工され、坑井の流体に混ぜて用いられる。

所 感
■ 爆発・火災の原因は分かっていない。上空からの被災写真を見ると、油井施設とは離れたところにあったフラック・タンク群から事故が起こったとみられる。これにホット・オイラー・トラックが関連しており、このトラックがどのような作業をしていたかが事故要因に深く関与していたと思われる。
 火災拡大の要因は「フラック・タンクに接続されているホースが破裂し、油が地面に流出した」とみられるが、通常、この種のホースは耐圧性があるにも関わらず破裂している。また、フラック・タンクには、水だけでなく、大量の油が含まれていたとみられ、設備の運用や保守面に疑問がある。 

■ 消防隊の消火戦略は、最初から積極的消火戦略をとったとみられる。しかし、フラック・タンクに接続されているホースが破裂し、油が地面に流出し、消防車が火に包まれた後、消防車の配置を変更せざるを得なかった。どのような形態でフラック・タンクが燃えていたか分からないが、かなり厄介な消火作業だっただろう。2,270リットルを越える泡薬剤を使用しており、混合率1%とすれば、約227KLの消火水を使用して消火させたことになる。発災から鎮火までに7時間かかっており、フラック・タンク火災が地上式円筒タンク火災と同様に消火が困難だったことを表している事例である。
            水圧破砕法による天然ガス採掘の例 (図はOilgas-info.jogmec.go.jpから引用)
備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
     Reuters.com,  Fire contained at Texas oilfield site, one critically injured,  November 22,  2019
     Firefighternation.com, Fluid spilled underneath the engine and began to burn,  November 21,  2019
     Mrt.com, Hot oiler truck explosion causes fire in southeast Midland,  November 21,  2019
     Cnbc.com, UPDATE 2-Fire contained at Texas oilfield site, one critically injured,  November 21,  2019
     Businessinsider.com, Fire erupts at Midland, Tx oilfield operations, injures one: reports,  November 22,  2019
     Whlaw.com, MIDLAND, TX — EMPLOYEE CRITICALLY INJURED IN FIRE AT TEXAS OILFIELD SITE,  November 26,  2019
     Newswest9.com, One injured in hot oiler explosion near Fairgrounds,  November 21,  2019
     Kcbd.com, Authorities respond to explosion in Southeast Midland, at least 1 person hurt,  November 21,  2019


後 記: 今回のタンク火災は、フラック・タンクとホット・オイラー・トラックが燃えた事故であり、日本ではなじみのない事例でした。 しかし、初めて伝える事故ではなく、2015年4月におきた「米国コロラド州で天然ガス生産関連施設に落雷してタンク火災」で火災に巻き込まれたトレーラー連結車はフラック・タンクまたはホット・オイラー・トラックではないかと思っています。水圧破砕法という掘削技術が出たことで、米国の原油生産量は飛躍的に伸び、米国は原油輸出国になっています。一方で、水圧破砕法で使用される薬品による環境汚染問題や地震誘発の問題などがあり、今回の火災事故では負傷者が出ており、負の面が出た事故でした。この水圧破砕法による採掘は今後もいろいろな問題が出てくるように感じます。