2017年6月25日日曜日

アイルランドの飼料製造工場で貯蔵タンク火災

 今回は、2017年6月18日(日)、アイルランドのリムリック市にあるロシュ・フィーズ社の家畜用飼料製造工場で貯蔵タンクが火災になった事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、アイルランド(Ireland)のリムリック市(Limerick)にあるロシュ・フィーズ社(Roches Feeds)の家畜用飼料製造工場である。ロシュ・フィーズ社は、国内最大の家畜用飼料製造会社のひとつである。

■ 発災があったのは、リムリック市ドック通り沿いにある製造工場内の貯蔵タンクである。
 リムリック市にあるロシュ・フィーズ社の飼料製造工場付近 (矢印部に複数の貯蔵タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年6月18日(日)真夜中の午前0時30分頃、製造工場内にある貯蔵タンクの1基から火災が発生した。

■ リムリック消防署は火災発生の通報を受け、現場へ出動した。

■ 消防隊による約5時間の消火活動によって火災は消火された。消防関係者によると、「貯蔵タンクから火が出ていました。幸いにも、飼料製造工場本体と離れていましたが、延焼する可能性は十分ありました。消防隊は火災の消火に5時間かかりました」と語っている。

■ アイルランドの警察であるガルディ(Gardai)は、火災がテロなどの不審火ではなく、偶発的な事故だとみている。 

被 害
■ 貯蔵タンク1基が焼損したほか、内部の液体が焼失した。被災の状況と程度は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 火災の原因は不明である。火災はテロなどの不審火ではなく、偶発的な事故だとみられている。 

< 対 応 >
■ リムリック市消防署から消防車両2ユニットとはしご車が出動したほか、隣接するシャノン町の消防署から消防車両1ユニットが支援で出動した。消火活動の結果、鎮火の安全宣言が6月18日(日)午前5時に出された。   
            リムリック市消防署の消防車両の例   (写真はFire-ireland.comから引用)
補 足
■ 「アイルランド」(Ireland)は、正式にはアイルランド共和国で、北大西洋のアイルランド島にある立憲共和制国家である。人口は約460万人で、首都はダブリンである。
 「リムリック市」(Limerick)は、アイルランド中西部の「リムリック州」の州都で、人口約94,000人の都市である。都市の南には、豊かな牧草地のゴールデンベールがあり、この都市の産業の多くは農業に関連している。
 
 歴史的にみると、アイルランドはイギリスが最初に支配した植民地である。大地主による小作農を使役した商品作物栽培を行う植民地農業政策で工業化は遅れた。また、宗教では、プロテスタントによるカトリック教徒への迫害があった。1800年代初めには、市場において高く売買される農作物がイングランドに大量に移送される一方で、アイルランドからは食物が枯渇し、不作に見舞われた小作農の大量餓死が発生した。この飢餓や貧困から逃れるために、生き残った多くのアイルランド人は米国へ移住した。このため、1840年に800万人を数えた人口が1911年に440万人にまで減少した。これ以降、現在に至っても総人口は回復していない。
 1919~1922年にアイルランド独立戦争によって自由国として独立した。しかし、イギリス連邦下であることに不満をもつ人によってアイルランド内戦が起きた。このようにアイルランドではイギリス(イングランド)への植民地支配の恨みが強く、反英感情が残っている。
 一方、米国への移住者の子孫の中から、ジョン・F・ケネディやロナルド・レーガンという米国大統領になった人が出たことから米国との関係は良い。 
アイルランド(Ireland)とリムリック市(Limerick)の位置
(写真はGoogleMapから引用)
■ 「ロシュ・フィーズ社」(Roches Feeds)は、国内最大の家畜用飼料製造会社のひとつで、7,000の顧客に飼料を供給している。ロシュ・フィーズ社のオーナーはロシュ家で、現在は4代目が引き継いで経営している。リムリック市には、300万ユーロ(3億6,000万円)を投じた家畜飼料製造工場を保有している。

■ 「発災タンク」は、製造工場から離れたところにあるので、グーグルマップによって調べてみると、工場の裏にタンクらしい設備が複数確認できる。高い基礎の上に設置されたタンクと、防液堤らしいものに囲まれたタンクがある。前者は直径約5mで100KLクラス、後者は直径1.7mで10KLクラスだとみられる。発災タンクがどちらか特定できないが、火災を起こすような可燃性物質だということを考慮すれば、防液堤に囲まれて小さい方の10KLクラスのタンクと思われる。報道では、貯蔵タンクというだけで内液の種類について言及されていないので、特定できないが、工場で使用されるとすれば、軽油などの燃料ではないだろうか。なお、タンクと工場本体の距離は40mほど離れている。
飼料製造工場の発災場所とみられる付近 (矢印部:貯蔵タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ 工場の貯蔵タンクにおける火災ではあるが、貯蔵タンクの内液の種類は勿論、大きさなど仕様が分からない。真夜中の火災ということもあってか、投稿の写真などもない。消防活動についても、小型タンクの割に5時間も掛かったという印象だが、よく分からない。報道での伝え方は一般的な家屋火災と変わらないという印象である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Limerickleader.ie,  Fire at Storage Tank in Limerick Manufacturing Plant ‘not suspicious’,  June 18,  2017  
    ・Irishexaminer.com,  Firefighters Battle for 5 hours to Put out Blaze in Limerick City,  June 18,  2017    
  ・Topix.com,  Firefighters Battle for 5 hours to Put out Blaze in Limerick City,  June 18,  2017


後 記: 火災情報の内容からブログの対象にするか迷いましたが、これまでアイルランドの火災事故を紹介したことはなく、調べてみました。今回調べて感じたのは、細かいことにこだわらず、悠々とした国ではないかということです。偶発的な事故とみているようですので、タンク火災といっても消防署では深く原因を追及しないのではないでしょうか。アイルランドの警察は、通常、ガルディ(正式には「アイルランド治安防衛団」)と言われているのは、初めて知りましたし、第一公用語が英語でなく、アイルランド語というのも初めて知りました。それで、今回の事故情報をアイルランド語で検索してみましたが、ヒットすることはなく、本当にローカルなニュースの扱いなのだと感じました。

2017年6月21日水曜日

メキシコのペメックス社の製油所で浸水による火災で死傷者9名

 今回は、2017年6月14日(水)、メキシコのオアハカ州サリナ・クルス市にあるペメックス社サリナ・クルス製油所において豪雨による洪水で貯蔵タンク地区が浸水し、溢流した油による火災が発生して、死傷者9名を出した事故を紹介します。
(写真はRazon.com.mx から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、メキシコのオアハカ州(Oaxaca)サリナ・クルス市(Salina Cruz)にあるメキシコ国営石油会社ペメックス社(Petroleos Mexicanos: Pemex)のサリナ・クルス製油所である。サリナ・クルス製油所は、1979年に操業を開始し、330,000バレル/日の精製能力を保有している。

■ 発災があったのは、製油所のオフサイト・エリアで、貯蔵タンク地区だった。
サリナ・クルス市にあるペメックス社の製油所付近
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 6月12日(月)、メキシコは熱帯低気圧“カルバン”に襲われた。6月13日(火)、サリナ・クルス地区は豪雨が降って洪水となり、製油所の脱硫装置や14基の貯蔵タンクのある地区などが浸水した。貯蔵タンク群の排水溜めから原油のガソリン残渣(Crude Petrol Residue)を含んだ水が溢流し、油が広がっていった。製油所の各施設は、異常気象の措置として運転が停止された。
洪水による貯蔵タンク地区の浸水
(写真はMilenio.com から引用)
■ 2017年6月14日(水)朝、製油所の浸水した区域にあるポンプ室付近から火災が発生した。浸水した製油所の一区域から巨大な火炎と厚い黒煙が噴き出した。

■ 火災発生に伴い、製油所の自衛消防隊が出動し、緊急事態の火災対応をした。

■ この事故によって、1名が死亡し、8名の負傷者が発生した。負傷者は病院へ搬送され、治療を受けている。亡くなったのは自衛消防隊の消防士で、火災の消火活動に従事していたという。

■ 洪水によって製油所の近くに住む一部の人たちが避難していたが、火災が発生して避難した人は約550名になった。その後、約3,000人近い人が避難したと報じられている。

■ 火災は貯蔵タンクに近い場所だったが、タンクに延焼することはなかった。6月15日(木)になって下火になったが、火災はポンプ室付近で続いた。 

■ 6月16日(金)午前3時30分、火災は鎮火した。

■ 火災が鎮火した後、周辺地区の環境への影響が調査されている。実際、酸性を示す黒い雨の降ったことが確認されている。しかし、どこからもそのリスクや対処方法を注意喚起されていない。また、近くの海岸が油で汚染されており、漁師への影響が心配されている。
(写真はNvinoticias.com から引用)
(写真はNvinoticias.com から引用)
(写真はMxpolitico.com から引用)
(写真はMxpolitico.com から引用)
                   避難する市民    (写真はMilenio.com から引用)
被 害
■ 死亡1名、負傷8名の人身被害が出た。

■ 製油所構内にあるポンプ室などの設備が火災で損壊した。また、流出した油が焼失した。被害の状況や程度は不詳である。

■ 製油所近隣に住む人約3,000名が避難した。このほか、漁業や環境への被害が懸念されている。

< 事故の原因 >
■ 燃焼源は、洪水によって貯蔵タンク群の排水溜めから溢流した原油のガソリン残渣(Crude Petrol Residue)で、引火源は不明で、調査中である。

■ 一部のメディアでは、公式の情報ではないが、油は14基ある原油タンクのうちの1基から漏れた原油(Crude Oil)で、約500KLが火災で焼失したと報じている。

< 対 応 >
■ ペメックス社は、6月14日(水)、同社のウェブサイトにサリナ・クルス製油所で火災があったことを発表した。翌15日(水)、続報として消防隊員が亡くなったことを発表した。さらに、16日(金)、火災は鎮火したことを発表した。

■ ペメックス社は、消防士を各所から動員し、80名で対応した。

■ 6月15日(木)、メキシコ安全・エネルギー・環境庁(Safety, Energy and Environment Agency:ASEA)が現場への立入りを行い、火災事故の調査を始めた。

■ ペメックス社は、被害の状況を評価した後、停止していた施設の再稼働に向けて準備を行うという。しかし、6月20日(火)、製油所の生産開始時期は未定で、ガソリンを追加輸入するとの見通しであることが報じられている。

■ ペメックス社では、今回の事故が今年に入って2度目の重大事故である。2017年3月、サラマンカで8人が亡くなるという事故「メキシコのペメックス社の石油ターミナルで爆発、死傷者8名」が起こっている。
(写真はReuters.comから引用)
(写真はMexiconewsdaily.com から引用)
(写真はMexiconewsdaily.com から引用)
ペメックス社が公開した火災消火後の状況
(写真はPemex.comから引用)
ペメックス社が公開した火災鎮火後の状況
(写真はPemex.comから引用)
補 足
■ 「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、北アメリカ南部に位置する連邦共和制国家で、人口約1億2,800万人の国である。
 「サリナ・クルス市」(Salina Cruz)は、「オアハカ州」(Oaxaca)の南東部の太平洋側にあり、人口約76,000人の港湾都市である。
メキシコ合衆国とサリナ・クルス市の位置
(図はBorderhopper.main.jp から引用)
■ 「ペメックス社」(Petroleos Mexicanos: Pemex)は1938年に設立された国営石油会社で、原油・天然ガスの掘削・生産、製油所での精製、石油製品の供給・販売を行っている。ペメックス社はメキシコのガソリンスタンドにガソリンを供給している唯一の組織で、メキシコシティに本社ビルがあり、従業員数約138,000人の巨大企業である。
 オアハカ州サリナ・クルス市には、精製能力330,000バレル/日のサリナ・クルス製油所(Salina Cruz Refinery)がある。当製油所は、別名Ingeniero Antonio Dovalí  Jaime Refineryといい、1979年に操業を開始した。
 なお、ペメックス社の関連事故については、つぎのような事例がある。

■  「発災場所」をグーグルマップで調べてみると、貯蔵タンク地区であることが確認できる。 この地区には14基の貯蔵タンク(実際に設置されているのは13基)があり、ポンプ室と思われる設備がある。ポンプ室から最も近い貯蔵タンクまでの距離は約200mである。なお、この地区の貯蔵タンクは原油用とみられ、原油タンクの直径は約89mであり、容量は10~12万KLクラスの大型タンクである。
サリナ・クルス製油所の貯蔵タンク地区付近 (矢印がポンプ室とみられる)
(写真はGoogleMapから引用)
発災場所とみられるポンプ室付近 
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ ペメックス社の公式発表は不明点や疑問点が多い。例えば、「原油のガソリン残渣」(Crude Petrol Residue)という油名は聞いたことがない。この点、一部のメディアが報じている「油は原油タンクのうちの1基から漏れた原油(Crude Oil)で、約500KLが火災で焼失した」という情報は合点がいく。この情報から考えられるのは、原油タンクの水切り作業のミスである。豪雨・洪水・浸水という非定常な状況から、水切り作業において何らかのミスがあり、原油タンク内の原油500KLを排出してしまったという推測である。そして、含油排水系統を通じて浸水区域に原油が流出し、原油の揮発分から形成された爆発混合気がポンプ室の何らかの火源によって引火し、大火災になったのではないだろうか。
 事故の多くは非定常な状況から発生するといわれるが、豪雨・洪水・浸水から火災発生というシナリオは考えつかない。しかし、現実には、思ってもみなかった状況から事故が起こることを示す事例である。

■ 亡くなった1名は消防活動を行っていたということから、ほかの8名の負傷者も消防活動によって被災したものと思われる。消防活動に関する情報は報じられていないが、発災写真の中に消火活動を撮した写真があり、腰の高さまで水に浸かりながら、同じ水面上の火災を消火するという極めて困難な状況だったことがうかがえる。この点、「米国フィラデルフィア製油所のタンク火災で消防士8名死亡(1975年)」の事例と類似した状況だったと感じる。
 最近、異常気象による豪雨や洪水が頻繁に起こっている。これまで、想定したことはないと思われる浸水条件でのタンク火災や水上火災への対応を考えておく必要性を示す事例でもある。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Pemex.com,  Pemex Fights Fire in the Salina Cruz Refinery,  June 14,  2017  
    ・Pemex.com,  Progress in the Efforts to Fight the Fire in the Salina Cruz Refinery Pump House,  June 15,  2017    
  ・Pemex.com,  Fire in the Salina Cruz Refinery Extinguished,  June 16,  2017 
  ・Abcnews.go.com,  Fire Reported at Partially Flooded Mexican Refinery; 9 Hurt,  June 14,  2017
    ・Reuters.com,  Fire Breaks out at Mexico’s Top Refinery, 9 People Hurt,  June 14,  2017
    ・Taiwannews.com.tw,  1 Dead,  9 Injured in Refinery Fire in Southern Mexico,  June 15,  2017
    ・Hazmatnation.com,  9 injured in Pemex Refinery Blaze,  June 15,  2017
    ・Oilprice.com,  Pemex  to Restart Mexico’s Biggest Refinery after Major Fire,  June 15,  2017     
  ・Mexiconewsdaily.com, Pemex  Refinery  Fire Produced  Toxic Rain,  June 17,  2017 
  ・Ogj.com,  Fire Halts Operations at Pemex’s Salina Cruz Refinery,  June 16,  2017
    ・Theoilandgasyear.com,  Fire at Salina Cruz Refinery  Causes  Injuries,  June 15,  2017
    ・Radioyucatanfm.com, No cede el fuego en refinería de Pemex,  June 16,  2017
    ・Reuters.com, Mexico's Pemex to up Gasoline Imports after Refinery Fire ,  June 20,  2017



後 記: 前回の中国の事故に比べると、メキシコの情報公開はオープンだと感じます。国営企業のペメックス社はウェブサイトを通じて事故情報(声明)を3日連続で発信しています。しかし、火災の発生状況の説明が判然としません。事実を把握していないためか、意図的に理解しづらくしているようです。声明を出す前の取材からだと思いますが、当初は「含油廃水池が洪水によって油が溢流して火災になった」という情報を出したメディアもありました。失敗は小さく見せたがるという保身的な声明の典型例だと感じます。1日目の声明では、「負傷者が出たが、命にかかわるような状態ではない」と言っていた翌日、ひとりが死亡したと変わりました。今回の報道で知ったのですが、今年3月のペメックス社石油ターミナルの爆発事故でも、死傷者8名(4名死亡、4名負傷)は全員亡くなっていました。一方、今回も発災写真や消防活動の写真が事故の状況を理解する上で非常に参考になりました。

2017年6月15日木曜日

中国山東省の石油化学工場の貯蔵タンク地区で爆発、死者12名

 今回は、2017年6月5日、中国山東省臨沂市の臨港経済開発区にある臨沂金誉石化の貯蔵タンク地区で爆発・火災が発生し、12名の死者を出した事例を紹介します。
写真Baike.baidu.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、中国山東省(さんとう/シャンドン省)臨沂市(りんぎ/リンイー市)の臨港経済開発区の団林鎮(だんりんちん/ツァンリンチェン)にある臨沂金誉石化(临沂金誉石化有限公司)の石油化学工場である。臨沂金誉石化は、2010年6月に設立された会社で、工場には約200人が働いている。

■ 発災があったのは、石油化学工場にある貯蔵タンク地区である。
                         山東省臨沂市の臨沂金誉石化の工場付近   (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年6月5日(月)午前1時頃、工場の貯蔵タンク地区で液化石油ガスタンクローリーの荷役作業中に爆発が発生した。この爆発をきっかけに被災範囲が拡大し、正午頃には、工場内にある複数の貯蔵タンクが火災になった。火災になったのは、液化石油ガス貯蔵タンク6基、イソ-オクタン貯蔵タンク4基と報じられている。

■ 市民のひとりは、空が真っ赤に変わったといい、「地震が起ったかと思いました」と語っている。工場の近くの家屋は窓ガラスが壊れ、住んでいる人が、自分たちはいつ安全に家に帰れるだろうかと、中国のマイクロブログ・サイトで語っている。
 
■ 発災に伴って地元の消防隊が出動し、貯蔵タンクを冷却するため、タンク周辺に水による噴霧を行った。

■ 事故後の第一報では、死者1名、負傷者9名、行方不明者7名と報じられた。負傷者は地元の病院へ搬送された。その後、6月6日(火)、被災者は死者10名、負傷者9名になった。6月10日(土)の報道では、死者12名に増えている。

■ 発災場所に近い住民や工場の従業員は避難した。

■ 火災は、6月5日(月)午後4時には、イソ-オクタン貯蔵タンク4基の消火活動が行われている。その後、火災は制圧されたが、鎮火時間ははっきりしない。

被 害
■ 事故に伴い、19名の死傷者が発生した。うち12名が死亡した。

■ 周辺に住む人たちが避難したが、人数や避難時間などは不詳である。

■ 液化石油ガス貯蔵タンクやイソ-オクタン貯蔵タンクが複数基、損傷したとみられる。このほか、液化石油ガスタンクローリーや配管パイプラックなどが被災しているが、被害の詳細は不詳である。  
                               北側から撮られた発災写真  (写真はWeibo.comから引用)
                                西側から撮られた発災写真  (写真はEnergy.cngold.org から引用) 
                                 北側から撮られた発災写真(合成)     (写真はV.qq.com から引用)
                           通用門付近から撮られた発災写真     (写真はNews.uc.cn から引用)
(写真はEnergy.cngold.org から引用)
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は調査中である。
 一部のメディアでは、事故原因について他の省の液化石油ガスタンクローリー3台が入構し、うち1台の運転手が規則違反の操作を行い、火災を誘発したと報じている。工場内にあった容量1,000㎥の液化石油ガス貯蔵タンク6基のうち4基のタンクで火災が発生し、2基のタンクは緊急遮断弁を操作して、火災を免れたという。

< 対 応 >
■ 臨沂市の党書記と市長が現場に到着し、緊急事態対応本部を設置したという声明を発表した。

■ 臨沂臨港経済開発区は、6月5日(月)、臨港区の進出企業である臨沂金誉石化で爆発・火災事故があったことをウェブサイトで発表した。さらに、死傷者の状況について続報を発表した。 

■ 山東省消防局などから出動した消防士は約900名以上、消防車両は170台以上である。

■ 会社の操業責任者は警察に拘束されているという。

■ 海外メディアでは、中国は中央政府から工場、発電所、鉱山の安全性を向上させるよう改善指示が出されているにも関わらず、頻繁に労働災害が起こっていると報じている。その最悪の事故のひとつが、2015年8月天津市のケミカル倉庫で起きた大爆発事故で、多くの消防士と警察官を含む173名の死者を出した。
(写真はEnergy.cngold.org から引用)
(写真はEnergy.cngold.org から引用)
(写真はV.qq.comから引用)
(写真はV.qq.comから引用)
                            構内の東側から撮られた発災写真     (写真はV.qq.com から引用)
                                    西側から撮られた発災写真      (写真はEnergy.cngold.org から引用)
(写真は、左:Energy.cngold.org、右: V.qq.comから引用)
                                  構内で撮られた事故後の写真      (写真はV.qq.com から引用)
(写真はV.qq.com から引用)
 (写真はV.qq.com から引用)
                        構内の西側から撮られた事故後の写真    (写真はEnergy.cngold.orgから引用)
                       球形タンク地区付近で撮られた事故後の写真  (写真はV.qq.com から引用)
補 足
■ 「山東省」(さんとう/シャントン省)は、中国(中華人民共和国)の西部にある省で、北に渤海、東に黄海があり、黄河の下流に位置する。人口は約9,500万人、省都は済南で、他に青島、泰安などの主要都市がある。 
  「臨沂市」(りんぎ/リンイー市)は、山東省東南部に位置し、人口約1,010万人の地級市である。臨沂市と隣接する日照市では、2015年7月に「中国山東省の液化石油ガスタンク群で爆発・火災」が起こっている。
 「団林鎮」(だんりんちん/ツァンリンチェン)は、臨沂臨港経済開発区にある地区で、人口は約42,000人である。東方の嵐山港に約10km、北方の日照港に約40km、南方の連云港に約80kmという距離にある。 
                           中国各省と山東省の位置   (図はCafefabulous2.blog.so-net.ne.jpから引用)
■ 「臨沂金誉石化」(临沂金誉石化有限公司: Linyi Jinyu Petrochemical Co.)は、2010年6月に設立され、臨沂市に工場を持つ石油化学の会社である。液化石油ガスの生産能力30万トン/年、貯蔵能力55,000㎥、主な製品はプロパン、n-ブタン、イソ-ブタン、イソ-オクタン、ペンタン、塩化物などである。
 被災した貯蔵タンクの内液であるイソ-オクタンは、飽和炭化水素の一つ(C=8)で、無色澄明の液体、比重0.7、引火点-8℃とガソリンと同等の危険性物質で、用途は溶剤、塗料、接着剤である。本来は内部浮き屋根式タンクでの貯蔵が望ましいが、ドームルーフの固定屋根式タンクに貯蔵されていたとみられる。

■ 「被災タンク」を発災写真とグーグルマップで推定すると、下記の写真のようになる。球形タンクの直径は約12.8mで、容量は約1,000㎥となり、報じられているデータに合っている。固定屋根型タンクは、直径約16mであり、高さを約18mと仮定すると、容量は約3,600KLとなる。このタンクが全面火災になった場合、燃焼速度を30cm/hと仮定し、液高さを18mとすれば、燃焼時間は60時間(2日半)となる。
 なお、液化石油ガス荷役場から球形タンクまでの距離は約110mである。同じく固定屋根型タンクまでの距離は約300mである。
発災場所周辺 
(黄矢印:被災の球形タンク、黒矢印:被災の固定屋根型タンク、白矢印:液化石油ガス荷役場)  
 (写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ かなり大きな事故であるが、発災写真によって被災状況を補足してみる。
 ● 球形タンクは、噴破したものは見当たらないし、火炎に全体が包まれて焼けたような跡のものは1基程度である。1基の球形タンクが支持脚から脱落しているが、全般に煤で汚れた程度の被災である。
 ● 固定屋根型タンクは、側板が座屈するほどの燃焼したタンクが複数基ある。
 ● 横型円筒タンクは、大きな被災は免れたようにみえる。
 ● 液化石油ガスタンクローリーは構内に多数居たものと思われ、真っ黒に焼けたものやタンクが噴破したものがある。
 ● 配管およびパイプラックは、激しく火炎に包まれたと思われる損壊が見られる。

  これらことから、発災は液化石油ガスタンクローリーの荷役場で起こり、液化石油ガスの配管が破損し、大量の液化石油ガスが流出して爆発を起こしたのではないだろうか。爆発によって、さらに液化石油ガスや軽質油の配管が破損し、火災が複数箇所に拡大していったものと思われる。液化石油ガス荷役場から固定屋根型タンクまでの距離(約300m)を考えると、いかに初期の爆発が激しかったかわかる。
 球形タンクの火災はタンク本体の火災ではなく、配管から流出する油またはガスによる周辺の地上火災だったのではないだろうか。固定屋根型タンクは固定屋根が噴き飛び、障害物あり全面火災の様相を呈したのではないかと思う。

■ 消火活動について発災写真で考えてみる。
 ● 球形タンクには散水設備が設置されている。球形タンクの状況をみると、概ね有効に機能したと思われる。
 ● 固定屋根型タンクでは、全面火災になって座屈に至るまでのものがあり、これらのタンクの消火はできなかった。
 ● 液化石油ガスタンクローリーへの消火活動を示す写真などの情報はない。また、実際に冷却散水しかとれなかっただろう。
 ● 液化石油ガスが放出して火災になっている配管の消火を行うことは、再爆発の危険性がある。激しく損壊しており、消火活動は行われなかったものと思われる。
 ● 高所放水車と移動式放水銃による消火活動(冷却散水)が行われており、必要な消火水は大容量送水ホースを展張し、対応している。また、目的ははっきりしないが、多くの土のう構築が行われている。

  これらのことから、冷却散水を基本とした防御的消火戦略がとられ、さらなる被害拡大は防ぐことができたと思われる。緊急遮断弁が閉止できなかったといわれる4基の球形タンクについても、冷却噴霧水などの防護策を行い、バルブを閉止できたのではないだろうか。一方、固定屋根型タンクの全面火災を消火できなかったのは、意図的に燃え尽きさせる防御的消火戦略をとったか、あるいは障害物あり全面火災で消火戦術が難しかったためであろう。なお、固定屋根型タンクの直径は約16mであり、大容量泡放射砲システムを使わなくても、通常の大型化学消防車や高所放水車による泡消火で消すことのできるタンク規模である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
    ・News.xinhuanet.com,  Explosion Rocks Petrochemical Plant in East China, Casualties Unknown,  June  05,  2017 
  ・Abcnews.go.com,  8 Killed in East China Chemical Plant Explosion, Fire,  June  05,  2017
  ・Firstpost.com,  China Chemical Plant Explosion:  Eight Killed, Five Injured in Shandong Province,  June  05,  2017
  ・Whataonweibo.com,  Shandong Petrochemical Plant Explosion:  8 Dead, 9 Injured,  June  05,  2017
    ・Thestandard.com,  Shandong Petrochemical Plant Explosion Death Toll Rise to Ten,  June  08,  2017
    ・News.rthk.hk,  Eight Killed in Shandong Chemical Blast,  June  10,  2017  
    ・Baike.baidu.com,   6·5临沂石化公司爆炸事故,   June  05,  2017
    ・News.163.com ,  山东石化公司爆炸致1死7失联 企业负责人被控制,   June  05,  2017
    ・Xhpfm.mobile.zhongguowangshi.com,  山东临沂“6·5”爆炸事故遇难人数达到10人,   June  06,  2017
    ・Ntdtv.com ,  山东临沂石化公司大爆炸 20里外有震感,   June  05,  2017
    ・Energy.cngold.org ,  山东临沂石化爆炸最新消息,   June  05,  2017
    ・Soundofhope.org ,  山东临沂一石化公司爆炸 伤亡人数官方造假,   June  10,  2017
    ・Paigu.com, 山东临沂石化爆炸最新消息,   June  06,  2017
    ・Ygyey.com, 临沂保险业紧急启动液化气罐车爆炸事故理赔,   June  07,  2017
    ・Lylgcyq.gov.cn, 临港区一化工企业发生安全生产事故,   June  05,  2017
    ・Lylgcyq.gov.cn, 临港区金誉石化“6.5” 爆炸火灾事故情况续报(一)~(四),   June  05~06,  2017



後 記: 今回の事例でも、情報公開がオープンとはいえません。関係組織が多層で複雑です。緊急事態対応本部を設置したという臨沂市の党書記と市長、事故状況を公表する臨沂臨港経済開発区、警察に拘束された発災事業所の責任者、と誰が事態の状況を把握して対応するのかよく分かりません。公表できる立場の人が正しい事実を把握していないためか、あるいは失敗を小さく見せようという保身のため、情報が出てこないのだと感じます。投稿写真以外にメディアからの発災写真はかなり出ていますが、施設内あるいは近くから撮られた火災の写真はありません。出てくるのは、消防隊の献身的な活動を示すものや事故後の写真です。火災時の写真はあるはずで、報道規制があっているように思います。しかし、限られた発災写真であっても、現場を知ることのできる貴重な写真です。
 このようなときに気をつけなければならないのは、別な事例の発災写真です。今回も、最初に報じたビデオが2015年の天津ケミカル倉庫爆発事故時のものだったと訂正しているメディアがありましたし、爆発時の写真の中には、2015年7月の日照市で起った「中国山東省の液化石油ガスタンク群で爆発・火災」のものも散見されました。