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2025年4月29日火曜日

イラクのルマイラ油田で石油タンク設備が爆発・火災、負傷者6名

 今回は、2025124日(金)、イラクのバスラ市にあるバスラ・オイル社のルマイラ油田にある第5ガス分離施設の容量10,000KL No.2石油タンク設備で爆発・火災があり、負傷者6名が出たほか、石油生産量が減少した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イラク(Iraq)バスラ県(Basra)バスラ市にあるバスラ・オイル社(Basra Oil Company)のルマイラ油田(Rumaila Oil Field)である。ルマイラ油田は、推定石油埋蔵量が170億バレルとされる世界最大級の油田の一つで、生産量は1日当たり約145万バレルで、現在は120万バレル/日である。バスラ・オイル社は、BP社とペトロチャイナ社の技術助言とサポートを提供されている。

■ 事故があったのは、ルマイラ油田のガス処理プラントにある第5ガス分離施設(The Fifth Gas Separation StationDS5)のNo.2石油タンク(容量10,000KL)である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2025124日(金)午後130分頃、第5ガス分離施設のNo.2石油タンク(付近)で爆発・火災が発生した。(NASAFIRMS衛星追跡システムによって複数の熱源と熱活動が検出され、火災が確認された)

■ 発災にともない、消防隊が出動した。出動したのは、ルマイラ北部消防隊、南部消防隊、バスラ・オイル社消防隊で、消防車20台、特殊車両10台、消火水16,000リットルを積んだ給水車10台を伴っていた。

■ さらに、ルマイラの治安部隊と石油警察が出動し、火災現場の周囲に厳重な警戒線が張られた、緊急事態発生時にともない、人員や車両の円滑なアクセスと迅速な移動を確保した。

■ No.2石油タンクは孤立操作が行われ、作業員は避難をした。

■ 消防隊はNo.2石油タンクに隣接するタンクの冷却作業を行った。

■ 石油関係者によると、ルマイラ油田の操業には影響はなかったという。しかし、火災により135,000バレル(21,400KL)を超える石油が失われ、さらにルマイラ油田の60基の油井が停止したという。当局者によれば、イラクの巨大なルマイラ油田の原油生産量は火災の影響で日量30万バレル減少した。これはイラク全体の石油生産量の約1/3を占める同油田の通常の生産量約150万バレルから大幅に減少したことになる。

■ ユーチューブでは、火災の状況などの映像が投稿されている。主なものはつぎのとおり。

 YoutubeFire Breaks Out at Iraq‘s Rumaila Oilfield Crude Processing Facility | DRM News | AP112025/01/25

 ●Youtubeاندلاع حريق في منشأة لمعالجة النفط الخام بحقل الرميلة النفطي في العراق2025/01/24

 ●Youtubeحريق هائل في خزان نفط بحقل الرميلة الشمالية بالعراق 2025/01/25

 ●Youtubeحريق ضخم في حقل الرميلة النفطي بالبصرة جنوبي العراق2025/01/25


被 害

■ No.2石油タンク(容量10,000KL)が破損した。タンク設備の配管などに損害が発生した。

■ 火災によって20万バレル(31,800KL) の石油が失われた。

■ 60基の油井が停止し、ルマイラ油田の生産量は12万バレル/日(19,000KL/日)減少した。

■ 負傷者が6名出た。

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は、タンク稼動初めの操作ミスによるものとみられる。操作ミスの詳細はわからない。  

< 対 応 >

■ 火災は、発災から約4時間後の124日(金)午後530分までに鎮圧された。焼損した石油タンク設備に大きな損害が発生した。

■ 火災の拡大を食い止めた重要な要素は、第5ガス分離施設(DS5) に供給していた油井を迅速に閉鎖し、原油の流出量を減らしたことだという。消防士を含む緊急対応チームは、隣接タンクへの延焼を防ぐためにタンクを冷却し続けた。

124日(金)、石油省は、ルマイラ油田で発生した火災は鎮圧されたと発表し、重傷者は出ていないと付け加えた。しかし、関係筋によると、地元の石油作業員2名が軽度の火傷を負ったと報じた。127日(月)、負傷者は作業員6名だったことがわかった。

■ 石油省は、第5ガス分離施設(DS5)のNo.2石油タンクに原油が投入された後に火災が発生したといい、火災が発生したのは技術的な理由によるもので、原因はまだ特定されていないと述べている。

■ 124日(金)、石油省は、すべての安全手順を確認し、被害状況を調査した後、施設を再稼働する予定だと発表した。また、「火災の原因はおそらく操作ミスであり、爆発と火災の原因を調査するために技術委員会を設置した」と述べた。

■ 停止した油井の数は60基から120基に増え、損失は20万バレル(31,800KL)の石油と推定された。

■ 石油専門家は、ルマイラ油田において開放工事が終わったばかりの石油タンクが翌日に火災を起こしたことに驚きを隠せなかった。(引火源について)ルマイラ油田では、フレアー装置にホット・フレアー装置でなくコールド・フレアー装置を使っており、炎が出ることはない。フレアー装置はタンクの停止時に炎が上がることがあり、この種の引火事故は1970年代に2度発生しているが、今回の事故では、石油タンクは稼動を始めたばかりである。石油タンクはエジプトの会社によって丸1年かけて開放工事が行われていたが、再稼動し始めた際に爆発したという。石油専門家は、爆発の原因はおそらく操作ミスであるとし、このような事故は過去にはよくあったが、現代の安全基準では稀になってきているという。

■ 127日(月)、火災に関する初期調査で、運営会社の管理体制に問題(過失)があったこととが指摘された。イラク議会石油ガス委員会は、ルマイラ油田におけるインフラストラクチャーには、近代的な安全システムが欠如しており、同様の事故が起こる可能性があると苦言している。

 最近、保守点検を受けたが、使用停止中であった貯蔵タンクを稼動させるように従業員に指示した事業者の過失が指摘された。ルマイラ油田の外国事業者が一部の従業員に稼働停止中のタンクの操作を命じたことは、明らかな過失を示しているとし、この事故の責任を「外国の事業者」に負わせる一方で、この施設で同様の事故が再発しないよう警告した。

■ 22日(日)時点で、ルマイラ油田の生産量は、火災による甚大な被害への対応に追われ、依然として少なくとも12万バレル/日(19,000KL/日)減少している。

補 足

■「イラク」(Iraq)は、正式にはイラク共和国で、中東に位置する人口約4,022万人の連邦共和制国家である。首都はバグダードで、古代メソポタミア文明を擁した土地にあり、世界第5位の原油埋蔵国である。石油輸出国機構(OPEC)で第二位の輸出国で、日量平均400万バレルの原油を生産している。 民族はアラブ人(シーア派約6割、スンニ派約2割)、クルド人(約2割、多くはスンニ派)などから構成される。言語はアラビア語とクルド語が公用語である。

「バスラ市」(Basra)は、アラビア半島の北東端、イラク国境近くに位置し、ペルシャ湾に注ぐシャット・アル・アラブ川沿いにあるイラク南部の港湾都市で、人口約148万人の都市である。同名のバスラ県(290万人)の県都であり、バグダッドとモスルに次いでイラクで3番目に大きな都市である。夏の気温は50℃を超えることもあり、イラクで最も暑い都市の一つである。

■「ルマイラ油田」 (Rumaila Oil Field)は、1953年に発見され、約170億バレルの回収可能な原油が埋蔵されていると推定され、イラクの原油生産量の約1/3を占め、イラクにとって重要な収入源である。ルマイラ油田の主契約者はバスラ・オイル社(Basra Oil Company)で、BP社とペトロチャイナ社が技術助言とサポートを提供している。なお、バスラ・オイル社は油田の運営者であるイラク石油公社(ROO )と連携している。

■「発災タンク」は、ルマイラ油田のガス処理プラントにある第5ガス分離施設のNo.2石油タンク(容量10,000KL)だと報じられているが、その他の仕様は分からない。グーグルマップで調べると、第5ガス分離施設(DS5)には、3基のドーム型円筒タンクがあり、1基は直径約30mで、他の2基は直径約45mである。容量10,000KLからすれば、直径約30mのタンクでは、タンク高さは約14mになる。直径約45mのタンクでは、タンク高さは約6mである。発災タンクの被災後の写真を見ると、タンクは半地下式ドーム型円筒タンクである。

 一方、爆発・火災を起こしたタンクにしては、屋根や側板部に煤が若干付着している程度で、爆発の形跡が無い。このことから、火災の主部はタンク本体ではなく、防油堤内と思われる。火災写真を見ると、広いエリアで黒煙が立ち昇り、タンクは見えないが、火の手は複数個所から上がっている。タンク周辺の焼損配管を撮った写真では、かなりひどい焼け方をしており、堤内火災があったといえる。

 なお、被災写真を見ると、発災タンクの後方に見えるドーム型円筒タンクのタンク番号がNo.1と識別でき、半地下式ではない。また、このタンクには屋根のトップまで太い配管が設置されており、グーグルマップで調べると、東側のタンクである。

 総合して判断してみると、「発災タンク」は西側の直径約45mのタンクで、タンク深さ(高さ)は約6mだと思われる。

所 感

■ 事故は第5ガス分離施設のNo.2石油タンクで起こったと報じられているが、大きな火災は堤内火災だったと思われる。事故原因は操作ミスと結論付けられている。第5ガス分離施設のNo.2石油タンクに原油が投入された後に火災が発生したというので、配管系への原油移送の操作にミスがあり、大量流出して大きな火災になったのではないだろうか。今回の火災時間(約4時間)を考えれば、 No.2石油タンクにはそれほど多くの原油が張り込まれてはおらず、タンクや配管系のバルブを閉めて、燃え尽きさせる措置をとったと思う。

■ 昨年、イラクで起こった「イラクのクルド人自治区の石油施設でタンクが爆発、消防士14名が負傷」20246月)では、「英国バンスフィールド油槽所タンク火災における消火活動(2005年)」20166月)「最近の貯蔵タンク過充填事故からの教訓」20158月)のタンク過充填による操作ミスの可能性を指摘したが、今回は過充填とは異なる操作ミスであろう。事故原因の要素として、ルマイラ油田のインフラストラクチャーに近代的な安全システムが欠如しており、同様の事故が起こる可能性があると指摘されており、運転面や設備(技術)面について根の深い問題を抱えていると思われる。

■ 消防活動は出動人員や資機材について報じられているが、実際の消火活動の詳細は分からない。今回の消火戦略としては、「積極的戦略」、「防御的戦略」、「不介入戦略」の3つうち、堤内火災の配管系の火災は「積極的戦略」、隣接タンクは冷却を主とした「防御的戦略」がとられたと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Iraqoilreport.com, Large fire causes partial shutdown of Rumaila production,  January  25,  2025

     Reuters.com, Fire at Iraq's Rumaila oilfield extinguished, oil ministry says,  January  25,  2025

     Iraqoilreport.com, Rumaila still reeling after large fire,  February  02,  2025

     Shafaq.com, Exclusive: Fire at Rumaila Oil Field causes 120 wells shut down,  January  25,  2025

     Wam.ae, Massive fire at oil field in southern Iraq brought under control,  January  25,  2025

     Boomberg.com, Iraq’s Rumaila Oil Field Output Down 300,000 Barrels a Day After Fire,  January  27,  2025

     Chemanalyst.com, Iraq’s Rumaila Oil Field Sees 300,000 bpd Drop in Output After Fire Incident,  January  28,  2025

     Shafaq.com, Iraq’s Rumaila Fire: Cause “unclear;” lawmakers blame negligence,  January  27,  2025

     Ognnews.com, Massive fire breaks out at oil field in southern Iraq,  January  26,  2025

     Skynewsarabia.com, وزارة النفط العراقية: إخماد حريق في حقل الرميلة,  January  25,  2025

     Arabi21.comstory, السيطرة على حريق ضخم بحقل الرميلة النفطي في جنوب العراق (شاهد),  January  25,  2025

      Shafaq.com, السيطرة على حريق ضخم بحقل الرميلة النفطي في جنوب العراق (شاهد) لجنة نيابية تكشف نتائج التحقيق بحريق حقل الرميلة وتحذر من تكراره,  January  27,  2025


後 記: イラクの事故情報は疲れます。石油タンクの火災ということで、情報を調べ始めましたが、原油の供給問題の話題の方が多く、なかなかタンク火災の事実に近づきません。当初は“重傷者なし”の情報(真実ですが?)が、負傷者2名になり、結局6名に修正されるなど情報が不確かな上、フェークニュースらしい情報も入り乱れ、ブログをまとめきれませんでした。被災後の写真を見ても、これもフェークの一種ではないかと懐疑的になりました。そこで、初めに戻って、タンクに限った火災ではなく、堤内火災ではないかと思い直してまとめ直しました。

2025年4月21日月曜日

ブラジルでタンクローリーが転倒して火災、負傷者5名、車両25台が焼損

 今回は、202546日(日)、ブラジルのサンタカタリーナ州の国道BR-101号線を走っていたエタノールを積んだタンクローリーが転倒して火災になり、負傷者5名、25台の車両が焼損するという事故です。特に、タンクローリーが転倒して火災になった状況が監視カメラの映像で撮られていたので紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)サンタカタリーナ州(Santa Catarina)パリョサ市(Palhoça)近郊の国道BR-101号線である。

■ 事故があったのは、国道を走っていたタンクローリーである。タンクにはエタノールが積まれていた。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202546日(日)午後130分頃、国道BR-101号線を走っていたタンクローリーがカーブでガードレールに接触し、横転する事故を起こした。

■ タンクローリーから火が出て、火災になった。積み荷のエタノールが反対車線の路上にも流れ出し、火災になった。路面の傾斜を伝ってタンクローリーの前方にもエタノールが流れて火災となった。

■ 反対車線の多くの車は停止していたが、路面に漏れたエタノールによって車両火災となった。

■ 車両火災で車22台とトラック3台が影響を受けた。 また、タンクローリーの運転手とその妻は腕と脚に火傷を負い、病院に搬送された。このほかに3名が火傷を負い、国道脇の木々も炎に焼かれた。
 国道BR-101号線は233km地点で閉鎖された。

■ ユーチューブなどには爆発の瞬間を含む火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

 YoutubeCaminhão com combustível explode no Morro dos Cavalos, na BR-101, e incendeia 25 veículos; vídeo2025/04/07

 ●YoutubeImagem revela a velocidade do caminhão que explodiu no Morro dos Cavalos2025/04/14

 ●YoutubeVídeo mostra momento em que carreta tomba e explode no Morro dos Cavalos em Santa Catarina2025/04/07

  ●YoutubeVeja qual era a velocidade da carreta que explodiu na BR 101 em Santa Catarina no dia 06 de abril2025/04/14



被 害

■ 事故を起こしたタンクローリーは焼損し、その他の車やトラックが火災で25台焼損した。 

■ 負傷者は5名出た。

■ 国道BR101号線が15時間閉鎖された。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因はタンクローリーの運転ミスによるとみられる。

< 対 応 >

  閉鎖された国道BR101号線は焼けた車両の処分などで15時間かかり、通行制限は解除された。  

補 足                                                                          

■「ブラジル」 (Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)といい、南アメリカに位置し、国土面積は日本の22.5倍を有し、人口約21,330万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

■ エタノール(C2H6O)の爆発限界は下限3.3%~上限19.0ol%で、危険性の高い液体である。エタノール・タンクの爆発瞬間の映像は、「ブラジルでエタノール・タンク爆発の瞬間を監視カメラが撮影」20241月)で紹介した。

所 感

■ ブラジルではタンクローリーの事故が多いところである。今までは、このブログの貯蔵タンク事故の範ちゅうとして取扱って来なかった。今回は、タンクローリー転倒・火災の瞬間という通常見ることのない映像だったので、紹介することとした。

■ 一方、タンクローリーの転倒・油流出をきっかけに反対車線に停車していた車両25台が火災で焼損するというまったく思いもよらない事態が発生している。車の運転には、このように予期しない出来事に進むことがあるということだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    Agenciabrasil.ebc.com.br,  Caminhão-tanque explode na BR-101 em SC; fogo atingiu 21 automóveis,  April  07,  2025

    G1.globo.com, Trecho onde caminhão explodiu e incendiou veículos amanhece com filas após dois dias do acidente em SC,  April  08,  2025

     Terra.com.br,  SC: caminhão-tanque explode em acidente e incendeia 25 veículos na BR-101,  April  06,  2025

     Cnnbrasil.com.br, Veja momento em que caminhão explode e incendeia carros em rodovia de SC,  April  07,  2025


後 記: 今回の動画はブラジルのタンク検索で知った事故です。ブラジルでは、「タンク」という検索語はタンクローリーを指すことが多いと感じています。逆にいえば、それだけタンクローリーの事故が多いということでしょう。それにしても、監視カメラやスマホによる動画撮影が普及(?)してきたといえます。

 

2025年4月15日火曜日

マレーシアでペトロナス系ガスパイプラインが爆発、負傷者305名

 今回は、202541日(火)、マレーシアのセランゴール州スバンジャヤのプトラハイツを通っているペトロナス・ガス・ベルハド社のガスパイプラインが漏洩により爆発があり、火災が発生し、多数の被害者や負傷者が出た事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、マレーシア(Malaysia)セランゴール州(Selangor)スバンジャヤ(Subang Jaya)のプトラハイツ(Putra Heights)にある国営石油会社;ペトロナス社(Petronas)系のパイプライン施設である。

■ 事故があったのは、住宅地のプトラハイツを通っているペトロナス・ガス・ベルハド社(PETRONAS Gas Berhad PGB)天然ガス用の直径36インチのガスパイプラインである。パイプラインは1991年に設置され、30年経っている。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202541日(火)午前810分頃、プトラハイツの地下を通っているガスパイプラインで漏洩により爆発があり、火災が発生した。爆発による炎は空高く舞い上がり、発生した巨大な炎は数マイル先からでも見えた。

■ イスラム教徒が祝うお祭り“ハリラヤ” の2日目に起きた爆発は祭りの静けさを打ち砕いた。 住民のひとりは、耳をつんざくような音を聞き、飛行機の墜落事故だと思ったと語っている。近くの住民は、家のドアや窓が揺れ、強い揺れを感じたという。

■ 最初の爆発で炎や土砂、瓦礫が空に舞い上がり、多くの人が命からがら逃げ出した。

■ 足に火傷を負った住民は、「家から急いで逃げたが、近くの火災の熱で転倒し、火傷を負ってしまった。自宅の天井が崩落し、敷地内に駐車していた自分の車が押しつぶされたのを見てショックを受けた」と語っている。火災現場近くの住民は、燃え盛る火を近くに感じながら逃げる途中で負傷した人も多いという。

■ 発災にともない、セランゴール消防局はパイプラインで火災が発生したことを確認し、関係消防署の消防隊を出動させた。出動したのは11の消防署から78名の消防士である。

■ ペトロナス社は、午前840分過ぎ、ガスパイプラインの主要なバルブ4か所を閉鎖し、孤立させることとした。この作業には約4時間かかると予想された。

■ 午前930分頃、炎が燃え盛る中、消防隊は消火活動を続けた。当時の火炎温度は約1,000℃に達していたという。一方、爆発後の破壊の様子をとらえたビデオがソーシャルメディア上で拡散し始めていた。また、ガスパイプラインの爆発について虚偽の情報も流布しており、警察が調査しているという。

■ 現場から半径290m以内で緊急避難が行われた。州知事は、消防署が安全対策として近隣の住宅を避難させ、事態が収束するまで住民は近隣のモスクなどに避難したと述べた。火災の影響を受けて避難した住民は、合計74世帯364人が2か所の仮設避難所に避難したという。

■ 事故にともなう負傷者は305人に達した。治療中の被害者は134人で、44日(金)時点で48人は依然として病院や診療所で治療を受けており、集中治療室に入った重傷者は1名である。死亡者は報告されていない。

■ この事故により、308世帯1,254人が被害を被り、住宅237棟と車両365台が被害を受けた。家屋の全壊は87棟で、148棟は修理が必要となった。

■ ペトロナス社は、 午前810分にペトロナス・ガス・ベルハド社のガスパイプラインで火災が発生したことを発表した。事故を起こしたパイプラインはバルブによって孤立したと補足した。災害管理当局は、バルブが閉止されれば、最終的に火は消えるだろうと語った。

■ 環境省は、午前12時頃から現場付近の空気質の監視を開始した。

■ 高速道路や現場周辺の道路はすべて通行制限された。

■ 爆発時、空に立ち昇った炎は20階建ての高さの60mに達した。その後、ガスパイプラインから高さ30mの炎が燃え上がり続けたが、炎は徐々に弱まり、午後3時頃には消防士が近づくことができるほど小さくなった。

■ バルブ閉止によって、パイプラインの内部圧力は40バールから0.1バールに低下した。当局はさらなる危険を防ぐため、残留ガスを燃焼させ、燃え尽きる措置を取った。

■ ガスパイプラインの爆発と火災により、爆心地の現場景観は劇的に変化し、長さ24m×21m×深さ10mのクレーターが形成された。消防署の予備調査では、火災はガスパイプラインが長さ約500mにわたる漏れによって発生したとみられるという。

■ 47日(月)、プトラハイツで発生したガスパイプラインの火災により、マレー半島の中部地域にはガス供給が中断している地域があるという影響が出ている。一方、電力供給は安定しているという。

■ ユーチューブでは、事故の状況を伝える動画が多数投稿されている。 主なものはつぎのとおり。

 ●Youtube、Malaysia: Massive Gas Pipeline Explosion Sparks Fire in Putra Heights2025/04/01

 ●Youtube、Dozens suffer burns after gas pipeline leak triggers massive fire in Malaysia2025/04/02

    Youtube、Drone footage reveals devastation at Putra Heights gas explosion site 2025/04/06

 ●Youtube、Saluran paip gas di Putra Height terbakar, api menjulang tinggi2025/04/01

 ●Youtube、PAIP GAS PETRONAS MELETUP DI PUTRA HEIGHTS, DAERAH PETALING, SELANGOR2025/04/01

 ●Youtube、Gas Meletup Putra Height2025/04/02


被 害

■ 直径36インチのガスパイプラインが損傷した。

■ 事故にともなう負傷者が305人出た。治療中の被害者は134人で、44日(金)時点で48人は依然として病院や診療所で治療を受けており、集中治療室に入った重傷者は1名である。死亡者は報告されていない。

■ 事故により308世帯1,254人が被害を被り、住宅237棟と車両365台が被害を受けた。家屋の全壊は87棟で、148棟は修理が必要となった。

■ 周辺の道路が通行制限された。   

< 事故の原因 >

■ 爆発はガスパイプラインの漏れによる。漏洩に至った原因などは調査中である。

< 対 応 >

■ 爆発・火災事故は鎮圧に8時間を要し、41日(火)午後345分に完全に鎮火した。 

■ ガスパイプラインはトレンガヌ州からマレー半島の南北やタイに天然ガスを輸送するためのもので、ガスパイプラインは3本ある。事故時、3本のパイプラインのうち1本が破裂し、ガス漏れを起こして爆発に至ったことが判明した。

■ 45日(土)、警察の初期捜査によると、41日(火)の事故現場から30mの場所で土木請負者が大規模な掘削作業を行っていたという。当日、土木請負者の掘削作業がパイプラインの敷設ルート付近で行われており、この作業がガスパイプラインの爆発に影響しているのではないかという疑問が出ている。これまでの警察の捜査では、土木請負者の設置した下水道管は深さ2.1mのところであり、ペトロナス社のガスパイプラインは道路の下5.6mに敷設されており、両者の間には1.6mの距離があるという。

■ 土木請負者の工事は、この地域の既存の地下下水道システムを交換する作業で、掘削機とバックホーが使用された。330日(日)の作業は中止されていた。作業では、バックホーは事故の前日に現場から撤去されたが、掘削機は、ガスパイプラインの爆発後、地中に埋まっていると考えられる。

■ 43日(木)、掘削作業を映したドライブレコーダーの映像とみられる動画がソーシャルメディアに投稿された。映像は328日と30日に撮影され、道路脇の掘削作業現場からそう遠くない場所で掘削機が映っている。この動画は140万回再生され、多くのソーシャルメディアユーザーの注目を集めている。

■ 46日(日)、警察は、ペトロナス社のガスパイプラインの爆発について請負者の掘削作業が影響したかどうかを判断する前にパイプラインを完全に見えるようにする必要があるとし、「作業は、警察によって、ペトロナス社、公共事業局(PWD)、マレーシア測量地図局(JUPEM)、労働安全衛生局(DOSH)、請負者などの共同のもとに実施している」とセランゴール警察署長は語っている。

 捜査のための掘削作業は、掘削機3台、ブルドーザー1台、バックホー1台を使用して行われ、深さ67mにあるとみられるガスパイプラインの全範囲を調査するために行われている。掘削作業は24時間体制で410日(木)時点でも、土壌が崩壊しないよう慎重に行われている。

■ 爆発により事故前から使用されていた掘削機が地中に埋もれており、掘削機を撤去するためにクレーターエリアを掘削する作業が415日(火)に行われる予定だという。


補 足

■「マレーシア」(Malaysia)は、東南アジアに位置し、マレー半島南部およびボルネオ島北部からなる連邦立憲君主制国家で、人口は約3,470万人。マレーシアはイギリス連邦加盟国のひとつで、首都はクアラルンプール(人口約177万人)である。

「セランゴール州」(Selangor)は、マレーシア中部の西部に位置し、人口約655万人の州である。

「スバンジャヤ」(Subang Jaya)は、セランゴール州の南部に位置する人口約95万人の都市である。

「プトラハイツ」(Putra Heights)は、1999年からマレーシアのセランゴール州スバンジャヤで開発されつつある住宅街である。

■「ペトロナス社」(Petronas)は、正式社名Petroliam Nasional Berhadで、19748月に創設されたマレーシアの石油および天然ガスの供給を行う国営企業である。マレーシアは東南アジアで第2位の石油・天然ガス生産国で、液化天然ガスの輸出では世界2位である。

「ペトロナス・ガス・ベルハド社」(PETRONAS Gas Berhad PGB)は、ペトロナス社系の会社で天然ガス部門を担っている。

■「発災箇所」について爆発と火災によって爆心地の現場景観が劇的に変化し、大きなクレーターが形成されている。グーグルマップで調べてもすぐに被災写真と結びつかず、特定に時間がかかった。このひとつの理由は、発災場所の前にある被災した建物が最近建ったものらしく、グーグルマップの写真では無かったことである。

■ ブログでは、最近、米国テキサス州におけるガスパイプラインの異常な事故を2件紹介した。

 ●「米国テキサス州のパイプラインで油窃盗中に爆発火災、石油生産施設へ延焼」 20253月)

 ●「米国テキサス州のパイプライン火災の原因は自殺者の車による破壊」20252月)

所 感

■ 強烈な爆発事故が起こったものである。爆心地の現場景観は劇的に変化し、長さ24m×21m×深さ10mのクレーターが形成されたという。これまでに戦争の爆弾やミサイルなどによる被害以外に、今回のような爆発事例は見たことがない。

■ 最近、タンク事故ではないが、異常なガスパイプライン事故を2件紹介し、米国テキサス州ではパイプラインの安全対策に問題があるという指摘をしてきた。米国の事故ではなく、原因はまだわかっていないが、近くで行った工事が関係したにしろ、パイプラインの経年劣化の見逃しにしろ、ガスパイプラインの安全対策に問題があることは確かである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Malaymail.com,  Police: Petronas gas pipeline needs full exposure to determine if contractor disrupted route,  April  07,  2025

     Edition.cnn.com, Burst gas pipe sparks colossal fire in Malaysia, injuring more than 100,  April  01,  2025

     Straitstimes.com, Malaysia gas pipeline fire: Excavator feared buried at site, no bodies found, say police,  April  05,  2025

     Therakyatpost.com, The Mystery Contractor: Putra Height Gas Explosion Has More Questions Than Answers,  April  07,  2025

      Petronas.com, Fire Incident at PGB Main Pipeline Near Putra Heights, Subang Jaya,  April  01,  2025

      Thestar.com.my, Putra Heights fire: Ground stabilisation intensified this morning,  April  09,  2025

      Theguardian.com, Malaysia fire: huge blaze erupts near Kuala Lumpur as gas pipeline explodes,  April  01,  2025

      Apnews.com,  A fireball from a burst gas pipeline in Malaysia injures 145 people,  April  01,  2025

      Channelnewsasia.com, ‘Restart from zero’: Uncertainties loom for Selangor’s Putra Heights residents after huge gas pipeline blaze,  April  01,  2025

      Theedgemalaysia.com,  Gas Malaysia says more areas to face gas supply disruption after Putra Heights blaze,  April  07,  2025

      Gempak.com,  Putra Heights Fire:  Timeline & Updates on the Gas Pipeline Explosion That Shook The Nation,  April  07,  2025

      Freemalaysiatoday.com, Those spreading false info on Putra Heights fire will face law, warn S’gor cops,  April  10,  2025

      Vygrnews.com, Massive Gas Pipeline Explosion in Malaysia’s Putra Heights: Injuries and Evacuations Reported,  April  01,  2025

      Pipeline-journal.net, Probe into the Cause of Putra Heights Gas Pipeline Fire Delayed & Aid Increased,  April  08,  2025

      Carz.com.my, Putra Heights Gas Pipeline Fire: What We Know So Far,  April  01,  2025

      Bernama.com, 32-feet Deep Crater formed at  Gas Pipeline Fire Site,  April  02,  2025

      Astroawani.com, Kebakaran paip gas Putra Heights: Siasatan awal diketahui hari ini,  April  04,  2025

      Mstar.com.my, Memang ada aktiviti korek tanah, 30 meter dari lokasi paip gas meletup,  April  04,  2025

      Malaysiagazette.com, Petronas sudah tutup valve saluran paip, 7 mangsa telah diselamatkan,  April  01,  2025

       Sinarharian.com.my, Kebakaran Putra Heights: Faktor tanah, kerja forensik di 'ground zero' belum dapat dimulakan,  April  10,  2025

       Beritaharian.sg, Kebakaran saluran gas di Selangor: Polis sahkan ada aktiviti korek tanah,  April  04,  2025


後 記: 最初に事故を知ったのは、キノコ雲のような爆発直後の炎の写真で、戦争時の爆弾によるものかと見間違うほどでした。マレーシアの事例で感じたのは、インターネットによる情報が飛び交っているということです。爆発後のビデオがすぐにソーシャルメディアに投稿され、情報の速さがわかります。一方、虚偽の情報も流布しており、課題があるのは確かです。(これはマレーシアだけでなく、日本もそうですが)

 情報の正確性という点では、公的機関から出される情報も問題があります。被害や負傷者などの情報がメディアによって異なるし、日にちが経ってもなかなか収束しません。その分、事故原因の調査情報は速いようです。しかし、事故現場は、128日に起こった日本の埼玉・八潮市の道路陥没事故を見ているようです。クレーター部の法面が安定しないのと掘削箇所に水が出てきて、なかなか苦労しているようです。

2025年4月7日月曜日

米国ルイジアナ州の石油生産施設で落雷によるタンク火災、鎮火後、3名負傷

 今回は、2025331日(月)、米国ルイジアナ州ポイントクーペ教区リボーニアにあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社の石油生産施設でタンク設備が落雷によって火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)ポイントクーペ教区(Pointe Coupee Parish)リボーニア(Livonia)にあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有する石油生産施設のタンク設備である。

■ 事故があったのは、ハイウェイ190号線の側道沿いにある石油生産施設内の貯蔵タンクである。施設内にはタンク設備が7基あり、発災したタンクには原油と塩水の混合液が入っていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025331日(月)午前6時頃、タンク施設の貯蔵タンクに火災が発生した。

■ 貯蔵タンク1基に落雷があったとみられ、タンクは屋根が噴き飛んで火災になり、隣接するタンクに延焼した。

■ 火災現場は、31日(月)に南ルイジアナ州全域で発生した雷、強風、大雨、竜巻の異常気象のひとつであった。多くの住居が停電に見舞われ、いくつかの学区では休校や遅れが出た。

■ 発災にともない、該当区域の消防隊が出動し、現場に到着した。

■ 火災タンクはグラスファイバー製で、タンク内液はほとんどが塩水で、タンク上部に溜まっていた油分が燃えていた。隣接するタンクには水を放射して、タンクが熱くなりすぎて燃え広がらないようにした。一方、消防隊が保有している泡薬剤の量は十分でなく、近隣の消防隊が泡薬剤を供給してくれるまで、タンクへの泡投入を制限しなければならなかった。消防隊は、グラスファイバー製タンクの火災を手加減するような消火活動を強いられた。

■ 近隣の消防隊が1,000ガロン(3,780リットル)の泡薬剤を積んだ泡原液搬送車をもってきたので、消防隊は本格的な消火活動を行った。

■ 火災の現場には水源がなく、消防車は水タンクに補充するため、現場を離れて定期的に水源まで行く必要があった。このため、消防隊が水源にアクセスできるように、ハイウェイ190号線の交通を一時的に通行止めにした。

■ 消防活動にともなう負傷者はいなかった。

■ 保安官は、火災現場が近くの住宅地から離れており、住民を直ちに避難させる必要はないと判断した。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。 

  ●YoutubeLightning strike sparks Livonia oil tank fire2025/04/01

  ●Youtube Deputy, 3 others injured near Livonia oil tank fire2025/04/01

  ●Youtube WATCH: Crews fight large oil tank fire in Livonia2025/04/01

被 害

■ 石油生産施設のタンク設備が2基損傷した。

■ 火災鎮火後、撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が車両の衝突で負傷した。  

< 事故の原因 >

■ タンク火災の原因は落雷によるものとみられる。 

< 対 応 >

■ 火災発生から約5時間後の午前11時前に、消防隊は火災を消し止めた。出動した消防車は10台だった。

■ 331日(月)午後、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷した。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に衝突し、その後保安官に衝突したという。当時、火災のため道路上に多数の消防車など緊急車両が停まっており、保安官は交通整理をしていた。

補 足

■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部にあり、テキサス州に隣接し、人口約465万人の州である。州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオーリンズである。ルイジアナ州は石油と天然ガスの資源が豊富なところである。

「ポイントクーペ教区」(Pointe Coupee Parish)は、ルイジアナ州の東中部にあり、人口約20,700人の教区(郡)である。

「リボーニア」(Livonia)は、ポイントクーペ教区の南部に位置し、人口約1,200人の町である。

■「発災タンク」は、リライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有するグラスファイバー製の塩水タンクだと報じられている。グーグルマップで調べると、同径のタンクは3基あり、直径は約3.3mである。高さを6.0mとすれば、容量は約51KLである。米国の陸上油田における標準的な石油生産施設であるが、設備規模は大きくはない。

NASAによる世界の雷マップ」20126月)によると、米国における雷発生頻度はメキシコ湾岸地域が高い。テキサス州やオクラホマ州はそのひとつで、今回のルイジアナ州も雷の多い地域である。ブログで昨年度における落雷による石油生産施設の事故は、つぎのとおりである。(原因がはっきりしないものや、情報から漏れたものもあり、実際はもっと多いと思われる) もともと、米国の陸上油田の石油生産施設におけるタンクは落雷のリスクにさらされており、落雷によるタンク爆発・火災の頻度は増えていくだろう。

 ●「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」20245月)

 ●「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」3件)(20243月)

 ●「米国オクラホマ州の石油生産施設で落雷によるタンク爆発・火災」 20244月)

 ●「米国テキサス州石油生産施設で落雷による堤内火災、タンクは噴き飛びか? 20248月)


所 感 

■ 今回の事例は、米国の石油生産施設における落雷によるタンク火災の典型である。

■ 今事例の消火活動は、これまでの他の事例と少し異なっている。通常、グラスファイバー製塩水タンクは炭素鋼製タンクに比べ火災には弱く、焼損して全壊してしまう。一方、今回、タンク側板部がかなり残っているめずらしい例である。これは、火災発生から消防隊が到着するまでの時間が短かく、グラスファイバー製塩水タンクの消火活動を行っているためだと思う。これが最適な消火活動かどうかは意見が分かれるところだろう。

■ めずらしい例でいえば、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際に負傷者が出ている。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に追突し、その後保安官に衝突したという。 断続的な通行停止をしていたためであるが、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷したという。結果論であるが、中途半端な通行止めだった。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Wbrz.com, Two oil tanks catch fire after being struck by lightning; chief says damage could have been worse, March 31, 2025 

      Newsroom.ap.org, Lightning strike causes tank fire west of Baton Rouge, Louisiana, April 01, 2025 

      Kpel965.com, Lightning Sparks Massive Oil Tank Fire in Louisiana During  Storms, March  31,  2025

      Msn.com, Deputy, 3 others injured near Livonia oil tank fire, April 01, 2025 

      Arogersflex.bloxcms.com, Massive blaze in Livonia after oil tanks likely struck by lightning, March  31,  2025

      Unfilteredwithkiran.com, Oil tank fire update, April 01, 2025 


後 記: 最初はよく起こる石油生産施設の落雷によるタンク火災だと思っていましたが、今回の事故はこれまで無かったようなめずらしいことのあった事例でした。一番、感じたのはメディアの取材内容です。最近のテキサス州の事例のような素っ気ない記事でなく、なんとか取材しようという思いを感じる内容でした。グラスファイバー製タンクの火災について泡薬剤の到着を待ちながら消火活動をする消防隊の苦労を何とか伝えようとするのが感じられました。