2017年12月12日火曜日

マレーシアでディーゼル燃料タンクが爆発・火災、死者3名

 今回は、2017年11月3日(金)、マレーシアのセランゴール州ラワンにある建材メーカーのラファージ・マレーシア社の工場でディーゼル燃料タンクが爆発し、火災となり、3名の死者を出した事故を紹介します。
 (写真はLimaumanis.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、マレーシア(Malaysia)のセランゴール州(Selangor)ラワン(Rawang)ジャラン・クアン・ガアリング(Jalan Kuang Garing)にある建材メーカーのラファージ・マレーシア社(Lafarge Malaysia)のラファージ・ラワン工場である。

■ 発災があったのは、ラファージ・ラワン工場のディーゼル燃料タンクである。タンクは直径約12m×高さ約4.6mクラスで、内部に725KLのディーゼル燃料が入っていたといわれる。
                     マレーシアのセランゴール州ラワン付近     (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年11月3日(金)午後4時15分頃、ラファージ・ラワン工場のディーゼル燃料タンクで爆発があり、火災となる事故が起った。

■ 当時、タンクでは保守作業が行われており、タンク上に3名の作業者がいた。事故発生により、3名はタンク内へ落下した。

■ 発災に伴い、ラワン消防署、セルラヤン消防署、バトゥアラン消防署の3つの消防署から消防車5台と消防士30名が出動した。消火活動によって火災は1時間ほどで消された。

■ 三人の捜索が困難ということで、タンク内の油を排出するため、タンクローリーが手配され、午後10時頃から油の抜き出しが始められた。結局、13台のタンクローリーが使用された。11月4日(土)午後2時過ぎ、現場監督だった28歳の男性の遺体が発見されたのに引き続き、技術者の35歳と49歳のふたりの男性の遺体が確認された。

被 害
■ ディーゼル燃料用タンク内1基が焼損した。

■ 事故に伴い、死者3名の労働災害が発生した。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。

< 対 応 >
■ ラファージ・マレーシア社は、11月3日(金)、同社のウェブサイトのプレス・リリースによってラワン工場で火災が発生したことを発表した。同日午後9時に行方不明が3名あったことを追加掲載した。しかし、その後の状況について発表は行われていない。 
写真はWangcyber.comから引用)
(写真はNst.com.myの動画から引用)
(写真Limaumanis.comから引用)
補 足
■ 「マレーシア」(Malaysia)は、東南アジアのマレー半島南部とボルネオ島北部を領域とする連邦立憲君主制国家で、人口約2,900万人である。イギリス連邦加盟国で、タイ、インドネシア、ブルネイと陸上の国境線で接し、シンガポール、フィリピンと海を隔てて近接する。通常、マレー半島部分が「マレーシア半島」、ボルネオ島部分が「東マレーシア」 と呼ばれる。一方、マレー半島とボルネオ島間の往来は、マレーシア国民であってもパスポートを必要とする。
 「セランゴール州」(Selangor)は、マレーシア半島の西部に位置し、人口約630万人の州である。
 「ラワン」(Rawang))はセランゴール州の東部に位置し、ゴンバク地区にある町である。
(図はGoogleMapから引用)
■ 「ラファージ・マレーシア社」(Lafarge Malaysia)は、スイスを本拠にする世界最大の建材メーカーであるラファージ・ホルシム社(LafargeHolcim)の子会社で、マレーシアにおいてセメントを主として展開する建材メーカーである。マレーシアのラワンにラファージ・ラワン工場がある。

■ 発災タンクは、ディーゼル燃料用で、直径約12m×高さ約4.6m、内部に725KLの油が入っていたことになっている。しかし、直径約12m×高さ約4.6mのタンクでは、容量が520KL程度であり、タンク仕様が違っていると思われる。725KLが正しいとすれば、直径約14.5m×高さ約4.6mクラスのタンクとなる。グーグルマップでラファージ・マレーシア社のラファージ・ラワン工場の敷地内を見たが、該当する発災タンクは見当たらなかった。
 一方、発災の関連写真を見ると、当該タンクを含めてまわりの設備の一部が他と比べて新しいように思える。グーグルマップの施設写真にも、この新しそうな設備に該当するところがない。最近、設置された設備ではないだろうか。
      ラファージ・マレーシア社ラファージ・ラワン工場付近   (写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ ディーゼル燃料用タンクが爆発して火災になるという事例で稀なようにみえるが、この2年ほどでも、つぎのような類似事例がある。
 過去の事例から類推すると、石油について安易な取り扱いをし、タンク内にディーゼル燃料だけでなく、廃ガソリンのような揮発性の高い油を混合したのではないだろうか。

■ タンクが爆発してタンク外に吹き飛ばされた事例はあるが、タンク上にいた保守作業者がタンク内に落下するという例はない。発災写真を見ると、屋根部が噴き飛ばされている。また、タンクのまわり階段の頂部にかなり広いフロアらしいものが見られる。これは噴き飛んだ屋根部の反対方向にあるので、タンク屋根が噴き飛んだ際、タンク内側に傾き、上にいた人がタンク内に落下するという最悪の悲劇が起きたのではないだろうか。


備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。 
     ・Lafarge.com ,   Fire at Lafarge Rawang Plant,   November  03,  2017
      Nst.com.my , 725,000 Litres of Diesel to be Pumped Out to Search for Three Missing Man, Following Explosion at Factory   November  03,  2017
  ・Nst.com.my , Rawang Oil Storage Tank Eplosion: Bodies of All Three Victims Found,  November  04,  2017
      Nst.com.my, Bodies of All Three Victims in Oil Storage Tank Fire Found,  November  05,  2017
      malaysiandigest.com , Rawang Storage Tank Fire: Diesel Extraction Operation Continues to Locate Victims,  November  04,  2017
    Cyber-rt.info,  3 Feared Killed in Rawang Cement Plant Diesel Tank Explosion,  November  04,  2017
          Hazardexonthenet.net,  Malaysia Cement Plant Blast Kills Three,  November  06,  2017


後 記: この事故は、別な情報を探していてたまたま知った事例です。さらに詳しい情報を検索しましたが、望むような情報は出てきませんでした。タンク仕様(直径×高さ)と入っていた油量に整合がとれないということなど、なにかすっきりしない事例でした。ラファージ・マレーシア社も事故発生の第一報をウェブサイトのプレス・リリースで発表していますが、3名の行方不明という人災が起こっているらしいことが分かってから、プツリと続報が途絶えています。会社のあわてぶりを感じます。このようなことから、所感はかなり類推した内容を書くことになってしまいました。


2017年12月5日火曜日

米国サウス・ダコタ州で原油パイプラインから流出事故

 今回は、2017年11月16日(木)、カナダのトランスカナダ社の原油パイプラインが、米国サウス・ダコタ州マーシャル郡アマーストの村で漏洩事故を起こした事故を紹介します。
(写真はReuters.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、カナダのトランスカナダ社(TransCanada Corp.)の石油パイプライン施設である。    

■ 発災があったのは、カナダのオイルサンドによる原油を米国へ輸送するキーストン・パイプライン(Keystone Pipeline)である。パイプラインは、カナダのアルバータからノース・ダコタ州、サウス・ダコタ州、ネブラスカ州、カンサス州、ミズーリー州を通ってイリノイ州とオクラホマ州の製油所につながっている。輸送量は約60,000バレル/日(9,540KL/日)である。
 発災があった場所は、サウス・ダコタ州(South Dakota)マーシャル郡(Marshall County)アマースト(Amherst)の村である。
カナダから米国各州を横断するキーストン・パイプライン
 (図はBbc.comから引用)
アマースト(Amherst)付近 (矢印が発災場所)
 (写真はGoggleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年11月16日(木)午前6時頃、トランスカナダ社キーストン・パイプラインで圧力低下が検知された。場所はノース・ダコタ州にあるラドン・ポンプ・ステーションから南の配管部で、漏洩が発生したものとみられた。

■ トランスカナダ社は、直ちパイプラインの運転を停止し、15分後にラドン・ポンプ・ステーションから南の35マイル(56km)の間のサウス・ダコタ州に敷設されたパイプラインを孤立させ、緊急事態対応基準による行動をとった。

■ トランスカナダ社によると、漏洩量は5,000バレル(818KL)と推定された。

(写真はTranscanada.comから引用)
■ 11月16日(木)、トランスカナダ社は、パイプラインの空中パトロールにおいてサウス・ダコタ州マーシャル郡アマーストの農地に油の漏洩部を発見し、その写真を同社ウェブサイトのツイッターで公開した。

■ 油が漏洩した場所は、アマーストの村から南東に約2.5マイル(4km)の農地の中にある保存維持区域で、土壌の汚染エリアは半径約100ヤード(90m)に及んだ。近くの住民によると、現場は油の強い臭気が漂っているという。

■ サウス・ダコタ州環境・天然資源省(South Dakota Department of Environment and Natural Resources)は、担当者を現地へ派遣した。環境・天然資源省では、地表水に影響するような農地への漏洩ではなく、飲料水系への脅威も無いとみている。

被 害
■ 漏洩した油で半径約90mの範囲の土壌が汚染された。 漏洩油は推定約818KLで、漏洩した油の回収(約168KL)と土壌汚染の浄化が行われている。

■ 事故に伴う負傷者は無かった。

■ パイプラインが漏洩するような損傷をした。損傷状況は公表されていないが、損傷部は取替え工事が行われた。
            パイプライン漏洩の場所(矢印)    (写真はAberdeennews.comから引用)
              パイプライン漏洩汚染エリア    (写真はAberdeennews.comから引用)
< 事故の原因 >
■ パイプラインの漏洩原因は調査中である。連邦政府の関係者によると、パイプライン漏洩は2008年の建設時におけるダメージによるものとみている。

■ 漏洩部の損傷部分の予備調査はトランスカナダ社とパイプライン・危険物安全局(PHMSA)の両者で行われているが、結果は公表されていない。また、損傷原因は国家交通安全委員会(National Transportation Safety Board)の金属材料研究所で行われている。

< 対 応 >
■ トランスカナダ社は、11月17日(金)から漏洩箇所について24時間体制でクリーンアップ作業を開始した。75名の作業員のほかに、トランスカナダ社は環境管理、金属材料、エンジニアリングの各専門家を派遣してサポート体制をとった。

■ 11月17日(金)には、パイプライン・危険物安全局(PHMSA)、サウス・ダコタ州環境・天然資源省などの州政府機関が現場に担当者を派遣して調査を行っている。

■ 11月18日(土)、現場では、漏洩区域に野生動物が侵入することを防ぐ対策がとられた。また、大気汚染(空気質)のモニタリング装置が設置され、24時間監視している。これまでのところ、重大な懸念事項は無いという。

■ 11月19日(日)、現場では、作業員が150名に増員され、クリーンアップ作業が24時間体制で進められた。また、漏洩区域へ重機が搬入できるように砂利道が整備され、ダンプカー、掘削機、ブルドーザーによる土壌の浄化作業が行われた。作業は数週間かかるとみられる。

■ 11月24日(金)、トランスカナダ社は作業員170名の24時間体制でクリーンアップ作業を行い、これまでに44,400ガロン(168KL)の油を回収したと発表した。また、漏洩箇所は23日(木)までに特定し、すべてを掘り起こす作業が始められ、26日(日)までに終了予定である。損傷部分の予備検査はトランスカナダ社とパイプライン・危険物安全局(PHMSA)の両者で行い、その後、ワシントンD.C.に送られ、国家交通安全委員会(National Transportation Safety Board)の金属材料研究所で調査が行われる予定だという。

■ 大気(空気質)のモニタリングは継続して行われており、11月24日(金)時点で問題は生じていない。水系に関しても懸念事項はないが、トランスカナダ社は安全上の予防措置として、現場から約1.5マイル(2.4km)離れた場所の飲料水用井戸のサンプルを採取し、正常であることを確認したという。

■ 11月27日(月)、トランスカナダ社は停止していたパイプラインの修理が終了したので、28日(火)に運転を再開すると発表した。同社によると、パイプラインの修理と運転再開計画についてはパイプライン・危険物安全局(PHMSA)の確認を得たという。

■ トランスカナダ社のパイプラインには電子漏洩検知装置が設置されていたが、今回の漏洩箇所に対して漏洩検出や漏れ兆候を検出できなかったことについて、パイプライン・危険物安全局(PHMSA)は改善を指示している。
               パイプライン漏洩場所付近    (写真はAberdeennews.comから引用)
 パイプライン漏洩場所付近で作業するトランスカナダ社などの人員・車両
 (写真はMedia.graytvnc.com から引用)
                クリーンアップ作業  (写真はTranscanada.comから引用)
           クリーンアップ作業の現場事務所  (写真はAberdeennews.comから引用)
                  クリーンアップ作業  (写真はAberdeennews.comから引用)
                    クリーンアップ作業  (写真はAberdeennews.comから引用)
< 事故後の反応 >
 11月16日(木)の事故発生して12日後の28日(火)には、パイプラインの運転が再開されたが、メディアでは、トランスカナダ社のパイプラインの安全管理や新規のパイプライン計画について、つぎのような懸念を示す意見が出されている。
■ パイプラインの漏洩は今回が初めてではなく、2016年4月、サウス・ダコタ州の南東部で流出事故があり、1週間運転が停止された。私有地に流出した量は77KLとみられている。連邦規制当局によると、原因はパイプラインの溶接欠陥によるものだという。この漏洩事故では、水系や地下の帯水層への影響は無かった。
20164月のパイプライン漏洩事故時のクリーンアップ作業
 (写真はDesmogblog.comから引用)

パイプラインの上にサドルを設置する工事の例
 (写真はTwitter.comから引用)
■ 連邦政府の関係者によると、今回のサウス・ダコタ州のパイプライン漏洩は2008年の建設時におけるダメージによるものとみている。パイプライン敷設時に、水による浮力の問題の対策としてパイプラインの上にコンクリートのサドルを載せて設置した。約10年の間にパイプラインにかかるサドルによる重量がパイプライン自身とコーティングに損傷を与えた可能性があるという。
 漏洩箇所の近くの農地の所有者によると、パイプラインが敷設されるとき、土地は湿潤状態だったが、時を待つ余裕はないと、工事は強行されたと語っている。

■ トランスカナダ社のキーストン・パイプラインは、2010年の事業開始前に規制当局へ提出したリスク・アセスメントに記載されたものと比べ、実際には、漏洩事故が多発し、漏洩した量も多いことが分かった。
 既存のキーストン・パイプラインは全長2,147マイル(3,455km)で、2010年操業開始後、米国内において3回の大きな漏洩事故を起こしており、今回のサウス・ダコタ州の約818KLの漏洩事故のほか、2011年にノース・ダコタ州で約64KLの漏洩、2016年にはサウス・ダコタ州で約77KLの漏洩事故がある。
 パイプライン建設前、トランスカナダ社のリスク・アセスメントでは、50バレル(8KL)を超えるような漏洩事故の可能性は、米国におけるパイプライン全長にわたって7~11年に1回以下だとしていた。さらに、2回の漏洩事故のあったサウス・ダコタ州では、41年に1回以下となっていた。

(図はInsideclimatenews.orgから引用)
■ トランスカナダ社のパイプライン保有距離は、計画中のキーストンXLパイプラインを含めると、全長2,687マイル(4,300km)になる。キーストンXLパイプライン計画はオバマ政権時に凍結されたが、トランプ大統領は2017年3月に連邦政府の許可を出した。しかし、キーストンXLパイプラインは環境保護団体、アメリカ先住民族、地主の一部から強固な反対に遭っている。
 なお、キーストンXLパイプラインはモンタナ州、サウス・ダコタ州、ネブラスカ州を横断する計画であるが、トランスカナダ社の流出解析によれば、1.5バレル(240リットル)以下の漏洩は10年間に2.2回と推定されている。1,000バレル(159KL)を超えるような漏洩は100年間に1回と推定されている。

補 足
■ 「サウス・ダコタ州」は、米国中西部に位置し、グレートプレーンズ(大平原)にあり、州の中央にはミズーリ川が南北に流れており、州の東と西は地理的にも、社会的にもはっきりした特徴があるといわれる人口約82万人の州である。「ノース・ダコタ州」は、サウス・ダコタ州の北に位置し、カナダと国境と接する人口約68万人の州である。
 「マーシャル郡」(Marshall County)は、サウス・ダコタ州の北東部に位置し、人口約4,600人の郡である。
 
■ 「トランスカナダ社」(TransCanada Corp.)は、1951年に創業したカナダのカルガリーに本拠をおくエネルギー会社で、北米で原油、天然ガス、発電事業を展開する。今回、事故のあったキーストン・パイプライン(Keystone Pipeline)は、カナダのアルバータからノース・ダコタ州、サウス・ダコタ州、ネブラスカ州、カンサス州、ミズーリー州を通ってイリノイ州とオクラホマ州の製油所につながっている。輸送量は約60,000バレル/日(9,540KL/日)であるが、現在、さらに増量を果たすためのキーストンXLパイプラインが計画されている。

所 感
■ 漏洩原因はパイプラインの建設時に問題がありそうである。この種の問題としては溶接欠陥、防食コーティングの不良、配管敷設上の不良などである。特に、今回は水の浮力対策としてパイプラインの上にコンクリートのサドルを載せる工法に疑問が出されている。かなり荒い工事が行われているという印象をもつ。

■ トランスカナダ社の発災事業所としての対応は速い。パイプライン圧力低下から漏洩事故と判断し、緊急停止によるパイプライン孤立の確立、空中パトロールの実施、関係機関への連絡、担当者の現場派遣、ウェブサイトでの事故情報の掲載、クリーンアップ作業の手配、損傷部位の調査、損傷配管部の取替工事と極めて迅速に行われている。そして、事故後12日で運転を再開している。
 一方、一連の動きの中で肝心な点は意図的に明らかにしていないと感じる。漏洩の原因になった損傷部位の状況はまったく語っていないし、汚染土壌の状況も語っていない。ウェブサイトでは、一般的な質問に対する回答のコーナーを設けているが、内容は常識的なことで、事前に作成されたものを掲載しているという感じである。パイプラインの上にサドルを載せた工法に疑問が持たれている中で、取替え工法について言及されていない。配管漏洩原因を明らかにせず、漏洩現場ではクリーンアップ作業中(汚染土壌の浄化)に、運転再開を果たしているが、このような進め方がカナダや米国では認められることに疑問を持つ。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Transcanada.com, Amherst incident,  Response underway,  November  16~27,  2017
    ・Nytimes.com,  Keystone Pipeline Leaks 210,000 Gallons of Oil in South Dakota,  November 16,  2017
    ・Reuters.com,  Keystone Oil Pipeline Leaks in South Dakota, as Nebraska Weighs XL ,  November 16,  2017
    ・Ksfy.com , Landowner near Keystone Pipeline Leak Says He isn't Surprised,  November 17,  2017
    ・Reuters.com,  Keystone Oil Pipeline Leaks in South Dakota, as Nebraska Weighs XL ,  November 16,  2017
    ・Chicagotribune.com , Keystone Leak Won't Affect Nebraska Ruling Because Regulators Can't Consider Pipeline Safety ,  November 17,  2017
    ・Firedirect.net, Major Oil Leak Reported from Keystone Pipeline,  November 20,  2017
    ・Globalnews.ca,  Keystone Pipeline will Reopen Tuesday after Leak Repaired,  November 27,  2017
・Globalnews.ca, Keystone Pipeline Leak in South Dakota Likely Caused by 2008 Damage: Report ,  November 28,  2017
    ・Reuters.com,   Keystone's Existing Pipeline Spills far more than Predicted to Regulators,  November 27,  2017
    ・Accuweather.com, Environmental Concerns mount as Keystone Pipeline Leaks more Oil than Predicted,  November 29,  2017
    ・Aberdeennews.com , Collection: Photos and Graphics of Keystone Oil Leak in Marshall County,  November 29,  2017
    ・Kelofm.com, A harshly Placed ‘Saddle' to Blame for Keystone Spill?,  November 30,  2017



後 記: 以前、パイプライン漏洩事故に対して信じられないくらい(米国民は)鈍いように思うと感想を述べたことがありますが、今回、改めてそのように感じました。当該事故のような多量漏洩であっても補修すれば終わりという感覚のように思います。今回の事故では、米国民でなく、企業および関係機関がそうだと感じました。事故を小さくみせようというのは、事故当事者の心理です。今回、漏洩場所の空撮の写真を公表していますが、横に走っている水路が写っていない映像を選んでいます。この写真を見たメディアの中には、「近くに町は無く、水路にも影響のないところのように見える」という記事を書いています。このあと、別なメディアがドローンや飛行機で撮った漏洩場所と水路の見える写真(当ブログ標題の写真など)を掲載し、注目されたようです。
 一方、今回の漏洩事故は完全に政治的な話の展開になっています。米国の大手メディアも取り上げ、当該パイプラインの信頼性に対する疑問が提起されている上に、オバマ政権時に凍結されたキーストンXLパイプライン計画がトランプ大統領によって許可された判断についての意見が出されています。当ブログでは、事故の内容を本筋としていますので、政治的な話は最小限に留めました。

2017年11月27日月曜日

バーレーンで原油パイプラインが爆発・火災、テロによる破壊活動か

 今回は、2017年11月10日(金)、バーレーン北部行政区に敷設されている国営のバーレーン・ペトロリウム社の原油パイプラインが爆発して火災を起こした事例を紹介します。
(写真はTwitter.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、バーレーン(Bahrain)北部行政区(Northern Governorate)に敷設されている国営のバーレーン・ペトロリウム社(Bahrain Petroleum Company: Bapco)のパイプライン施設である。

■ 発災があったのは、バーレーン・ペトロリウム社の主要なパイプラインの一本で、北部行政区アァリ(A‘ali )のブリ村(Buri)を通っている原油パイプラインである。

■ この原油パイプラインは、ABラインと称され、アブサファ油田から生産される原油をバーレーンのシトラにある製油所へ移送する。パイプラインの移送能力は230,000バレル/日(36,600KL/日)で、長さは約55kmである。パイプラインは3本あり、発災したのはこのうちの1本で、AB3ラインである。
バーレーン北部行政区のブリ村(Buri)周辺
  (図はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年11月10日(金)午後10時頃、首都マナマから約15km離れたブリ村を通っているバーレーン・ペトロリウム社の原油パイプラインが爆発し、大きな火災を起こした。

■ 発災があったのは、バス停の近くで、火炎と黒煙が夜空に舞い上がり、近くにあった車や建物が壊れた。炎の高さは最大約50mに達した。発災現場から約200m離れた場所にいた住民のひとりは、「炎が空高く上がっているのを見てびっくりしました。私は友人の家にいたのですが、家族のことが気になって家の方へ向かって駆け出しました。素足で出たので、アスファルト道路の上でケガをしたのに感じてないほどでした。私は家族とともに悪夢のようなところから必死に抜け出しました。空が燃えているようで、油が雨のように降っていました」と語った。

■ ブリ村で爆発のあったパイプライン部は、地下埋設でなく、地表に露出している箇所だった。

■ 火災発生に伴い、消防隊が出動し、現場に午後10時19分に到着した。消防隊は火の出ているパイプラインのそばにある2本のパイプラインについて冷却作業を始めた。

■ 現場近くの住民は安全な場所へ避難し、道路は警察によって交通規制が行われた。

■ 火災場所の近くに住んでいる人の中には、被災が及ばないようにガスボンベを取り外し、トラックで遠く安全な場所に移した人もいた。

■ バーレーン・ペトロリウム社は、発災のあったパイプラインの運転を停止した。その後、パイプラインの火災は制御下に入った。

■ この事故による死傷者は報告されていない。
(写真はRt.comから引用)
被 害 
■ 原油パイプラインの一部が損壊した。原油移送を停止するまで、内部の油が焼失した。

■ 現場近くにあった車や建物が壊れた。初期調査では、車両28台、住宅12軒、店舗4軒が損害を受けた。

■ 事故に伴う死傷者はいなかった。現場近くの住民が安全な場所へ避難した。
  
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、調査中である。

■ バーレーン政府は、テロ攻撃という不法行為による故意の過失だとみている。この背景には、バーレーン政府が支配しているのはイスラム教スンニ派であり、バーレーンで多数派のシーア派による抗議や散発的な暴力事件が起こっており、政府は長年悩まされている。バーレーンのシーア派はイランのシーア派の支援を受けているといわれている。 

 < 対 応 >
■ この爆発事故の犯行声明は出ていない。しかし、翌11月11日(土)、バーレーン内務省は、この爆発・火災の原因がイランの関与するテロリストの破壊活動だったと述べ、イランを非難した。一方、イランでは、外務省がこの話に対して「虚偽の話であり、子供じみた告発だ」と反論した。

■ 警察は容疑者を特定するための捜査を行っている。

■ 検察当局は事故について言及し、爆発の原因をつきとめるための調査を始めた。現場近くの道路は11月12日(日)も閉鎖されており、事故原因の調査が終了するまで通行が規制された。

■ 事故を受けて油田からバーレーンへの原油移送を一時停止していたが、影響を受けなかった2本のパイプライン(AB1ラインおよびAB2ライン)を介して製油所への供給を再開した。なお、バーレーン・ペトロリウム社は、11月13日(月)、事故のあったAB3ラインの修理が完了し、パイプラインの移送能力は完全に回復したと発表した。
 (写真はOrg.comから引用)
(写真はNewssofbahrain.comから引用)
 (写真はTwentyfoursevennews.com から引用)
 (写真はNewssofbahrain.comから引用)
補 足 
■ 「バーレーン」(Bahrain)は、正式にはバーレーン王国で、中東・西アジアの立憲君主制の国である。人口は約142万人で、ペルシャ湾のバーレーン島を主島として大小33の島から成る。王家のハリーファ家はイスラム教スンニ派であるが、国民の大多数はシーア派が占める。1994年以降、シーア派による反政府運動が活発になっている。
 「北部行政区」(Northern Governorate)は、バーレーンを統治する4つの行政区のうちのひとつで、北西部に位置し、人口約28万人の行政区である。
 「アァリ」(A‘ali )は、北部行政区の東中央に位置し、人口約10万人でバーレーンで最大の町のひとつである。「ブリ村」(Buri)は、アァリの町区域にあり、バーレーン国内で最も古い村のひとつである。
バーレーン(Bahrain)および周辺国   
 (図はGoogleMapから引用)
■ 「バーレーン・ペトロリウム社」(Bahrain Petroleum Company: Bapco)は、1929年にカルテックス石油の子会社として設立され、1997年にバーレーン政府が全所有権を引受け、国営の石油会社となった。原油の約1/6はバーレーン国内の油井で生産されたものであるが、残りはサウジアラビアと共同所有しているアブサファ油田からパイプラインを通じて供給されている。なお、アブサファ油田の操業はサウジアラビアのサウジ・アラムコ社が行っており、原油はサウジアラビア経由でバーレーンに移送されている。今回の事故時のパイプラインの送液停止はバーレーンからの要請でサウジアラビアが行っている。現在、アブサファ油田からの原油供給量を増やす計画が進められている。なお、シトラにはバーレーン唯一の精製能力26万バレル/日の製油所を保有している。
バーレーンの油田とパイプライン
  (図はFanack.comから引用)
所 感
■ 石油パイプラインの事故としてはつぎのような事例がある。その事故原因は違法行為、腐食、地すべりなどいろいろな要因があり、パイプラインには潜在的なリスクがあるといえる。

■ 今回の事例は原因が特定されていないが、テロによる破壊活動だとすれば、死傷者は出ず、パイプラインの被害や影響も意外に大きくなかったと言える。バーレーン・ペトロリウム社は、事故から3日後の11月13日(月)には、パイプラインの修理を完了させたと発表している。(配管損傷部分を切断し、安全対策を行ってフランジを溶接した後、新しいフランジ付き配管を取り付ける工事であれば、短期間で可能ではあるが)


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
   ・Reuters.com,  Bahrain Calls Pipeline Blast ‘Terrorism' Linked to Iran,  November 12,  2017 
  ・Aljazeera.com,  Iran Rejects Involvement in Bahrain Pipeline Blast,  November 13,  2017
    ・Abcnews.go.com , Bahrain Says Militants Hit Oil Pipeline, Opening New Front ,  November 11,  2017
    ・Gulfnews.com,  Bahrain Pipeline Blast Was Act of Sabotage,  November 11,  2017
    ・Washingtoninstitute.org,   Bahrain Pipeline Explosion Seen as a Warning from Iran,  November 14,  2017
    ・Ogj.com, Bahrain blames Iran for oil pipeline blast,  November 13,  2017
    ・Businesswire.com, Response to Bapco Pipeline Incident,  November 13,  2017
    ・Rt.com,  Bahrain blames Iran for ‘ Terrorist sabotage’ after Oil Pipeline Explosion,  November 11,  2017
    ・Newsofbahrain.com , Night of Horror for Residents of Buri,  November 12,  2017
    ・Firedirect.net,  Bahrain Blames Iran for Oil Pipeline Blast,  November 16,  2017
    ・Hazmatnation.com,  Oil Pipeline Blast Linked to Iranian Terrorism,  November 12,  2017
    ・Bapco.net ,  Response to Bapco Pipeline Incident ,  November 13,  2017



後 記: 今回の事例の報道は圧倒的に政治的要素の記事が多いものでした。どのような発災状況か分からないうちから、バーレーン政府はイランが支援しているテロによる破壊活動だと発表した内容や背景などを記載したものが多く、事例としての事実の記事を探すのに時間がかかりました。
 つねづね事故はその国の国情を反映していると思っていますが、今回のバーレーンの事故は、メキシコのパイプラインからの油窃盗やケニアのガソリン抜き取りなどの貧しさが背景にある事故と異なっていることを感じざるを得ません。中東はどうなっているのでしょうかね。イスラム教のスンニ派とシーア派の違いについてはインターネットにいろいろ掲載されています。私も見ましたが、疑問を感じる方にひとつだけ紹介しておきます。「教えて! 尚子先生 イスラム教・スンニ派とシーア派の違いは何ですか?【中東・イスラム初級講座・第9回】」