このブログを検索

2024年7月21日日曜日

ロシアのロストフ州東部の石油貯蔵施設がドローン攻撃でタンク火災

 今回は、2024713日(土)、ロシアのロストフ州チムリャンスキー地区にある石油貯蔵施設でウクライナのドローン攻撃を受けてタンク火災になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、ロシアRussiaロストフ州RostovのチムリャンスキーTsimlyansky地区にある石油貯蔵施設である。石油貯蔵施設には、ガソリンやディーゼル燃料など合計12,500KLの油が保管されている。 

■ 発災があったのは、石油貯蔵施設内にある石油タンク設備である。

< 事故の状況および影響 > 

事故の発生

■ 2024713日(土)午前4時頃、チムリャンスキー地区の石油貯蔵施設がウクライナのドローン(無人航空機)攻撃を受けて火災になった。午前8時頃には、火災範囲は200㎡に広がった。

■ 地元住民によると、午前4時頃に爆発音が聞こえ、石油貯蔵施設の敷地上空に黒煙が上がっているのに気が付いたという。 地元住民は、午前4時頃に2回の爆発音を聞いたにもかかわらず、空襲警報は聞こえなかったと語っている。 チムリャンスキー地区行政は、石油貯蔵施設への無人機攻撃によって住宅建物に被害はなかったと報告した。

■ 発災の伴い、消防隊が出動した。現場で活動は消防士50名と消防車14台が当たった。

■ この火災に伴い、特殊消防列車が出動して消火活動の支援に当たった。

■ 火災に伴う死傷者は出ていない。

■ 攻撃はウクライナによるものだとロシアは主張したが、正式にはウクライナがこのことにコメントしていない。一方、ウクライナ防衛部門の情報筋は、この攻撃の背後にウクライナ政府がいることを確認し、 「無人航空機の攻撃は、ウクライナへの戦争に協力しているロシアのエネルギー企業(複合体)に対して、経済制裁を課し続けている」と語っている。

■ メディアによると、チムリャンスキーの石油貯蔵施設が少なくとも2機のドローンによって攻撃されたという。 ドローンの1機は石油貯蔵施設の設備に20m届かず、2機目が石油貯蔵所施設に命中し、火災を引き起こした。チムリャンスキーは、ロシア南西部ロストフ州の奥深くにある。これはウクライナ軍による2024618日(火)のロストフ州アゾフへの攻撃より、国境から遠い距離である。

■ 攻撃は、ウクライナで最近使われているFPV型(First Person View)ドローンとみられる。 FPV型ドローンの操縦者は、ゴーグルを装着し、ドローンの視点でリアルに景色や障害物を認識しながら操作を行う。

■ 住民のひとりは、「私の家からは朝から黒煙が上がっているのが見えました。消防隊がすぐに到着し、消火活動が始められました。死傷者は出なかったし、住宅地に被害はありませんでした。会社に出勤して、ビデオをアップし始めたとき、何かがおかしいと気づきました。石油貯蔵施設が攻撃され、火災を起こしており、この先どうなるのか、とても怖くなりました。うつうつとした気分の雰囲気は街全体を覆っています。なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。ガソリンスタンドに行ってみると、長い行列ができていました」と語っている。

■ ユーチューブなどには火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

   Youtube Пожар на нефтебазе в Цимлянском районе Ростовской области2024/07/13

   ●VkvideoРано утром в Ростовской области из-за атаки БПЛА загорелась нефтебаза в Цимлянском районе2024/07/13

被 害

■ ロストフ州チムリャンスキーの石油貯蔵施設において石油貯蔵タンク1基が火災で被災し、内部の液が焼失した。

■ 死傷者はいなかった。

■ 火災により環境が汚染された。  

< 事故の原因 >

■ 戦争による軍事行動である。(平常時の“故意の過失”に該当)

< 対 応 >

■ チムリャンスキーの石油貯蔵施設の火災は、発災から6時間半後の午前1030分頃に鎮火したという。

 ロシア国防省によると、ロシアの防空部隊はロストフ州上空でドローン2機、ベルゴロド州上空でドローン1機、クルスク州上空でドローン1機を撃墜したと発表した。クレムリン近いと考えられている出版物マッシュによると、墜落したドローンの破片が石油貯蔵施設の敷地内に落ちたとされる。一方、ロストフ州知事は、ロストフ州東部のチムリャンスキーにある石油貯蔵施設で火災が発生したと語っている。

■ ウクライナ軍は、軍事資産、製油所、石油貯蔵施設などを標的として、ロシア領土で頻繁に無人航空機(ドローン)攻撃や破壊行為を行っている。ウクライナ大統領によると、20246月下旬の時点で、合計30か所以上のロシアの製油所、オイルターミナル、石油貯蔵施設がウクライナの特殊部隊による標的となったという。

■ チムリャンスキーにある石油貯蔵施設の火災の前に、クラスノダール準州では、76日(土)夜の無人航空機による攻撃の結果、2つの石油貯蔵施設が火災となっている。

補 足

■ 「ロシア」Russiaは、正式にはロシア連邦といい、ユーラシア大陸北部に位置し、人口約14,200万人の連邦共和制国家である。2022224日(木)、ロシアが、突如、ウクライナに侵攻し、軍事衝突が起こった。

 ロシアがウクライナに侵攻して以降、両国のタンクへの攻撃を紹介した事例は、つぎのとおりである。

   「ウクライナ各地で石油貯蔵所がミサイル攻撃によってタンク火災」20223月)

  ●「ウクライナで化学工場の硝酸タンクがロシアの攻撃で爆発」20226月)

  ●「ロシアのベルゴロド石油貯蔵所にヘリコプターによる攻撃」 20225月)

  ●「ロシアのふたつの石油貯蔵所でタンク爆発・火災、テロ攻撃か」20224月)

  ●「ロシアの2箇所の石油貯蔵施設を無人航空機(ドローン)で攻撃、タンク被害」 202211月)

  ●「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)

  ●「ロシアの石油貯蔵所で無人航空機によって燃料タンク3基が火災」202211月)

  ●「ロシアの2箇所の石油貯蔵施設を無人航空機(ドローン)で攻撃、タンク被害」202212月)

  ●「クリミア半島の石油貯蔵施設で無人航空機(ドローン)攻撃でタンク火災」20234月)

  ●「ロシアの石油貯蔵施設が2日連続で無人航空機(ドローン)攻撃によりタンク火災」20235月)

  ●「ロシアの軍組織が自国ボロネジの石油貯蔵所を攻撃し、タンク火災」20236月)

  ●「ロシアの石油貯蔵施設が無人航空機(ドローン)攻撃によるタンク複数火災」20241月)

  ●「ロシア各地の石油貯蔵施設が無人航空機攻撃でタンク火災、新型ドローンか? 20246月)

「ロストフ州」 Rostovは、ロシア連邦を構成する州のひとつで人口約420万人で、南部連邦管区に属し、南東でウクライナと国境を接している。

「チムリャンスキー地区」Tsimlyanskyは、ロストフ州の43の地区のうちのひとつで、行政および市町村の地区である。州の東部に位置し、行政の中心地はチムリャンスキー市で、人口は約34,000人である。

■「発災タンク」は、ロストフ州チムリャンスキー地区にある石油貯蔵施設にあるタンク設備であるが、ガソリンやディーゼル燃料など合計12,500KLの油が保管されているという情報以外、場所・タンク基数などの仕様は報じられていない。グーグルマップでチムリャンスキー地区を調べると、タンク群のある石油貯蔵施設が存在しているのは分かるが、この施設が発災タンクのある石油貯蔵施設かどうか分からない。

 620日(木)に攻撃されたタンボフ州プラトノフスカヤの石油貯蔵施設は、ウクライナ国境から約400km離れていたが、今回のチムリャンスキー地区にある石油貯蔵施設はウクライナ国境から約170km離れている。以前は国境近くの石油貯蔵施設を攻撃にしていたが、最近は国境から離れた施設が標的にされている。

所 感

■ これまで、テロ対応の観点から無人航空機(ドローン)による貯蔵タンクへの攻撃性を見てきたが、ウクライナが最近使っている無人航空機(ドローン)はFPV型(First Person View)ドローンで、飛行機型からいわゆるドローン型へ回帰しており、テロ対策上からは厄介な攻撃用ドローンの出現である。

 通信社のロイターが発表した「ウクライナ、“ドローン戦” で変貌する戦争」(2024/03/26)は、ドローン攻撃の映像を分析、研究文献と突き合せて照合し、さらにドローン製造者、兵士、政府当局者に取材して、 FPV型ドローンの現状をまとめており、理解に役立つ資料である。

■ ドローンによるタンク設備への攻撃が、ウクライナ国境から遠く、ロシア国内の奥深いところに及んできて、タンクの被災状況が報じられてこないようになった。ロシア軍はウクライナのドローンを撃墜したというだけで、石油貯蔵施設への被害については発表していない。タンクの被災状況はロシアの関係州知事による発表のみになっている。 

■ 消火活動の詳細も報じられていない。今回の事例では、火災時間が6時間半(短いところでは5時間と報じているところもある)であるが、数少ないタンク被災写真によると、かなり激しい火災状況であり、56時間で消火できるようなものではないと感じる。事実がはっきりしておらず、このブログの目的から外れ始めており、ウクライナとロシアによる戦争におけるタンク設備の被災事例の紹介は今回で終わることになるだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Rferl.org,  Oil Depot On Fire In Russia's Rostov Region, Governor Says,  July  13,  2024

     Voanews.com, Shelling kills 4 in Ukraine; drone attack sparks Russian oil depot fire,  July  13,  2024

     Kyivindependent.com,  Drone attack caused fire at oil depot in Russia's Rostov Oblast, governor claims,  July  13,  2024

     Straitstimes.com, Russian oil depot on fire after Ukrainian drone attack,  July  14,  2024

     Ukrinform.net, Oil depot on fire in Russia’s Rostov region following drone attack,  July  13,  2024

     Hromadske.ua, Oil depot in Russia's Rostov Oblast catches fire after drone attack,  July  13,  2024

     Currenttime.tv, В Ростовской области из-за атаки дронов загорелась нефтебаза. Пожар тушили больше шести часов,  July  13,  2024

     Dw.com, В Ростовской области после атаки дрона загорелась нефтебаза,  July  13,  2024

     Secretmag.ru, Сильнейший пожар случился на нефтебазе после атаки дронов. Его не могут потушить уже 5 часов,  July  13,  2024

     24tv.ua, Дроны атаковали нефтебазу в Ростовской области: возник крупный пожар,  July  13,  2024

     Bfm.ru,  ДПожар на нефтебазе в Ростовской области после утренней атаки БПЛА потушен,  July  13,  2024

     Reuters.com,  ウクライナ、ドローン戦で変貌する戦争,  March  26,  2024  (資料が多いためか、読み込みはインターネットが重いので、少し時間をかけたあと、読むとよい)


後 記: ドローンの武器化が進歩してきて、国境から遠いロシア国内での石油貯蔵施設のタンク火災になり、報道が変わってきました。いわゆる戦争における“報道” になり、事実を隠して嘘をついてもよいという風潮を感じてきています。インターネットでも添付のような写真を掲載しているところがありました。明らかに写真は今回の事例のものではありません。読む人が勝手に思い込んでいるだけで、字幕と写真は関係ないと言われれば、一言もありません。軍隊という組織は嘘と真実がごちゃごちゃになっていき、よほど気を確かに持たないと、嘘があたかも真実のようになっていきます。実際に戦争を行っているロシアのような国ではそうですが、最近の海上自衛隊の不祥事を見ていると、戦争でなくてもそうなんですね。


0 件のコメント:

コメントを投稿