本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
・ITV愛媛, 太陽石油でタンク火災、作業員が重傷, June 27, 2012
・毎日jp, 火災:タンク出火、1人重傷・・・今治・太陽石油四国事業所, June 28, 2012
・朝日新聞, タンク火災1人重傷, June 28 2012
・毎日jp, 今治のタンク火災:太陽石油所長が県に謝罪と説明, June 29, 2012
・愛媛新聞, 配管内可燃性ガス漏れ込み引火? 太陽石油タンク火災, july 04, 2012
・今治のタンク火災:「配管からガス流入」 太陽石油が県に原因報告, july 04, 2012
<事故の状況>
■ 2012年6月27日(水)、愛媛県今治市菊間町にある太陽石油四国事業所において内部検査のため開放中の液化石油ガス用球形タンクから出火し、内部で工事中の作業員1人が負傷する事故があった。
■ 火災があったのは太陽石油四国事業所にある直径20m程のブタンガスを貯蔵するLPGタンク内で、27日午前10時50分頃、「タンク内で火災が起きた」と消防へ通報があった。
火はおよそ30分後に消し止められたが、この火災の際、タンク内のはしごの上部に取り付けられていた作業員の安全ベルトを装着する際に使われる落下防止安全装置の部品で重さ約5kgの金属物が落下し、孫請け会社の作業員(配管工)の檜垣和史さん(33歳)の頭や肩に直撃し、檜垣さんは重傷を負った。落下防止安全装置はワイヤロープを介して人の体を支持するためのもので、避難途中に頭上から落ちてきたと思われる。
その後、檜垣さんは病院へ搬送され、頭部裂傷(10針縫合)と左鎖骨骨折の治療を受けている。
鎮火直後のLPGタンク (写真は朝日新聞から引用) |
■ タンク内は当時、定期点検のため、液化石油ガスは抜かれていて、檜垣さんは午前9時頃から同僚3人とタンク内で足場組みに関わる作業をしていたと見られている。
太陽石油は会見を開き、「火災は作業員が足場を組むのに邪魔になる常設のはしごをガスバーナーで切断中に何かに引火した」と説明を行った。 この際、作業前には、タンク内のガス濃度については、ゼロであることを確認していたという。
また、火災の衝撃で金属物が落下した可能性もあるとした一方で、「あくまで爆発はしておらず、火災と金属物の落下との因果関係は分からない」と話している。
事故翌日、実況検分のために製油所構内に入る 今治市消防本部 (写真は愛媛新聞から引用) |
■ 太陽石油四国事業所では2006年1月、原油タンク火災で作業員5名が死亡する事故が起きており、越智洋二副所長は「前回の火災を受けての対応が十分でなかった。原因を特定して二度と起こさないようにしたい」と陳謝した。6月27日事故当日に就任した松木徹所長も「警察、消防の原因究明に協力し、再発防止に取り組む」と約束した。
■ 警察によると、事故後もタンク内はガスが充満しているため、27日(水)は立入りができないため、翌日28日(木)に実況検分を行い、作業手順に問題がなかったかどうか調べる方針だという。
事故翌日、球形タンク下部で実況検分を行う 関係官庁機関 (写真は愛媛新聞から引用) |
■ 6月28日(木)、太陽石油四国事業所の松木所長らが愛媛県庁を訪れ、県の県民環境部上甲俊史部長に謝罪と説明を行った。上甲部長は、詳しい原因と再発防止策の報告を求めた。同事業所は原因究明後、文書で報告するとしている。
愛媛県は高圧ガス保安法に基づき、同事業所のタンク設備を許可している。松木所長は「多大なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪した。鎖骨骨折などの重傷を負った作業員の容体などを説明したが、これに対して上甲部長は、2006年1月に同事業所で作業員5人が死亡するタンク火災が起きたことに触れて「同じような火災が起こるのは遺憾である。原因究明と対策を強くお願いする」と要請した。
■ 7月3日(火)、太陽石油四国事業所の森戸隆志副所長は、出火原因について「フランジ(継手)が開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられる」と県に報告した。
森戸副所長は県庁を訪れ、県の防災局中村博之局長に調査の途中経過として、火災は作業員がいたタンクの上部で発生したこと、当時タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開く作業をしていたこと、可燃性ガスがタンク上部のマンホールから入り込み、タンク内上部に溜まったガスにガスバーナーの火が引火したとの見方を示した。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては「警察が捜査中」として明言しなかった。
再発防止策には、配管内を通るガスの種類をフランジに表示するほか、移動式ガス検知器の増設などを列挙し、県が求める事故報告書は「警察当局の原因特定ができ次第、提出したい」とした。
なお、警察は詳しい出火原因とともに、業務上過失傷害の疑いで調べている。
■ 太陽石油四国事業所では、2006年1月、原油タンク内を清掃中の作業員5人が死亡、2人が負傷した火災事故があり、業務上過失致死傷容疑で書類送検された同事業所の当時の工務部長ら9人について松山地検が2009年11月、不起訴処分とした。検察審査会の「不起訴不当」 の議決を受けて再捜査したが、2010年12月に嫌疑不十分で再び不起訴処分とし、不起訴が確定している。
<太陽石油のニュース・リリース> (太陽石油のホームページから引用)
2012年6月27日 第1報 (四国事業所における小火発生について)
■ 本日11時頃、発生した小火(ぼや)について現在の状況をご報告いたします。
1.事業所概要; 精製能力 120,000バレル/日
2.小火発生場所; LPGタンク
3.発生日時、状況; 2012年6月27日(水) 11時頃、LPGタンク開放検査中に小火が発生
4.発生原因; 調査中
5.負傷者; 協力会社の作業員1名が落下物により頭部に怪我
6.物的被害; 調査中
7.現在の状況; 小火は11時18分頃、公設消防により鎮火したことを確認
2012年6月27日 第2報
■ 本日発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況; 10時45分(仮)に発生した小火は、11時15分(仮)、公設消防により鎮火したことを
確認 (発生および鎮火の時刻は、消防が検証の上、確定します)
2.発生原因; 調査中 (消防、警察合同調査中)
3.負傷者; 協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折
4.物的被害; 調査中
2012年6月29日 第3報
■ 6月27日に発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況; 6月27日(水)10時45分頃に球形タンクT‐116において発生した小火は、
同日11時15分に公設消防により鎮火したことを確認
6月28日(木)および29日(金)に消防、警察、労働基準監督署による合同の実況
検分を実施し、終了
6月28日に愛媛県に中間報告を実施
2.負傷者; 協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折)
現在、治療・入院中
3.物的被害; 調査中
補 足
■ 太陽石油は、1941年(昭和16年)に設立し、東京に本社を持つ民族系石油元売の一つで、愛媛県を地盤として、主として西日本に展開し、従業員634名の石油会社である。北海道、東北、北陸地方の中にはガソリンスタンドがない所があり、東日本ではなじみがないが、ガソリンスタンドのブランド名は「TAIYO」から2008年に「SOLATO」(ソラト)に変更した。
製油所は愛媛県菊間町の四国事業所のみで、精製能力は120,000バレル/日である。日本で初めてソ連やルーマニアなどの軽質原油を輸入して石油製品の白油化を進め、重油生産ゼロ製油所を目標に、約500億円をかけて残油流動接触分解設備25,000バレル/日、ガソリン脱硫装置13,000バレル/日、プロピレン精製装置5,400バレル/日、アルキレーション装置6,000バレル/日が2010年10月に完成した。
この装置建設にあたっては、狭い敷地を有効利用するため、既設施設を移転しながら進められたが、今回の発災した球形タンクもこの新設装置建設に伴い、山の斜面を造成して建設された。
■ 出火原因は、タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開き、この開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられている。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては、警察の捜査中であり、明言されなかった。
なぜ、ガスの種類を明らかにすることを避けたかわからないが、タンク上部における実況検分の写真を見ると、液化石油ガスタンクの安全弁出口は大気開放型であるので、安全弁出口のフレアガス系統ではない。推測になるが、タンク開放時に使用された燃料ガスラインまたはフレアガスラインの仮設(または常設)で比較的小配管ではないかと思われる。
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