今回は、2024年7月24日(水)、米国カリフォルニア州ビュート郡チコ市近郊で発生した山火事(パーク・ファイアと命名)の状況とともに、丘陵地域にある住宅地にあるプロパンガスタンクが爆発した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国のカリフォルニア州(California)ビュート郡(Butte)チコ市(Chico)近郊で発生した山火事である。
■ 事故があったのは、丘陵地域にある住宅地にあるプロパンガスタンクである。
< 事故の状況および影響
>
事故の発生
■ 2024年7月24日(水)、チコ市のビッドウェル・パーク(Bidwell Park)で放火とみられる山火事が発生した。
■ 7月24日(水)遅く、ビュート郡とテハマ郡の広範囲に避難命令が出され、丘陵地帯のコミュニティでは多くの人が避難した。山火事はパーク・ファイア(Park Fire)と名づけられた。
■ チコ市の北東で燃えているパーク・ファイアの規模が拡大し始め、ロッククリーク通り沿いの住宅で爆発があり、炎上した。山火事の炎が漏れていたプロパンガスタンクに引火したためとみられる。山火事を取材していたフォトジャーナリスト(カメラマン)は、爆発の前に貯蔵タンクから漏れ出ていると思われるプロパンガスのシューという音を聞いたと語った。 爆発によって住宅から巨大な火の玉が噴き出し、火と煙の柱が夜空に上がった。
■ フォトジャーナリストによると、爆発した住宅の周辺には他に30軒ほどの家があったといい、火災で少なくとも4軒の家が全焼したのを見たという。撮影されたビデオには、チコ近郊の山火事で複数の建物が破壊される様子や住宅でプロパンガスタンクが爆発し、ガス管が繰り返し炎上する様子が写っている。
■ チコ市の山側に住む5人の子供の母親である住民は、山火事パーク・ファイアが迫る中、自宅から避難した数百人のうちのひとりである。彼女は、道路の向こう側で火事が始まったとき、家族とともにフォレスト・ランチの自宅を離れることを決めた。彼女は「早期避難警報の連絡網に申し込んでいたため、警察官が我が家に来たのですが、自主避難が必要だと告げた後、戻って来ないと言い、車に向かって走っていったので、危険を感じました」と語った。
■ 山火事パーク・ファイアは7月26日(金)夜に完全に乾いた燃料の中で急速に拡大し、消防士らが危険に対処しようと奔走する中、数千戸の住宅を脅かした。パーク・ファイアの激しさと広がりから、消防当局は、2018年に近くのパラダイスで制御不能に陥り、85人が死亡し、11,000戸の家屋が焼け落ちた恐ろしい火災を思い出し、比較してしまった。この火災により、これまでに130棟以上の建物が焼失し、さらに多くの住宅が危険にさらされている。
■ 山火事パーク・ファイアは当初爆発的に拡大し、カリフォルニア州の記録上4番目に大きな山火事となった。
一時、好天に恵まれて勢いが弱まったが、また、暑さと相対湿度の低さにより再び勢いを増し、シエラネバダ山脈の西側斜面を北上している。カリフォルニア州消防局によると、鎮火率は34%のままである。
■ 米国西部やカナダの他の地域も、7月26日(金)、雷によって山火事が急速に広がり、人々が火災で囲まれた道路を逃げ回り、厳しい状況に陥った。記録的な猛暑と極度の乾燥状態が続く中、気候変動により落雷の頻度が増加している。
■ オレゴン州東部では、山火事の消火活動中に墜落した小型空中給油機のパイロット1名が死亡した。
■ ユーチューブには、山火事の状況を撮影された動画などのニュースが投稿されている。プロパンガスタンクが爆発した頃の7月終わりに投稿された動画の主なものはつぎのとおりである。
●YouTube、「 Park
Fire: Home explodes as wildfire descends on area near Chico」(2024/7/26)
●YouTube、「 California‘s Park Fire surges in
size, forces thousands to evacuate」(2024/7/26)
●YouTube、「 Video Now: Park Fire continues to
burn in California」(2024/7/27)
被 害
■ 8月11日(水)時点の山火事パーク・ファイアの焼失面積は429,188エーカー(1,736 ㎢)で、内訳はビュート郡 52,937エーカー(214 ㎢ )、テハマ郡 376,251エーカー(1,522㎢)である。両郡では、641棟の建物が破壊され、52 棟の建物が損傷した。
■ この山火事で住宅地にあったプロパンタンクが爆発し、損壊した。
< 事故の原因 >
■ 山火事の原因は放火による。
< 対 応 >
■ 山火事パーク・ファイアの原因になった放火したという犯人は7月24日(水)に逮捕された。放火の疑いで告発されている男は、燃えている車を市立公園の渓谷に突き落として火災を引き起こしたとされる。
■ カリフォルニア州消防局は、2024年8月11日(水)、山火事パーク・ファイアの火勢が昨晩は落ち着いてきたと発表した。いくつかの新しい小さな火災はあるが、封じ込めラインは維持されている。一方、太い枯れ木や倒木がくすぶり続け、まだ燃えていない燃料源があり、制御ラインを脅かしている。ミル・クリーク地区では、一晩で湿度が回復した。次週初めから徐々に冷え込みが始まり、気温は平年並みかそれ以下まで下がる見込みである。消防隊は、制御ラインを構築し、すでに構築されたラインとの連結を行い、可能な限り積極的に消火活動を続けている。
■ 8月11日(水)時点の山火事パーク・ファイアの焼失面積は429,188エーカー(1,736 ㎢)で、内訳はビュート郡 52,937エーカー(214 ㎢ )、テハマ郡 376,251 エーカー(1,522㎢)である。両郡では、641棟の建物が破壊され、52 棟の建物が損傷している。損害検査チームは被害評価を終えている。
■ 山火事パーク・ファイアは、7月24日(水)にチコ東部のアッパービッドウェルパークで発生し、急速に広がり、8月26日(水)までにビュート、プラマス、シャスタ、テハマ各郡の429,603エーカー(1,738㎢)に広がった。600平方マイル以上の広さはサンフランシスコの13倍、ニューヨーク市やロサンゼルスよりも広い。9月に入った状況は、つぎのとおりである。
● 9月8日(日)時点、火災は99%鎮火した。
● 7月26日(金)、ビュート郡とテハマ郡で非常事態宣言が発令され、パーク・ファイアはカリフォルニア州史上4番目に大きな山火事で、2020年のSCUライトニング・コンプレックスを上回り、州史上2番目に大きな単独(複合ではない)山火事となった。
● 被害の点ではビュート郡が最も大きな被害を受けた。
● 火災により住宅を含む700棟以上の建物が破壊された。
● 8月下旬、パーク・ファイアの焼け跡は洪水警報の対象となり、土石流による地滑りの可能性が緊急管理者と近隣住民にとって大きな懸念事項となった。
● 被災した郡の人々が地元当局の命令により避難したが、多くが帰宅した。しかし、まだ何百人もの人々が長期にわたる避難生活に直面している。
■ 北米の山火事シーズンは、通常、春から始まって秋まで続く。しかし、気候変動の影響が増大するにつれて、災害は予想される季節を無視し続け、頻度と激しさが変化している。米国西部の今年の山火事は、主にオレゴン州、アイダホ州、ワシントン州、カリフォルニア州で発生しており、オレゴン州林業局の広報担当官は「今シーズンは、例年より早く始まったこともあり、対応が難しさを極めています」と言う。こうした状況は、事態の収拾を任されている消防士や消防資機材に大きな負担をかけており、各州は遠くハワイやニュージーランドからも援軍を要請しなければならない。2024年7月、国立合同消防センター(NIFC)は米国の火災対応レベルをもっとも厳しい準備レベル5に設定した。これは、消火活動のための資源を集中してすべて投入されていることを意味する。
2023年は比較的静かな年だったが、2024年はカリフォルニア州の火災シーズンが早々に始まり、7月24日(水)に始まったパーク・ファイアの山火事は州内で最も急速に拡大し、大きな火災となった。専門家は焼失面積が山火事の破壊力を示すものではないというが、この焼失面積の測定値は火災がどれだけ急速に拡大したかを知る手がかりになる。
■ 米国森林局の山火事に対応する“ホットショット隊”の責任者は「シーズンも半分が過ぎ、本当に忙しい。まだ3か月は残っているという気持ちで、スタッフを精神的にも肉体的にも奮闘させている」と語った。“ホットショット隊” は、オレゴン州に向かう前に数日間パーク・ファイアの消火活動に従事し、そこで延焼防止のための防火線の構築に取り組んできた。彼らの肉体的に過酷な勤務時間は、通常12時間近くに及ぶ。
“ホットショット隊”の責任者は山火事対応の計画・リスク軽減・戦略立案を主な業務とするが、消防隊員が毎晩少なくとも7時間の睡眠をとり、十分な栄養をとることで疲労を管理することが不可欠だと語った。消防隊員の人数を増やし、休日を増やし、メンタルヘルスについての改善をしたことが、消防士の健康に大きく貢献したと“ホットショット隊”の責任者はいい、「消防業務の文化はこの25年間で大きく変わり、特に調子が良くないときは、休暇を取って自分の気持ちや状況を話すことが許されるという、大きな文化の変化がありました」と語っている。
■ 9月12日(木)時点、カリフォルニア州では今年になって6,078件の山火事が発生し、約98万エーカー(3,642㎢)が焼失した。カリフォルニア州消防局は8月初旬、今年の山火事による焼失面積は昨年の29倍で消火活動は大幅に増加したと報告した。何千人もの住民が避難し、中期から長期にわたる避難生活に直面することになり、北カリフォルニアと南カリフォルニアの両方で重大な人道的懸念が高まっているという。
■ 国立合同消防センター(National Interagency Fire
Center)は、2024年9月16日(月)時点で、米国全土で 55 件の大規模な山火事について鎮圧戦略で管理されていると発表した。現在、25個の複合インシデント管理チーム、2 個のタイプ 1のインシデント管理チーム、577 の対応部隊、1,747 台のエンジン、145 機のヘリコプターが投入され、合計27,162人の消防士と支援要員が山火事の対応に従事している。2024年はこれまでに米国全土で36,920件の火災が発生し、焼失面積は7,301,739エーカー(29,549㎢)及んでいる。この10年間の同期間の平均値に比べると、火災の発生件数は少ないが、焼失面積は大きい。
補 足
■「カリフォルニア州」(California)は米国西海岸に位置し、メキシコとの国境から太平洋沿いに細長く伸び、人口約3,890万人の州である。
「ビュート郡」(Butte)は、カリフォルニア州の中央部に位置し、人口約21万人の郡である。
「チコ市」(Chico)は、ビュート郡の中央に位置し、人口約10万人の市である。
■「発災タンク」は、住宅地にあったプロパンガスタンク(プロパンガスボンベ)である。詳細な仕様は分からない。
所 感
■ 山火事で住宅地にあったプロパンガスタンクが爆発したという情報から、カリフォルニア州や米国の山火事を調べたが、予想していたものよりはるかに多く、広いエリアに及んでいる。プロパンガスタンクが爆発したというニュースは、たまたまフォトジャーナリスト(カメラマン)が現場にいたことによって広く知られたが、米国の山火事で住宅地が被災すれば、いつもある珍しくはない事象なのだろう。
■ 貯蔵タンクではないが、山火事に関するブログを初めて投稿したのは、本稿でも出ている“ホットショット隊”が19名亡くなるという悲惨な事故「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」(2013年7月)からである。その後、異常気象などによる世界的に大きな山火事について投稿してきた。
●「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」(2013年7月)
●「ブラジルのアマゾン熱帯雨林で森林火災が多発」( 2019年9月)
●「豪州における山火事の被害(2019~2020年)」( 2020年3月)
■ 山火事に関するスペシャリストである“ホットショット隊”の責任者のつぎのような言動が印象に残った。
「“ホットショット隊” は、オレゴン州に向かう前に数日間パーク・ファイアの消火活動に従事し、そこで延焼防止のための防火線の構築に取り組んできた。彼らの肉体的に過酷な勤務時間は、通常12時間近くに及ぶ。“ホットショット隊”の責任者は山火事対応の計画・リスク軽減・戦略立案を主な業務とするが、消防隊員が毎晩少なくとも7時間の睡眠をとり、十分な栄養をとることで疲労を管理することが不可欠である。消防隊員の人数を増やし、休日を増やし、メンタルヘルスについての改善をしたことが、消防士の健康に大きく貢献したといい、消防業務の文化はこの25年間で大きく変わり、特に調子が良くないときは、休暇を取って自分の気持ちや状況を話すことが許されるという、大きな文化の変化があった」
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Centraloregondaily.com, Propane tank explosion at house at Park
Fire, July 27,
2024
・Sfchronicle.com, Park Fire destroys home near Chico. Video shows
explosion, massive fireball, July 25,
2024
・Woodtv.com, California’s largest wildfire explodes in size as fires
rage across US West, July 26,
2024
・Edition.cnn.com, California’s Park Fire is now bigger than Phoenix
while in Canada a blaze is scorching one of the largest national parks, July
27, 2024
・Fire.ca.gov, Park Fire, August
11, 2024
・Theguardian.com, ‘Exceptionally difficult’: grueling wildfires test
the resolve of US crews, August 11,
2024
・Earthobservatory.nasa.gov, California Burning, August 19,
2024
・Nifc.gov, National Fire News, September 16, 2024
・Disasterphilanthropy.org, Wildfires rage despite our collective
fatigue, August 22,
2024
・Disasterphilanthropy.org, 2024 North American Wildfires, September
13, 2024
・Apnews.com, Huge California wildfire chews through timber in very
hot and dry weather, August 09,
2024
後 記: このブログをまとめている9月18日(水)に地元山口県で山火事が発生したというニュースが入りました。後記としては長くなりますが、経緯をまとめました。日本も山火事の本格的な対応が必要になってきました。
● 9月18日(水)午後4時30分頃、山口市秋穂二島の山口県セミナーパーク付近の山林で火事が起きた。当時、セミナーパークの関係者が草刈りをしていて、何らかの原因で集めた草に火がつき、山に燃え移ったとみられる。午後4時に作業を終えた際には火は出ていなかったが、約30分後に作業員が戻ると煙が立ちこめていて、火を消そうとしても消せないような状況だったという。
県の防災ヘリコプター1機、11台の消防車による消火活動が続けられたが、ヘリコプターによる消火活動は午後6時ごろでいったん打ち切られた。夜になって火は山の頂上付近にまで広がった。
● 夜中になって一旦風も収まってきて気温も下がってきた関係で少し小康状態なっていたが、19日(木)朝からまた燃え広がっており、現場周辺の山は真っ黒に焼け焦げ岩肌があらわになった。山の斜面に沿って木が生い茂っているため、火は斜面に沿って勢いよく上がり、燃え広がるスピードが速かった。
9月19日(木)午前6時30分から消火活動が再開された。消防本部の隊員延べ65名、消防団員延べ70名が消火活動などにあたったほか、県や自衛隊のヘリコプターあわせて5機が出動して消火活動が行われた。
● 山火事の焼失面積は約30haで、住宅への延焼はなく、一時、周辺の住民18世帯20人が避難したが、けが人は出なかった。19日(木)午前の時点で火の勢いはほぼなくなったが、白い煙がところどころ立ち上り、消防などはドローンを使ってどこに火がくすぶっているかを確認しながら消火活動を続けている。9月20日(金)も消火活動を行う予定である。
● 9月20日(金)、山火事は再び燃え上がった。これまでは山の東側だったが、山頂から西の斜面で燃え始めた。
● ユーチューブには、山火事や消火活動の状況を撮影された動画のニュースが投稿されている。
・YouTube、「【山火事】草刈りで集めた草に火が付いたか?現地レポート|山口市秋穂二島」(2024/9/18)
・YouTube、「【陸上自衛隊ヘリ】山火事消火活動/山口県山口市秋穂二島」(2024/9/19)