エルジン郡ダン・マクニール議員によって撮られた発災タンク(12月21日午前11時45分撮影)
(写真および解説はPort Stanley News
から引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、カナダ(Canada)オンタリオ州(Ontario)エルジン郡(Elgin
County)セントラル・エルジン(Central Elgin)のポートスタンレー(Port
Stanley)にあるマックアスファルト・インダストリー社(McAsphalt Industries)の舗装用アスファルトプラントである。
■ 発災したのは、プラントにあるアスファルトを貯蔵していたタンクである。貯蔵タンクの容量や大きさなのは不詳である。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2010年12月21日(火)の朝、マックアスファルト・インダストリー社のプラントでアスファルトを貯蔵していたタンクが破損し、アスファルトが流出した。
■ 流出はエリー湖の湖岸から10mも離れていない所で起こり、防油堤は一杯で、深さは3フィート(90cm)に達した。1日経った時点でアスファルトは固化した。
■ 流出は21日午前7時に発見されたという。しかし、その地区の住民には知らされなかった。そのため、1匹の飼い猫が熱いアスファルトの中に落ち、アスファルトにまみれて火傷を負った。
■ セントラル・エルジン支庁は午前11時まで流出事故について知らなかった。 エルジン郡第1区評議員のダン・マクニール氏は情報を聞いた後、現場へ行き、午前11時45分に掲載のようなアスファルトの漏洩を起こしている破損したタンクの写真を撮った。このとき、まだタンクからアスファルトが流れ出ていた。
被 害
■ アスファルトタンク1基が破損した。破損の程度は分からない。
■ 流出したアスファルト製品の損害額は1,600,000ドル(約136百万円)である。ただし、会社側によると、道路舗装材として95%はセーブできるとしている。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は分からない。
(原因調査が行われたが、調査結果はメディアによって報じられていない)
注記:マックアスファルト社が、当時、取り壊されたコンクリートベースの貯蔵ドーム3基から回収材を貯蔵する計画であったことが報じられている。ドームには、いろいろな時期によって石炭、塩、砂利が保管されており、コンクリート板から細かく砕いたものを集めて加熱して、再び液状で貯蔵するというものである。腐食を促進させる物質を含有していた可能性があるが、発災タンク破損との因果関係は分からない。
< 対 応 >
■ 発災のあった12月21日、マクニール議員は環境省の責任について質問したが、環境省の回答は、タンク内容物が構外に流出しない限り、会社側の責任であり、環境省には無いということだった。 マクニール氏は更に環境省に対して、タンクが破損した影響が他のタンクにないのか、他のタンクは問題ないのか、油の溜まった防油堤は以前のような安全性を失っているといった質問をしたが、いずれも会社側の責任という回答だったという。
■ 2011年1月3日、マックアスファルト社環境部長のジョエル・ガードナー氏は、流出したアスファルトを再加熱して回収する予定を進めていると発表した。ガードナー氏は「私たちは安全に且つ効率的に実施するよう努めています」と計画を急ぐよりも安全性が重要だという。ガードナー氏によると、回収のための設備が現場へ到着次第、固くなったアスファルトを225°F(107℃)に加熱し、作業者がタンクへ回収しやすくするという。回収の終了は2月下旬の予定である。ネバネバした流出物は近くのタンクに移送するか、あるいはトラックで運び出されるとのことである。
■ 1月7日、ポートスタンレーの住民に対する公開ミーティングが開催された。マクニール議員は、自治体当局に対して公的な補助金とインセンティブ・プログラムを検討することによって、マックアスファルト社を別な場所へ移す案を出した。ビル・ウォルター庁長はこの提案を支持しなかった。庁長は、会社がこの地域から出ていけば、地域経済の推進力を無くすことになるため支持しないという。しかし、庁長は会社側に多くの疑問をもっているといい、「私たちは会社側の責任を明らかにする責務をもっています。私たちは会社側から報告される発表や計画の情報を流すつもりですが、会社側からは情報の連絡がありません」と語っていた。
■ マックアスファルト社のガードナー環境部長は、会社側が地元への情報伝達についてうまく維持してきたと思っており、「現時点では、お伝えするような詳細な情報がないのが現状です。というのも、これまで私たちが何を行おうとし、どのようにしようとしているかを理解してもらうように努力してきたつもりです。実際、私たちが流出物を回収し始めようとしていますが、これは極めてシンプルな方法です。 掘り起こし、容器の中に入れ、再加熱して、ポンプで構外に移送しようというものです」と語っている。
■ 1月10日、貯蔵タンクから流出して固化したアスファルトを除去するため、重機が稼動し始めた。
マックアスファルト社から依頼された作業員が固化したアスファルトに挑み始めたが、最終的にはアスファルトを再加熱して近くのタンクへ移送する計画である。
■ 2月9日時点で、流出物の量は回収によって70%になった。プラント所長のフレッド・ダーリントン氏は、流出したアスファルトの30%を破砕してタンクへ移したといい、「清掃が完了すれば、技術者によって原因が何だったのかわかるでしょう」と語っている。春になってから他の地区に運搬するため加熱する予定だと、ダーリントン所長は語った。
補 足
■ 「カナダ」 (Canada)は、
北アメリカの北部に位置し、米国と接する連邦立憲君主国家である。10の州と3つの準州を持ち、英連邦王国のひとつで、人口約3,400万人である。
「オンタリオ州」(Ontario)は、カナダ南部に位置し、米国と国境を接する人口約1,300万人の州である。
「エルジン郡」(Elgin
County)はオンタリオ州の南西部に位置する地方行政区のひとつで、人口は約49,000人である。
「セントラル・エルジン」(Central
Elgin)はエルジン郡のエリー湖に面した地域で、人口は約12,000人、湖岸にポートスタンレー港を有している。「ポートスタンレー」(Port
Stanley)はセントラル・エルジンにある一地区で人口約2,200人である。
■ マックアスファルト・インダストリー社(McAsphalt
Industries)はカナダでアスファルト素材を取り扱い、舗装技術を中心に企業展開している会社である。傷んだアスファルト舗装道路の旧素材を現地でリサイクルして復旧するというリサイクル復旧工法を有している。
マックアスファルト社の本社はカナダのトロントにあり、各地にターミナルを有している。セントラル・エルジンのポートスタンレーには、アスファルトタンク基地がある。ポート・スタンレー港へ進出してから40年以上になるが、浚渫不足の関係から製品の輸送は船舶よりむしろトラックに依存している。
発災タンクの大きさなどの情報は分からない。グーグルマップで現在のポートスタンレーのアスファルトタンク基地をみると、タンク地区内に大きな空地がある。破損したタンクは改修する必要があるが、自治体や住民からの不信感があり、おそらく、改修工事が許可されず、撤去されたのではないだろうか。
現在のマックアスファルト社のポートスタンレー・タンク基地 (写真はGoogle
Mapから引用)
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所 感
■ アスファルトタンクの流出事故は後処理(回収・清掃)が大変だということのわかる事例である。
固化したアスファルト回収は作業開始から約1か月で30%しか終わらず、2か月の期間を要するとされている。(結局、いつ終了したか報じられていない)
■ 今回の流出事故の原因が分かっていないので、事故の教訓は得られない。タンクから大量流出するような大きな亀裂を生じる異例の事故であり、原因を広く知らせるべきであるが、事業者もメディアも一過性の事象にしてしまっている。
一方、今回の事例で注目する事項は、事故発生後の事業所の初期行動の大事さである。マックアスファルト社の初期行動(判断)のまずさによって、自治体と住民感情を悪くして同社に厳しい目が向けられてしまった。これは発災時、アスファルトの回収作業を遅らせる判断をしたためであるが、この背景には、アスファルトは舗装にも使用する危険性の少ない材料だという思いがあったこと、移送(回収)するタンクや資機材が不足していたことと、アスファルトが固化したあとにも容易に処理できるだろうという舗装道路リサイクル復旧工法などの技術保有を過信したことにあるのではないだろうか。起こしてしまった事故の情報公開に消極的で対応を誤ると、傷を大きくしてしまうという事例である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・PortStanleyNews. com, Asphalt
Spill, December 23, 2010
・Ifpress. com, Asphalt
Spill a Worry, January 4, 2011
・AM980News. com, Public Meeting on Asphalt Leak in Port Stanley, January 7, 2011
・StThomasTimesJournal. com, Cleanup Crew Begin Work at Site of Liquid Asphalt Spill, January 12, 2011
・StThomasTimesJournal. com, McAsphalt Spill 30% Clean up, February 10, 2011
後 記: アスファルトタンクの事故が多いので、知っている過去の事例を紹介することとしました。事故情報は2010年当時に入手した情報でしたので、その後の流出物の回収・清掃の終了時期や原因調査結果についてインターネット検索してみました。しかし、新たな情報を得ることはできませんでした。また、発災タンクについてグーグルマップで調べてみましたが、特定できませんでした。当時もグーグルマップを見ていましたが、タンク基地の風景としてストリートビューの記録は残しているものの、肝心の平面地図の記録を残していませんでした。当時は発災タンクを特定しようという意識が薄かったのです。従って、現在のマップとの比較ができないということになってしまいました。
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