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2025年6月30日月曜日

米国テキサス州の廃水処理施設に落雷してタンク火災、1基は屋根噴き飛ぶ

 今回は、2025616日(月)、米国テキサス州ジェファーソン郡ポートアーサーにあるアムロン・ゴールデン・トライアングル社の廃水処理施設の貯蔵タンクに落雷があり、4基が火災になり、うち1基はタンク屋根が噴き飛ぶほどの爆発があった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ジェファーソン郡(Jefferson County)ポートアーサー(Port Arthur)にあるアムロン・ゴールデン・トライアングル社(Amlon Golden Triangle)の廃水・廃棄物処理施設である。施設は産業顧客から廃水・廃棄物を引き取って化学物質を除去し、廃水は市のシステムを通じて安全に流れるようにしている。

■ 事故があったのは、プロクター通り沿いにある廃水・廃棄物処理施設内にある貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025616日(月)午後3時過ぎ、廃水処理施設内の貯蔵タンクに落雷があり、火災になって黒煙が空高く舞い上がった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 火災はFRP製(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)の貯蔵タンク1基が炎上し、さらに隣接していた2基のタンクに延焼した。非有害性廃水を入れていたタンクは燃え続けた。 FRP製タンク自身が火災の燃焼源となった。

■ 貯蔵タンク3基が火災に見舞われたあと、別な貯蔵タンク1基が爆発した。 この爆発で貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ。

■ 1マイル(約1.6km)以上離れたところからも見えた火災は、近隣住民に不安を与え、施設内にいた作業員は避難を余儀なくされた。

■ 消防隊は地域住民に対し緊急事態に備えて、「家の中に入り、ドアと窓を閉めてください。外の環境に身をさらさないようにしてください」といい、「車に乗る場合や道路を歩く場合は、風上にいくようにしてください。煙の風下に立たないようにしてください」と予防措置を講じるよう注意を促した。

■ 消防隊は250ガロン(950リットル)の泡消火剤を使用して火災の鎮火に努めた。

■ 消防署によると、現在、タンクには水しか入っていないが、油分が残留しているという。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。

 YoutubeLightning sparks storage tank fires at Port Arthur business2025/06/18

YoutubeLightning strikes a tank, adding to the chaos of industrial fire2025/06/18

●YoutubeBeaumont Police, fire, EMS respond to major wreck along Fannett Rd2025/06/17

被 害

■ 廃水処理施設内の貯蔵タンク4基が火災で損壊した。内部の油が焼失した。

■ 負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >

■ 貯蔵タンクへの落雷によって引火したものとみられる。 

< 対 応 >

■ 当局が中規模火災と分類した火災は約1時間半燃え続けた。

■ アムロン・ゴールデン・トライアングル社は、発災日の617日(火)、つぎのような声明を出した。

「本日午後315分頃、テキサス州ポートアーサーにあるアムロン・ゴールデン・トライアングル施設において、悪天候による落雷により火災が発生しました。タンクには非有害性廃水が貯蔵されており、このタンクはグラスファイバーで製造されており、これが火災の燃料となりました。従業員は全員無事で、負傷者もいませんでした。

 消防署は迅速に対応し、事態は速やかに鎮圧されました。現在、被害状況を調査しており、関係当局および緊急対応当局に全面的に協力しています。タンクファームからの排水、消防署が使用した水や泡消火剤は完全に封じ込められています。当社の最優先事項は、従業員と周辺地域の安全です」

補 足

■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,050万人の州である。

「ジェファーソン郡」(Jefferson County)はテキサス州の東部に位置し、人口は約25万人の郡である。

「ポートアーサー」(Port Arthur)は、ジェファーソン郡の東に位置し、人口約56,000人の町である。近隣のボーモントやオレンジとともに「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれる都市圏を形成している。

■「アムロン・ゴールデン・トライアングル社」 (Amlon Golden Triangle)は廃棄物処理会社で、産業顧客から廃水・廃棄物を引き取って化学物質を除去し、廃水は市のシステムを通じて安全に流すようにしている。施設は、貯蔵設備や処分施設を含めた集中廃棄物処理プラントを通じて、廃水と産業廃棄物の処理とリサイクルをしている。腐食性廃棄物の処理、油汚染水の処理、産業機器の洗浄を専門としている。1日あたり最大10万ガロン(379KL)の産業廃水を処理できる能力を備え、9,000平方フィート(836㎡)の屋根付き密閉式洗浄施設で、年間を通して専門的な洗浄業務を提供している。

■「発災タンク」は、廃水処理施設の貯蔵タンクである。グーグルマップでアムロン・ゴールデン・トライアングル社の施設を調べたが、該当するようなタンク群は見当たらなかった。一方、アムロン・ゴールデン・トライアングル社のウェブサイトを調べると、新設の廃水処理施設とともに発災タンク群が写っているサイトがある。(サイトは以下の写真を参照) タンクの大きさが分からないが、直径46m、高さを57mと仮定すると、容量は63198KL程度の円筒型タンクである。廃水用のタンクはFRP製であるが、爆発でタンク屋根が噴き飛んでいるので、油用タンクは炭素鋼製だと思われる。

所 感

■ 火災の原因は貯蔵タンクへの落雷によるものとみられる。 

■ 被害施設は、当初、石油生産関連の塩水処理施設だと思った。しかし、事業者は“塩水処理施設”という言葉を使わず、産業顧客から廃水を引き取って化学物質を除去し、処理した水は市のシステムを通じて安全に流れるようにした廃水処理施設だという。

 このことから油を含んだいろいろな廃水を処理する施設であるが、貯蔵タンク群を見ると、複雑なシステムをとっているように思えない。施設における貯蔵タンク内のガス濃度は引火性の高い雰囲気になっているのではないだろうか。これを前提にした安全管理システムになっていないように感じる。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、FRP製タンクの場合、火災の熱によって容易に燃えていくので、塩水処理施設の火災では、不介入戦略をとり、燃え尽きさせる方法をとることが多い。今回の火災では、泡消火剤を使用したことになっているが、消防活動を撮った写真では、隣接タンクの冷却散水による防御的戦略をとっているように見える。消火活動は1時間半で制圧したと報じられているが、タンク内液の油量が比較的少なかったか、実際はもっと火災が続いているのだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Kfdm.com,  BREAKING: Lightning sparks storage tank fires at Port Arthur business,  June  16,  2025

    12newsnow.com, Lightning strike sparks tank fire at Amlon Golden Triangle facility,  June  16,  2025

    Firehouse.com, Lightning Strikes Port Arthur, AL, Tank Farm,  June  18,  2025

    Cool925.iheart.com, Lightning Strike Causing Tank Fires,  June  17,  2025

    Fox4beaumont.com, BREAKING: Lightning sparks storage tank fires at Port Arthur business,  June  17,  2025


後 記: 最近の事例で感心するのは、どんなころでも動画が撮られていることです。今回のタンク火災でも貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ決定的映像が撮られています。メディアの記事では、このことに触れているものはありません。初めは別な被災写真ではないかと思いましたが、タンク1基に爆発があったというので、写真や動画は実際のものだと判断しました。今回もテキサス州の報道は冷めていると感じました。というより、この程度(?)のタンク火災の事故報道は現場に行かず(あるいは確認せず)、記事が書かれていることが分かりますね。

2025年6月24日火曜日

韓国のタイヤ工場で大火災、負傷者3名、廃油タンク爆発の影響は?

 今回は、2025517日(土)、韓国全羅南道の光州広域市にあるクムホタイヤ社のタイヤ製造工場で火災が発生し、3日間燃えて鎮火と発表されましたが、2日後に残り火が再燃するという大きな火災事故を紹介します。この事故では負傷者3名が出たほか、住民へ大きな影響が出ています。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の全羅南道(チョルラナムド/ぜんらなんどう)の光州広域市(クァンジュこういきし)光山区(クァンサンく)にあるクムホタイヤ社(Kumho Tire)のタイヤ製造工場である。クムホタイヤ社の生産量は韓国国内2位である。

■ 事故があったのは、タイヤ工場の原材料である生ゴムと化学薬品を混合する精錬工程である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2025517日(土)午前7時頃、タイヤ工場で火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。17日(土)15時時点で出動した消防士は355名で装備100台、高性能化学車15台で現場の対応を行った。しかし、火災は弱まらず、消防当局は17日(土)午前10時頃に国家消防動員令を発令、ヘリコプター8台を含む全国の消防装備168台を投入して消火作業を行った。

■ ゴムと化学物質が燃え、煙と粉塵が近くの住宅や商店街などに広がっていった。住民のひとりは、「外に出て呼吸するのも少し困るほどです。とても驚いています。早く消火してほしい」と語った。

■ 光州広域市は、火災で大量の煙が発生したため、住民に窓を閉め、現場周辺を迂回して移動するよう勧告した。クムホタイヤの工場に隣接した32の集合住宅の住民には、保健用マスク10,000個を緊急支援した。

■ 消防当局によると、火災はタイヤ原料の生ゴムと化学薬品(添加剤)を混ぜる工程を行う精錬工場内で起こった。ゴムを予熱する装備から原因不明の火花が出て火災が発生したという。従業員らが初期消火にあたったが、消すことはできず、炎は工場内部に広がった。クムホタイヤ社の関係者は「生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備で火花が飛び散って火がついた」と語っている。

■ 火がついた場所の周辺には、生ゴム約20トンが積載されており、建物崩壊と廃油タンクの爆発が相次いでおき、消火作業は難航した。

■ 火災が消火できないので、ヘリコプターで空中から水をかけるようにした。地上では消防車両が工場を囲み、消火水を高圧噴射し、大型掘削機で工場外壁を壊して消防隊員の進入路を作った。しかし、17日(土)15時時点では、火災は密集した工場棟の内部に沿って広がっており、消火活動はますます困難になった。

 建物はサンドイッチパネル構造で、火災になっている区域と隣接工場の間を分離しようとしたが、機械設備が相互に接続されており、切離しが難しい状況だった。実際に、最初の発火地点は3回崩壊し、この過程で消防隊員ひとりが負傷して病院に移送された。

■ 光州工場は便宜上、西側と南側に分けられる。17日(土)午後7時時点、サッカー場の約5面分に相当する西側工場の約75%が燃えた。このため、タイヤの生産は全面的に中断された。

■ 事故にともない、従業員1名、消防隊員2名がけがを負い、従業員約400人が避難した。一部の職員は火災初期に避難する案内放送がなかったため、避難に手間取ったと話している。また、工場周辺のマンション住民97世帯182人は大学の体育館に避難した。

■ 火災現場付近の光州松井駅はわずか1kmしか離れていないが、17日(土)午後5時まで列車の運行に支障はないという。

■ 消防用水を散布して火を消しても、再発火することが何度も繰り返され、消防当局は消火が困難だということを経験した。大きな炎の場所は掴んだが、タイヤ材料が燃えている200余りが蘇る状況が繰り返された。残火は、糸のように薄い布を丸く巻いたタイヤ材料の山を燃料として燃えていることが分かった。この材料は火災になっても灰になって体積が減らず、石炭や溶岩のように熱を留めており、時間が経つと再び発火することが分かった。

 当局は、タイヤ材料の山が少しでも積み重なっていると、互いに化学反応を起こして再発火すると判断し、山を解体して消火することにし、掘削機と消防隊員を工場内部に投入した。掘削機で山を解体して消防ホースを持つ消防隊員が火を消すという方法である。しかし、この作業では、23階の床と天井が傾くなど、崩壊の初期症状が現れ、消防士と装備を撤収した。当局は、安全上、内部に進入する消火方式が難しい判断し、工場建物の外から水を放射する方法で作業を進めた。また、過去の韓国タイヤ火災鎮圧作戦に投入された隊員に直接ノウハウを聞くための措置も行った。

■ 栄山江(ヨンサンガン)流域環境庁によると、火災発生の17日(土)午前に大気から1級発がん物質であるエチレンオキサイドが基準値以下の少量が検出されたが、夜には有害化学物質は検出されていないという。光州広域市は、火災が鎮火しても12週間は大気質測定とモニタリングを継続する方針である。

■ 518日(日)午前8時の時点で、消火率は80%になり、火災は23日以内に完全に消火できると予想された。

■ しかし、519日(月)、火災から3日目になったが、消火率は95%で、前日夜と同様だった。消防当局者は、「残り火はゴムの蓄積の一部に残っている」と述べている。

■ 火災後に周辺地域の大気質も大きく悪化したことがわかった。韓国環境公団によると、火災発生日である17日(土)に光州地域の大気中の鉛濃度は18 μg/㎥を測定した。これは同地域の平常時の平均6 μg/㎥より3倍ほど大きい数値である。粒子状物質濃度は火災3日目である19日(月)に124 μg/㎥に上昇し、“非常に悪い” の基準値である76 μg/㎥を大きく上回った。

■ 火災現場では消火作業に使われた水による汚染問題も発生している。クムホタイヤ社の光州工場は永山川と黄龍江合流部と接したところに位置するが、当局は汚染水が流出しないように工場内の管路を遮断し、排水門周辺にオイルフェンスなどを設置した。

■ ユーチューブなどでは、タイヤ工場の火災を報じる動画が投稿されている。主なものはつぎのとおりである。

 ●Youtube「광주 금호타이어 공장 대형 화재국가소방동원령 (2025.05.17/뉴스특보/MBC)2025/05/17

Youtube[속보] 금호타이어 광주공장 화재 완진까지 수 일 걸릴 듯소방청 "국가소방동원령 발령"/2025 5 17()/KBS2025/05/17

 ●Youtube「광주 금호타이어 공장에서 불...대응 2단계 격상 / YTN2025/05/17

< 被 害 >

■ タイヤ工場の建物や原材料などが損壊・焼失した。

■ 3名の負傷者が出た。

■ 周辺の住民が避難した。

■ 火災によって大気の汚染問題が出た。また、消火水による河川の水質問題が出た。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は、タイヤ原料の生ゴムと化学薬品(添加剤)を混ぜる工程を行う精錬工場内で、生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備で火花が飛び散って火がついたとみられる。

 発災時、火災検知器は火災を感知し、従業員らが初期消火にあたったが、消すことはできず、炎は工場内部に広がった。

< 対 応 >

■ 517日(土)午前8時前に放射能力45,000 L/minクラスの大容量泡放射システムが派遣された。さらに午前11時頃、放射能力30,000 L/minクラスの大容量泡放射システムが追加派遣された。しかし、大容量泡放射システムは出動したが、水源が乏しく、火災最盛期には有効に働かなかった。

■ 517日(土)夕方、消防ヘリコプターで消火活動が実施されたが、上方からでは、炎を消すには不十分だった。

■ 火災はゴムと特殊材料が混ざり合ったタイヤ原料のためなかなか消えなかった。消防当局関係者は「現在発生中の煙のほかに火炎が拡散したり、被害が広がる可能性は小さい。ただ、建物崩壊の懸念などで消防隊員が火に近付けず、完全鎮火までに時間がかかる」と語った。

■ 519日(月)、火災は3日目に入り、消防隊は残り火の消火に難航した。  

光州消防本部によると、19日(月)午後2時時点で消火率は95%に達するが、工場各所に残り火がみられた。消防当局は前日崩壊が進んだ工場裏手で消防隊員と掘削機などを投じて残り火の鎮火に総力を注いだ。

 消防当局は、消火率が前日に90%を超えた状態でも残り火が消えない理由として、タイヤの材料を挙げている。薄い生地を丸く巻いたタイヤ材料が燃料となって燃えているからだという。タイヤを作る材料は焼けても灰にならず、溶岩のように火を含み再発火する特性を持っている。 また、消防隊員が進入しにくい工場内部6080m区間で火が燃えているのも鎮火が困難な理由だという。消防当局は、残り火の地点まで距離が遠い上に人命被害の恐れがあり、特殊装備を動員して残り火を消している。

■ 消防当局は、工場火災が始まって3日目の520日(火)正午前に鎮火したと発表した。しかし、その発表から2日後の522日(木)午後6時前に残り火が再発し、消火作業を続けた。

■ 光州広域市によると、525日(日)午前11時時点で、クムホタイヤ社光州工場の火災による住民被害は合計10,049件寄せられた。このうち、頭痛と筋肉痛、皮膚発疹、のどの痛みなどを訴える人的被害が5,863件で全体の58%に達した。このほか、車や住宅のベランダに煤煙が積もるなどの物的被害が32%の3,188件で、周辺商店街で営業できないなどのその他被害も10%の999件寄せられた。

■ 光州広域市は二次被害を最小化するために実務部署を中心にクムホタイヤ火災対策特別作業班を構成して支援する計画だ。住民被害補償に向け光山区と共同で被害規模を把握し、労働者解雇など雇用不安に対する支援対策も用意した。クムホタイヤ社が従業員を一方的に解雇できないよう労使協議会を稼動して交渉も進める。また、協力企業への代金支払いが先送りされる場合、経営安定資金支援を通じて影響を最小化する計画だ。  

■ 消防当局は再発火の可能性をなくすため、工場建物を全て撤去する方策で火種をすべて除去する計画を立てた。

■ 火災現場復旧作業は数か月かかる見込みだ。クムホタイヤ光州工場の関係者は「工場を撤去するのに1か月ほどかかり、捜査機関の調査や被害金額算定のための現場調査まで考えれば、いつ復旧が可能かを明確にいうことができない状況だ」と話した。

■ 火災に弱い建築構造の補強または代替を検討する必要がある。サンドイッチパネルは費用対効果が高く、建設が容易で産業施設に広く使用されているが、火災の際に急速に燃焼し、有毒ガスを発生させる。危険物取扱施設は耐火構造で設計し、既存施設の場合は防火システムを強化する必要がある。

■ 2023年、タイヤ21万個が被害に遭った韓国タイヤ大田工場の火災も完全に消火するのに58時間かかっている。

■ 616日(月)、クムホタイヤ光州工場火災で発生した多量の汚染物質が夜明け時間帯に雨水と混じって近隣の黄龍江に流出したが、会社側は流出事実さえ知らなかったことが確認された。河川に流れ込んだ汚染物質は50トンに達しているとみられ、経緯はつぎのとおりである。

2日前の 614日(土)午前7時過ぎ、光州広域市光山区職員が黄龍江周辺を巡回中、クムホタイヤ社の火災残骸が河川に流出した事実を確認した。前日から光州に80mmを超える雨が降り、河川に火災残骸などの流入を懸念してパトロール活動を行っていた。光州広域市光山区は午前740分に汚染物質が流出しているとクムホタイヤ社に知らせた。クムホタイヤ社はすぐに排出ポンプの作動を停止した。

 汚染物質はクムホタイヤ光州工場の排水施設から流れ出たことが確認された。ここには火災鎮圧に使われた消火泡と火災で発生した各種残留物が雨水と混じっていた。クムホタイヤ社は「廃水施設に大量の雨水が流れ込み、汚染物質をろ過するセンサーが故障した」といい、「排出システムを自動から手動に切替え、この過程で汚染物質などが放流されたものとみられる」と説明した。 黄龍江から回収した汚染物質は車両3台分(50トン)であるという。しかし、クムホタイヤ側は汚染物質がいつから、どれだけ流出したのか把握できずにいる。これに対してクムホタイヤ関係者は、「一定量の雨水が排出されるシステムだが、途中で過剰な浮遊物質が貯水施設に入ってきてため一緒に排出されたものと見られる」とし、「どのくらいの量が出たのか推定が難しい」と話した。

補 足

■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,120万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。

「光州広域市」(クァンジュこういきし)は、朝鮮半島の南西部に位置する全羅南道にあり、人口は約147万人の市である。

「光山区」(クァンサンく)は、光州広域市の西に位置し、人口約39万人の区である。

■「クムホタイヤ社」 (Kumho Tire)は、韓国2位の自動車用タイヤを生産しており、現代自動車、起亜自動車をはじめとする韓国内の完成車5社に新車用タイヤを供給している。国内に3つの工場(光州、曲城、平沢)、中国に3つの工場(南京、天津、創春)、米国とベトナム工場など計8つの生産工場を運営している。

 火災のあった光州工場は1974年に建てられ、約2,200人の従業員がいる。クムホタイヤ社が国内で1年に生産できる計2,730万個のタイヤのうち、約58%である1,600万個を作れる能力を備えている。

 クムホタイヤ社のタイヤ製造プロセスはわからないが、他社のタイヤ製造プロセスの例はつぎのとおりである。火災の発端になった精錬工場の生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備の相当設備がどこかは分からない。

所 感

■ 今回の事例は、発火点が認識されており、社内で消火作業を行っていたにも関わらず、大きな火災になってしまったという印象の火災事故である。廃油タンクが爆発した事象があるようだが、火災が広範囲に延焼したのは、この廃油タンクの爆発が大きく影響したのではないだろうか。

■ 油に比べると、ゴムは着火しにくい材料であるが、一旦、燃え始めると、消火が困難であるということを認識させられる。本来は、火災点に近づいて消火するのがよいが、今回は建物の崩壊の危険性があり、効果があまり期待できないヘリコプターによって水をかけざるを得なかったようだ。また、大容量泡放射砲を出動させたが、ほかの消防ホースへの水供給を優先させる必要があり、火災最盛期には使えなかったとみられる。最後のダメ押し消火の際、大容量泡放射砲が使用されているが、“大容量泡放射砲システム” としての水供給方法が不備だったと思われる。地図を見ると、近くに川があり、対応できただろうに大容量泡放射砲への認識不足だろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Japanese.joins.com, 3日間続く韓国錦湖タイヤ工場火災「頭痛く、悪臭」326,  May  20,  2025

       Mk.co.kr,  国内2位のクムホタイヤの光州工場で17日、大型火災が発生し、生産が全面中断された,  May  17,  2025

       News.yahoo.co.jp, 韓国タイヤ大手の光州工場で火災 鎮火まで数日かかる見通し,  May  18,  2025

       Sentrevue.fr,  錦湖で大火災:韓国最大のタイヤ工場が閉鎖,  May  18,  2025

       World.kbs.co.kr,  韓国タイヤ大手の光州工場で火災 発生から76時間でようやく鎮火,  May  20,  2025

       Ja.namu.wiki,  2025年 クムホタイヤのグワンジュ工場の火災,  June  15,  2025

       Chosun.com,  금호타이어 광주공장 화재 76시간 만에 완진 "공장 철거에만 한 달,  May  20,  2025

       Yna.co.kr,  금호타이어 광주공장 화재, 사흘 만에 완전 진압,  May  20,  2025 

       Sisain.co.kr,  검게 탄 타이어 공장, 먹구름 드리운 광주 지역경제 [포토IN],  May  26,  2025

       Ohmynews.com,  [단독] 금호타이어, 화재 오염물질 50톤 유출...뒤늦게 알았다,  June  16,  2025

       Safety1st.new,  금호타이어 광주공장 정련 공정서 대형 화재, 고무 예열장치에서 발화 추정,  May  17,  2025

       Khan.co.kr, [속보]광주 금호타이어 공장 대형 화재…“검은 연기, 창문 닫아라,  May  17,  2025

   ・Imnews.imbc.com,  광주 금호타이어 공장 대형 화재진화 어려움 겪어,  May  17,  2025

       Hankyung.com,  금호타이어 광주공장 대형 화재공장 절반 '전소 위기,  May  17,  2025

       News.mt.co.kr, "폐유 저장탱크 폭발" 소방대원도 부상금호타이어 공장 화재 진화 난항,  May  17,  2025


後 記: 今回の事故は“廃油タンクが爆発”と報じたメディアがあったので、調べることとしました。しかし、いろいろ調べても廃油タンクの爆発経過を報じる情報はありませんでした。韓国2位のタイヤ製造会社の工場が火災になり、今後のタイヤ供給の経済面の影響を報じる記事が多く、それ行けどんどんの韓国を示しているようで、2023年の韓国タイヤ大田工場の火災事故は活きていないなあと感じました。これは私の感覚ですが、世の中の景気がよくなってくると、今回のような事故が増えてきます。

2025年6月13日金曜日

中国山東省の化学工場で爆発、連続フロープロセスか? 死傷者24名

 今回は、2025527日(火)、中国の山東省高密市にある農薬や医薬品などを製造する山東友道化学有限公司の化学工場で大規模な爆発が起き、施設は壊滅的に損壊し、死傷者24名とさらに行方不明者6名が出た事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、中国の山東省(シャントン‐シュン/ さんとうしょう)濰坊市(ウェイファン‐シ /いほうし)高密市(ガオミー/こうみつし)にある山東友道化学有限公司の化学工場である。山東友道化学社は農薬や医薬品などを製造する会社で、工場は山東省高密市の東部沿岸に近い地域に位置し、従業員は300人以上だという。

■ 事故があったのは、山東友道化学社の化学工場内の施設である。



<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025527日(火)正午前、化学工場で大規模な爆発が起きた。

■ 工場から爆発で灰色とオレンジ色の大きな煙が高く立ち昇り、周辺の建物では天井が落下したり、窓枠が壊れるなどの被害が出た。爆発の威力は3km離れた倉庫の窓ガラスを吹き飛ばすほどだった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。200人以上の消防士が消防車とともに現場で対応にあたった。

■ 工場近くの住民は避難した。近くの学校では校舎のガラスが割れ、生徒は一時休校となった。割れたガラスでケガした生徒もいた。

■ 爆発現場から3kmほど離れた宿泊施設で勤務する人は、正午ごろ爆発音を聞いたといい、「爆発音はドスンとかなり大きく、ほんの一瞬でした」と語った。爆発現場から約6km離れた工場で働く別の人は、爆発音と揺れがあり、それから突風を感じたといい、「突然に吹いた強い風にとても怖くて、事務所から出る勇気がありませんでした」と語った。

■ 爆発後、現場は封鎖された。電力線が断線したため、付近は停電した。 

■ 事故現場は、工場の建物が完全に破壊され、鉄骨構造の屋根がねじれ、バーストで発生した瓦礫が1.5km離れた場所まで飛散するなど爆発による産業災害の様相を呈していた。

■ 爆発の影響で自宅に被害の出た住民のひとりは「正直にいって、本来この化学工場はこんなに近くにあるべきではない。近すぎるでしょう? 特に夜間に操業しているときなどは、工場からの臭いがとてもきつい」と話していた。 また別の女性は「役所からはホテルに泊まるように言われたが、12日ならまだしも、今の私たちを見てほしい。土地も何もなく、私たちには他に暮らす場所がない」と語った。

■ 濰坊市生態環境局は爆発現場の調査に職員を派遣したが、まだ結果は出ていないと述べた。同局は周辺住民に対し、当面の間マスクを着用するよう勧告した。

■ ベンゼン類の濃度は風下2kmで基準値の3倍を超える値が検出され、雨水によって周辺の河川の生態学的安全性が心配されている。

■ 爆発事故は、工場の作業員の仕事が終わって10分後に起きたという。

■ 事故にともない、5名が死亡、19名が負傷した。また、6名の行方が分かっていない。現場では、救助活動と医療活動が行われた。

■ これらの報道に対して爆発規模から死傷者はもっと多いのではないかという意見と、昼の休憩時間にかかったため、死傷者が少なかったのではないかという意見に分かれている。

■ ユーチューブやインスタグラムなどでは、爆発事故に関する動画が投稿されている。

 InstagramDaily Mail/Chemical plant explosion leaves five dead2025/05/28

 ●YoutubeChina News: Massive Explosion at China Chemical Plant, Toxic Gas Fears in Shandong Province2025/05/28

 ●Youtube「中国山东化工厂爆炸 至少5人死亡6人失联2025.05.28 八度空间】」2025/05/28


被 害

■ 山東友道化学社の化学工場の施設の大部分が損壊した。

■ 5名が死亡、19名が負傷した。また、6名が行方不明である。

■ 周辺の住民が避難した。近くの学校が休校になった。

■ 化学工場の周辺の建物や窓ガラスが壊れるなどの被害が出た。

■ 化学工場内にあった化学物質が大気へ放出され、環境汚染を起こした。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。 化学工場で採用した連続フロープロセスの本質安全が問われている。

< 対 応 >

■ 当局によると、火災は鎮圧されたという。しかし、爆発翌日も施設のがれきから依然として煙が立ち上っていた。

■ 今回の爆発事故の調査が始まったが、「連続フロープロセス」について本質安全の神話を揺るがしたと指摘されている。一見偶然のように見える今回の事故は、技術的な傲慢さと安全管理の欠如がもたらした苦い結果だとみられている。

■ 2024年、山東友道化学社の化学工場は少なくとも2回の安全リスクを指摘されている。一方、20249月には濰坊市応急管理局から、職場のリスク管理を従業員に頼っているとして称賛されている。具体的には、山東友道化学社の従業員は2024年の最初の8か月間で800件以上の安全上の危険を特定し、すべて是正したという。中国では、職場の安全性は長年にわたり向上してきたものの、依然として根深い問題がある。

 調査が深まるにつれ、山東友道化学社の安全管理における暗部が徐々に明らかになってきた。データによると、登録資本金10億元のこの会社が安全上のレッドラインに触れたのは初めてではない。2021年には、規定に従って安全生産管理組織を確立していないとして行政処分を受け、2023年には重大事故の危険性の是正が完了していないとして、省レベルの潜在危険リストに掲載された。2024年に濰坊市応急管理局が審査した際も、潜在危険の是正は依然として基準を満たしていなかった。

 周辺住民がずっと苦情を訴えていた刺激臭は、爆発後のベンゼンと窒素酸化物の過剰排出によるものであることが確認された。

■ 山東友道化学社の第二期1万トンクロラントラニリプロール技術プロジェクトは、親会社の昊麦集団有限公司が自主開発した全連続フロープロセスと設備を採用した。この装置は全工程自動化制御とし、本質安全の実現を前提として、労働力を50%以上削減し、エネルギー消費を30%以上節約し、収率を10%以上向上させ、化学業界のグリーンで安全な産業潮流を牽引しているといわれていた。 

■ 中国化学安全協会の専門家のひとりは、事故について3つの可能性があると指摘している。第一に、プロセスまたは原材料の一時的な変化により反応が制御不能になったかどうか、第二に、SISDCSなどの安全対策の失敗により引き起こされたかどうか、そして第三に、異常な操作条件に対する不適切な処理方法により引き起こされたかどうかである。 

注; SISSafety Instrumented Systemの略で、産業用システムにおいて安全装置や緊急停止などの機能を制御するシステムで、安全計装システムと呼ばれている。 DCSDistributed Control Systemの略で、分散型制御システムといい、プラントなどの生産現場で、計測器や制御装置を分散配置し、ネットワークで接続して制御を行うシステムである。

■ 連続フロープロセスは化学安全分野における革命的なイノベーションである。マイクロリアクターの低い液体保持容量は、理論上はエネルギー放出のリスクを低減できる。しかし、山東友道化学社では、この先進的なシステムが“エネルギー濃縮物放出装置” と化したとみられる。シールの破損や緊急遮断装置の故障により、ニトロ化、塩素化、水素化など国家規制で定められた15の重要な危険プロセスが、閉鎖空間内で致命的な連鎖反応を引き起こしたとみられる。事故当日の気温は32℃に達し、高温の天候によって化学物質の揮発が加速された。さらに、会社は規定通りに高温生産制限計画を発動しなかったため、この技術要塞が火薬庫と化したといわれている。

補 足

■「中国」は、正式には中華人民共和国で、1949年に中国共産党によって建国された社会主義国家である。人口約139,000万人で、首都は北京である。

「山東省」(シャントン‐シュン / さんとうしょう)は、中国の省のひとつで、北には渤海、東には黄海があり、黄河の下流に位置し、人口約9,579万人で、省都は済南市である。

「濰坊市(ウェイファン‐シ / いほうし)は、山東省中部に位置し、東は青島市、煙台市と隣接し、西は淄博市、東営市、南は臨沂市、日照市と接し、北は渤海の萊州湾に面する人口約251万人の地級市である。

「高密市(ガオミー‐シ / こうみつし)は、山東省濰坊市に位置する県級市で、 膠東半島(山東半島)と山東省内陸部の中間に位置し 人口約83万人の市である。

■「山東友道化学有限公司」は20198月に設立され、山東省濰坊市高密人和化学工業園区に位置し、敷地面積は46ヘクタールを超え、登録資本金は10億元で、従業員数は300名を超えている。山東有道化学社は昊麦集団有限公司の完全子会社である。

 主な製品は、クロルフェナピル原薬と中間体、メトキシフェノピル中間体2-メチル-3-メトキシ安息香酸/塩化物などであるが、ここ数年、殺虫剤の製造に特化して事業を展開している。特に「クロラントラニリプロール(Chlorantraniliprole)」という有効成分の原薬を年間1万トン生産する能力を有し、総投資額は10億元、年間売上高は50億元を超えるといわれている。20254月には、同社のクロラントラニリプロール原薬が米国環境保護庁(EPA)から登録承認を受け、中国企業としては初めてこの製品で米国における自主登録を達成した。これにより、国際市場における同社の存在感が一気に高まり、業界内でも注目を集めていた。

■「発災場所」はグーグルマップで調べたが、特定できなかった。グーグルマップでは、高密市の工業団地はフィルターがかかって見ることができなかった。

■ 「連続フロープロセス」は、化学合成技術のひとつであるフロー法で、環境負荷の低減、効率、安全性の面で様々な利点を持ちながら、医薬品などの複雑な化合物の合成は困難とされてきたものを連続フローシステムを構築することで、フロー法のメリットをそのままに、構造的に複雑な化合物(医薬品)を合成することができる。原料を流すだけで医薬品を合成するクリーンな新技術は、フロー精密合成技術といわれ、医薬品、香料、農薬、機能性材料などさまざまな精密化学品の合成ができる。

 従来、化成品や精密化学品などの化学製品は、99%以上が全ての原料等を反応釜に投入し、物質の反応がすべて終了した後に生成物を取り出すバッチ法を繰り返し行うことで合成されている。この手法では、複雑な構造をもつ化合物の合成が可能である反面、各段階で中間体の単離・精製操作を繰り返すため、余分なエネルギーや労力を必要とし、さらには廃棄物が多量に排出されるという望ましくない点がある。

所 感

■ 今回の事故は発災事業者や関係機関から原因に関わる情報はほとんど報じられていない。しかし、インターネットでは、連続フロープロセスに関わる安全管理の欠如という指摘が出されている。確かに被害写真を見ると、これまでの化学工場の事故にないような壊滅的な被害である。

 連続フロープロセスは新しい技術であり、安全対策や安全管理に関する新しい対策や管理方法を見直す必要があるのだろう。本来ならば、発災事業者や関係機関から事故原因と対策について公表され、社会に貢献するべきである。

■ 消防活動の詳細は発表されていない。 200人以上の消防士が消防車とともに現場で対応にあたったと報じられているだけである。どのような消防活動が行われたか分からないが、施設は爆発とそのあとの衝撃波で損壊しており、消防隊が消火活動を行うという状況ではなかっただろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Nhk.or.jp,  中国 山東省の化学工場で大規模爆発 5人死亡 19人けが,  May  28,  2025

     Yahoo.co.jp,  中国山東省の化学工場で爆発、5人死亡・6人不明 住民「他に暮らす場所ない」,  May  29,  2025

     Jiji.com,  化学工場で爆発、24人死傷 中国山東省,  May  27,  2025

     Aljazeera.com,  At least five reported killed in large explosion at China chemical plant,  May  27,  2025

     Nbcnews.com,  5 dead and 6 missing after explosion at Chinese chemical plant,  May  28,  2025

     Liveindia.tv, Video: Huge Explosion at China Chemical Plant Sends Mushroom Cloud Over Town ,  May  28,  2025

     Ahmedabadmirror.com, Explosion at chemical plant in China kills five,  May  28,  2025 

     News.cn,  山东高密化工厂爆炸事故致5人死亡6人失联,  May  27,  2025

     Mem.gov.cn,急管理部度指高密  一化工厂爆炸事故应  派出工作组专业救援力量赴现场,  May  27,  2025

     News.cctv.com,  山东高密化工厂爆炸事故致5人死亡6人失联,  May  27,  2025

     Epochtimes.com, 山东高密化工厂爆炸 至少519 6人失联,  May  27,  2025

     Q.stock.sohu.com, 山东高密化工厂爆炸:一被技掩盖的安全悲,  May  28,  2025

     Nfnews.com,  山东高密化工厂爆炸:十公里外仍听到爆炸声,三大原因待,  May  28,  2025

     Wuu.wikipedia.org, 2025年山东高密友道化学有限公司爆炸事故,  May  30,  2025 


後 記:タンク事故では無いのですが、爆発時の写真(標題の写真)を見て異常な状況であることを感じましたので、調べることとしました。しかし、日本に流れている記事では大爆発だと報じられていますが、何が起こったかについてははっきりしません。ところが、中国のインターネット情報では、事故後、すぐに連続フロープロセスの本質安全の神話を揺るがしたと指摘されていました。おそらく、中国国内では、連続フロープロセスに関して話題になっていたのだろうと感じました。中国では、新しい技術の導入については敢然として(「決然と」、「果敢に」、「思い切って」、「覚悟の上で」)突き進むのでしょう。

 一方で、被災写真を見れば、死傷者の数に疑問がありますが、中国では“直接的” な被害者だけのデータで、工場外の間接的な被害者は別にすることが基本です。それから今回の発災場所(地図)についてはグーグルマップによる検索を早々にあきらめました。これらはこれまでブログをやってきた経験でわかっていましたので・・・

 

2025年6月7日土曜日

エクアドルの製油所において燃料タンクまわりで爆発・火災、負傷者3名

 今回は、2025526日(月)、エクアドルのエスメラルダス県にある国営石油会社ペトロエクアドル社エスメラルダス製油所の用役エリアにある燃料タンクまわりで火災が発生し、その直後、爆発が起こり、負傷者3名が出た事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、エクアドル(Ecuador)エスメラルダス県(Esmeraldas)にある国営石油会社ペトロエクアドル社(Petroecuador)のエスメラルダス製油所である。製油所の精製能力は11万バレル/日である。

■ 事故があったのは、エスメラルダス製油所の用役エリアにある燃料タンク2基である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2025526日(月)午前1030分頃、エスメラルダス製油所内の用役エリアにある燃料タンクまわりで火災が発生し、その直後、爆発が起こった。

■ 製油所からは大きな黒煙と炎が立ち上った。火災による煙は、海岸沿いのエメラルダス市の上空を覆った。製油所従業員のひとりは「大きな音が聞こえ、みんな走り出した」と語っている。

■ 発災にともない、エスメラルダス消防署は消火資機材とともに消防隊を出動させた。

■ 事故にともない、現場から従業員が避難した。住民は施設から大量の煙が上がり、続いて爆発が起こるのを目撃し、警戒を強めた。エクアドル警察は、近隣住民を避難させた。しかし、避難者の人数は明らかでない。 

■ エクアドルのエネルギー大臣は、状況は制御下にあると述べたが、この声明は住民の懸念を和らげるのにほとんど役立たなかった。

■ 火災による負傷者はなく、5人が煙を吸い込んだことによる軽度の症状で医療処置を受けたと発表されたが、消防署によると、3人が被害を受け、 病院に搬送されたという。

■ 警察と軍の兵士らは、安全を確保し、緊急車両の通行を可能にするため、製油所への道路を封鎖した。

■ ペトロエクアドル社は、製油所の操業を施設と従業員の安全を守るために停止したと発表した。 

■ エスメラルダス製油所付近の学校は休校になった。

■ 火災の原因は不明である。ペトロエクアドル社は、火災発生時にタンク内にあった燃料の量を明らかにしなかった。一方、メディアの中には、貯蔵タンクの故障が起因と報じているところもある。

■ ペトロエクアドル社は、燃料タンク2基と変電所に損傷が確認され、操業能力に影響が出ていると発表した。同社は声明で「発災により主要装置と補助蒸気・電力システムが緊急停止した」と述べた。その後の調査で被害の内容はつぎのとおりだという。

 ●燃料タンクの損傷(タンク番号;Y-T2501および Y-T2502

 ●火災により社内消費用の燃料油システム(配管、計器、ポンプ、その他の関連機器を含む)の損傷

 ●火災の直接的な結果として、変圧器、電気パネル、モーター制御センター、フィーダー、コントローラー、周波数インバーター、配線、計器、その他の関連機器に影響を及ぼし、変電所が全面的な損害が発生

 ●火災現場付近のタンク、機器、ケーブル、配管などを含む機器への熱放射による損傷は検査中である

■ 必要な調査や工事のため、製油所は6月まで稼働停止となる。

■ ユーチューブなどには火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

 YoutubeIncendio en la Refinería de Esmeraldas2025/05/27

 ●YoutubeUn incendio de gran magnitud se registró en la Refinería de Esmeraldas2025/05/27  

 ●Facebook #refineriadeesmeraldas #incendio Refinería de Esmeraldas sale de operación, tras explosión en un tanque de combustible aproximadamente a las 10:00 de este lunes 26 de mayo se registro la detonación2025/05/27

  ●YoutubePetroecuador declaró a la Refinería de Esmeraldas en emergencia2025/05/31


被 害

■ 被害の概要はつぎのとおりである。

 ●燃料タンクの損傷(タンク番号;Y-T2501および Y-T2502

 ●火災により社内消費用の燃料油システム(配管、計器、ポンプ、その他の関連機器を含む)の損傷

 ●火災の直接的な結果として、変圧器、電気パネル、モーター制御センター、フィーダー、コントローラー、周波数インバーター、配線、計器、およびその他の関連機器に影響を及ぼし、変電所が全面的な損害が発生

■ 負傷者は3名発生した。

■ 事故により、製油所従業員が避難したほか、近隣の住民が避難した。製油所の近くの学校が休校になった。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は不明で調査中である。

< 対 応 >

■ ペトロエクアドル社は、事故発生後、直ちに緊急時対応計画を発動し、対応した。

■ ペトロエクアドル社は、火災は午前1130分頃に鎮火したと発表した。

■ エスメラルダス製油所で発生した火災を受け、エクアドル空軍(FAE)の航空機部隊が派遣され、支援および緊急制御活動を実施した。第21戦闘航空団のアルピア・ヘリコプターは、被災地上空を飛行し、上空からの監視と調整作業を支援した。

■ 529日(木)、エスメラルダス製油所は60日間の非常事態を宣言した。今回発生した火災で燃料タンクの一部が損傷したことを受け、1か月で2度目の非常事態宣言となった。

■ 今年4月末、ペトロエクアドル社は、同地域を襲ったマグニチュード6.3の地震による被害を受け、製油所に対し60日間の緊急事態を宣言していた。首都から北西に182km、コロンビアとの国境に位置するエスメラルダス市にあるエスメラルダス製油所では、マグニチュード6.3の地震が発生し、一部の設備が損傷していた。

■ ペトロエクアドル社は、526日に発生した燃料油タンクの火災による被害を受けたエスメラルダス製油所の操業について72日(水)に再開する予定だという。しかし、FCC装置などは7月中に操業を再開することはできないと明言しており、代替変電所への電気接続の計画的な移行に依存しているという。

■ エクアドルは南米有数の石油生産国であり、収入は石油輸出に大きく依存している。2024年には、同国は約475,000バレル/日の原油を生産し、そのうち約4分の3を販売して、86億ドルの石油輸出収入を得ている。

 しかし、昨年は過去60年間で最悪の干ばつに関連した度重なる停電により生産が中断され、水力発電用貯水池の水位が史上最低にまで低下した。今年3月には、大規模な燃料パイプラインの漏れにより、25,000バレル以上の原油が3つの河川に流出し、原油輸出も停止を余儀なくされた。

補 足                                                                          

■「エクアドル」(Ecuador)は、正式にはエクアドル共和国といい、南アメリカ大陸北西部に位置する共和制国家で、人口約1,813万人である。北にコロンビア、東と南にペルーと国境を接し、西は太平洋に面する。本土から西に1,000kmほど離れたところにガラパゴス諸島を領有する。

「エスメラルダス県」(Esmeraldas)は、エクアドルの北部に位置し、人口約53万人の県である。

「エスメラルダス市」は、エスメラルダス県の西に位置する県都で、人口約15万人の都市である。

■「ペトロエクアドル社」(Petroecuador)は、1989年に創設されたエクアドルの国営石油会社である。

ペトロエクアドル社は、精製能力11万バレル/日のエスメラルダス製油所のほかに2つの製油所を保有し、それぞれ45,000バレル/日と20,000バレル/日の生産能力がある。

■「エスメラルダス製油所」は1970年代後半に建設され、エクアドルの主要パイプラインで輸送される同国のアマゾン地域産の原油を原料としている。その生産は国内消費と輸出の両方を目的としており、ガソリン、ディーゼル燃料、国内ガスなどの派生製品が生産されている。

 エスメラルダス製油所はエクアドル最大の約11万バレル/日の原油を処理する能力があるが、通常はフル稼働を下回る稼働率で操業している。製油所の操業を維持し強化するために、技術的検討が行われ、 2019年に新たな改造工事が実施され、昨年9月に新フェーズが完了した。 1年前にも火災があったが、深刻な影響はなかったといわれている。

■「発災タンク」は燃料タンク2基と報じられているが、詳細仕様はわからない。グーグルマップで調べると、被災地区に直径約10mの固定屋根式円筒タンク2基がある。高さを10mと仮定すれば、容量は約780KLである。メディアの中に容量2,544㎥と報じているところもあるが、直径10mのタンクでは高さが30mを超え、高すぎる。被災写真を見ると、タンク側板に保温材が取り付けられているので、油種は重油相当だとみられる。

所 感

■ 今回の爆発事故を撮影した動画を見ると、①最初に白い湯気のような煙が立ち昇ったあと、大きな災が湧き上がっている。②その直後、爆発が起き、炎と黒煙が立ち昇っている。③火災はタンクの屋根部からというより、タンク防油堤のような広い個所から上がっている。④被災写真を見るとタンク屋根は噴き飛んではいない。

 このように見てくると、爆発・火災は燃料タンクの防油堤内または堤外に流出していた油によるものではないだろうか。燃料タンクの油種は重油相当だとみられるので、この油が流出していたとしても爆発に至るとは考えにくい。防油堤外の別な軽質油が流出したのではないかと思われる。しかし、最初に白い湯気のような煙は説明がつかない。

 事故は偶発的に起きたのではなく、日常点検や設備管理の抜けによって発災したように思う。

■ 火災は消火活動約1時間で鎮火したと報じられている。最盛期の火災の写真を見ると、かなり激しい。一方、エクアドル空軍が派遣され、ヘリコプターで上空を飛行し、監視と調整作業を支援したとあり、実際の消火活動はもっと時間がかかったと思われる。しかし、タンク火災というよりプロセス装置の火災に似ており、火災に関与した油量が限定され、この油が燃え尽き、消火活動時間が比較的短かったと思われる。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    Reuters.com, Petroecuador declares emergency at Ecuador's biggest refinery after fire damages,  May  30,  2025

    France24.com, Fire halts production at Ecuador's biggest oil refinery,  May  27,  2025

    Jen.jiji.com, Fire halts production at Ecuador's biggest oil refinery,  May  27,  2025

    Gulfnews.com, Ecuador declares emergency at fire-hit oil refinery,  May  30,  2025

    Hydrocarbonprocessing.com, Petroecuador declares emergency at Ecuador's biggest refinery after fire damages,  May  30,  2025

    Apnews.com, Ecuador declara en emergencia su refinería más importante tras un incendio reciente,  May  30,  2025

    Eluniverso.com, Petroecuador advierte ‘déficit en la oferta de derivados’ como consecuencia del incendio en la Refinería de Esmeraldas, según un informe,  May  31,  2025

    Dw.com, Ecuador: incendio consume parte de mayor refinería petrolera,  May  26,  2025

    Primicias.ec, Refinería Esmeraldas estará fuera de operación más de un mes tras daños por incendio en tanques de combustible,  June 01,  2025

    Jornada.com.mx, Petroecuador declara emergencia en Refinería Esmeraldas,  May  29,  2025

    Gk.city, El incendio en la Refinería Esmeraldas, explicado,  May  30,  2025

    Elcomercio.com, Un incendio se registró en la Refinería Esmeraldas este 26 de mayo de 2025 ,  May  27,  2025

    Teleamazonas.com, Incendio en la Refinería de Esmeraldas está bajo control,  May  27,  2025

    Fae.mil.ec, Helicópteros de la Fuerza Aérea brindan apoyo en incendio registrado en la Petroquímica de Esmeraldas,  May  28,  2025


後 記: 今回の事例は「タンク爆発」という標題を考えていました。しかし、調べていくと、どうも違うようだと思い始めました。結局、タンク爆発・火災を否定するメディアはいませんでした。これは、タンクを含む大きな炎の被災写真に引きずられたためで、発災事業者も状況を把握できず、事故内容は深まりませんでした。

 なお、エクアドルの事故をブログで紹介するのは初めてです。報道の自由化ランキング2024年を調べてみました。エクアドルは世界で110位でした。ちなみに日本は70位です。報道の自由度ランキングは、政治的内容、経済的内容、法的枠組み、社会文化、安全性の5指標を評価してランキング化しています。2024年の大きな変化としては、5つの指標のなかで「政治的内容」が世界的に大きく下落しているといいます。その理由は、政治的圧力により世界中で報道の自由が脅かされ、ジャーナリスト保護の原則が欠如し始めているといいます。