このブログを検索

2020年5月27日水曜日

東ソー南陽事業所の電解プラントのタンクでボヤ


 今回は、 2020523日(土) 、山口県周南市にある東ソー南陽事業所の電解プラントで工業塩と水を混ぜるタンクが空の状況下でボヤが発生した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、山口県周南市開成町にある東ソー南陽事業所の電解プラントである。

■ 事故は電解プラントにある直径約7m×高さ約11mの鋼製タンクである。  
             東ソー南陽事業所の配置 (図はTosoh.co.jpから引用)
            東ソーの原塩ヤードと電解プラント付近 (写真はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年5月23日(土)午前7時50分頃、カセイソーダ・プラントにあるタンクでボヤ(小火)があった。

■ 消防署に近くの住民から「黒い煙が上がっている」という119番があり、消防隊が出動した。

 電解プラントの反応 (図はTosoh.co.jpから引用)
■ 電解プラントはカセイソーダなどを製造する設備で、タンクは原料となる塩と水を混ぜるもので、発災当時は運転停止中でタンク内には液体は入っておらず、空だったという。タンクには内側部を覆うゴムがあり、一部が焼けたという。有毒ガスの発生は無かった。

■ 発災当時、タンク付近に従業員はおらず、発災に伴う負傷者はいなかった。

被 害
■ タンク1基がボヤで一部を焼損した。

■ 負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 火は約1時間50分後の消された。 

補 足
■「山口県」は、中国地方に位置する人口約1,347,000人の県で、県庁所在地は山口市(人口約194,000人)で、最大の都市は下関市(人口約254,000人)である。
 「周南市」は、山口県の」東南部に位置し、人口約138,000人の市である。周南市の主要産業は重化学工業であり、旧徳山海軍燃料廠から発展した石油コンビナート(周南コンビナート)が形成され、東ソー、トクヤマ、出光興産、日本ゼオン、日本精蝋などの事業所がある。製造品出荷額等は山口県内第1位で、瀬戸内工業地域の重要な位置を占めている。
 (図はTosoh.co.jpから引用)
■「東ソー㈱」は、1935年に設立され、旧社名は東洋曹達工業といい、総合化学メーカーである。 
カセイソーダ、塩化ビニルモノマー(VCM)、ポリウレタンといった「ビニル・イソシアネート・チェーン」事業に加え、石油化学事業(オレフィン、ポリエチレン、合成ゴム等)や機能商品事業(無機・有機ファイン製品、電解二酸化マンガンなど)をコアとして事業展開を行っている。南陽事業所のビニル・イソシアネート・チェーン事業は図に示す。
    東ソー南陽事業所のビニル・イソシアネート・チェーン事業 (図はTosoh.co.jpから引用)
■「電解プラント」は、塩を水に溶解し、不純物を取り除く塩水精製を行い、電気分解によってカセイソーダ、水素、塩素を生産する。東ソー南陽事業所では、年間約150万トン以上の工業塩を豪州やメキシコから輸入している。

■ この事故のメディアによる報道では、「火」という言葉は使っているが、「火災」という言葉は使用していない。このため、本ブログでは「ボヤ」という用語にした。
 消防庁では、火災の焼損程度を「ボヤ(小火)」、「部分焼け」、「半焼」、「全焼」 の4つに分類している。また、火災損害では「全損」、「半損」、「小損」の3段階に分けている。ボヤは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10%未満で、焼損床面積が1㎡未満のものまたは収容物のみ焼損したものをいう。一般の人は火災保険に関わるので、火事になってしまえば、大きな分類の方がよい。昔から、柱1本残っていることで全焼ではなく、半焼だというので、残っている柱を見たら倒してしまえという逸話がある。一方、事業所では、事故(火災)件数や報告義務のわずらわしさから、火災とせず、ボヤという用語を使う傾向にある。

■ 「発災タンク」は、直径約7m×高さ約11mの鋼製タンクと報じられているので、容量は400KL級である。目的は原料となる塩と水を混ぜるものとあるので、電解プラントの塩水精製の前処理設備に使われる単なる混合槽だとみられる。また、タンクには内側部を覆うゴムがあったとされているので、塩水の腐食対策としてゴムライニングのタンクではないかと思われる。

所 感
■ 今回の発火要因は分かっていないが、状況からすれば、自然発火の可能性が高い。リサイクル施設などの場合、油が付着したウェスが酸化・発熱して火災の要因になることがある。石油工業であれば、硫化鉄が自然発火の要因である事例は少なくない。たとえば、つぎの事例がそうである。

■ 電解プラントに使用する輸入の工業塩には、カルシウムやマグネシウムなどの不純物を含んでおり、自己発火性の物質は存在する。ただ、塩水精製の前処理として工業塩と水を混ぜるタンクにおいて堆積物に自然発火性の物質が生成し、発火したという事例は聞かない。
 上記で紹介した「清掃中原油タンクの火災原因」の事故報告書はよくまとめられている。結果的にいうと、タンク関係者であれば常識的な内容である。しかし、長年の技術的知見を有している製油所でなぜ起きたかについて調査された極めて有用な事故報告書である。今回の電解プラントのタンク事故はわからないことの多い事例であり、教訓として調査結果を公表されることを期待する。

備 考
 本情報はつぎの情報に基づいてまとめたものである。
  ・Asahi-shinbun,  タンクから煙,  May  24,  2020
    ・Yamaguchi-shinbun,  東ソー南陽事業所 タンク一部を焼く,  May  24,  2020
    ・Chugoku-shinbun,  東ソーのプラント焼く,  May  24,  2020
   

 後 記: 今回の事故はインターネットの事故情報で知ったのではなく、ローカルな情報で知りました。このため、新聞をコンビニエンスストアで買い求め、記事を読み比べてまとめました。しかし、メディアの記事は新型コロナウイリスの影響で十分な取材ができないためか、記事に深みが欠けるように感じました。また、事業所も火災でなく小火(ボヤ)という解釈なのか、メデイアに情報を提供しているようですが、同社のウェブサイトにはなにも言及されていません。これは新型コロナウイリスの所為とはいえないでしょう。海外では被災写真を消防署など公的機関が提供することがありますが、日本では稀です。このため、標題の写真は事故に関係ないプラントの写真としました。現代の情報社会の中では、時代遅れ感は否めませんね。

2020年5月25日月曜日

海老名市で水道の貯水槽が破裂、水が流出して車3台が傷つく


 今回は、 2020513日(水) 、神奈川県海老名市にある商業施設のショッパーズプラザ海老名の屋外に設置されていた水道用の貯水槽が突然、破裂して、大量の水が流出した事故を紹介します。
(写真はMsn.comから引用) 
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、神奈川県海老名市中央にある商業施設のショッパーズプラザ海老名である。

■ 事故はショッピングセンターの屋外に設置されていた水道用のFRP製貯水槽で、高さ約4m×幅9m×奥行7m、容量150KLである。
              海老名市のショッパーズ海老名付近(矢印が発災場所)  (写真はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年5月13日(火)午後1時30分頃、ショッピングセンターの屋外にある貯水槽が、突然、破裂した。

■ 目撃した人によると、「滝のように、たぁーっと」流れ、貯水槽がめちゃめちゃに壊れてという。

■ 貯水槽の中に貯められていた大量の水が勢いよく周囲に流れ出し、近くの駐車場のフェンスがなぎ倒され、停めてあった車3台が押し流され、互いにぶつかり、ドアミラーなどが破損した。

■ 警察には「ボーンと音がした。貯水槽が壊れて道路に水があふれている」という110番通報があった。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ 貯水槽の容量は150KLであるが、当時、どのくらいの量の水が入っていたかはわからないという。また、13日(水)は貯水槽やその周辺で作業などは行われておらず、警察が破裂した原因や詳しい状況を調べている。

■ インターネットでは、報道された動画が投稿されている。
 (写真はYoutube.comから引用)
被 害 
■ 水道の貯水槽1基が損壊した。

■ 大量の水が流出し、車3台が押し流されて互いにぶつかり、損傷した。

■ 負傷者は出なかった。
(写真はTwitter.comから引用)
 (写真はTwitter.comから引用)
(写真はYoutube.comから引用)
< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 写真を見ると、事故のあった貯水槽は搬出されているようだが、どのような対処が行われているのかは不詳である。
 (写真はPbs.twning.comから引用)
                                  撤去作業   写真はTrendsmap.comから引用)
補 足
     神奈川県海老名市の位置  (図はKotobank.jpから引用)
■「神奈川県」は、日本の関東地方に位置する人口約920万人の都市である。
「海老名市」(えびな・し)は、神奈川県の県央地域に位置する人口約134,000人の都市である。

■「ショッパーズプラザ海老名」は神奈川県海老名市中央三丁目にあるショッピングセンターで、1984年に開業した。

■「貯水槽」(受水槽)は水道水を貯めておくタンクで、通常、FRPと呼ばれている繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)で製作されたものが多い。細かくは強化材として使用される繊維の種類によって細分化され、グラスファイバー(ガラス繊維)を使ったG-FRP、カーボンファイバー(炭素繊維)で作られたC-FRPなどがあるが、FRP製の貯水槽には不飽和ポリエステル樹脂をグラスファイバーで強化したG-FRPが一般的である。
     貯水槽の構造例  (写真はGoogleMapから引用)
 過去には、半永久的に耐久性があるといわれたFRPであるが、実際には紫外線や水の消毒に使用される塩素に長期にさらされることによる劣化や接合部のパッキンの劣化などから、一般的な耐用年数は15年とされる。耐用年数を過ぎている場合、以前は取替えてしまうことが普通だったが、FRP製のものは処理がむずかしく、環境上の問題もあり、最近は強化・延命する特殊工法による補修・修理を行うことが多くなっている。
 貯水槽の構造例を図に示す。パネルは平板や円弧などいろいろな型式が用いられているが、事故のあったパネルは円弧型とみられる。貯水槽の大きさは、高さ約4m×幅9m×奥行7mと報じられている。この寸法の容量は252㎥である。メディアによって事故の貯水槽が300トン(300㎥)と報じているところもあったが、寸法からすれば容量が大きすぎるので、150KLと報じている方をとった。
                        事故前の貯水槽  (写真はGoogleMapから引用)
所 感 
■ 貯水槽の事故原因は分かっていない。
 破損状況を被災写真で見ると、パネル接合部からの漏れによって起こったのではなく、パネル自体が微小割れを起点にして一気に割れに進展していったのではないかと感じる。貯水槽の定期検査や補修はどのようになっていたのだろう。

■ 今回の事故では負傷者がいなかったが、大量(容量は150KLであるが、流出した量は不詳)の水が一気に流出しているので、そばに人がいたら、ケガをしただろう。実際、貯水槽の外側に設置されていたフェンスや駐車場のフェンスが倒されているので、相当な力である。2011年4月に起こった「消火用水タンクが破裂して死者2名の事故」では、鋼製の水タンクが破裂し、容量1,100KLのタンクから水が一気に流出し、2名の死者を出した事例がある。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・News.tv-asahi.co.jp,  「ボーンと音が」貯水槽が破裂 道路水浸し 車も・・・,  May  13,  2020
    ・Pikarinnews.net,  ダイエー海老名店の貯水槽が破裂する事故 海老名市,  May  13,  2020
    ・Msn.com,  貯水タンク破裂で大量の水 車同士がぶつかる被害も,  May  14,  2020
    ・Youtube.com,  ボーンと音が」貯水槽が破裂 道路水浸し 車も・・・ ,  May  13,  2020


後 記: 今回の事故の一報を目にしたとき、思い出したのは、 「消火用水タンクが破裂して死者2名の事故」(20114月)です。当時、世の中には、思いもよらない事故が起こると感じましたが、まさか日本において大型の貯水槽が破裂する事故が起こるとは皮肉なものです。米国では、原油・天然ガス生産井において塩水タンクが爆発・火災を起こす事例が少なくありませんが、他人事でなく、日本でも、水だから安全だとはいえないなと考えながらまとめました。

2020年5月23日土曜日

インドネシアで修理中の石油タンカーで爆発、死傷者29名


 今回は、 2020511日(月) 、インドネシア北スマトラ州メダンのベラワン港にあるワルナ造船所で、ドック入りして修理中の石油タンカーが爆発して火災が起こり、作業員29名が死傷する事故を紹介します。
 (写真はThejakartapost.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、インドネシア(Indonesia)北スマトラ州(North Sumatra)メダン(Medan)のベラワン港(Belawan Port)にあるワルナ造船所(Waruna Shipyard)である。

■ 事故があったのは、修理のために4月11日(土)にドック入りしていた石油タンカーのジャグ・リーラ号(Jag Leela)である。ジャグ・リーラ号は1999年に建造された原油タンカーで、全長243m×幅42m、積貨重量トン105,148DWTのインドネシア籍で、所有者はインドネシアのワルナ・ヌサ・センターナ社(Waruna Nusa Sentana)である。
            北スマトラ州メダンのベラワン港付近(矢印が発災場所)  (写真はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年5月11日(月)午前8時30分頃、ドック入りしていた石油タンカーで爆発があった。事故は船尾の方で2回の爆発音があったあと、炎とともに真っ黒な煙が噴き上がった。

■ 爆発によって近くの家が軽微な損傷を受けた。地元住民のひとりは、「爆発音を聞いて家を出たところ、ワルナ造船所から煙が上がっているのが見えた」と語った。

■ 発災に伴い、救助隊員と消防隊が出動した。発災当時、タンカーには60名の作業員がおり、救助隊員は、船上に取り残された作業員を助けるために活動した。作業員は少なくとも22名が負傷し、病院へ搬送された。


■ 消防隊は、陸上から消防車6台を使って活動を行うとともに、タグボート3隻に消火銃を配置して消火活動を行った。石油タンカーのオイルタンクに保管されていた残油に火がつき、消火活動をさまたげた。火の勢いは激しく、発災した石油タンカーの隣にドック入りしていた船舶に広がった。

■ 救助隊は、現場から7人の焼死体を発見した。亡くなった人は、炎に囲まれて逃げ道を見つけることができなかったとみられる。

■ 事故の状況は動画でインターネットに流れており、難を逃れてきた人たちが船首に集まっているのがわかる。  (YouTube「Kapal Tangker MT Jag Leela Terbakar」を参照)
(写真はinterestingengineering.comから引用)

 (写真はMaritime-executive.com から引用)
(写真はWaspada.co.idから引用)
被 害 
■ 人的被害は死傷者29名で、内訳は死亡者7名、負傷者22名である。

■ 石油タンカーが船尾を中心に火災による焼損を受けた。 発災した石油タンカーの隣にドック入りしていた船舶にも被害が出た。両船の被害の範囲や程度は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。

■ 火災の着火要因は、タンカーのオイルタンクにおいて短絡によって発生した火花と報じられている。

< 対 応 >
■ 消火活動は7時間に及び、午後3時頃に火災は鎮圧された。
(写真はWaspada.co.idから引用)
(写真はSumatra.bisnis.comから引用)
補 足
■「インドネシア」(Indonesia)は、正式にはインドネシア共和国といい、インド洋と太平洋の間にある東南アジアとオセアニアに属し、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島(カリマンタン)など17,000以上の島々で構成される人口約2億6,700万人の国である。
 「北スマトラ州」(North Smatra)は、スマトラ島の北西部にあり、1,400万人の州である。
 「メダン」(Medan)は、スマトラ島東北部に位置し、人口約210万人の北スマトラ州の州都である。
             インドネシアと周辺国 (写真はGoogleMapから引用)
■「ワルナ造船所」(Waruna Shipyard)は、1990年に設立され、現在、7基のドックを有している。最大100,000DWTのドックを保有する造船所である。
 発災のあったドックはもっとも大きい第7ドックだとみられる。ワルナ造船所のウェブサイトでは、建設中となっているが、石油タンカーのジャグ・リーラ号(全長243m×幅42m、積貨重量トン105,148DWT)が入る大きさは第7ドックしかない。
                ワルナ造船所 (写真はWarunashipyard.co.idから引用)
■ 船舶の消防活動については、インターネット資料「船舶火災への対処と対応」(日本海難防止協会、2016年)にまとめられている。要約はつぎのとおりである。
(1) 消防活動の原則
 ● 消防活動は人の救助を最優先とする。消火活動の実施は、消火水による損害や積載物の損傷の被害を最小限度にとどめるよう行う。
 ● 被災船の船長を確保して、船体構造、 船舶消防設備、積載物、乗員などの情報を早期に把握し、活動方針(消火戦略)を立てる。消防活動は、被災船の乗組員と連携して行う。
 ● 指揮本部長は、消防活動の開始前に船長に通知し、被災船の乗組員の協力を求める。
 ● 船舶火災は、鎮火の確認が容易でなく、再発火の防止に配意する。

(2) 消火活動
 ● 消火手段は、原則として、①被災船の固定消火設備、②ポンプ車・消防艇による放水、③積み荷の処分の順位で行い、本船乗組員の意見を考慮して決定する。
 ● 船舶は、構造上、熱伝導が速いため、まず船体外壁へ放水して冷却作業を行う。
 ● 注水による消火の場合、水損(水による被害)や船体バランスへの影響を考慮する。
 ● 延焼拡大防止のため、燃焼している積み荷を船外に搬出する場合、被災船の船長の要請または合意を必要とし、 搬出作業は船舶や埠頭のクレーンなどを活用する。
 ● 爆発などにより他船や陸上施設に重大な影響が予想される場合、被災船の移動を検討する。

(3) タンカー火災における留意事項
 ● 余裕をもった爆発危険区域を設定し、可燃性ガスによる二次災害(引火、誘爆)を防止する。可燃性ガスが周辺に滞留する恐れがあり、ガス検知器によりガス濃度を測定し、安全を確保する。
 ● 消防活動は、原則として、風上および爆発危険区域外か ら活動する。
 ● 人命危険がある場合、誘爆防止のため大量の放水による冷却を実施し、早期に人命救助を行う。

所 感
■ 火災の原因は調査中で分かっていない。
    石油タンカーの構造例 (図はWikiwand.comから引用)
 火災の着火要因はタンカーのオイルタンクにおいて短絡によって発生した火花と報じられているが、この爆発・火災については、つぎのような疑問がある。
 ● オイルタンクとは、原油用のカーゴタンクなのか、タンカー燃料用の燃料油タンクなのか明確でない。
 ● カーゴタンクであれば、修理前に洗浄するのが基本であるが、なぜ洗浄しなかったか。あるいは、洗浄した場合、なぜ完全にやらずに油が残る程度に終わったのか。 
 ● カーゴタンク内の原油は、引火源があれば、容易に可燃性ガスに着火する。しかし、燃料油タンクであれば、重油クラスであり、容易に引火はしない。燃料油タンクの場合、短絡による火花で引火するか疑問である。
 ● 石油タンカーの修理であれば、いろいろな火気を取り扱うと思われるが、短絡による火花に限定したのはなぜか。
 いずれにしても、タンカーの洗浄の要否や工事中の安全管理など人為的な要因が潜んでいる事例である。

■ 船舶の消防活動は、陸上の設備とは違って、船長や船主の意見を聞いて消防戦略を立てる必要がある。今回のように修理のためにドック入りし、船長や乗組員が不在の石油タンカーの場合はより複雑であろう。詳細な消防活動は分からないが、船舶の消防活動の基本である人命救助が最優先にとられていると感じる。修理に携わっている作業員の生命が脅かされており、救助隊と消防隊に分け、連携をとりながら救助活動を行ったと思われる。それでも火の回りが早かったためか、7名が亡くなってしまった。

■ 本ブログで紹介した船舶事故には、つぎのような事例がある。
 今回の事故も石油タンカーにおける火災事故の対応の厳しさを示す事例である。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Afpbb.com,  インドネシアの港で石油タンカー火災、22人負傷, May  11,  2020
    ・Cannelnewsasia.com, At least 7 dead from Indonesia oil tanker fire, May  12,  2020
    ・Firedirect.net, Indonesia – 7 Killed, At least 22 Injured In Oil Tanker Fire, May  13,  2020
    ・Thejakartapost.com, Seven victims of oil tanker fire in North Sumatra identified, May  13,  2020
    ・Maritime-executive.com, VIDEO: Explosion Causes Injuries Aboard Tanker in Indonesian Shipyard, May  13,  2020
    ・Offshore-energy.biz, Tanker fire kills seven at shipyard in Indonesia, May  14,  2020
    ・Xinhuanet.com, Fire breaks out on oil tanker at Indonesian port, several missing, May  11,  2020
    ・Industrialfireworld.com, Indonesian Tanker Burns While Under Repairs at Home, May  13,  2020
    ・Job.or.id, Heboh..Kapal Tanker Jag Leela Terbakar di Belawan, Belasan Pekerja Dilarikan ke Rumah Sakit, May  11,  2020
    ・Insurancemarinenews.com, Seven dead from Jag Leela fire, May  18,  2020
    ・Bairdmaritime.com, FIRE KILLS SEVEN ON DRYDOCKED TANKER IN SUMATRA, INDONESIA, May  14,  2020


後 記: 今回の事故情報は連絡を受けて知った事例で、早速調べ始めました。そうすると、3月以降に事例掲載をやめていた“FireDirect” というインターネット情報誌が再開しており、その最初の事例投稿が本事故情報でした。新型コロナウイリスの影響で事故情報を伝えるメディアが少なくなっていましたが、取材を再開し始めたのかもしれません。マスクと同じですね。新型コロナウイリスでまったくマスクが手に入らなくなっていましたが、1週間ほど前から薬局の店頭に出始め、売り切れることなく棚に積まれています。政府から支給される予定のマスクについて山口県はまだ配布されていません。実際、マスクより取材制限の無い状況を望みますね。


2020年5月17日日曜日

この10年間の「世界の貯蔵タンク事故情報」について(その1)

「世界の貯蔵タンク事故情報」と称して事故情報を紹介し始めたのが、2011年5月からです。その後、タンク施設以外で世間の耳目を集めるような事故があり、タンク以外の事故情報も投稿してきました。今回は、2020年4月で十年になるのを機にこれまでの事故情報のデータベースをもとに考察してみます。これから何回かに分けて行っていく予定です。
< はじめに >
■ 「世界の貯蔵タンク事故情報」と称して当ブログで事故情報を紹介し始めたのが、2011年5月からである。当初は名の通り貯蔵タンクと関連施設の事故を対象としていたが、タンク施設以外で世間の耳目を集めるような事故があり、タンク以外の事故情報も投稿してきた。2020年4月で十年になるのを機に、これらの事故情報のデータベースをもとに考察してみる。考察はこれから何回かに分けて行っていく予定である。

< 掲載した事故件数の割合 >  
■ 2011年5月から始めたので、基本的にそれ以降の事故情報である。しかし、それ以前の事故でも注目された事故がある。たとえば、2005年の英国のバンスフィールド事故、2009年のプエルトリコのカリビアン石油火災やインドのインディアン石油火災などである。これらの事故は論文で引用されるケースも多く、事故状況をブログで紹介した。

■ この十年間に掲載した事故情報は計337件である。これらを1953~1999年、2000~2009年、2010~2020年の3つに区分してみると、図のとおりである。
掲載した事故件数の割合
■ 2009年以前の事故件数は40件であり、これをどうみるかであるが、筆者自身としては意外と多いと感じる。もっとも古い年の事故は、つぎの事例である。
 このほかにフランス環境省(現:フランスエコロジー・持続可能開発・エネルギー省)がまとめたARIA(事故の分析・研究・情報)を紹介してきたので、多くなっている。 最初に紹介したのは、つぎの事例である。
 このARIAの事例はよく記録にまとめられており、貴重な報告書である。しかし、残念ながら、ARIA(事故の分析・研究・情報)は現在は更新されていない。

< 年度ごとの事故件数の割合 >  
■ 2011年以降の年度毎の事故件数は292件である。これを年度ごとに分けると、図のとおりである。年間の平均事故件数は約32件となる。(2011年は5月から始めており、2020年は4月までの件数であるので、8年間をとった) 1か月あたりでは、約2.7件である。
年度ごとの事故件数
■ もっとも多い年は2013年の46件で、もっとも少ない年は2015年の24件である。この2年の差異は1.9倍で非常に差がある。一方、この2年を除けば、2012年~2019年は28件~36件と比較的差がない。

■ 実際、2013年には、石油貯蔵タンク以外で多くの死傷者を出すような重大な事故があった。また、この年に東京電力福島原子力発電所の汚染水貯槽(タンク)で一連の漏れ事例があった。主な事故を列記すると、つぎのとおりである。

< 月の上・中・下旬における事故件数 >  
■ 事故が起こったのが、月の上旬、中旬、下旬の3区分で分けると、図のとおりである。
(上旬;1~10日、中旬;11~20日、下旬;21~31日)

月の上・中・下旬における事故件数
■ もっとも多いのが中旬で約43%、次が下旬の約30%、もっとも少ないのが上旬で約27%となった。事故発生の背景にはいろいろあろうが、中旬は上旬の約1.6倍多い結果だった。日にち毎に分けることはできるが、結果が出ても因果関係が出てくることは考えにくいので、月を3つに分けてみた。しかし、中旬が上旬に比べて事故の発生が多かったが、月の中旬に注意が必要だと断言はできないように思う。

< 曜日ごとの事故件数 >  
■ 曜日ごとに分けた事故件数は図のとおりである。
 傾向としては、月曜から徐々に増え、金曜がもっとも多く、土日に下がり、もっとも少ないのが日曜である。金曜の件数は69件で、日曜の件数が30件であり、金曜は日曜の2.3倍である。
曜日ごとの事故件数
■ 月の上・中・下旬における事故件数では、はっきり出ていなかったが、曜日ごとの事故件数では1週間における人の社会・経済活動との関係があるとようにみえる。中には、台風や地震といった自然災害がからんだ事例もある。

■ 事故防止は常に考えておかなければならないが、曜日ごとの事故件数の割合から、金曜日は気の緩みがないように心掛けることが肝要だといえよう。金曜日に起こった主な事例は、つぎのとおりである。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Tank-accident.blogspot.com, May 2011 – April 2020

後 記: 最近のテレビ、新聞、インターネットでは、新型コロナウイリス関連のことばかりです。2020224日の専門家会議を受け、日本政府が229日に「これから12週間が瀬戸際」と言っていたのは何だったのでしょう。瀬戸際、すなわち“狭い海峡と外海の境” ではなく、すでに陸地の見えないウイリスの海に出ていたのですね。日本はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMARS中東呼吸器症候群)にさらされなかったので、ほかの国よりも感染症に対して鈍感だったといわれています。しかし、畑村洋太郎氏が2006年に出した「失敗学事件簿 あの失敗から何を学ぶか」で「第5章 災害・病気から学ぶ失敗学」の中に「SARS騒動の背景にあるもの」として、人間の「移動欲」につきまとうリスクについて警鐘を鳴らしています。
 現在、メディアによる取材が縮小している中で、貯蔵タンク(だけではないが)の事故情報が聞こえてこないので、このブログを始めて10年間のデータを振り返るには良い時かと思ってまとめています。