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2024年9月26日木曜日

米国ノースダコタ州の石油生産施設で原油タンクが爆発・火災

 今回は、2024916日(月)、米国ノースダコタ州スターク郡ディキンソンにある石油生産施設で、原油タンクが爆発し、火災になった事例を紹介します。比較的小型の原油タンクでしたが、火災の制圧に手こずり、発災後3時間でようやく鎮火しています。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国ノースダコタ州North Dakotaスターク郡Stark CountyディキンソンDickinsonにある石油生産施設である。

■ 発災があったのは、ディキンソンの15番ストリート・ウェスト/40番アベニュー・ウェスト付近にある石油生産施設の原油タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024916日(月)午前6時頃、ディキンソンにある石油生産施設の原油タンクが爆発し、火災になった。

■ 火災による濃い煙が空に広がった。

■ 発災にともない、緊急通報があり、ディキンソン消防署が出動した。

■ 火災がウェストリッジ・アパートのある住宅地やファミリーフェア・スーパーマーケットのある商業施設に近かったため、当初、避難指示が出された。近くで建物の建設中だったが、作業は中断された。

■ 消火活動には、ディキンソン消防署のほか、ボランティア型のディキンソン在郷消防署、マラソン・リファイナリ消防隊が協力した。消火は泡消火剤が使用された。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

被 害

■ 原油タンク1基が焼損した。内部の油が焼失した。

■ 負傷者は出なかった。

■ 住民への避難指示が出された。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ ディキンソン消防署は、当初、住民の安全を確保するために避難指示を発令した。しかし、消防当局は現場に到着し状況を評価した後、火災が拡大する要因はないと判断し、避難指示を解除した。一方、火災現場がディキンソン中学校に近かったため、風向きが変わって黒煙が学校に向かって流れた場合に備えて、緊急対応要員は生徒と職員の避難準備を整えた。

■ ディキンソン消防の救急隊とディキンソン公共事業局の緊急要員が支援に駆けつけ、必要に応じて医療支援の体制を整え、付近の交通整理を行った。

■ 消火活動中に火勢が変化するため、消防隊は火災を封じ込めるのに手こずった。消防署長は、予想しがたい火勢について、通常、火災は燃え尽き始めるが、今回のように火災の熱が強すぎると、再燃を繰り返すのだと説明した。火災の制御が難しい状況が続き、3時間近く燃焼したのち、鎮火した。

■ 爆発の原因は地元当局によって調査中である。捜査官らは爆発とその後の火災の原因を調査しており、当局は近隣の原油生産施設の潜在的な危険性について警戒を続けた。

補 足

■「ノースダコタ州」North Dakotaは、米国の北部に位置し、カナダに接する州で、人口約78万人である。州都はビスマルク市である。ノースダコタ州はシェールオイルの生産による石油ブームが続いており、石油生産量はテキサス州につぐ全米第2位になっている。

「スターク郡 Stark Countyは、ノースダコタ州の西部に位置し、人口約33,000人の郡である。

「ディキンソン」Dickinsonは、 スターク郡の中央北に位置し、人口約25,000人の都市である。

■「発災場所」に関しては、近くに8基のタンクを有する石油生産施設があったが、被災写真や近くのアパートなど割に詳しく報じられていたので、特定できた。事故のあった施設には、固定式屋根タンクが1基しかなく、隣には小型の石油掘削装置らしい機械があるだけである。石油生産施設としてはあまり見たことがない。ノースダコタ州はシェールオイルの生産が盛んであり、試掘で使用した機械とタンクで少量の原油を生産しているのではないだろうか。「発災タンク」の大きさはグーグルアースで調べてもはっきりしない。直径を23m、高さを46mとすれば、容量は1242KL程度である。

所 感

■ タンクの爆発・火災の原因は調査中であるが、発生時刻が午前6時頃と早く、落雷などの火気といった話は出ておらず、予想がつかない。

■ 今回のタンク火災で特異なことは、消火活動中に火勢が変化するため、消防隊が火災を封じ込めるのに手こずったということである。消防署長は、予想しがたい火勢について、通常、火災は燃え尽き始めるが、今回のように火災の熱が強すぎると、再燃を繰り返すのだと説明した。被災写真を見ると、発災初期段階は屋根が噴き飛び、通常のタンク全面火災の様相であるが、別な時間帯の写真では、タンク外のプール火災になっている。

 この要因は、タンク内の原油の比重が重く、生産油の段階でも完全に水がタンク底に静置せず、原油中に遊離水や自由水として存在していたため、一種のスロップオーバーやボイルオーバー現象が生じ、急激な沸騰で内部の原油が噴き出したためではないだろうか。あるいは、消火活動中に冷却水や泡消火水がタンク内に入り、同様に急激な沸騰が起こり、噴き出した原油がタンク外のプール火災になったことも考えられる。

■ 消火戦略には、「積極的戦略」、「防御的戦略」、「不介入戦略」の3つがある。通常、水圧破砕方式で塩水処理設備を有する陸上石油生産施設では、不介入戦略や防御的戦略がとられることが多い。今回は鋼製タンク1基の施設で、積極的戦略がとられた。しかし、消火戦術が適切ではなく、火災の制圧に時間がかかった。近くにあるマラソン・リファイナリ消防隊が支援に出動したと報じられているが、これは泡消火剤の使用を判断してから依頼したのではないだろうか。今回の事例は比較的小型のタンクであるが、かえって容量の小さいタンクの場合、消火戦術をきちんと決め、使用する消防資機材が十分であることを確認したのち、消火活動を実行しなければならないと感じる。

 (注;マラソン・ペトロリアムのディキンソン製油所は、最近、大豆油とコーン油を再生可能ディーゼル油に変える工場に転換している)


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Thedickinsonpress.com,  Crude oil tank fire extinguished,  September 16, 2024

    ・Kxnet.com, Investigation continues into Dickinson crude oil tank fire,  September 22, 2024

    Kfyrtv.com, Dickinson crude oil storage tank fire put out,  September 17, 2024


後 記: 今回の事例では、グーグルマップとグーグルアースのストリートビューの威力を感じました。平面や3Dの地図でははっきりとしなかった発災施設の位置や発災タンクの外観を知ることができました。それがどうしたと言われれば、身も蓋もないのですが、グーグルマップやグーグルアースを活用している私にとってはひとつの進歩です。下図に特定に至ったストリートビューと平面の地図の相関を示します。


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