2013年12月8日日曜日

米国テネシー州の油タンク施設が爆発・火災、負傷者1名

 今回は、2013年11月18日(月)、米国テネシー州ベッドフォード郡シェルビービルにあるサザン・エナジー社の所有するタンク施設においてメタノールが爆発し、火災を起こして負傷者の出た事故を紹介します。
爆発・火災を起こしたサザン・エナジー社のタンク施設の消火活動
(写真はTullahormanews.comから引用)
 <事故の状況> 
■  2013年11月18日(月)午前10時30分頃、米国テネシー州ベッドフォード郡シェルビービルにあるサザン・エナジー社の所有する施設の油タンクで爆発・火災が起こり、負傷者の出る事故があった。
       シェルビービル市のレーン・パークウェイ付近  (写真はグーグルマップから引用) 
■ 警察署長のオースティン・スイング氏によると、午前10時30分頃、シェルビービル市のレーン・パークウェイ沿いにあるサザン・エナジー社の事務所施設にある複数のタンクが爆発・火災を起こしたとの報告を受けたという。火災発生に伴い、シェルビービル消防署が出動し、タラホーマ消防署の応援を得て消火活動に当たった一方、発災場所の近くの住民が避難した。避難指示は施設から半マイル(800m)以内での地区に出され、この中には軽犯罪者用の収容作業施設、動物保護施設、学校などがあった。

■ 保安官のランドール・ボイス氏は、“実に大きいボーンという音”を聞いたといい、事務所から外に飛び出すと、“真っ黒い煙が30~40フィート(9~12m)の高さにまで上がっている”のが見えたと語っている。シェルビービル消防署の消防士によると、爆発は数回あったという。

■ シェルビービルの市政担当官であるジェイ・ジョンソン氏によると、施設は事務所用の建物で、石油やガスを貯蔵していないが、裏手にバイオディーゼル燃料を貯蔵するタンクがあったという。消防隊は、最終的に油濁した水がダック川に流入しないよう、使用する水量を制限した状態で、午後の半ばまで消火活動に携わった。火災の消火活動中に出た排水は、裏の駐車場を横切り、ウェスト・ジャクソン通り沿いにある排水溝を流れ出していた。汚染水はダック川と通じている空の雨水排水系へ流れ、ある時点では、排水溝は50ヤード(45m)以上、消火用の排水などで溢れていた。消防隊は、ダック川への流入を防止するため、水門を上げる措置を行なっていた。シェルビービル市の公共作業員は、ウェスト・ジャクソン通りとノース・キャノン大通りの交差点まわりにダムを作り、流れてくる水をブルトーザで押し集めた。
 シェルビービル消防署のリッキー・マコーネル署長は、「川へ流れ込まないようにするのが最善策だったのです」と語っている。

■ 当初、負傷者は3名という情報があったが、当局は、19日(火)になって負傷したのは爆発でけがをした男性従業員1名だけだったと発表した。負傷した人は火災の起こった事故現場にいたとジョンソン氏は語った。男性従業員は重度の火傷を負っており、救命救急フライトでヴァンダービルト大学病院へ搬送された。その後の状況については発表されていない。
 マコーネル消防署長が語ったところによると、被災した男性従業員は、爆発時にトレーラー連結車からメタノールの荷下ろし作業を行っていたという。

■ テネシー州緊急事態管理局の広報担当であるジェレミー・ハイト氏によると、火災が起こったとき、収容作業施設の大半の模範囚は仕事をしていなかったという。ボイス保安官によると、用心のため副保安官が70名ほどの収容者を移動したという。
 発災場所に隣接していたベッドフォード郡動物保護施設の避難を支援するため、隣のラザーフォード郡から動物管理作業員が呼ばれた。動物管理作業員のクリスティーン・タッカーさんは、「実際、動物たちはよくやったわ。多分、私たちが移そうとしたとき、動物たちは何かを感じたのだわ。というのも、彼らはおとなしく、興奮することもなかったわ」と語っている。
 ハイト氏は、両施設とも煙の影響を受けたが、延焼はしなかったと語った。トーマス・マグネット校の学生はハリス中学校へバスで移動した。

■ ベッドフォード郡緊急事態管理部長のスコット・ジョンソン氏によると、当局は、燃えている施設から毒性ガスが流れ出ることを懸念して、隣接エリアに避難指示を出したという。午後遅くなって、火災はほとんど消えたので、避難した人たちは戻ることが許可された。

■ サザン・エナジー社のオーナーであるゲイリー・キング氏は、最近、施設をバイオ燃料の製造・配送基地へ切り替えたばかりだったと語った。この2年間、バイオ燃料を作っており、タンク内に入っていたのはメタノールだという。 “しかし、引火性が問題になる種類ではない”と言っている。

■ レイン・パークウェイ地区は商業用地域である。ジョンソン市政担当官によると、当該施設が実際に工業施設なのかどうかという問い合わせが年に何件か来ていたという。ニュースチャンネル5が入手した資料によると、キング氏は地域の法令を満足させるため、市の担当部署や消防署と手続きの作業を行っていたという。 18日(月)の時点では、キング氏は負傷した従業員のことが心配で、いかなる声明も出したくないという。資料によると、2012年6月時点で、施設には11基の貯蔵タンクがあると市に説明している。8基は料理用オイルの各種型式のタンクで、2基は混合汚染の水用で、残りの1基は容量6,000ガロン(22KL)のディーゼル燃料の残油用だという。サザン・エナジー社は、周辺地域のガソリンスタンドに燃料油やその他のものを供給している会社であるが、爆発は事務所用の建物のある場所で起こっている。

■ ジョンソン市政担当官は、爆発・火災がどのように起こったかについて詳しくわかっていないという。ジョンソン氏によると、州の消防保安官事務所からの支援を受けて調査が始ったところである。

■ 19日(火)、シェルビービル消防署は、サザン・エナジー社の施設にあった危険性に関する詳細な情報を持っていなかったと発表した。シェルビービル消防保安官のブライアン・ニコルソン氏は、「施設では燃料の移送作業が行われていました。問題の燃料はメタノールだったようです」と語った。タンク内にケミカルを入れるという判断した過程で、何かが間違っていた。ニコルソン消防保安官は、「出荷作業を行うためには、建家内にある配管を通じてタンク内の液位を下げなければなりませんでした」と語った。
 原因はわからないが、この系統でオーバーフローしてしまった。そのとき、ガスに引火し、爆発が起こり、近くにいた従業員が負傷した。火災はトレーラー連結車に延焼し、消防隊が見ている中で爆発を起こした。

■ ニコルソン消防保安官は、「消防署は、この種の燃料生産に関する知識を持っていませんでした。私たちは、料理用オイルを取り扱っている事業所だという認識でした。事故前には認識していませんでしたが、現時点で見てくると、いろいろ問題点が出てきました」と語っている。
 (写真はNewschannel5.comから引用)
         奥が発災場所、手前の空堀が調整池   (写真はNewschannel5.comから引用)
         爆発したトレーラー連結車への消火活動   (写真はNewschannel5.comから引用)
                 現場から流れ出る油濁水  (写真はNewschannel5.comから引用)
■ 爆発事故から3日経ったが、町ではまだ排液の処理作業が続いている。この中には、有害性の可能性のあるケミカル類のクリーンアップ作業を含んでいる。20日(水)の現場では、大半の作業は事務所裏で行われ、封じ込めた排液が流れ出すことのないよう図られた。シェルビービル市の公共作業部長のマーク・クラントン氏は、「今回の出来事は市民にとってこの先長く覚えていることになるでしょう」と語っている。

■ 市は環境専門家を呼んで、発災場所近くの調整池を見てもらった。18日の火災時に使用した消火排水が溢れてケミカル類が流れ、ダック川に達する直前までくるという危険な状況があった。火災発生から90分ほどの後、汚染水が流れ込まないようにシェルビービル市の公共作業員が池の水門を閉める措置を行なった。公共作業部クラントン部長は、「予防措置でした。というのも、どんなものが含まれているか我々にはよくわからなかったからです」と語った。しかし、20日(水)、公共作業部長は、調整池にある水門を閉めるのに時間がかかったため、ケミカル類の一部がダック川に流出したことを認めた。
 実際、現時点でも、排液の中に何が含まれているかはっきりしていない。おそらく、消火排水、料理用オイル、バイオ燃料が含まれていると推測されている。大型タンクのセットとポンプによって、約300,000ガロン(1,100KL)の汚濁水が回収・処分された。さらに、地下水への汚染を懸念して、公共作業員によって排水溝を掘り起こし、浄化する作業が行われた。

■ テネシー州環境保護庁の当局担当者は、22日(金)、サザン・エナジー社で起こった爆発・火災事故後のクリーンアップ状況を監視していると発表した。州環境保護庁は、サザン・エナジー社にクリーンアップを行う責任があるが、環境保護庁として適切な方法がとられているか現場でフォローすることになっていると語った。環境保護庁によると、これはメタノールのような有害な可能性のあるケミカル類が爆発した場合に通常とられる方法だという。
         汚染された土壌のクリーンアップ作業  (写真はNewschannel5.comから引用)
調整池での排液回収(右)と一部ダック川へ流出した排液(左)
 (写真はNewschannel5.comから引用)

テネシー州
補 足                                   
■ 「テネシー州」は、米国の南東部に位置し、人口約645万人である。州都はナッシュビル市である。
 「ベッドフォード郡」は、テネシー州の中部に位置し、人口約45,000人である。
 「シェルビービル」は、ベッドフォード郡の中央部に位置し、人口約21,000人で郡庁所在地である。

■ 「メタノール」は、化学式CH3OH でアルコールの一種である。メチルアルコールとも呼ばれ、日本では、危険物第四類アルコール類に指定されており、揮発性が高く、引火の危険性の高い液体である。保管場所や使用場所における火気や電気火花について十分な注意の必要な液体である。メタノールは、接着剤、農薬、塗料、合成樹脂、合成繊維の原料など多岐に使用されている。
 引火して炎上した際は、粉末消火器、二酸化炭素、砂を用いる。注水消火は、薄められたメタノールが溢れて、火災の広がる可能性があり、極少量の火災以外には用いるべきではない。噴霧注水は差し支えない。 泡消火は泡がメタノールに吸収されてしまうので、泡消火薬剤を用いる場合は耐アルコール性の泡消火薬剤を用いる必要がある。
 エタノールは、サトウキビやトウモロコシといったバイオマスからの生産方法が確立しており、ガソリン代替燃料として生産量が拡大している。一方、メタノールの生産は主として天然ガスなど化石資源を原料としており、生産量は低い。また、メタノールはエタノールより熱量が小さく、腐食性が強い上に、揮発性が高く有毒物質であるといった問題点が多い。

■ 「サザン・エナジー社」(Southern Energy Co.)は、テネシー州でコンビニエンス・ストアとガソリンスタンドを経営する地方の会社である。ガソリンスタンドは、BPとシェルの2つのブランドで燃料を販売している。
 シェルビービルの施設について同社のウェブサイトでは何の記述もない。今回の事故情報から推測すると、廃油の再処理施設ではないかと思われる。料理用オイル(植物油)の廃油などからディーゼル燃料を作るので、バイオ燃料を生産している施設という説明だと思う。この施設に当初計画にないメタノールを受け入れたのではないだろうか。メタノールは前記のように揮発性の高い液体であり、オーナーがいうような“引火性に問題はない” はずはない。考えられるのは、メタノールを使用する施設から排出される廃液で、通常は引火性の低くなった液の可能性である。しかし、このような廃液の性状は大きく変化する可能性がある。例えば、運転異常で緊急シャットダウンした場合、濃度の高い廃液、すなわち、メタノール分が高くて揮発性があり、引火性で危険な液が排出される可能性である。
シェルビービルにある事故のあったサザン・エナジー社の建物(正面側)
   (写真はグーグルマップのストリートビューから引用)
シェルビービルにある事故のあったサザン・エナジー社の建物(裏側)
(写真はグーグルマップのストリートビューから引用)
所 感
■ 今回の事故は曖昧な点が多く、断定はできないが、廃油の処理施設に受け入れた廃油が通常より揮発性の高いものだったと推測している。これがメタノール分の高い廃油で、受け入れた際、何らかの要因でタンクからオーバーフローさせ、引火・爆発したものであろう。このように性状のはっきりしない廃液を取り扱う場合の危険性を示す事例といえよう。

(写真はJapantimes.co.jpから引用)
<注記>この事故の3日前の2013年11月15日、千葉県野田市のエバクリーン社の千葉リサイクルセンターで死者2名、負傷者16名を出す爆発・火災事故が発生している。事故原因は調査中であるが、この廃油処理施設では、当日、ガソリンと軽油の混在した油を回収して通常より揮発性の高い廃油を受け入れており、これが爆発・火災の要因の一つと言われている。期せずして、日米で類似の事故が起こっている。



■ 事故要因に問題点が多いが、緊急事態発生後の危機管理対応にも問題がある。一つは、消防署が火災の液体にメタノールが含まれているということを認識していないことである。注水消火は薄められたメタノールが溢れて、火災の広がる可能性がある。泡消火は泡がメタノールに吸収されてしまうので、泡消火薬剤を用いる場合は耐アルコール性の泡消火薬剤を用いる必要がある。消火活動の写真を見ても、このような配慮がされているように見えない。

■ 二つ目は、消火排水について当初の判断が的確ではなく、構外に垂れ流されている。2005年英国バンスフィールドのタンク火災事故では、消防隊は消火活動によって発生する消火排水が構外に放出してしまうことを配慮して、消火活動が遅れることを承知で、流出防止用の土盛りを構築している。今回の事例でも、消火排水や排液の流出防止策を講じるべきだった。このため、事後処理として過大なクリーンアップ作業をすることになってしまった。

■ 三つ目は、市の水門を閉める処置が遅れて、川へ排液を一部流出させたことである。今回の事故情報では、初期の報道で消防署あるいは市役所は事前処置をとったように報じられたが、日が経つと、そうではなかったことがわかる。緊急事態対応部署は避難の対応に追われたかもしれないが、マネージャーは現場を広くみて、迅速で的確な判断をする必要がある。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Knoxnews.com,  Explosion, Fire in Shelbyville Prompt Evacuation, November 18, 2013
  ・Timesfreepress.com, Explosion, Fire in Shelbyville, Tenn., Prompt Evacuation, November 18, 2013   
  ・Newschannel5.com, 1 Injured in Explosion at Shelbyville Facility, November 19, 2013
  ・WSMV.com,  Fire Crews Monitoring Site of Explosion in Shelbyville, November 19, 2013
  ・Hazardexonthenet.net,  Tennessee Oil Tank Blast and Fire Injured Three, November 19, 2013
      ・Tullahomanews.com,  Coffee County Man Critically Hurt in Shelbyville Plant Fire, November 19, 2013
      ・Myfoxal.com,  Questions Surround Production at Shelbyville Facility Prior to Explosion, November 20, 2013
      ・WFXG.com,  Cleanup Continues near Shelbyville Explosion Site, November 21, 2013


後記: 今回は断片的な情報を整理していくと、事故状況、消防活動、避難活動などの全体像が見えてきた事例でした。曖昧な点が残りますが、推測することのできる情報は出てきたと思います。消防活動や避難活動の現場第一線に携わった人たちはよくやったように思います。見えてきたのは、マネージャーというか現場指揮者の対応に問題があったことです。卑近な例かもわかりませんが、第2次対戦後に言われたことは、米軍の将校と日本軍の兵士を集めれば、最強の軍隊ができるという逸話がありました。この基本的な考え方はその後も続いていましたが、最近思うのは、米国の“将校” が将校にふさわしい人なのか疑問を感じるようになったことです。このようなことを考えながら、事例をまとめていました。 
 

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