2012年7月3日火曜日

カナダのアルバータ州のポンプ・ステーションで原油漏洩

  今回は、2012年6月18日、カナダのアルバータ州エドモント近くのエルク・ポイントにあるエンブリッジ社のパイプライン用ポンプ・ターミナルにおいて重質原油が漏洩した事例を紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・CBC.ca, Crude Oil Leaks from Enbridge Pipeline Pumping Station, June 19, 2012
      ・CBC.ca, Elk  Point  Pipeline Restarted  after  Oil Spill, June 20, 2012
      ・GlobalTVCalgary. com, Enbridge Pumping  Station Spills  Heavy  Crude  near Elk  Point, June 19 2012
  ・HuffingfonPost. com, Enbridge Elk Point Spill Pumps about 230,000 Litres of Heavy Crude in Alberta,
   June 19, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月18日(月)、カナダのアルバータ州のエドモントン近くにある石油パイプラインのポンプ・ステーションで油が漏洩する事故があった。事故があったのは、アルバータ州セントポール郡のエルク・ポイントにあるエンブリッジ社のパイプライン用ポンプ・ステーションで、重質原油が漏洩した。
 エンブリッジ社によると、漏洩があったのはエルク・ポイントの南東約24㎞にあるアサバスカ・パイプラインのポンプ・ステーションで、漏れた原油の量は約230,000リットル(230KL)と推定されるという。
■ アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)は19日火曜のニュース・リリースの中で、パイプラインは運転が停止され、ポンプ・ステーションは他と縁切りされたと発表した。
 ERCBの広報担当ダーリン・バーター氏によると、水路へ流れ出る心配はなく、すでにクリーンアップ作業が始まっているといい、つぎのように語った。
 「発災場所には、流れている川はなく、池や湖もなく、実際、水資源のないところです。この地域には、水を得るための井戸もありません。漏れたのが重質原油であり、すぐに土壌へ浸透することはないでしょう」
 ERCB当局は調査を始めたが、バーター氏が話したように数日してからクリーンアップの状況を監視するため現地へ職員を派遣すると言っている。
 バーター氏によると、事故のあったポンプ・ステーションは設置後12年を経過しており、この種の施設の経過年数としては中位だという。
■ エンブリッジ社のニュース・リリースによると、漏れの原因はフランジのガスケットの損傷によるものであったことを明らかにした。漏れを発見後、ただちに当局と関係機関に連絡したという。
■ エンブリッジ社によると、流出は現場のごく狭い範囲に限られており、野生生物や水源に影響することはないと発表している。
 このため、エンブリッジ社は、18日火曜の午後には、ポンプ・ステーションをバイパスする形でパイプラインの運転を再開した。
■ しかし、事故のあったポンプ・ステーションのあるセントポール郡のスティーブ・アパム議長は、19日火曜の夜まで何の連絡も受けていなかったと語っている。アパム議長は、メディアのニュースで流出事故を知ったといい、 「現時点でも、郡の誰かが連絡を受けていたとは思っていない」と語った。
 エンブリッジ社から連絡されるべきだったかという質問に対してアパム議長は、「そう思うよ。あるいは、連絡を受けていたアルバータ州環境庁からだと思うね。我々にはどこからも何の連絡もなかった」
■ エンブリッジ社はパイプラインの運転を再開したが、ERCBは同社に対して19日午後になって、再び、パイプラインを停止するよう命じた。
 「エンブリッジ社としては、ERCBと話し合い、パイプラインの再開時期を決めたいと思っています」と同社は述べている。
■ 今回の油流出は、アルバータ州においてこのひと月に三回目の大きな漏洩事故であり、アルバータ州パイプライン系統の評価や監査について問題視されている。
 アリソン・レッドフォード州知事は、3件の流出事故に関する調査が終わり次第、州政府の関係閣僚に事情を聴く予定だといい、つぎのように語った。
 「現時点で予断の話はしません。しかし、改善事項が出されることは期待しています。現時点は3件の事故の反映事故が出てくる前であり、飛び越えて結論めいた話をするつもりはありません」
■ 6月初めにプレインズ・ミッドストリーム・カナダ社所有のレインジランド・パイプラインにおいてサンドラ近くのレッド・ディア川に約3,000バレル(470KL)の油を流出する事故が起きた。同社は、2011429日、パイプラインの破断によってピース川の北東部に4.5百万リットル(4,500KL)という州史上最大の油流出事故を起こしており、現地では今もなおクリーンアップ作業が続けられている。
 今年5月には、レインボー湖の南東部においてペース・オイル&ガス社の注入油井から約22,000バレル(3,500KL)の油と水が流出する事故が起こっている。
■ なお、アルバータ州エネルギー大臣であるケン・ヒューズ氏は、パイプラインから漏れることは比較的稀であり、重要なことは漏れた後に起こる事象であるといい、つぎのように語っている。
 「住民として注視しておくべきことは、今回のような周囲への対応であり、適切な対応とクリーンアップ、そして2~3年先を見た環境への配慮だと思います。これが責任の尺度だと思っています」


<エンブリッジ社のニュース・リリース>
2012619日(火) 事故の概要
■ エンブリッジ社は、アルバータ州エルク・ポイント町から約24㎞離れたライン19(アサバスカ・パイプライン)のエルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションにおいて油が漏れていることを確認しました。
 漏洩は2012年6月18日(月)に起こったもので、大半はポンプ・ステーションの構内に限定されています。
ただちに安全であることを確認し、クリーンアップ作業に着手しました。公共の健康や安全への影響はありません。漏洩量は230㎥と推定しています。漏れの原因は、ポンプ・ステーション内のフランジ用ガスケットが損傷したためとみています。
■ ポンプ・ステーション内での漏れ発見後、ただちに、エンブリッジ社はパイプラインを停止しました。エンブリッジ社は緊急時対応部署へ通報するとともに、当局および関係機関へ連絡致しました。
■ エルク・ポイント・ポンプ・ステーションは停止して縁切りしましたので、618日午後には、パイプラインを安全に再稼働させ、順調に運転中でした。しかし、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)の指示により、619日午後、パイプラインは再び運転を停止しました。これは、 ERCBおよびエンブリッジ社が共同で原因調査を行うためです。エンブリッジ社はERCBと協議を行い、適切にパイプラインの再稼働時期を決める予定です。
■ ライン19(アサバスカ・パイプライン)の仕様
  ・流量 345,000バレル/日 (最大570,000バレル/日)    (2,300KL/時間=38KL/分)
  ・直径 30インチ
  ・長さ  541㎞
  ・始点;アサバスカ・ターミナル  終点;ハーディストリー・ターミナル
  ・建設 1998年~1999年


質問と回答
■ 何が起こったのですか?
  2012年6月18日午前5時41分、エンブリッジ社の監視システムがライン19(アサバスカ・パイプライン)で漏洩徴候を示す配管圧力の低下をとらえました。エンブリッジ社パイプライン・コントロール・センターは午前5時51分にラインを停止しました。この直後の午前6時に、アルバータ州ボニーヴィルの北70㎞にあるエルク・ポイント・ステーションで油が漏れているようだという住民からの連絡を受けました。
■ どうして起こったのですか?
  漏れの原因は、ポンプ・ステーション構内のフランジのガスケットが破損したためと思われます。フランジのガスケットは、2本の配管を接続する際、シール機能を確保するために用いられるもので、パイプライン系統では共通的な部品として広く使用されています。事故調査は規制当局と関係機関と連携して実施されます。
■ どのくらいの量の油が漏れたのですか?
  漏れ量はおよそ230㎥とみられます。そのうち約200㎥はエンブリッジ社の敷地内で、約30㎥は地主の土地です。
■ この漏れによって影響は受ける場所はどこですか?
  地主の土地が一部かかりますが、大半は私どもの敷地内で使用権を持っている場所に限定しています。
■ この事故によって水や野生生物への影響はどうですか?
  水や野生生物への影響はありません。現場近くには水系はありません。すぐに現場まわりには、この地域の野生生物を守るためにフェンスを設置しました。敷地内に鳥が飛んで来ないように、鳥おどし砲を設置しています。
■ エンブリッジ社はどのように対応していますか?
  エンブリッジ社は最優先課題と位置付けて対応しています。クリーンアップはエンブリッジ社の環境方針と基準に基づいて実行中です。
 ラク・ラ・ビーシュ村とハーディスティ町からの第一応答者とただちに連絡をとり、対応を支援して戴きました。地主、地元の先住民、ERCBおよびアルバータ州環境省にも、事故があったことを連絡しました。
 漏れはすぐに止まりました。事故に伴う怪我人はなく、被害を受けた野生生物もありませんでした。
 私どもは、徹底的にかつ迅速に、可能な限りのクリーンアップを行い、住民、環境、野生生物、協力会社および従業員の安全を確保することをお約束します。
 影響を受けた場所が元に戻るように、地主や地元の要求、規制当局およびわが社の厳格なガイドラインに合致するまで作業を続けます。
■ パイプラインは運転しているのですか?
  6月20日改訂: ERCBの承諾を得て、ライン19は6月19日(火)23時30分に安全に運転を再開しました。エルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションは縁切りしたままで、調査およびクリーンアップ作業と補修が完了するまでの間、閉止することとしました。

2012620日(水) 
■ ERCBの承諾を得て、ライン19は6月19日(火)23時30分に安全に運転を再開しました。エルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションは縁切りしたままで、調査およびクリーンアップ作業と補修が完了するまでの間、閉止することとしました。

2012622日(金) 
■ エンブリッジ社の従業員は流出現場に入って機械と使って作業を実施中です。ポンプ・ステーションまわりの汚染された土は100%集積が終わり、現場から搬出させることに承認が得られました。ステーション内の汚染土壌は搬出するためにコンテナに保管しています。

2012628日(木) 
■ ERCBの承認を受け取った後、エンブリッジ社は6月24日(日)午後1時にエルク・ポイント・ポンプ・ステーションの稼働を安全に再開し、通常運転に入りました。ERCBおよびエンブリッジ社は、フランジのガスケット損傷によると思われる事故原因について調査を続行中です。当該フランジのガスケットは取替えを終え、他のすべてのガスケットについてはテストを行い、ポンプ・ステーションの配管系統は全検査を行いました。汚染土壌および回収した油は構内から搬出し、処理施設で処分します。さらに、構内の環境テストとモニタリングは必要な限り実施することとしています。

補 足                                                         
■ 「カナダ」は、北アメリカの北部に位置し、10の州と3つの準州からなる連邦立憲君主国家で、英連邦加盟国である。人口は約3,400万人で、首都はオンタリオ州のオタワである。
 「アルバータ州」はカナダ西部に位置し、人口は約337万人である。肥沃な農業地帯が広がるが、第2次大戦後、石油が発見されて産油地域でもある。近年はオイルサンド採掘で得られる重質原油の生産が主力になっている。
 「エドモントン」はアルバータ州の州都で、人口は約73万人で産油地域の中心地である。カナダはアイスホッケーが盛んであるが、エドモントンを本拠地とするチームは「エドモントン・オイラーズ」と産油地域を表す名称にしている。
 「エルクポイント」はアルバータ州セントポール郡にあり、人口約1,400人の町である。

■ 「アルバータ州エネルギー資源保全委員会」(Alberta Energy Resources Conservation Board;ERCB)は、アルバータ州政府の独立した準司法機関で、アルバータ州のエネルギー資源、石油、天然ガス、オイルサンド、石炭およびパイプラインの安全性、責任性および効率的な開発に関する規制を司る組織である。8つの委員会があり、委員はエンジニア、地質学者、技術者、エコノミスト、その他の専門家から成る。 アルバータ州のエネルギー規制機関は1938年に設立された歴史を持ち、ERCBは2008年に新しい組織として運営されている。
 「アルバータ州エネルギー省」はアルバータ州政府機関で、鉱物およびエネルギー資源の政策調整を司る。

■ 「エンブリッジ社」(Enbridge Inc.)は、カナダのアルバータ州カルガリーに本社を置き、原油と天然ガスの輸送を行う石油会社である。1949年に設立し、6,000人の従業員を擁し、カナダと米国の両方に敷設された世界最長のパイプラインを持っている。

■ 「アルバータ州における最近のパイプライン漏洩事故」は、報道記事にあるように、5月19日のレインボー湖の油漏洩事故、6月7日のレッド・ディア川の油漏洩事故、6月18日のエルク・ポイントの油漏洩事故の3件である。CBCニュースでは、最近の漏洩事故として概要をまとめている。




■ 「鳥おどし砲」(Scare Cannon)は、野鳥による 作物被害やジェット機エンジンへのバード・ストライクを防ぐために大きな音を出すように開発されたもので、最近はLPガスを使ったカノン砲もある。

所 感 
■ 今回の事例は、貯蔵タンクに直接関係した事故ではないが、危機管理上、参考になる点が多い。
  ひとつは、エンブリッジ社が事故発生後、運転再開を急ぎすぎたことである。油漏洩が構内に限定され、地域への影響が無いと予断してしまったためである。このため、地元自治体やメディアから早期運転再開に疑問の声が出て、会社の印象を悪くした。
■ ふたつめは、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)の行動が鈍かったことである。エンブリッジ社からの報告だけで事務的に処理しようとみられる。この事故の前に起こった2件の油漏洩事故に比べると、汚染範囲が小さく、クリーンアップ後を確認すればよいだろうと予断している。予想外に大きな反響があったため、一旦、承諾した運転再開を取り消すという失態を演じた。
■ 三つ目は、カナダのパイプライン会社が漏洩事故後の対応についてかなり細かくマニュアル化していると思われることである。今回の事故において、エンブリッジ社は、漏洩油の回収や汚染土壌の搬出と処理というクリーンアップ作業を迅速に行っている。さらに、野鳥が汚染場所へ近づかないように鳥おどし砲を配備するという細かい配慮をしている。おそらく、これまでの漏洩事故の貴重な経験が活かされていると感じる。 
■ 四つ目は、エンブリッジ社のニュース・リリースがわかりやすく工夫されていることである。単に事故概要を出すだけでなく、質問と回答という形で理解しやすくしている。例えば、漏れ発見時の状況はリアリティを感じる情報である。 おそらく、プレス・リリース用に準備した想定質問と回答を活用して公表したものと思われる。事故の情報公開の観点から、会社や自治体などの組織はこの事例を良い見本の一つとして参考にされることを期待する。

後記; 所感で述べませんでしたが、従来、カナダでは、油流出事故について環境庁が現地へ出動して空気(臭い)、水、土壌の汚染問題について対応し、判断しています。例えば、2012年1月に起こったカナダのブリティッシュ・コロンビア州のキンダーモーガン社の石油ターミナルで油流出した事故の対応がその例です。(当ブログでは2012年2月に紹介)
 今回の事故対応では、環境庁の存在感が薄く、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)が主動で対応しています。しかし、その対応は所感で述べたように問題でした。事故情報を調べていて感じたことは、対応が東京電力㈱福島原子力発電所事故における原子力・保安院と環境庁の対応と重なることでした。原発事故後の対応で原子力・保安院が機能せず、環境省の存在感が無かったように、環境汚染事故の場合、ERCBのような中途半端な立場の組織は機能しないということでしょう。
 現在、世界は環境汚染の対象を空気(臭い)、水、土壌のほかに放射能を追加する傾向です。この観点でいえば、日本の原子力規制庁が環境省の管轄になるべきでしょう。










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