2018年1月11日木曜日

環境汚染処理作業中の旧製油所タンクから油流出(2010年)

 今回は、2010年2月9日(火)、米国テキサス州コーパスクリスティのイングルサイドにある環境汚染処理を行うべき旧ファルコン製油所のタンク施設で原油が流出した事故を紹介します。
(写真はCaller.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、米国テキサス州(Texas)コーパスクリスティ(Corpus Christi)のイングルサイド(Ingleside)にある旧ファルコン製油所(Falcon Refinery)のタンク施設である。
 資産の所有権はナショナル・オイル・リカバリー社(National Oil Recovery Corp.=NORCO)にあった。 NORCOは、さらにスーペリア・クルード・ギャザリング社(Superior Crude Gathering Inc.)に3基のタンクをリースしていた。

■ 旧ファルコン製油所の地区はイングルサイド市域のすぐ外側に位置し、およそ104エーカー(42万㎡)の広さがあった。この地区の北東と南西は湿地帯に隣接し、北と南東は住宅地と隣接し、北西に廃棄された製油所、南西に建設会社があった。ファルコン製油所は、2002年、環境保護庁(Environmental Protection AgencyEPA)から有害物質汚染地域であるスーパーファンド・サイト(Superfund Site)に指定された。スーパーファンドとは、国土の中でコントロール不良の有害廃棄物地域をクリーンアップするための連邦政府のプログラムである。計画では2010年までに当該地域はクリーンアップを終える予定であった。

■ 発災があったのは、旧製油所の原油用の貯蔵能力55,000バレル(8,700KL)のタンクNo.13である。このタンクはスーペリア・クルード・ギャザリング社にリースされていた3基のうちの1基で、タンク内には原油が52,000バレル(8,200KL)保管されていた。
コーパスクリスティのイングルサイドの旧ファルコン製油所付近 (発災当時) 
 (写真はGoggleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2010年2月9日(火)午後4時頃、 原油用の貯蔵能力55,000バレル(8,700KL)のタンクNo.13が破損し、保管されていた52,000バレル(8,200KL)の原油が流出し始めた。 目撃者によると、 55,000バレル(8,700KL)のタンクのベースに1つの破損個所があり、油がほとばしり出て、防油堤内へ流れ込んでいたという。50,000バレル(7,900KL)の油がタンク周囲の防油堤内に流れ込んだが、一部はほかのタンクへ移送された。

■ タンクNo.13から漏洩していたため、スーペリア・クルード・ギャザリング社の従業員がタンクNo.15への移送を試みて、何とか28,000バレル(4,500KL)を移送した。ところが、この移送作業中、タンクNo.15が破損しているのが確認された。破損はタンク底近辺で生じており、油が犬走りを伝って流れ始めた。
(写真はCaller.com から引用)
■ さらに、防油堤に3個所の不具合があることが発見され、油は淡水池と沼地へ流れ込んでいった。タンクNo.15から油が漏れ出ているが確認されたのち、スーペリア・クルード・ギャザリング社はタンクに水を注入し、破損個所より上に油面が来るようにレベルを上げた。一晩中、レベルを維持することができ、油はそれ以上漏れ出てくることが避けられた。

■ タンクNo.13の南東の位置にあった淡水池を回収ポイントとして、約2,000バレル(300KL)の流出油が導き入れられた。2日間で約900バレル(140KL)の油を回収した。発災2日目の2月11日(木)に雨が降り、この雨によって回収作業がやりやすい方向に働いた。 雨が油を淡水池の方へ流し込み、油収集作業を楽にしたからである。

■ 2月11日(木)朝、“てんま船”が到着し、正午頃からタンクNo.15に入っていた28,000バレル(4,500KL)の油をてんま船へ移送し始めた。また、同時に、現場へバキューム車を持ち込み、タンクNo.13の防油堤に溜まった油の回収が行われた。一晩中の作業によって、防油堤に溜まっていた油のうち約2,000バレル(300KL)を回収した。その後、昼夜作業によって20,000バレル(3,000KL)の油の回収が試みられた。

■ 2月15日(月)の時点で、防油堤外の淡水池および用水路に残っている油は約4バレル(600L)程度となった。防油堤内には約1,000バレル(150KL)が残っており、油の溜まっている箇所に集中して回収作業が行われた。

■ 原油流出事故後、油まみれになっていたミミヒメウ1羽、クート2羽、ヒシビロガモ1羽の鳥が21314日にかけて死んでしまった。ムスタング島の動物リハビリテーションセンターで野生動物管理グループによる徹底した努力にもかかわらず、4羽の鳥がバレンタインデー の214日(日)に死んだ。5番目の鳥、ゴイサギサギも前の週に油流出現場で見つかり、手当てのため動物リハビリテーションセンターに運ばれたが、毒性の原油と関係ない病気で死んだ。

■ 油まみれになった鳥をきれいにして介抱することはかなり神経をつかう作業である。これが鳥にとって適切でなければ、日曜に見たように死んでしまう。鳥が油まみれになるということは不幸なことであり、あらゆる手立てをとってやるべきだし、油漏れの事故では、当然やるべきで、それが鳥に対して公平な立場の対処だと、動物リハビリテーションセンターは語っている。
野鳥の種類
(左からクート、ミミヒメウ、ゴイサギサギ、ハシビロガモ)
被 害
■ 貯蔵タンク2基が破損した。

■ タンク内にあった原油が約7,900KLが流出し、環境汚染を生じた。

■ 事故に伴う負傷者は出なかったが、池や湿地に生息していた野鳥の幾羽が油まみれで死んだ。

< 事故の原因 >
■ 旧製油所の貯蔵タンクの保全不足だとみられる。

< 対 応 >
■ 環境保護庁(EPA)の緊急対応チームの現場コーディネータによると、ナショナル・オイル・リカバリー社(NARCO)はスーペリア・クルード・ギャザリング社3基のタンクをリースしており、このタンクが流出事故を起こしているので、スーペリア社の油流出事故という解釈になるという。しかし、このようなタンク運用の進め方はスーパーファンド・サイトとして標準ではなかった。

■ 米国政府の独立した機関で国土の管理に携わっているジェネラル・ランド・オフィス(General Land Office)のコーパスクリスティ支部によると、2月9日(木)、スーペリア・クルード・ギャザリング社の従業員が1基の貯蔵タンクへ油を移送していたところ、午後4時頃、原油が防油堤内へ流出しているのを発見しているが、ジェネラル・ランド・オフィスには、2月10日(水)の午前7時半まで連絡されなかった。連絡を受け、ジェネラル・ランド・オフィスはチームを編成して現場へ駆けつけ、午前8時半に指揮所を設置した。同時に、ジェネラル・ランド・オフィスはテキサス環境品質委員会(Texas Commission on Environmental Quality)へ環境(空気)モニタリングを依頼した。その後2時間ほどして問題ないことが確認でき、ジェネラル・ランド・オフィスはアセスメントを実施するための担当官を現場へ派遣した。

■ 油流出の対応はジェネラル・ランド・オフィスのほか、スーペリア・クルード・ギャザリング社、テキサス環境品質委員会、テキサス鉄道委員会(Texas Railroad Commission)、テキサス州公園・野生生物管理局(Texas Parks & Wildlife)が協力して行われた。

■ ジェネラル・ランド・オフィスは、旧製油所の油流出現場における関心事が水から油を分離する段階を迎えれば、緊急事態の最終局面になるといい、2月17日(水)の終りまでに、ジェネラル・ランド・オフィスは撤収し、その後の長期間の環境改善についてはテキサス鉄道委員会に引き継ぐという。
(写真はCaller.com から引用)
              油回収作業   (写真はCaller.com から引用)
     油回収作業   (写真はCaller.com から引用)
          油回収作業   (写真はCaller.com から引用)
補 足 
■  「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、人口約2,780万人の州で、州都はオースティンである。
 「コーパスクリスティ」 (Corpus Christi)はテキサス州の南部にある沿岸部の都市であり、人口は285,000人である。「イングルサイド」(Ingleside)はコーパスクリスティの南東地区に位置する町である。 
テキサス州コーパスクリスティ(Corpus Christi)周辺
 (写真はGoggleMapから引用)
■ ファルコン製油所(Falcon Refinery)は精製能力40,000バレル/日で1980年に設立された。製油所は断続的に操業されたが、発災当時は廃棄製油所になっており、「スーパーファンド・サイト」にリストアップされていた。 現在の製油所地区をグーグルマップで見てみると、発災のあったタンク施設は残っている。使用されていない座屈した浮き屋根式タンクに隣接して、供用中とみられるタンクがある。どのような運用が行われているかわからない。
旧ファルコン製油所付近の風景 (発災当時前)
 (写真はGoggleMapから引用)
現在の旧ファルコン製油所のタンク施設付近
 (写真はGoggleMapから引用)
■ 米国では、ラブキャナル事件を契機に1980年代に「包括的環境対策・補償・責任法」を制定し、環境汚染の調査や浄化は米国環境保護庁が行い、汚染責任者を特定するまでの間、浄化費用は石油税などで創設したスーパーファンド(信託基金)から支出し、浄化を早く行うという施策をとっている。この法律を一般にスーパーファンド法と呼んでいる。環境保護庁が調査して汚染地域と決定した場所を「スーパーファンド・サイト」といっている。
 スーパーファンド法は、環境汚染者が浄化費用を負担するという考え方でなく、浄化目的を確実に実行するために、潜在的責任当事者の範囲を定め、これに無過失連帯責任(厳格責任)を負わせるという基本思想に立っている。日本では、スーパーファンド法は公的資金を投入して、浄化を実施することとみられがちであるが、むしろ潜在的責任当事者の概念により、できるだけ公的資金の投入を避け、民間ベースで浄化を実施させるとともに、不良事業者の自然淘汰や廃棄物の適正処理に寄与しているとみるべきという。

■ 「ナショナル・オイル・リカバリー社」(National Oil Recovery Corp.=NORCO)は、1991年に設立された民間の石油会社で、従業員は20名程度である。NORCOのもとに請負った「スーペリア・クルード・ギャザリング社」(Superior Crude Gathering Inc.)は、1993年に設立した民間の石油卸企業に分類され、テキサス州コーパスクリスティをベースにした会社で、従業員は20名ほどである。この両会社と環境汚染処理の関係は不詳である。

■ 「ジェネラル・ランド・オフィス」(General Land Office)は、米国政府の独立した機関で、国土の管理に携わっている。テキサス州にはテキサス・ジェネラル・ランド・オフィスがある。テキサス州の場合、メキシコからの独立後に設立され、当初の一般的な土地局の職務が拡大し、石油と天然ガスの掘削権の管理や近年では油流出防止に関する業務も行っている。

■ 「テキサス鉄道委員会」(Texas Railroad Commission)は、名前が示すように元来は鉄道に関する公共業務を行うために設立された。その後、石油工業の発達によってパイプラインに関する業務を行うようになり、現在は鉄道、パイプライン、石油・天然ガス、石炭・ウランの鉱物資源に関する業務を行っている。

所 感
■ スーパーファンド法は、米国の環境汚染防止に関する取組み姿勢を表わしている。この法律をもとに関係機関がいろいろ活動していることは当該事例でうかがえる。しかし、スーパーファンド・サイトに指定し、環境汚染処理を実施中に、環境汚染を起こすという皮肉な結果もまた実情を示している。 どのような経緯で廃棄製油所のタンクを使用することになったか不詳であるが、適当な運用が行われていたか大いに疑問がある。

■ 日本でも、製油所の生産能力が過剰で製造プラントを停止(廃棄)するケースが出てきている。しかし、供給体制上、タンク施設はそのまま使用されることは多い。この観点でいえば、米国と法体系の違いがあるが、この事例は製油所停止後の貯蔵タンクの管理体制や保全を適切に行う必要性を示す事例だといえよう。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
     ・Caller.com, Oil Spill Cleanup in Ingleside Continues,  February 12,  2010  
     ・BannedBooksCaféBlogspot. com, Government Responds to Refinery Oil Spill,  February  17 ,  2010 
     ・Kristy. Com,  Oil Spill in Ingleside,  February  11,  2010 



後 記: 当該油流出事故の起った2010年という年は、4月20日に米国ルイジアナ州のメキシコ湾沖合80kmの石油掘削施設が爆発事故を起こし、3か月間原油が流出し続けるという大きな環境汚染の問題のあった年です。この石油掘削施設爆発事故は、2016年に映画化され、「バーニング・オーシャン」と題して公開されました。この映画で描ききれなかった話は、「メキシコ湾原油流出事故の真実」としてDVDのドキュメンタリー映画として公開されました。これらの映画は、石油掘削施設の所要者であるBPの実名を明らかにし、経済性を優先した掘削工程に誤りがあったという内容になっています。
 話が横道にそれますが、 「メキシコ湾原油流出事故の真実」の中では、米国議会の公聴会に石油メジャーのCEOが呼ばれ、各社であれば、事故は防げたかということが問われています。当時のエクソンモービルのCEOが今の米国国務長官レックス・ティラーソン氏です。メキシコ湾原油流出事故は防ぎきれなかったという主旨の答えで、石油掘削施設の事故を防ぎ得ないとする人が戦争を回避すべき国務長官になっていることに「オイオイ」と感じました。


2017年12月23日土曜日

オーストリアの天然ガスパイプライン施設で爆発、死傷者22名

 今回は、2017年12月12日(火)、オーストリアのバウムガルテンにあるガス・コネクト・オーストリア社の天然ガス用パイプライン施設において爆発・火災があり、死傷者22名を出した事例を紹介します。
(写真Focus.deから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、オーストリア(Austria)の首都ウィーン(Vienna)から東方25マイル(40km)にあるバウムガルテン(Baumgarten)にあるガス・コネクト・オーストリア社(Gas Connect Austria)の天然ガス用パイプライン施設である。  

■ 発災があったのは、ロシアやノルウェーなどから移送されてきた天然ガスを国内だけでなく、欧州のドイツやイタリアなどの国へ分配する重要な拠点施設であり、年間最大400億立方メートルの取扱能力を有する。
オーストリアのバウムガルテン付近 (矢印が発災施設)
 (写真はGoggleMapから引用)
ガス・コネクト・オーストリア社の天然ガス用パイプライン施設 (丸印が発災場所)
 (写真Gasconnect.at から引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年12月12日(火)午前8時45分頃、パイプライン施設で爆発が起こり、引き続いて大きな火災となった。発災現場はバウムガルテンの町から少し離れたところだったが、大きな火柱が空へ立ち昇っているのが見えた。施設内では、飛び火して数箇所で小規模な火災が発生した。

■ 事故発生に伴い、消防隊などの緊急対応人員が出動した。現場に出動した人員は250名に及んだ。周辺地区は立ち入り禁止の処置がとられた。

■ 事故に伴い、ひとりが死亡、21人が負傷した。現場には、医療用ヘリコプター2機が出動した。
負傷したのはオーストリア人の従業員のほかに、6つの国から来た請負会社の従業員を含んでいた。

■ ガス・コネクト・オーストリア社は、爆発の原因について「テロではなく、技術的な問題とみられる」とした上で、できるだけ早く被害の全容を把握して復旧作業に取りかかりたいという。警察は、爆発の引き金は技術的な原因によると説明しているが、詳細は地方当局が調査中だと語っている。

■ ガス・コネクト・オーストリア社は、施設を制御された状態で停止し、パイプラインを閉鎖した。

■ 消防隊による消火活動が行われ、火災は12月12日(水)午後2時30分頃に完全に消えた。

■ この施設は、スロバキアとドイツに走っているパイプラインで移送されてくる天然ガスをオーストリアの輸送網を経由して欧州全域へ分配しており、欧州のガス輸送にとって重要なハブ施設である。爆発の影響範囲は、施設の敷地面積17ヘクタールのうちの100m×100mのエリアだった。この部分の影響は全パイプラインに及ぶものでなく、限定されていた。ガス・コネクト・オーストリア社は、オーストリアの南部と南東部の国境への輸送が影響を受けると発表した。 

■ 事故の正確な原因は、技術的な欠陥によって引き起こされたとみられており、当局の専門家とガス・コネクト・オーストリア社の技術者が、事故に関わる潜在的な原因について集中的に調査した。

■ 12月13日(水)、ガス・コネクト・オーストリア社は、発災後、直ちに緊急事態対応基準に基づき、 すべての天然ガス用パイプライン施設の停止操作に入り、発災設備が残りのパイプライン施設から縁切りされたので、影響範囲が限定されたと発表している。

被 害
■ ガス・コネクト・オーストリア社のバウムガルテンにある天然ガス用パイプライン施設の一部が焼損した。

■ 事故に伴い、死者1名のほか、21名の負傷者が出た。

■ パイプラインの一部が運転できずに、天然ガスの供給へ影響が出た。
(写真Naplesherald.comから引用)
(写真Bbc.comから引用)
(写真YouTubeの動画から引用)
< 事故の原因 >
■ パイプラインの漏洩原因の詳細は調査中である。

■ 12月13日(水)、ガス・コネクト・オーストリア社は、爆発の原因が新しく設置したガスの浄化設備(フィルター・セパレータ)にあるという見方を発表した。原因についてつぎのように述べられている。
 ● 事故はフィルター・セパレータのキャップの気密性に問題があった。
 ● キャップが緩んで、別な部品に大きな力で押し付け、この部品にも損傷を与えた。
 ● その後、天然ガスが漏れ出し、引火した。ガス火災は当初2箇所で起った。

■ 12月14日(木)、タス通信はガス・コネクト・オーストリア社への取材から、原因についてつぎのように報じている。
 ● 新しく設置されたセパレータ・フィルターが主原因で、引火の起点になった。
 ● セパレータ・フィルターにはカバーが付いているが、このカバーが壊れ、衝撃で跳ね飛んだ。このため、火花が飛び、漏れたガスに引火して火災になった。

< 対 応 >
■ イタリア政府は、この冬の天然ガスの供給に支障が出るおそれがあるとして、12月12日(火)、非常事態を宣言した。しかし、当面の供給は備蓄で確保されていると発表した。
 イタリアの石油・天然ガス会社のエニ社のCEOは、供給中断が数週間続いても産業界の生産活動に問題はないが、長期間続くとなると価格に影響を与える可能性があると語っている。

■ 12月13日(水)8時30分時点、事故の影響を受けた施設を除き、影響されなかったパイプラインの運転再開へ向けての準備ができているとガス・コネクト・オーストリア社は発表した。消防署と地方警察が広範囲に調査した結果、イタリア向けのトランス・オーストリア・ガス(Trans Austria Gas )のパイプライン、ドイツ向けのウェスト・オーストリア・ガス(West Austria Gas)のパイプライン、ハンガリア-オーストリア・ガス( Hungaria-Austria Gas )のパイプラインの運転再開が認められた。しかし、バウムガルテン施設における天然ガスの1日当たりの取扱い流量は、事故前に比べて半分に落ちた。
(写真11alive.comから引用)
(写真11alive.comから引用)
(写真は、左: Metro.co.uk、右: Wjla.comから引用)
(写真Metro.co.ukから引用)
(写真Metro.co.ukから引用)
補 足 
(図はE-food.jpから引用)
■ 「オーストリア」( Austria) は、正式にはオーストリア共和国(Republic of Austria)で、中部ヨーロッパの内陸部にある人口約880万人の国である。西はリヒテンシュタインとスイス、南はイタリアとスロベニア、東はハンガリーとスロバキア、北はドイツとチェコに国境を接する。首都は音楽の都といわれるウィーンである。
 「バウムガルテン」(Baumgarten)は、詳細にいえば、バウムガルテン・アンダーマーチ(Baumgarten an der March)で、ロア・オーストリアともいわれるニーダーエスターライヒ州のゲンゼルンドルフ郡にある人口約190人の町である。   
 
■ 「ガス・コネクト・オーストリア社」(Gas Connect Austria)は、オーストリアで天然ガスの高圧パイプラインを保有し、運営している会社で、ガスの販売、輸送、保管にも携わっている。また、イタリア、フランス、ドイツ、ハンガリーなどに輸出している。会社設立は2001年であるが、1957年のパイプライン操業を起点にしている。

所 感
■ 漏洩原因は、パイプライン施設のガス清浄化のための設備の欠陥だとみられる。発災事業所のガス・コネクト・オーストリア社のウエブサイトに推定原因が掲載されているが、図が付記されていない。このため、キャップを配管部品ととれば、フィルター・セパレータに設置されたドレン配管やベント配管のキャップと推測してしまう。タス通信の報道では、フィルター・セパレータのカバーとあり、圧力円筒容器のふた部と推測できる。破損は、フィルター・セパレータ製作時のカバー(ふた部)の材料欠陥や溶接不良などの要因によるもの考えられる。
 (注記: ガス・コネクト・オーストリア社のバウムガルテン施設については、YouTube 「STATION BAUMGARTEN EN」に投稿されており、この動画によると、施設のシステムおよびフィルター・セパレータは図のとおりである)
バウムガルテンの天然ガス施設のシステム
  (写真Gasconnect.at から引用)
天然ガス施設のガス清浄化設備
  (写真Gasconnect.at から引用)
■ 消火活動の状況は分からないが、発災から5時間ほどで制圧されており、比較的対応速かったといえる。これはパイプラインの遮断弁を作動させれば、燃焼物の天然ガスの供給を制限できたためであろう。最初の爆発の状況から施設全部が火災になると予想されたためか、消防隊など緊急対応に250名の動員がかけられたと思われる。天然ガスパイプラインの事故は液体の石油と比べて影響範囲が限定され、被災範囲は比較的大きくないという印象をもつ。このため、影響を受けなかった施設の運転再開が早かった。それでも、爆発の影響範囲は100m×100mのエリアで、死者1名を含む22名の死傷者を出す事故となった。


備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Gasconnect.at, Incident at Baumgarten Natural Gas Station, December  12,  2017
    ・Gasconnect.at, Baumgarten Incident, December  13,  2017
    ・Nhk.or.jp, オーストリア 天然ガス施設が爆発 欧州各国への供給に懸念, December  13,  2017
    ・Express.co.uk, Gas Shortage PANIC: Italy Declate State of Emergency after Huge Austrian Gas Plant Blast, December  13,  2017
    ・Indianexpress.com, Austria: Explosion at natural gas plant leaves one dead, 18 injured, December  12,  2017
    ・Wjla.com, Austria: 1 dead, 21 Hurt in Explosion at Natural Gas Plant, December  13,  2017
    ・Metro.co.uk, Italy Declares State of Emergency after Major Gs Explosion in Austria, December  12,  2017
    ・Firedirect.net, Austria – Gas Plant Explosion – 1 Reported Dead, 60 Injured, December  12,  2017
    ・News.com.au, One dead in Austrian Pipeline Blast, December  13,  2017
    ・Abs-cbn.com,  Deadly Blast at Austrian Pipeline Hub Slashes Gas Flow to Italy, December  13,  2017
    ・Hydrocarbonengineering.com, Explosion at Baumgarten Natural Gas Station, December  13,  2017
    ・Insurancejournal.com, Austrian Gas Blast Caused by Seal in Newly Installed Filtering Unit: Hub Operator, December  15,  2017
    ・Tass.com, Austria Gas Hub Blast Caused by Filtration System Flaw — Gas Official, December  14,  2017
    ・Enca.com, Deadly Austria Gas Blast Probably Caused by Loose Filter Cap, December  14,  2017


後 記: この事故は日本のテレビなどで報じられた大きなニュースだったので、貯蔵タンクに直接関係したものではありませんが、調べてみました。海外でも、欧州の各国へ移送する天然ガス用パイプラインの事故のため、天然ガス供給への影響を懸念する報道が大半でした。そのような記事が多くて、このブログで知りたい事故情報に行き着かないというのが率直な感想です。第一報には、負傷者60人というものや欧州の天然ガス供給が途絶えるようなニュアンスの記事が多くて、事実(らしい)を把握するのに時間がかかりました。結局、ガス・コネクト・オーストリア社のウェブサイトに掲載される情報がもっとも有用でした。
 ガス・コネクト・オーストリア社の情報公開は早く、頻繁だと感じました。オーストリアといえば、ローゼンバウアー社製のパンターという空港用化学消防車が有名で、このブログでも紹介したことがありますが、事故情報は初めてです。欧州の情報公開に対する取組み姿勢を実感として感じた事例でした。

2017年12月12日火曜日

マレーシアでディーゼル燃料タンクが爆発・火災、死者3名

 今回は、2017年11月3日(金)、マレーシアのセランゴール州ラワンにある建材メーカーのラファージ・マレーシア社の工場でディーゼル燃料タンクが爆発し、火災となり、3名の死者を出した事故を紹介します。
 (写真はLimaumanis.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、マレーシア(Malaysia)のセランゴール州(Selangor)ラワン(Rawang)ジャラン・クアン・ガアリング(Jalan Kuang Garing)にある建材メーカーのラファージ・マレーシア社(Lafarge Malaysia)のラファージ・ラワン工場である。

■ 発災があったのは、ラファージ・ラワン工場のディーゼル燃料タンクである。タンクは直径約12m×高さ約4.6mクラスで、内部に725KLのディーゼル燃料が入っていたといわれる。
                     マレーシアのセランゴール州ラワン付近     (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年11月3日(金)午後4時15分頃、ラファージ・ラワン工場のディーゼル燃料タンクで爆発があり、火災となる事故が起った。

■ 当時、タンクでは保守作業が行われており、タンク上に3名の作業者がいた。事故発生により、3名はタンク内へ落下した。

■ 発災に伴い、ラワン消防署、セルラヤン消防署、バトゥアラン消防署の3つの消防署から消防車5台と消防士30名が出動した。消火活動によって火災は1時間ほどで消された。

■ 三人の捜索が困難ということで、タンク内の油を排出するため、タンクローリーが手配され、午後10時頃から油の抜き出しが始められた。結局、13台のタンクローリーが使用された。11月4日(土)午後2時過ぎ、現場監督だった28歳の男性の遺体が発見されたのに引き続き、技術者の35歳と49歳のふたりの男性の遺体が確認された。

被 害
■ ディーゼル燃料用タンク内1基が焼損した。

■ 事故に伴い、死者3名の労働災害が発生した。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。

< 対 応 >
■ ラファージ・マレーシア社は、11月3日(金)、同社のウェブサイトのプレス・リリースによってラワン工場で火災が発生したことを発表した。同日午後9時に行方不明が3名あったことを追加掲載した。しかし、その後の状況について発表は行われていない。 
写真はWangcyber.comから引用)
(写真はNst.com.myの動画から引用)
(写真Limaumanis.comから引用)
補 足
■ 「マレーシア」(Malaysia)は、東南アジアのマレー半島南部とボルネオ島北部を領域とする連邦立憲君主制国家で、人口約2,900万人である。イギリス連邦加盟国で、タイ、インドネシア、ブルネイと陸上の国境線で接し、シンガポール、フィリピンと海を隔てて近接する。通常、マレー半島部分が「マレーシア半島」、ボルネオ島部分が「東マレーシア」 と呼ばれる。一方、マレー半島とボルネオ島間の往来は、マレーシア国民であってもパスポートを必要とする。
 「セランゴール州」(Selangor)は、マレーシア半島の西部に位置し、人口約630万人の州である。
 「ラワン」(Rawang))はセランゴール州の東部に位置し、ゴンバク地区にある町である。
(図はGoogleMapから引用)
■ 「ラファージ・マレーシア社」(Lafarge Malaysia)は、スイスを本拠にする世界最大の建材メーカーであるラファージ・ホルシム社(LafargeHolcim)の子会社で、マレーシアにおいてセメントを主として展開する建材メーカーである。マレーシアのラワンにラファージ・ラワン工場がある。

■ 発災タンクは、ディーゼル燃料用で、直径約12m×高さ約4.6m、内部に725KLの油が入っていたことになっている。しかし、直径約12m×高さ約4.6mのタンクでは、容量が520KL程度であり、タンク仕様が違っていると思われる。725KLが正しいとすれば、直径約14.5m×高さ約4.6mクラスのタンクとなる。グーグルマップでラファージ・マレーシア社のラファージ・ラワン工場の敷地内を見たが、該当する発災タンクは見当たらなかった。
 一方、発災の関連写真を見ると、当該タンクを含めてまわりの設備の一部が他と比べて新しいように思える。グーグルマップの施設写真にも、この新しそうな設備に該当するところがない。最近、設置された設備ではないだろうか。
      ラファージ・マレーシア社ラファージ・ラワン工場付近   (写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ ディーゼル燃料用タンクが爆発して火災になるという事例で稀なようにみえるが、この2年ほどでも、つぎのような類似事例がある。
 過去の事例から類推すると、石油について安易な取り扱いをし、タンク内にディーゼル燃料だけでなく、廃ガソリンのような揮発性の高い油を混合したのではないだろうか。

■ タンクが爆発してタンク外に吹き飛ばされた事例はあるが、タンク上にいた保守作業者がタンク内に落下するという例はない。発災写真を見ると、屋根部が噴き飛ばされている。また、タンクのまわり階段の頂部にかなり広いフロアらしいものが見られる。これは噴き飛んだ屋根部の反対方向にあるので、タンク屋根が噴き飛んだ際、タンク内側に傾き、上にいた人がタンク内に落下するという最悪の悲劇が起きたのではないだろうか。


備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。 
     ・Lafarge.com ,   Fire at Lafarge Rawang Plant,   November  03,  2017
      Nst.com.my , 725,000 Litres of Diesel to be Pumped Out to Search for Three Missing Man, Following Explosion at Factory   November  03,  2017
  ・Nst.com.my , Rawang Oil Storage Tank Eplosion: Bodies of All Three Victims Found,  November  04,  2017
      Nst.com.my, Bodies of All Three Victims in Oil Storage Tank Fire Found,  November  05,  2017
      malaysiandigest.com , Rawang Storage Tank Fire: Diesel Extraction Operation Continues to Locate Victims,  November  04,  2017
    Cyber-rt.info,  3 Feared Killed in Rawang Cement Plant Diesel Tank Explosion,  November  04,  2017
          Hazardexonthenet.net,  Malaysia Cement Plant Blast Kills Three,  November  06,  2017


後 記: この事故は、別な情報を探していてたまたま知った事例です。さらに詳しい情報を検索しましたが、望むような情報は出てきませんでした。タンク仕様(直径×高さ)と入っていた油量に整合がとれないということなど、なにかすっきりしない事例でした。ラファージ・マレーシア社も事故発生の第一報をウェブサイトのプレス・リリースで発表していますが、3名の行方不明という人災が起こっているらしいことが分かってから、プツリと続報が途絶えています。会社のあわてぶりを感じます。このようなことから、所感はかなり類推した内容を書くことになってしまいました。