2013年7月14日日曜日

米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡

 今回は、貯蔵タンクとは関係のない山火事について紹介します。2013年6月28日、米国アリゾナ州の州都フェニックスから北に135km離れたヤーネルヒルで落雷とみられる山火事が発生し、この消火活動中、6月30日、同州プレスコット市から出動していた“ホットショット”と呼ばれるエリート消防士20人からなる消防部隊が、ひとりを除く19人が死亡した事故です。このブログでは、消防士の活動状況が出てきますが、なぜ多くの消防士が亡くなるという事故になったかについて紹介します。
アリゾナ州の山火事に対応する現場へ向かう消防士(最後の写真といわれる)
 (写真はrrstar.comから引用) 
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Foxnews.com,  Portable Shelters Couldn’t Save 19 Members  of  Elite Hotshots Firefighting Crew Killed  in  Arizona Blaze,  July 02,  2013
      ・USnews.NBC.com,  For Now, We Mourn:  Few Answers after 19 Killed in Arizona Wildfire,  July 01.  2013
      ・BBC.co.uk,  Arizona Wildfires: The Life of a ‘Hotshot’Firefighter,  July  01, 2013
      ・KOAMTV.com,  19 Killed in Arizona Wildfire; Local Technician Shows Tents Used to Try to Save Lives, July 02, 2013
      ・Freep.com,  Firefighter’s Final Photo Used as Evidence in Deadly Fire,  July 04,  2013
      ・BBC.co.uk,  Arizona’s Deadly Yarnell Wildfire Nears Endgame, July 05,  2013
      ・News.Yahoo.com,  Convoy Takes Remains of Fallen Arizona Firefighters Home,  July 07,  2013
      ・AFPbb.com,  米アリゾナ州の山火事、延焼面積4倍に 強風でさらに拡大の恐れ, July 02,  2013
     ・CNN.co.jp,  山火事で消防士19人が死亡 米アリゾナ州, July 01,  2013
      ・Fujisankei.com,  米アリゾナ州 19人の消防士が犠牲になる山火事, July 03,  2013

 <山火事の状況> 
■  2013年6月28日(金)、米国アリゾナ州は記録的な猛暑が続く中、州都フェニックスから北に135km離れたヤーネルヒルで落雷とみられる山火事が発生した。6月30日(日)時点で8平方キロメートルだった焼失面積は、翌7月1日(月)には32平方キロメートルに広がった。地元当局は近隣のヤーネルなど2つの町の住民に避難指示を出した。山林管理当局によると、これまでに住宅約100棟が全焼したという。地元テレビの映像では、稜線に沿って広がる炎が確認でき、灰褐色の煙がもくもくと上がっている。
         (写真はbusinessinsider.comから引用)                                         (写真はtheblaze.comから引用) 
(写真はbusinessinsider.comから引用)
          (写真はmotherjones.com から引用 )                                    (写真はmissoulian.com から引用 ) 

■ この山火事に200人の消防士が動員されていたが、71日には400人に増やされた。しかし、強風で火の勢いは強くなり、消火活動は困難をきわめた。このような中、630日の夜、同州プレスコット市から出動していた“ホットショット”と呼ばれるエリート消防士20人からなる消防部隊が、ひとりを除く19人の死亡が確認された。無事だったひとりは、当時、部隊のトラックを運転するため現場を離れていた。“ホットショット” は厳しい訓練を経て最も過酷な山火事の現場で消火活動を行う先鋭部隊で、山火事の多いこの季節には常に各地での出動要請に備えている。今回犠牲になった部隊は、ニューメキシコ州の山火事の消火活動から戻ったばかりだった。
(写真はBBCnews.co.ukから引用) 
■ 州の森林当局によると、消防士は延焼を防ぐための防火帯を設ける作業にあたっていた。同局のアート・モリソン氏は「通常、防火帯を作る場合は、退却ルートを確保する必要があります。今回は明らかに十分なスペースが確保できておらず、炎が消防士を襲ったのだと思います」と状況を説明した。AP通信が州当局者の話として伝えたところによると、消防士らは、火や熱から身を守るための緊急シェルターにいたという。このような部隊は、消火活動中に逃げ場を失った時に備えて260℃までを耐えることができる携帯用の小型シェルターを持ち歩いている。最悪の事態の時はシェルターの中に入り、火が通り過ぎるのを待つ。しかし、記録的な猛暑と強風という最悪の条件が重なり、“パーフェクトストーム”とも呼ばれる今回の山火事は緊急シェルターで防げないほど猛烈なものだったと見られている。

 ■ アメリカ森林サービスのウエブサイトによると、米国には“ホットショット”は110チームある。各“ホットショット”のチームは20名のメンバーで構成され、特別な訓練を受けている。 “ホットショット”メンバーの主要な役割は山火事と近隣の住宅の間を分断するための“防火帯”を構築することで、このため山火事の燃料源になる雑木林、木々、草木などを取り除くことである。これはきつい作業である。常に火の手の位置と退却ルートに注意を払いながら、土を掘り起こし、チェーンソーで伐採し、地面を削り取って運んだりしなければならない。元“ホットショット”のアボス氏によると、“ホットショット”に必要な資質は、モチベーションの高さ、協調性、堅実な仕事へのこだわり、楽観的な思考だといい、さらに必要な要件は頑健な体力だという。例えば、20kgの荷物を背負って3マイル(4.8km)の距離を45分以内で歩けなければ、 “ホットショット”には向かないという。
(写真はnationalpost.comから引用)                                            (写真はBBC.co.ukから引用)
“ホットショット”の防火帯構築の作業例 
■ アリゾナ州林業部の広報担当マイク・ライヒリング氏は、19人全員が訓練通りに緊急シェルターを装備して使用していたと語った。最後の手段として、消防士は緊急シェルターを出し、地面に伏せて、耐火性の生地の中に身体をすっぽりと覆うように入る。シェルターは、山火事が人の上を通過する数分の間、熱を遮断して暑くないように保ち、内側で息ができるように設計されている。しかし、その効果は、消防士が燃えるものから十分離れた場所で、荒れ狂った地獄のような灼熱と熱いガスに直接曝されない場合に限られる。シェルターの内部層を保持している接着剤は約500℃で剥がれ始め、300℃を超えると人はほとんど死亡する。プレスコット消防署のジェフ・クノテク署長は、「緊急シェルターは有効ですが、短時間の場合に限られます。火災が人の上を速く通り過ぎれば、多分大丈夫でしょう。しかし、火災の勢いが強く、長い時間だった場合には、無理だと思います」と語った。

■ 連邦規則では、山火事に出動するメンバーは、毎年、緊急シェルターの使用方法の復習を受けなければならない。ローカルのKOAMテレビは、ミズーリー州自然保護部のテリー・クックさんに緊急シェルターの使い方を見せてもらった。緊急シェルターを使用するような状況になったら、メンバーの指揮者が外に出てもよいというまで、隊員は緊急シェルターの中で空気清浄器を使って呼吸し、うずくまっていなければならない。クックさんは、緊急シェルターから出てもよいというOKが出されないまま長い時間が経ったのでしょうと語った。
                 緊急シェルターの使い方   (写真はKOAMtv.comから引用) 
■ プレスコット市会議員レン・スキャマルド氏によると、消防隊が逃げ場を失うことになった30日日曜の午後3時頃、突然、風の向きが変わり、風の強さは4050mph1722m/s)になり、火災エリアはあっという間に200エーカ(81万㎡)から2,000エーカ(810万㎡)へ拡大してしまったという。

■ 犠牲になった“ホットショット”チームは、この二・三週間をニューメキシコとプレスコットの山火事の消火活動に従事した後、週末にはバックパック(背負い袋)を背負って、雑木林や木を除去するためのチェーンソーやその他の重い機材をもってヤーネルヒルのくすぶっている荒地に入っていった。

■ 山火事はどのようにして広がっていくか。
 ● 火災には、燃えるもの、酸素、燃焼のための熱源が必要となる。ヤーネルの町を震撼させた山火事は落雷によって始まり、折からの猛暑と乾燥と強風によってまたたく間に広がった。
 ● 山火事の中で最も移動速さが高く、最も危険な箇所は“ヘッド”という名で知られている。火災の先部分は熱く、風に乗って飛んでいく“スポット・ファイア”が生じ、さらに先へ進んでいく。
 ● ある種の草木類は他のものより燃えやすいものがあり、炎の“フィンガー”を形成する。一方、これによって地上部分には“ポケット”が生じ、火との戦いを難しいものにする。
 ● 熱や煙は上方へ昇っていくので、火災の進展速度は上り斜面の方が下り斜面より速い。このため、丘の上の方が熱くなり、風も丘に向かって吹き上がり、火炎をさらに推し進めるようになる。そして、飛び火が丘を転がり落ちるようになり、新たな火の手を生じる。
(図はBBC.co.ukから引用) 
■ 19名の犠牲者を出したヤーネルヒルの山火事は、アリゾナ州内で発生している複数の山火事の中でも最も規模が大きかった。2週間前にもコロラド州で山火事が発生し、2人が死亡し、360棟の家屋が焼失するという同州史上最悪の被害を出したばかりだった。
 6月下旬は、米国南西部の多くの場所で観測史上最高またはそれに近い気温が記録され、カリフォルニア州デスバレーでは、6月の気温としては同国の過去最高記録に並ぶ53℃を観測するなど、山火事の起こりやすい天候が続いている。また、今年は米国南西部における山火事の集中発生期が例年より早く訪れており、中でもカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコの3州が最も大きな被害を受けている。

■ ヤーネルヒルの山火事では19名の消防士が亡くなったが、これは消防士の死者数としては2001911日の同時多発テロ後では最も多く、米国の山火事関連では過去80年で最多となった。

■ 7月5日(金)、BBCニュースは、アリゾナ州の山火事は80%ほど制圧できており、対応に出動していた消防隊も多くが戻っており、規模が縮小されていると報じている。穏やかな天候に恵まれ、消防隊は防火帯を構築することができた。最も多い時には680名の消防士が対応していた。山火事が始まって以降、避難していたヤーネルの住民も週末には帰宅できる見通しである。

■ 亡くなったプレスコットの消防士はつぎの19名で、20歳代が7割を占める若いチームだった。
 ケビン・ウォイジェックさん(21歳)       クリス・マッケンジーさん(30歳) 
 アンドリュー・アッシュクラフトさん(29歳)  アンソニー・ローズさん(23歳)
 エリック・マーシュさん(43歳)           ロバート・コールドウェルさん(23歳)
 クレイトン・ワイテッドさん(28歳)       スコット・ノリスさん(28歳)
 ダスティン・デフォードさん(24歳)        ショーン・ミスナーさん(26歳)
 ギャレット・ザピンガーさん(27歳)       トラヴィス・カーターさん(31歳)
 グラント・マッキーさん(21歳)         トラヴィス・タービフィルさん(27歳)
 ジェス・スティードさん(36歳)          ウェイド・パーカーさん(22歳)
 ジョー・サーストンさん(32歳)            ウイリアム・ワーネックさん(25歳) 
 ジョン・パーチンさん(24歳)
プレスコットの“ホットショット”のメンバー
(写真はnew.com.auから引用) 
■ アリゾナ州の州都フェニックスでは、7月7日(日)、警察のオートバイに先導された19台の白い霊柩車が厳かに行進し、山火事で犠牲になった19名の消防士のホームタウンへ最後の旅に立った。アリゾナ州議会議事堂の通りには、大きなアメリカ合衆国の国旗が消防はしご車から吊り下げられ、この前を通過してプレスコットへ向かった。
州都フェニックスにおける19台の白い霊柩車の厳かな行進
(写真はNews.yahoo.comから引用) 

所 感
■ 貯蔵タンクの事故情報では、よく消防隊の活動状況が報じられる。米国では消火戦略・消火戦術の思考が徹底していると感じており、そのような消防隊において山火事で19名の消防士が殉職したことに驚くとともに、なぜという疑問が出て、調べてみることにした。
 米国における山火事の消火活動が予想以上に苛酷で、特に今回のヤーネルヒル山火事は異常といえる猛暑・乾燥の天候の中で、風の急変がもたらした悲劇であることがわかった。
 “ホットショット”という危険な仕事に敢えて挑戦する屈強な消防士に敬意を払うとともに、19名の犠牲者のご冥福を祈る。ヤーネルヒル山火事では、調査官が現地に入って調査を行っているという。ある面、天災の一つであり、危機管理の観点で防ぎ得なかったかという課題は重いが、今回の事故が活かされることを期待したい。



後 記: 米国南西部で記録的な猛暑が続いていた中で、今回の山火事があったわけですが、日本も梅雨が明けた翌日から各地で猛暑です。一気に気温が上がったので、身体がついていきませんでしたが、やっと暑さに慣れてきました。しかし、20kgの荷物を背負って3マイル(4.8km)の距離を45分以内で歩いてみようかという気持ちにはなりませんね。
 ところで、以前、日本の豪雨や落雷の強さが昔より大きくなってきたと書きましたが、7月初めに気象庁の分析が発表になり、感覚を裏付ける結果でした。1時間に50mm以上の非常に激しい雨が降る頻度が、過去30~40年で3割余り増えたそうです。なにかアメリカで起こっている天災(落雷、竜巻、山火事)が日本でも身近な問題に感じますね。

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