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2021年8月12日木曜日

メキシコ・ペメックス社のタンクターミナルで落雷によるリムシール火災

  今回は、2021731日(土)、メキシコのタバスコ州にあるペメックス社のドスボカス・マリータイム・ターミナルにある浮き屋根式タンクで落雷による火災が起こった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、メキシコ(Mexico)タバスコ州(Tabasco)にあるメキシコ国営石油会社;ペメックス社(Pemex)のドスボカス・マリータイム・ターミナル(Dos Bocas maritime terminal)である。

■ 事故があったのは、ドスボカス・マリータイム・ターミナルの浮き屋根式タンクである。


<事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2021731日(土)午後930分頃、落雷によって浮き屋根式タンクから火災が発生した。

■ 火はタンク周囲から上がっており、リムシール火災とみられる。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ ペメックス社は事故状況などの情報は公開していない。

■ 発災時の映像がインターネットのツイッターに投稿されている。

(投稿されたTwitter動画Antonio De Marcelo Aug 1を参照)    

被 害

■ 人的被害は無かった。

■ 貯蔵タンクが落雷によって火災となり、損傷した。落雷による被災タンク基数や内部液の焼失量は分からない。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によって浮き屋根式タンクのシール部で着火したとみられる。

< 対 応 >

■ 火災は深夜0時頃に制御された。

補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、北アメリカ南部に位置し、人口約12,600万人の連邦共和制国家である。

「タバスコ州」(Tabasco) は、メキシコの南西部に位置し、人口約224万人の州である。

■「ペメックス社」(Pemex)は、1938年に米国、英国、オランダの石油会社に支配されていた石油産業をメキシコ政府が国有化して設立されたメキシコ国営石油会社である。

「ドスボカス・マリータイム・ターミナル」(Dos Bocas maritime terminal)は、ドスボカス港にあるペメックス社の重要な原油輸出ターミナルである。ドスボカス港には、ペメックス社の新しい製油所の計画があり、開発が進められている。この地域は希少なマングローブの林があり、環境問題が報じられている。

 なお、メキシコ(ペメックス社)では、パイプラインでの油窃盗事故が多く、ブログで取り上げたのはつぎのとおりである。

 ● 20147月、「メキシコで原油パイプラインからの油窃盗失敗で流出事故」

 ● 20178月、「メキシコの石油パイプラインで油窃盗中に爆発、死傷者6名」

 ● 20191月、「メキシコの石油パイプラインで違法な油採取中に爆発、死者99名」

■「発災タンク」は、浮き屋根式タンクという情報のみで、容量や大きさ(直径×高さ)などの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べても、同種のタンク群があり、情報が乏しく、特定できなかった。

所 感

■ 火災の原因は落雷によるものとみられる。

 NASAの雷マップ(データは最新でないが)によると、雷の多い米国のメキシコ湾岸ほどではないが、メキシコのタバスコ州付近も雷の多い地域のひとつである。


 ■ タンクのリムシール火災は、つぎのブログを見ると、ドローンで撮影した状況などがわかる。

 ●「マレーシアの製油所で原油タンクが落雷でリムシール火災」 20206月)

■ タンク火災の消火活動は2時間半ほどかかったが、内容は不明である。グーグルマップのタンク周辺を見ると、入出荷配管以外に配管が走っており、固定式泡消火設備(または半固定泡消火設備)が設置されているのではないかと思われる。従って、固定式泡消火設備(または半固定泡消火設備)を使用し、消防隊の泡消火モニターを併用して消火させたものと思われる。 

 リムシール火災は、浮き屋根タンクの屋根ポンツーンの外周部、すなわちリムシール部の火災で、リング火災とも呼ばれる。日本では、固定式泡消火設備を設けることになっており、リムシール火災への別な対応方法は考えられていない。海外では、固定式泡消火設備のないのがあり、リムシール火災への対応方法が考えられている。リムシール火災の対応について「補足」の中で言及したブログはつぎのとおりである。

 ●「テキサス州ウィチタ郡の貯蔵タンク基地でリムシール火災」20189月)


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

  ・Tankstoragemag.com, Lightning causes tank fire at Pemex termina,  August 03, 2021

    Finance.yahoo.com, Fire controlled at Pemex storage tank in southern Mexico,  August 02, 2021

    Mexiconewsdaily.com, Pemex controla incendio en tanque de almacenamiento de Dos Bocas,  August 01, 2021

    Eleconomista.com.mx, Pemex controla incendio en tanque de almacenamiento de terminal de Dos Bocas,  August 01, 2021

    Elsoldemexico.com.mx, Controlan incendio de contenedor en refinería de Dos Bocas,  August 01, 2021


後 記: メキシコではパイプラインでの油窃盗事故については状況をよく報道されていますが、タンクの事故は報じられていません。事故が無いのか、事業者からの情報公開がないためなのか分かりません。今回のリムシール火災などは、発災状況がどうだったのか、消火活動はどのように行われたのか、知りたいことがたくさんあります。落雷による火災が起きたが、消火できて一件落着という事業者のように見えます。国内に競争のない国有会社のマイナス面なのでしょう。メディアも新型コロナウイルスのためか報道が淡泊な印象です。なお、メキシコでの新型コロナウイルス感染者数は増加傾向にあり、810日時点、平均で116,782人の新規感染者が報告されており、1日平均人数のピークだった 121日の96%になっているそうです。


 

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