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2017年1月24日火曜日

東燃ゼネラル和歌山工場で清掃中の原油タンクの火災

 今回は、2017年1月18日(水)、和歌山県有田市の東燃ゼネラル石油和歌山工場において清掃中の原油貯蔵タンクで起った火災事故について紹介します。
(写真はMatomame.jpから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、和歌山県有田市にある東燃ゼネラル石油の和歌山工場である。和歌山工場の製油所精製能力は132,000バレル/日である。

■ 発災があったのは、和歌山工場のタンク地区にある原油貯蔵タンクである。タンクは直径約75.5m、高さ21.3mで、当時、清掃作業のため内部に油は無く、空だった。
            有田市の東燃ゼネラル石油和歌山工場付近   (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年1月18日(水)午前6時過ぎ、東燃ゼネラル石油和歌山工場の原油貯蔵タンクから火災が起った。午前6時50分頃、付近の住民から消防署へ「タンクから煙が出ている」という通報があった。

■ 出火したのは、大小17基のタンクが並ぶエリアにあるタンクの1基で、清掃作業の時間外だった。発災のあったタンクは昨年11月から内部の原油を抜いて清掃中で、内部に油は無かったが、原油の沈殿物(スラッジ)が残っていた。

■ 発災に伴い、有田市消防本部の消防隊が出動し、同社自衛消防隊とともに合計22台の消防車による消火活動が行われた。火災はタンク内部が焼け、その後、火は弱まったが、小さな炎や煙が出続けた。東燃ゼネラル石油和歌山工場は午後3時半頃に火災はおさまったと発表した。しかし、報道によると、11時間以上経った時点(午後6時)でも、消火活動は続いていると報じている。

■ 事故に伴うけが人は無かった。住民の避難指示は出なかったが、住宅地に消火用泡が飛散してきており、住民らが心配そうに消火作業を見守っていたと報じている。

■ 工場の操業、陸上・海上出荷は通常通り行われている。 
(写真はMatomame.jpから引用)
被 害
(写真はPbs.twimg.com から引用)
■ 原油タンク内部が焼損した。被災の程度は不詳である。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。住民の避難指示は出なかったが、黒煙のすすや消火用泡の飛散が周辺地区にあったが、被害状況は不詳である。

< 事故の原因 >
■ タンク内の出火原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 東燃ゼネラル石油の広報CSR統括部は、1月18日、同社ウェブサイトに「和歌山工場でのタンク火災発生について」と題してつぎのような声明を発表した。
 「本日6時50分頃、当社和歌山工場においてクリーニング作業中のタンクで火災が発生しましたが、関係当局および当社自衛消防隊による消火活動の結果、15時半ごろに火災はおさまりました。この火災による負傷者は出ておりません。また、工場の操業、陸上および海上出荷は通常通り行っております。
 近隣住民の皆様をはじめ、関係各位に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。今後は関係当局と協力し、原因調査を行い、再発防止策の策定に最善を尽くしてまいります」
(写真はTwitter.com から引用)
(写真はMatomame.jpから引用)
補 足
■ 「和歌山県」は、近畿地方にあり、紀伊半島の西側に位置し、人口約95万人の県である。
 「有田市」(ありだ市)は、和歌山県中部に位置し、人口約30,000人の市である。
和歌山県有田市の位置
(写真はKotobank.jpから引用)
■ 「東燃ゼネラル石油」は、2000年に東燃とゼネラル石油が合併してできた石油精製・石油化学の会社である。川崎、和歌山、堺、千葉(市原)に工場がある。
 「和歌山工場」は、軍用航空揮発油・潤滑油を製造する国策会社(東亜燃料)として1941年に操業を開始した歴史のある製油所である。1945年の空襲で壊滅したが、1950年に操業を再開した。精製能力は170,000バレル/日であったが、現在は132,000バレル/日である。原油タンク23基、製品・半製品タンク364基を保有している。
東燃ゼネラル石油和歌山工場の風景
■ 発災のあった原油タンクは直径約75.5m、高さ21.3mと報じられている。従って、容量90,000KL級の浮き屋根式タンクである。火災は初島漁港付近で起き、漁港から有田市民体育館の間の道路が通行止めになっている。グーグルマップによると、この付近の大型浮き屋根式タンクは直径約80m(容量10万KL級)×9基、直径約75m(容量9万KL級)×2基、直径約60m(容量6万KL級)×4基がある。発災写真を参考にすると、発災は南側にある直径約75mのタンクだと思われる。
     東燃ゼネラル石油和歌山工場のタンク地区の一部 (矢印が発災タンクとみられる)
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ タンクの清掃作業中には、いろいろな要因によって事故の起った例は少なくない。今回は、清掃作業の行われていなかった早朝に発生しており、原油タンク内で生成した硫化鉄が着火源になった可能性が高いと思われる。内液は違うが、1995年に発生した「製油所排水タンクに着火性硫化鉄が発生してマンホールの開放時に火災」と同様に、スラッジ中の硫化水素などが燃焼性ガス雰囲気を形成し、硫化鉄によって引火し、さらにタンク底や側板にあったスラッジや酸化鉄中の油分が燃焼し、マンホールから黒煙が噴き出すような火災となったのではないだろうか。

■ 火災の燃焼は少なくとも8時間半以上続いている。「空のタンク」の割に鎮火までに時間がかかっている。発災写真を見ると、高所放水車によって水または消火用泡がタンク上部へ投入されている。この状況は2016年6月に起きた「JXエネルギー根岸製油所で浮き屋根式タンクから出火」と同じである。消防車から屋根のマンホール部へ放水(泡放射)するには、地上での状況把握は困難で、タンク上空(上部)からの観察が必要である。JXエネルギー根岸製油所の場合、横浜市消防局が消防ヘリコプターを2機保有しており、現場に出動している。和歌山県には、田辺市消防本部で消防活動用UAV(無人航空機)、すなわちドローンが導入されているが、これが使用されたかどうかは分からない。いずれにしても、無人航空機を活用しなければならない事例が実際に出てきた。

■ 消防活動の情報が公表されていないので、仮定の話になるが、当該事例においてタンク側板のマンホールが開放されていれば、ここからの消火活動によって比較的容易に鎮圧できたと思われる。日本では、防油堤内に入って消防活動をしないという絶対条件があるが、見直すべきではないだろうか。この点については、「石油貯蔵タンク施設の消火戦略・戦術」(2016年12月)を参照。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Wbs.co.jp,  東燃和歌山工場で空のタンク火災、消火活動続く,  January 18, 2017  
    ・Mainich.jp,  火災 石油工場で空のタンク焼く,  January 19, 2017 
    ・Logi-today.com,  東燃ゼネラル和歌山工場で火災、陸・海上出荷通常通り,  January 19, 2017    
    ・Tonengeneral.co.jp,  和歌山工場でのタンク火災発生について,  January 18, 2017
    ・Matomame.jp, 火事 和歌山県有田市初島町浜、東燃で火災,  January 18, 2017
  ・Matomame.jp,  現場情報 東燃ゼネラル石油 和歌山工場で火災「白いワタがイッパイ飛んでた」,  January 18, 2017
  ・Ogj.com,  TonenGeneral Reports Fire at Wakayama Refinery,  January 18, 2017 
    ・Industryabout.com, TonenGeneral Reports Fire at Wakayama Refinery,  January 19, 2017 
    ・Tonengeneral.co.jp, Fire in Wakayama Refinery Tank,  January 18, 2017


122日に発生した東燃ゼネラル石油和歌山工場潤滑油装置の火災
(写真はMatomame.jpから引用)
後 記: 東燃ゼネラル石油和歌山工場では、1月22日に起きた潤滑油製造装置の火災がテレビや新聞の全国版で報じられました。この4日前に起きた原油タンク火災はローカルでしか報じられていませんでした。(海外の「オイル&ガス・ジャーナル誌」が報じていますが) 少し時間をおけば、事業者や公設消防から情報が出ることもありますが、大火災事故が起きてしまいましたので、この期待は吹き飛びました。発災状況や消火活動に関して情報不足ですが、まとめることにしました。
 横浜に続いて和歌山と原油タンクの開放時に火災を起こす事故が続いています。事故の再発防止には、事業者や公設消防からの情報公開が必要ですね。
 






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