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2012年7月12日木曜日

太陽石油で工事中の球形タンクから出火、負傷者1名

今回もまた、前回に続いて日本で起こったタンク事故を紹介します。2012年6月27日、愛媛県今治市菊間町にある太陽石油四国事業所の液化石油ガス用球形タンクにおいて工事中に出火し、内部にいた作業員1名が負傷する事故がありました。

本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・ITV愛媛, 太陽石油でタンク火災、作業員が重傷, June 27, 2012
      ・毎日jp, 火災:タンク出火、1人重傷・・・今治・太陽石油四国事業所, June 28, 2012
      ・朝日新聞, タンク火災1人重傷, June 28 2012
  ・毎日jp, 今治のタンク火災:太陽石油所長が県に謝罪と説明, June 29, 2012
  ・愛媛新聞, 配管内可燃性ガス漏れ込み引火? 太陽石油タンク火災, july 04, 2012
  ・今治のタンク火災:「配管からガス流入」 太陽石油が県に原因報告,  july 04, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月27日(水)、愛媛県今治市菊間町にある太陽石油四国事業所において内部検査のため開放中の液化石油ガス用球形タンクから出火し、内部で工事中の作業員1人が負傷する事故があった。
■ 火災があったのは太陽石油四国事業所にある直径20m程のブタンガスを貯蔵するLPGタンク内で、27日午前10時50分頃、「タンク内で火災が起きた」と消防へ通報があった。
 火はおよそ30分後に消し止められたが、この火災の際、タンク内のはしごの上部に取り付けられていた作業員の安全ベルトを装着する際に使われる落下防止安全装置の部品で重さ約5kgの金属物が落下し、孫請け会社の作業員(配管工)の檜垣和史さん(33歳)の頭や肩に直撃し、檜垣さんは重傷を負った。落下防止安全装置はワイヤロープを介して人の体を支持するためのもので、避難途中に頭上から落ちてきたと思われる。
 その後、檜垣さんは病院へ搬送され、頭部裂傷(10針縫合)と左鎖骨骨折の治療を受けている。


鎮火直後のLPGタンク (写真は朝日新聞から引用)
■ タンク内は当時、定期点検のため、液化石油ガスは抜かれていて、檜垣さんは午前9時頃から同僚3人とタンク内で足場組みに関わる作業をしていたと見られている。
 太陽石油は会見を開き、「火災は作業員が足場を組むのに邪魔になる常設のはしごをガスバーナーで切断中に何かに引火した」と説明を行った。 この際、作業前には、タンク内のガス濃度については、ゼロであることを確認していたという。
 また、火災の衝撃で金属物が落下した可能性もあるとした一方で、「あくまで爆発はしておらず、火災と金属物の落下との因果関係は分からない」と話している。
事故翌日、実況検分のために製油所構内に入る
今治市消防本部   (写真は愛媛新聞から引用
)
■ 太陽石油四国事業所では2006年1月、原油タンク火災で作業員5名が死亡する事故が起きており、越智洋二副所長は「前回の火災を受けての対応が十分でなかった。原因を特定して二度と起こさないようにしたい」と陳謝した。6月27日事故当日に就任した松木徹所長も「警察、消防の原因究明に協力し、再発防止に取り組む」と約束した。
■ 警察によると、事故後もタンク内はガスが充満しているため、27日(水)は立入りができないため、翌日28日(木)に実況検分を行い、作業手順に問題がなかったかどうか調べる方針だという。
事故翌日、球形タンク下部で実況検分を行う
関係官庁機関  (写真は愛媛新聞から引用
)

■ 6月28日(木)、太陽石油四国事業所の松木所長らが愛媛県庁を訪れ、県の県民環境部上甲俊史部長に謝罪と説明を行った。上甲部長は、詳しい原因と再発防止策の報告を求めた。同事業所は原因究明後、文書で報告するとしている。
 愛媛県は高圧ガス保安法に基づき、同事業所のタンク設備を許可している。松木所長は「多大なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪した。鎖骨骨折などの重傷を負った作業員の容体などを説明したが、これに対して上甲部長は、2006年1月に同事業所で作業員5人が死亡するタンク火災が起きたことに触れて「同じような火災が起こるのは遺憾である。原因究明と対策を強くお願いする」と要請した。

■ 7月3日(火)、太陽石油四国事業所の森戸隆志副所長は、出火原因について「フランジ(継手)が開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられる」と県に報告した。
 森戸副所長は県庁を訪れ、県の防災局中村博之局長に調査の途中経過として、火災は作業員がいたタンクの上部で発生したこと、当時タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開く作業をしていたこと、可燃性ガスがタンク上部のマンホールから入り込み、タンク内上部に溜まったガスにガスバーナーの火が引火したとの見方を示した。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては「警察が捜査中」として明言しなかった。
 再発防止策には、配管内を通るガスの種類をフランジに表示するほか、移動式ガス検知器の増設などを列挙し、県が求める事故報告書は「警察当局の原因特定ができ次第、提出したい」とした。
 なお、警察は詳しい出火原因とともに、業務上過失傷害の疑いで調べている。
■ 太陽石油四国事業所では、2006年1月、原油タンク内を清掃中の作業員5人が死亡、2人が負傷した火災事故があり、業務上過失致死傷容疑で書類送検された同事業所の当時の工務部長ら9人について松山地検が2009年11月、不起訴処分とした。検察審査会の「不起訴不当」 の議決を受けて再捜査したが、2010年12月に嫌疑不十分で再び不起訴処分とし、不起訴が確定している。

 <太陽石油のニュース・リリース>   (太陽石油のホームページから引用)
2012年6月27日 第1報 (四国事業所における小火発生について)
■ 本日11時頃、発生した小火(ぼや)について現在の状況をご報告いたします。
1.事業所概要;    精製能力 120,000バレル/日
2.小火発生場所;   LPGタンク
3.発生日時、状況; 2012年6月27日(水) 11時頃、LPGタンク開放検査中に小火が発生
4.発生原因;     調査中
5.負傷者;           協力会社の作業員1名が落下物により頭部に怪我
6.物的被害;        調査中
7.現在の状況;     小火は11時18分頃、公設消防により鎮火したことを確認
2012年6月27日 第2報 
■ 本日発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況;  10時45分(仮)に発生した小火は、11時15分(仮)、公設消防により鎮火したことを
            確認 (発生および鎮火の時刻は、消防が検証の上、確定します)
2.発生原因;   調査中 (消防、警察合同調査中)
3.負傷者;       協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折
4.物的被害;    調査中
2012年6月29日 第3報 
■ 6月27日に発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況;  6月27日(水)10時45分頃に球形タンクT‐116において発生した小火は、
               同日11時15分に公設消防により鎮火したことを確認
             6月28日(木)および29日(金)に消防、警察、労働基準監督署による合同の実況
             検分を実施し、終了
             6月28日に愛媛県に中間報告を実施
2.負傷者;       協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折)
            現在、治療・入院中
3.物的被害;     調査中

補 足 
■ 太陽石油は、1941年(昭和16年)に設立し、東京に本社を持つ民族系石油元売の一つで、愛媛県を地盤として、主として西日本に展開し、従業員634名の石油会社である。北海道、東北、北陸地方の中にはガソリンスタンドがない所があり、東日本ではなじみがないが、ガソリンスタンドのブランド名は「TAIYO」から2008年に「SOLATO」(ソラト)に変更した。
 製油所は愛媛県菊間町の四国事業所のみで、精製能力は120,000バレル/日である。日本で初めてソ連やルーマニアなどの軽質原油を輸入して石油製品の白油化を進め、重油生産ゼロ製油所を目標に、約500億円をかけて残油流動接触分解設備25,000バレル/日、ガソリン脱硫装置13,000バレル/日、プロピレン精製装置5,400バレル/日、アルキレーション装置6,000バレル/日が2010年10月に完成した。
 この装置建設にあたっては、狭い敷地を有効利用するため、既設施設を移転しながら進められたが、今回の発災した球形タンクもこの新設装置建設に伴い、山の斜面を造成して建設された。
残油流動接触分解設備など新設装置の事業計画時の資料 (写真は太陽石油事業計画書から引用)

■ 球形タンクは、開放検査時に内部に足場を組み立てなければならない。従来は丸太や金属パイプなどを使った足場が通常の方法で、球形のタンク内壁全面に組み立てることは難しく、日にちや費用のかかる工事であった。近年、ロータリーデッキという方法が開発されている。球形タンクの中心に柱を立て、その左右に半円形の羽根のような専用足場が架かり、それが柱を中心にして回る仕組みになっている。
 今回の事故では、作業員が足場を組むのに邪魔になる常設のはしごをガスバーナーで切断していたとあり、ロータリーデッキ型の足場方法を採用するために常設のはしごを切断する計画だったと思われる。

■ 出火原因は、タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開き、この開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられている。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては、警察の捜査中であり、明言されなかった。
 なぜ、ガスの種類を明らかにすることを避けたかわからないが、タンク上部における実況検分の写真を見ると、液化石油ガスタンクの安全弁出口は大気開放型であるので、安全弁出口のフレアガス系統ではない。推測になるが、タンク開放時に使用された燃料ガスラインまたはフレアガスラインの仮設(または常設)で比較的小配管ではないかと思われる。
球形タンク上部で実況検分を行っている関係官庁機関 (写真は愛媛新聞から引用)


■ 負傷した要因は、落下防止安全装置の部品で重さ約5kgの金属物が落下したためであるが、記事の内容から巻取り式墜落防止装置だと思われる。この装置は、使用中に万一墜落が 起こっても、人間を支持しているワイヤーロープが装置内のディスクブレーキによって衝撃を軽減することができる安全器具で、重量は約5kgである。
 巻取り式墜落防止装置(の上部フック)は球形タンク内のはしごの上部に取り付けられていたことになっている。装置内に巻かれたワイヤーロープの下部フックに安全ベルトを装着して作業していたものと思われるが、この状態でフックが外れることはなく、火災の衝撃で外れることも考えづらい。ただ、タンク内のはしごの上部に作業員3人分の巻取り式墜落防止装置上部フックをどのように取り付けていたかはわからない。

所 感 
■ 発災当日27日から29日にかけて3回にわたって事故のニュース・リリースをホームページに出していた太陽石油は、その後、自らは情報を発信していない。明らかに意図的な配慮を感じる。ただし、メディアが太陽石油の動きを取材して得た情報を発信している。これによって太陽石油が発信しているニュース・リリースだけではわからない事故の概要が理解できた。

■ この意図的な配慮は、日本独特の典型的な縦割り行政の事故対応のためだと感じる。負傷者が出ているため、業務上過失傷害の疑いで警察が主として事故を調査(捜査)することになる。出火に関する事項は消防本部が所管する。太陽石油のニュース・リリースの中で、出火時間や鎮火時間にこだわっているのはそのためである。 また、労働災害であり、労働基準監督署が関与する。おそらく、労災の事故報告書は請負会社から労働基準監督署へすでに提出されていると思われる。
 一方、液化石油ガスタンクは高圧ガス保安法の適用を受け、愛媛県の管轄であるが、当時、開放検査で液が抜かれた状態で高圧ガスとは関係のない軽微な事象と判断したためか、負傷者が出ている事故にも関わらず、愛媛県は実況検分に立入りしていない。メディア各社が「火災」と報じているにも関わらず、太陽石油がニュース・リリースの中で「小火(ぼや)」としたのはそのためだと思われる。しかし、その代わり、太陽石油が県庁を訪問し、事故の状況を逐次報告させられている。 この県庁訪問時に、太陽石油は取材に応じているが、発言内容は県や警察への配慮が見られる。 

■ 太陽石油としても刑事事件として業務上過失傷害の容疑者を出したくない立場であり、関係官庁機関は縦割り行政で事業者を監督・指導しなければならない立場(逆にみれば、監督不行届の責任)にある状況下で、果たして真実の原因調査結果が出るのか疑問が残る。
 事故事例は二度と起きないように、事実を明らかにし、再発防止策を出して活かすことである。そして、これは官庁の組織内や発災事業所内に死蔵することなく、公にして他社でも活用できるようにすることが重要であり、真実の原因調査結果が公表されることを期待する。

後記; 今年の夏は全国で節電が呼びかけられており、我が家も緑のカーテンとしてゴーヤとアサガオを植えました。最初は育ちが悪いかなと思っていましたが、ここにきてどんどん伸びています。ゴーヤのつるは観察していると面白いものです。台風の多い沖縄育ちのためか、つるが風に動じないよう網にしっかりと巻きついていきます。文化生活(?)でひ弱になった人間(日本人)が見習うべき強さです。
 先日、原発が稼働し始め、政府が節電目標を下げたことに対してせっかく高まった節電意識に水を差すような話だという人がいましたが、同感です。電灯やラジオくらいしか電気器具がなかった昭和20年代に帰ればいいとは思いませんが、節電や生活方法について考えるいい機会ですよね。





2012年7月7日土曜日

コスモ石油千葉でアスファルトタンクから漏洩して海へ流出

  今回は、2012年6月28日、千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所においてアスファルトタンクからアスファルトが漏洩して、東京湾の海へ流出した事故を紹介します。日本で起こった事故であり、メディアから全国ニュースで流れましたので、ご存知の方も多いと思います。ほとんどの情報は28日または29日に出されたものなので、最初はメデイアなどから出された情報をまとめ、後半にこれらの情報からの推測と所感をまとめました。

本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・朝日新聞, 海上に液体アスファルト留出 千葉・市原のコスモ石油, June 28, 2012
     ・毎日jp, アスファルト;製油所から東京湾に留出 千葉のコスモ石油, June 20, 2012
     ・NHKWeb, 油流出 タンク内部加熱中に, June 28 2012
  ・千葉日報WEb, 東京湾にアスファルト流出 タンクに亀裂2~3メートル 市原・コスモ石油, June 29, 2012
  ・読売新聞, 加熱でタンクに亀裂か アスファルト流出, June 29、2012
  ・毎日新聞, アスファルト流出:タンクに亀裂、海に・・・市原・コスモ石油製油所, June 29 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月28日(木)、千葉県市原市にあるコスモ石油千葉製油所においてアスファルトタンクが破損し、貯蔵していたアスファルトが外部へ漏洩する事故があった。発災したのは容量1,000KLの505番タンクで、漏洩したアスファルトは防油堤内に溜まったが、一部は排水口を通って海上へ流出した。
(写真は毎日新聞から引用)
■ 6月28日(木)午前7時20分頃、市原市五井海岸のコスモ石油千葉製油所で、北東側護岸沿いにあるアスファルトタンク1基からアスファルトが海上に流出しているのを同社関係者が発見した。
 コスモ石油は午前8時頃にオイルフェンスを展張し、拡散防止を図った。流出は午前8時10頃に止まったが、海上へ流出した油の一部はオイルフェンスの展張範囲を越え、沖合へ流れた。
 千葉海上保安部によると、ゲル状のアスファルトが広がり、午前11時時点で幅約500m、沖合約250mの範囲の海上に広がった。市原市消防局と千葉海上保安部は現場海域にオイルフェンスを張り、千葉海上保安部の巡視艇が水を撒くなどして油の拡散防止を行った。しかし、千葉海上保安部によると、28日夜までに最大幅約200m、長さ約5kmの範囲に広がったという。
(写真は朝日新聞から引用)
■ 市原市消防局によると、タンクには約800KLが入っており、流出量は500KLに上るという。コスモ石油の発表によると、漏洩は437KLと推定されるが、海上への流出量は特定に至っていないという。流出したアスファルトは吸着マットなどを使って回収作業が行われているが、28日では終了せず、コスモ石油は24時間体制で回収作業を続けている。市原消防局と海上保安部は29日(金)朝から再開すると報じられている。
■ 発災したアスファルトタンクは、護岸から約100m内陸にあり、直径約11m、高さ約10mの鋼製タンクで、容量1,000KLである。タンクには、高さ約9mの位置に長さ約2mの亀裂が生じており、この亀裂からアスファルトが約15分間噴き出し、内部に入っていた818KLのうち437KLが外へ流出したと報じられている。
(写真は毎日新聞から引用)
■ このタンクは、2011年3月の東日本大震災以後は使われていなかったもので、再稼働に向けて最近、点検を始めており、6月16日(土)からは、中のアスファルトを軟らかくして抜き取る目的でタンクの内部を加熱していた。事故当日28日(木)朝のタンク内部は約160℃まで熱せられていた。 コスモ石油は、加熱作業により内部圧力が高まってタンクに亀裂が入り、中からアスファルトが噴き出したとみられると、読売新聞は報じている。
(写真は読売新聞から引用)
■ 読売新聞によると、同社では、事故の瞬間、製油所内に何かが割るような音が響き、確認にしたところタンクに亀裂が入っていたというと報じている。 NHKWebによると、アスファルトが漏れ出る前、近くにいた作業員がパンという何かが割れるような音を聞いていて、高さ10mほどのタンクの屋根と周りの壁のつなぎ目の部分が、幅2,3mほど損傷しているのが見つかったと報じている。
■ 発災タンクは1967年製造で、補強・改修を繰り返して使用していたと毎日新聞は報じている。このほか、同製油所には同種のアスファルトタンクが10基あるが、いずれも市原消防局から使用停止命令を受けて稼働を停止している。

■千葉県県議会の小松議員は同氏のブログでつぎのように述べている。
 「アスファルトのタンクヤードは、2011年3月11日の液化石油ガスタンクの炎上・爆発事故で17基の球形タンクが全焼・全損した3PKヤードと道路1本隔てて隣接しています。炎上・爆発時には、一番道路側(3PKヤード寄り)の510番アスファルトタンクの側板が開口して、アスファルトが漏洩しました。
 今回、漏洩事故を起こした505番タンクは、アスファルトのタンクヤードのほぼ中央に位置していますが、隣接の506番、507番、508番、509番タンクには、かなりの飛散物が衝突・落下しています。昨年、私たち議員がコスモ石油の現地調査に入った時も、アスファルトタンクの損傷が目につきました。
 その影響はないのかどうか、原因は調査中ということですが、徹底した検証が求められます」


<コスモ石油のニュース・リリース> 
2012年6月28日 第2報 (海上へのアスファルト漏洩について)
■ 本日発生した海上へのアスファルト漏洩につきまして、近隣住民の皆さま方をはじめ、多くの方々に多大なご心配・ご迷惑をおかけしておりますこと深くお詫び申し上げます。
 現在、漏洩したアスファルトの回収と原因の究明に全力を挙げ取り組んでおりますが、現時点での状況につきまして、以下のようにご報告します。
1.漏洩日時; 2012年6月28日(木)午前7時18分頃   現在、漏洩は停止しています。
2.漏洩場所; コスモ石油千葉製油所 505番アスファルトタンク(容量:1,000KL)
3.タンクからの推定漏洩量; 437KL(15℃換算)
                   一部が海上に流出しましたが、流出量の特定には至っておりません。
4.漏洩原因; 調査中
5.対   策; 8時頃オイルフェンスを展張し、油の拡散を防止。 現在、アスファルトの回収を実施中。
6.負傷者;   無し 


(注記; 市原市消防局および千葉海上保安部はウェブサイトをもっているが、本事例について住民向けの情報は出していない)

補 足
■ 発災したアスファルトタンクの容量は1,000KLであるが、大きさについては直径11m、高さ10mというデータのほか、直径約12m、高さ約11mという報道もある。亀裂は高さ約9mの位置にあるという報道は多いが、この位置をタンクの屋根と周りの壁のつなぎ目の部分と報じているところもある。
  内部圧力が高まってタンクに亀裂が入り、中からアスファルトが噴き出したとみられるので、おそらく、タンク屋根と側板の溶接部が一部破断したものと思われる。
 ブログ「産業安全と事故防止を考える」の投稿者が同事故に関するコメントの中で、「屋根と側壁のつなぎ目部分に亀裂が入ったという件、おそらくは放爆構造が功を奏したということだろう」と述べている。コーンルーフ式タンクでは過圧防止のために、意図的に屋根と側板の溶接部を弱くする放爆構造が採られており、この放爆構造が機能したと思われる。 


■ 亀裂部がタンク液面(約7mと推定)より高い位置にありながら、内容液818KLのうち約半分の437KLが噴出していることから激しい突沸現象が起こったと思われる。
 アスファルトの比重は0.9~1.05である。一般的には、温度が低い状態では水より重く、高い温度では水より軽く、例えば、25℃で1.03、150℃で0.93というデータがある。今回のタンクの運転状況から考えて、長期停止期間中にタンク内へ水が入り、徐々にアスファルトを加熱していった際に遊離水となって徐々に沈降して行き、ある時点で一気に沸騰し、突沸現象を起こしたものと思われる。


■ オイルフェンスは、コスモ石油、市原市消防局、千葉海上保安部によって展張されたようだが、どのような役割分担で張られたか報道ではわからない。コスモ石油はニュース・リリースの中で午前8時に展張したと言っており、これは護岸近くに張られたオイルフェンスと思われる。しかし、写真では、このオイルフェンスを越えて拡散し、この対応に新たなオイルフェンスが展張されつつあるのがわかる。
 明らかにオイルフェンスの展張が後手になっている。 また、夜間になって油回収作業はコスモ石油のみで、消防局や海上保安部は作業を中断している。どこが環境汚染の対応を主動している部署か曖昧な点の一つである。
 このような海上での油流出事故対応の専門機関としては、独立法人「海上災害防止センター」が存在するが、今回の情報の中では、同機関が活動したのかどうかわからない。



所 感
■ アスファルトは準危険物といわれ、消防法による危険物から除外され、引火点が250℃以上なので、自治体の火災予防条例の指定可燃物の扱いで、危険性の少ない石油製品と受け取られている。しかし、アスファルトタンクの事故は少なくなく、2011年5月2日に起こった米国カリフォルニア州にあるグラナイトロック社の舗装用アスファルト製造プラントにおいてアスファルトタンクが爆発・火災事故を起こした事例を当ブログで紹介(2011年6月)した。 このほかに、2006年5月、日本の東亜石油京浜製油所におけるアスファルトタンクの爆発事故などがあり、運転管理に注意を要するタンクの一つである。
 アスファルトタンクで注意すべきことは、軽質油留分の混入、運転温度の上げすぎ、屋根部裏面の硫化鉄の生成などであるが、最も基本的な留意点は水による突沸である。原因は調査で明らかになると思うが、水があっても徐々に加熱すれば、水は徐々に蒸発していくという予断があったのではないだろうか。まさに事故は弱点を突いてくるという印象を持つ事例である。
■ 今回の事例では、アスファルトタンク地区の排水系統も問題だった。防油堤内に留まっておれば、海上汚濁問題へは発展しなかったが、おそらく、ここでもアスファルトは漏れても固化して、排水系統から海へ流れることはないという予断があったのではないだろうか。
■ 海上へ流出した油膜の状況は、地上の護岸からは目線の関係で視認しづらい。我々は報道機関の飛行機による航空写真を見ているので、オイルフェンスの展張が後手になっているのがよくわかる。
 今回のような海上への油流出事故の対応について地方自治体の環境担当部署、海上保安部(署)、消防局(署)の役割と責任範囲が曖昧である。基本は、地方自治体の環境担当部署が汚濁状況を把握し、拡散防止策を主動すべきである。この拡散防止策の遂行の中で、海上保安部(署)などの役割がある。そして、今回、活動がはっきりしない海上災害防止センターを活用して24時間体制で回収作業を行い、その経費は発災事業所の負担とすべきである。 今回の事例を活かすことを期待する。




後記; 今回の事故は最初にテレビのニュースで知り、日本の事故なので、情報整理は簡単だろうと思っていましたが、記事を読むと、次々と疑問が湧きました。液面はどの高さだったのか、なぜ9mという高い位置にある亀裂から多量のアスファルトが漏洩したのか、オイルフェンスは適切に展張されたのかなどです。ここで役立ったのは写真です。記事だけでは理解できないことが、写真を見るとわかることがあります。
 これから調査が行われて原因が明らかにされ、情報公開されると思いますが、写真も公開してもらいたいと感じる事例です。タンクの屋根と側板の放爆状態を実際に見た人はほとんどいないと思います。貴重な情報を次代に伝えるという観点から情報公開を期待したいですね。

2012年7月3日火曜日

カナダのアルバータ州のポンプ・ステーションで原油漏洩

 今回は、2012年6月18日、カナダのアルバータ州エドモント近くのエルク・ポイントにあるエンブリッジ社のパイプライン用ポンプ・ターミナルにおいて重質原油が漏洩した事例を紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・CBC.ca, Crude Oil Leaks from Enbridge Pipeline Pumping Station, June 19, 2012
      ・CBC.ca, Elk  Point  Pipeline Restarted  after  Oil Spill, June 20, 2012
      ・GlobalTVCalgary. com, Enbridge Pumping  Station Spills  Heavy  Crude  near Elk  Point, June 19 2012
  ・HuffingfonPost. com, Enbridge Elk Point Spill Pumps about 230,000 Litres of Heavy Crude in Alberta,
   June 19, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月18日(月)、カナダのアルバータ州のエドモントン近くにある石油パイプラインのポンプ・ステーションで油が漏洩する事故があった。事故があったのは、アルバータ州セントポール郡のエルク・ポイントにあるエンブリッジ社のパイプライン用ポンプ・ステーションで、重質原油が漏洩した。
 エンブリッジ社によると、漏洩があったのはエルク・ポイントの南東約24㎞にあるアサバスカ・パイプラインのポンプ・ステーションで、漏れた原油の量は約230,000リットル(230KL)と推定されるという。

■ アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)は19日火曜のニュース・リリースの中で、パイプラインは運転が停止され、ポンプ・ステーションは他と縁切りされたと発表した。
 ERCBの広報担当ダーリン・バーター氏によると、水路へ流れ出る心配はなく、すでにクリーンアップ作業が始まっているといい、つぎのように語った。
 「発災場所には、流れている川はなく、池や湖もなく、実際、水資源のないところです。この地域には、水を得るための井戸もありません。漏れたのが重質原油であり、すぐに土壌へ浸透することはないでしょう」
 ERCB当局は調査を始めたが、バーター氏が話したように数日してからクリーンアップの状況を監視するため現地へ職員を派遣すると言っている。
 バーター氏によると、事故のあったポンプ・ステーションは設置後12年を経過しており、この種の施設の経過年数としては中位だという。
■ エンブリッジ社のニュース・リリースによると、漏れの原因はフランジのガスケットの損傷によるものであったことを明らかにした。漏れを発見後、ただちに当局と関係機関に連絡したという。

■ エンブリッジ社によると、流出は現場のごく狭い範囲に限られており、野生生物や水源に影響することはないと発表している。
 このため、エンブリッジ社は、18日火曜の午後には、ポンプ・ステーションをバイパスする形でパイプラインの運転を再開した。

■ しかし、事故のあったポンプ・ステーションのあるセントポール郡のスティーブ・アパム議長は、19日火曜の夜まで何の連絡も受けていなかったと語っている。アパム議長は、メディアのニュースで流出事故を知ったといい、 「現時点でも、郡の誰かが連絡を受けていたとは思っていない」と語った。
 エンブリッジ社から連絡されるべきだったかという質問に対してアパム議長は、「そう思うよ。あるいは、連絡を受けていたアルバータ州環境庁からだと思うね。我々にはどこからも何の連絡もなかった」

■ エンブリッジ社はパイプラインの運転を再開したが、ERCBは同社に対して19日午後になって、再び、パイプラインを停止するよう命じた。
 「エンブリッジ社としては、ERCBと話し合い、パイプラインの再開時期を決めたいと思っています」と同社は述べている。
■ 今回の油流出は、アルバータ州においてこのひと月に三回目の大きな漏洩事故であり、アルバータ州パイプライン系統の評価や監査について問題視されている。
 アリソン・レッドフォード州知事は、3件の流出事故に関する調査が終わり次第、州政府の関係閣僚に事情を聴く予定だといい、つぎのように語った。
 「現時点で予断の話はしません。しかし、改善事項が出されることは期待しています。現時点は3件の事故の反映事故が出てくる前であり、飛び越えて結論めいた話をするつもりはありません」

■ 6月初めにプレインズ・ミッドストリーム・カナダ社所有のレインジランド・パイプラインにおいてサンドラ近くのレッド・ディア川に約3,000バレル(470KL)の油を流出する事故が起きた。同社は、2011年4月29日、パイプラインの破断によってピース川の北東部に4.5百万リットル(4,500KL)という州史上最大の油流出事故を起こしており、現地では今もなおクリーンアップ作業が続けられている。
 今年5月には、レインボー湖の南東部においてペース・オイル&ガス社の注入油井から約22,000バレル(3,500KL)の油と水が流出する事故が起こっている。

■ なお、アルバータ州エネルギー大臣であるケン・ヒューズ氏は、パイプラインから漏れることは比較的稀であり、重要なことは漏れた後に起こる事象であるといい、つぎのように語っている。
 「住民として注視しておくべきことは、今回のような周囲への対応であり、適切な対応とクリーンアップ、そして2~3年先を見た環境への配慮だと思います。これが責任の尺度だと思っています」

<エンブリッジ社のニュース・リリース>
2012年6月19日(火) 事故の概要
■ エンブリッジ社は、アルバータ州エルク・ポイント町から約24㎞離れたライン19(アサバスカ・パイプライン)のエルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションにおいて油が漏れていることを確認しました。
 漏洩は2012年6月18日(月)に起こったもので、大半はポンプ・ステーションの構内に限定されています。
ただちに安全であることを確認し、クリーンアップ作業に着手しました。公共の健康や安全への影響はありません。漏洩量は230㎥と推定しています。漏れの原因は、ポンプ・ステーション内のフランジ用ガスケットが損傷したためとみています。

■ ポンプ・ステーション内での漏れ発見後、ただちに、エンブリッジ社はパイプラインを停止しました。エンブリッジ社は緊急時対応部署へ通報するとともに、当局および関係機関へ連絡致しました。

■ エルク・ポイント・ポンプ・ステーションは停止して縁切りしましたので、6月18日午後には、パイプラインを安全に再稼働させ、順調に運転中でした。しかし、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)の指示により、6月19日午後、パイプラインは再び運転を停止しました。これは、 ERCBおよびエンブリッジ社が共同で原因調査を行うためです。エンブリッジ社はERCBと協議を行い、適切にパイプラインの再稼働時期を決める予定です。

■ ライン19(アサバスカ・パイプライン)の仕様
  ・流量 345,000バレル/日 (最大570,000バレル/日)    (2,300KL/時間=38KL/分)
  ・直径 30インチ
  ・長さ  541㎞
  ・始点;アサバスカ・ターミナル  終点;ハーディストリー・ターミナル
  ・建設 1998年~1999年

質問と回答
■ 何が起こったのですか?
  2012年6月18日午前5時41分、エンブリッジ社の監視システムがライン19(アサバスカ・パイプライン)で漏洩徴候を示す配管圧力の低下をとらえました。エンブリッジ社パイプライン・コントロール・センターは午前5時51分にラインを停止しました。この直後の午前6時に、アルバータ州ボニーヴィルの北70㎞にあるエルク・ポイント・ステーションで油が漏れているようだという住民からの連絡を受けました。

■ どうして起こったのですか?
  漏れの原因は、ポンプ・ステーション構内のフランジのガスケットが破損したためと思われます。フランジのガスケットは、2本の配管を接続する際、シール機能を確保するために用いられるもので、パイプライン系統では共通的な部品として広く使用されています。事故調査は規制当局と関係機関と連携して実施されます。

■ どのくらいの量の油が漏れたのですか?
  漏れ量はおよそ230㎥とみられます。そのうち約200㎥はエンブリッジ社の敷地内で、約30㎥は地主の土地です。

■ この漏れによって影響は受ける場所はどこですか?
  地主の土地が一部かかりますが、大半は私どもの敷地内で使用権を持っている場所に限定しています。

■ この事故によって水や野生生物への影響はどうですか?
  水や野生生物への影響はありません。現場近くには水系はありません。すぐに現場まわりには、この地域の野生生物を守るためにフェンスを設置しました。敷地内に鳥が飛んで来ないように、鳥おどし砲を設置しています。

■ エンブリッジ社はどのように対応していますか?
  エンブリッジ社は最優先課題と位置付けて対応しています。クリーンアップはエンブリッジ社の環境方針と基準に基づいて実行中です。
 ラク・ラ・ビーシュ村とハーディスティ町からの第一応答者とただちに連絡をとり、対応を支援して戴きました。地主、地元の先住民、ERCBおよびアルバータ州環境省にも、事故があったことを連絡しました。
 漏れはすぐに止まりました。事故に伴う怪我人はなく、被害を受けた野生生物もありませんでした。
 私どもは、徹底的にかつ迅速に、可能な限りのクリーンアップを行い、住民、環境、野生生物、協力会社および従業員の安全を確保することをお約束します。
 影響を受けた場所が元に戻るように、地主や地元の要求、規制当局およびわが社の厳格なガイドラインに合致するまで作業を続けます。

■ パイプラインは運転しているのですか?
  6月20日改訂: ERCBの承諾を得て、ライン19は6月19日(火)23時30分に安全に運転を再開しました。エルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションは縁切りしたままで、調査およびクリーンアップ作業と補修が完了するまでの間、閉止することとしました。

2012年6月20日(水) 
■ ERCBの承諾を得て、ライン19は6月19日(火)23時30分に安全に運転を再開しました。エルク・ポイント・オイル・ポンプ・ステーションは縁切りしたままで、調査およびクリーンアップ作業と補修が完了するまでの間、閉止することとしました。

2012年6月22日(金) 
■ エンブリッジ社の従業員は流出現場に入って機械と使って作業を実施中です。ポンプ・ステーションまわりの汚染された土は100%集積が終わり、現場から搬出させることに承認が得られました。ステーション内の汚染土壌は搬出するためにコンテナに保管しています。

2012年6月28日(木) 
■ ERCBの承認を受け取った後、エンブリッジ社は6月24日(日)午後1時にエルク・ポイント・ポンプ・ステーションの稼働を安全に再開し、通常運転に入りました。ERCBおよびエンブリッジ社は、フランジのガスケット損傷によると思われる事故原因について調査を続行中です。当該フランジのガスケットは取替えを終え、他のすべてのガスケットについてはテストを行い、ポンプ・ステーションの配管系統は全検査を行いました。汚染土壌および回収した油は構内から搬出し、処理施設で処分します。さらに、構内の環境テストとモニタリングは必要な限り実施することとしています。

補 足                  
■「カナダ」は、北アメリカの北部に位置し、10の州と3つの準州からなる連邦立憲君主国家で、英連邦加盟国である。人口は約3,400万人で、首都はオンタリオ州のオタワである。
 「アルバータ州」はカナダ西部に位置し、人口は約337万人である。肥沃な農業地帯が広がるが、第2次大戦後、石油が発見されて産油地域でもある。近年はオイルサンド採掘で得られる重質原油の生産が主力になっている。
 「エドモントン」はアルバータ州の州都で、人口は約73万人で産油地域の中心地である。カナダはアイスホッケーが盛んであるが、エドモントンを本拠地とするチームは「エドモントン・オイラーズ」と産油地域を表す名称にしている。
 「エルクポイント」はアルバータ州セントポール郡にあり、人口約1,400人の町である。

■「アルバータ州エネルギー資源保全委員会」(Alberta Energy Resources Conservation Board;ERCB)は、アルバータ州政府の独立した準司法機関で、アルバータ州のエネルギー資源、石油、天然ガス、オイルサンド、石炭およびパイプラインの安全性、責任性および効率的な開発に関する規制を司る組織である。8つの委員会があり、委員はエンジニア、地質学者、技術者、エコノミスト、その他の専門家から成る。 アルバータ州のエネルギー規制機関は1938年に設立された歴史を持ち、ERCBは2008年に新しい組織として運営されている。
 「アルバータ州エネルギー省」はアルバータ州政府機関で、鉱物およびエネルギー資源の政策調整を司る。

■「エンブリッジ社」(Enbridge Inc.)は、カナダのアルバータ州カルガリーに本社を置き、原油と天然ガスの輸送を行う石油会社である。1949年に設立し、6,000人の従業員を擁し、カナダと米国の両方に敷設された世界最長のパイプラインを持っている。

■「アルバータ州における最近のパイプライン漏洩事故」は、報道記事にあるように、5月19日のレインボー湖の油漏洩事故、6月7日のレッド・ディア川の油漏洩事故、6月18日のエルク・ポイントの油漏洩事故の3件である。CBCニュースでは、最近の漏洩事故として概要をまとめている。




■「鳥おどし砲」(Scare Cannon)は、野鳥による 作物被害やジェット機エンジンへのバード・ストライクを防ぐために大きな音を出すように開発されたもので、最近はLPガスを使ったカノン砲もある。



所 感 
■ 今回の事例は、貯蔵タンクに直接関係した事故ではないが、危機管理上、参考になる点が多い。
 ひとつは、エンブリッジ社が事故発生後、運転再開を急ぎすぎたことである。油漏洩が構内に限定され、地域への影響が無いと予断してしまったためである。このため、地元自治体やメディアから早期運転再開に疑問の声が出て、会社の印象を悪くした。
■ ふたつめは、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)の行動が鈍かったことである。エンブリッジ社からの報告だけで事務的に処理しようとみられる。この事故の前に起こった2件の油漏洩事故に比べると、汚染範囲が小さく、クリーンアップ後を確認すればよいだろうと予断している。予想外に大きな反響があったため、一旦、承諾した運転再開を取り消すという失態を演じた。
■ 三つ目は、カナダのパイプライン会社が漏洩事故後の対応についてかなり細かくマニュアル化していると思われることである。今回の事故において、エンブリッジ社は、漏洩油の回収や汚染土壌の搬出と処理というクリーンアップ作業を迅速に行っている。さらに、野鳥が汚染場所へ近づかないように鳥おどし砲を配備するという細かい配慮をしている。おそらく、これまでの漏洩事故の貴重な経験が活かされていると感じる。 
■ 四つ目は、エンブリッジ社のニュース・リリースがわかりやすく工夫されていることである。単に事故概要を出すだけでなく、質問と回答という形で理解しやすくしている。例えば、漏れ発見時の状況はリアリティを感じる情報である。 おそらく、プレス・リリース用に準備した想定質問と回答を活用して公表したものと思われる。事故の情報公開の観点から、会社や自治体などの組織はこの事例を良い見本の一つとして参考にされることを期待する。

後記; 所感で述べませんでしたが、従来、カナダでは、油流出事故について環境庁が現地へ出動して空気(臭い)、水、土壌の汚染問題について対応し、判断しています。例えば、2012年1月に起こったカナダのブリティッシュ・コロンビア州のキンダーモーガン社の石油ターミナルで油流出した事故の対応がその例です。(当ブログでは2012年2月に紹介)
 今回の事故対応では、環境庁の存在感が薄く、アルバータ州エネルギー資源保全委員会(ERCB)が主動で対応しています。しかし、その対応は所感で述べたように問題でした。事故情報を調べていて感じたことは、対応が東京電力㈱福島原子力発電所事故における原子力・保安院と環境庁の対応と重なることでした。原発事故後の対応で原子力・保安院が機能せず、環境省の存在感が無かったように、環境汚染事故の場合、ERCBのような中途半端な立場の組織は機能しないということでしょう。
 現在、世界は環境汚染の対象を空気(臭い)、水、土壌のほかに放射能を追加する傾向です。この観点でいえば、日本の原子力規制庁が環境省の管轄になるべきでしょう。