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2022年9月30日金曜日

アルゼンチンの製油所で原油の円筒タンクが爆発・火災

 今回は、2022922日(木)、アルゼンチンのネウケン州プラザ ・フインクルの町にあるニューアメリカン・オイル社のプラザ ・フインクル製油所で原油の円筒タンクが爆発し、3名の死者が出た事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、アルゼンチン(Argentina)ネウケン州(Neuquen)プラザ ・フインクル(Plaza Huincul)の町にあるニューアメリカン・オイル社(New American Oil NAO)のプラザ ・フインクル製油所である。同製油所の精製能力は25,000バレル/日(4,000KL/d)で、2000年に運転開始した。

■ 発災があったのは、製油所にある原油の円筒タンクである。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022922日(木)午前420分頃、製油所にある原油の円筒タンクが爆発し、火災が発生した。

■ 近くの住民によると、最初に大きな爆発音が聞こえ、その後炎が出たといい、その後、最初の消防隊が現場に到着し始めたという。爆発音に続いて消防車のサイレンの鳴る音が聞こえ、近隣の住民はほとんど起こされた。目が覚めた人たちは、夜空が明るくなっており、製油所の方角に火災の炎を見た。

■ 火災に伴い、消防隊が出動した。近隣の町から消防隊の応援がやってきた。

■ 消防隊は火災を制御しようと消防活動を行った。消防隊は隣接する他のタンクに延焼しないようにできるだけ早く火災を抑え込もうとしていた。

■ 発災直後、行方不明だった製油所従業員が亡くなっていたことが分かった。死亡したのは、夜勤で従事していた製油所の従業員で、31歳、34歳、58歳の男性だった。このほか爆風で危険を脱した4人目の従業員(警備員といわれている)も火傷を負った。

■ 消防隊は泡消火薬剤を使って消火活動を行った。

■ 火災の炎は12mの高さに達し、火災はプラント全体に急速に広がり、施設から煙の黒い雲が立ち昇った。施設のほぼ 80% に影響を与えた。

■ 午前10時頃には、国道22号線の40km以上離れた場所でも火災の噴煙が確認できた。

■ 予防措置と発災地への消防車両等の自由な移動を容易にするために、近隣の5つの小学校が休校になった。

■ 爆発があったのは、原油または重油の入った貯蔵タンクとみられ、その後に起こった火災は建物、タンクローリーやプラントへ広がった。タンクローリーは6台が被災に逢っている。

■ ユーチューブには、爆発の瞬間をとらえた道路の監視カメラの映像を含めた火災の状況を伝えるニュースが投稿されている。主なものはつぎのとおりである。

 Así fue el momento de la explosión en la refinería en Plaza Huincul(プラザ ウインクルの製油所での爆発の瞬間)(2022/09/22

 ●Plaza Huincul I Explotó una refinería: murieron tres operarios y no logran controlar el fuego(プラザ ・フインクル製油所が爆発: 3 人の労働者が死亡し、火を制御できなくなった)(2022/09/22

 ●EXPLOSIÓN y TRAGEDIA en una REFINERÍA de NEUQUÉN - Telefe Noticias(ネウケン製油所での爆発と悲劇)(2022/09/23

 ●Explosión de una refinería en Plaza Huincul: hay al menos tres muertos(プラザ ・フインクル製油所の爆発: 少なくとも 3 人が死亡)(2022/09/23

被 害

■ 原油の円筒タンクが爆発し、損壊した。内部の油が火災で焼失した。

■ 火災の延焼によって原油の円筒タンク以外の設備が被災した。詳細はわかっていない。

■ 爆発によって製油所従業員4名が死傷した。うち3名は死亡で、1名はやけどによる負傷である。また、消防活動によって消防士6名が一酸化炭素中毒などによって入院した。

■ 近隣の道路が封鎖され、小学校5校が休校になった。

 ■ 石油の燃焼で排出される有害物質による大気汚染が発生した。

< 事故の原因 >

■ 原因は調査中で分からない。



< 対 応 >

■ 近隣の町から数十人の消防士が応援が来て、消防隊は6時間以上戦い続けた。最終的に出動した消防士は90名だった。

■ 火災は午前1030分頃、制圧され、正午頃に消火された。火を消した後は、隣接するタンクを高温から冷やす必要があった。

■ 消火活動によって一酸化炭素中毒と一時的な高血圧のために6名の消防士が入院したという。

■ 消防活動では、水の供給に問題があった。消防署は、貯水槽付き給水車の購入の要請していたという。

■ 922日(木)、人が亡くなったため、火災がどのように始まったか不明であるが、石油労組は安全対策の強化を求めてストライキを呼びかけた。この組合はアルゼンチン国内最大で、約25,000人の労働者を代表している。石油労組は「この地域における石油産業の前例」という報告書を出しており、2018年から2022年上半期までにシェールオイル施設などで11名の労働者が死亡したと詳述している。

■ 922日(木)の夜、ニューアメリカン・オイル社はプレスリリースの中で哀悼の意を表し、「すでに連絡を取り合っているご遺族の皆様には、この苦痛に対し連帯と無条件の支援をいたします。製油所の火災は午前中に鎮圧され、正午頃には完全に鎮火し、当局はすでに対応する調査を開始しています。事件を引き起こした理由は不明であり、司法捜査と消防の調査結果を待つことになります」と表明した。

■ 923日(金)、爆発の1週間前に、ネウケン州環境局がニューアメリカン・オイル社のプラザ・フインクルの製油所に視察が行われており、異常な状態が指摘されていたことが明らかになった。環境検査官は、製油所施設内の8ヘクタールを視察したところ、石油が貯蔵されている蓋のないタンクやフレアの近くに炭化水素が存在する大きなラグーン(湖沼)があったという。ただし、これが事故の原因だったというわけではない。

■ ユーチューブには、事故後の製油所の状態をドローンで撮影した映像が投稿されている。主なものはつぎのとおりである。

 ●Drone footage show the aftermath of oil refinery fire around Neuquen(ドローンの映像はネウケン周辺の石油精製所の火災の余波を示している)(2022/09/23

 ●Tres trabajadores muertos en refinería de Plaza Huincul(プラザ ・フインクル製油所で3人の労働者が死亡)(2022/09/23





補 足

■「アルゼンチン」(Argentina)は、正式にはアルゼンチン共和国で、南アメリカ南部に位置し、人口約4,520万人の連邦共和制国家である。首都はブエノスアイレスである。

「ネウケン州」(Neuquen)は、アルゼンチンの中西部に位置し、人口約54万人に州である。

「プラザ ・フインクル」(Plaza Huincul)は、ネウケン州の中東部に位置し、人口約13,000人の町である。

 アルゼンチンのタンク火災について紹介した事例は、つぎのとおりである。

 ●「アルゼンチンでバイオディーゼル用タンクが爆発・火災、死傷者3名」20202月)

■「ニューアメリカン・オイル社」(New American Oil NAO)は、2000年に設立されたアルゼンチン国内の石油会社である。比較的小型の精製能力25,000バレル/日の製油所がプラザ・フインクルにあり、主に軽油(ディーゼル燃料)のほか、灯油、ナフサなどを製造し、販売している。製油所には8基のローリーステーションがあり、年間9,000台のタンクローリーなどのトラック(300,000KLの燃料に相当で輸送している。

■ 「発災タンク」は原油タンクと報じられているが、貯蔵タンクエリア(明確なエリア区分になっていないが)のタンクではなく、プロセスエリア内の防油堤に囲まれた比較的小型の円筒タンクだとみられる。その理由は、発災タンクが爆発を起こして後、火災になってまわりの機器に延焼したと報じられているが、貯蔵タンクエリアのタンク群は塗装が剥離しておらず、きれいな状態のままである。円筒タンクは爆発を起こして屋根が噴き飛んでいることと、そのほかに屋根などが噴き飛んだような機器は見当たらないことである。

 一方、簡易トッパーのような製油所であるが、プロセスエリア内に原油タンクが設置されているのは疑問が残る。隣のタンクは発災タンクより高く、屋根はドームルーフ型であり、両方とも保温が設置されていた。爆発したタンクの保温材は完全に脱落している。隣接のドームルーフ型のタンクは保温外板が外れ、保温材の一部は脱落しかかっている。

 発災タンクが円筒タンクであるとして、グーグルマップで調べると、直径は約5.3mであり、高さを7mと仮定すれば、容量は約150KLである。


所 感

■ 午前420分頃の発災後、間がないとみられる火災現場の写真を見ると、爆発で屋根が噴き飛んだ円筒タンクから炎が出ているほか、別な離れた場所でも炎が上がっている。報道によると、発災は原油タンクの爆発から始まったと報じられているが、発災は設備内の配管などによる漏洩から始まっているのではないだろうか。発災写真では、撮影の時刻が分からないが、いずれも円筒タンクだけでなく、複数箇所から火災が発生している。特に、蒸留設備の塔槽、配管、加熱炉、構造物は真っ黒に汚れており、床面からの不完全燃焼の火災に長時間曝されていたと思われる。

 一般には見られないプロセスエリア内の原油タンクの爆発・火災事故であり、爆発の要因はいろいろ考えられるが、製油所全体の設備管理や安全管理についてみていく必要があろう。

■ 燃焼時間は午前420分頃から正午までの約7時間40分かかっている。複数箇所の火災で、且つ給水車不足の問題があったにしては短い時間で済んだ消火活動のように感じる。発災写真によると、円筒タンクに最後まで消火泡が投じられており、消火薬剤の不足は無かったものと思われる。プロセス装置は油の供給を停止すれば、内部の保有油量は比較的少なく、また、爆発した円筒タンクも火災を起こしているが、側板が座屈するほどではなかったことが激しい火災にならなかったと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

  ・Reuters.com, Argentine oil workers strike after refinery explosion kills three,  September  23,  2022

    Tankstoragemag.com,  Plaza Huincul refinery explosion,  September  23,  2022

    Washingtonpost-com,  Fire in Argentina refinery kills three,  September  22,  2022

    Apnews.com,  Fire in Argentina refinery kills three,  September  23,  2022

    Batimes.com.ar,  Oil and gas workers strike after three killed in Neuquén refinery explosion,  September  22,  2022

    Hydrocarbonprocessing.com,  Striking Argentina oil workers demand talks after deadly refinery blast,  September  23,  2022

    Ladatamix.com, Neuquén. Explotó una refinería de Plaza Huincul y las autoridades confirmaron tres muertos,  September  22,  2022

    Perfil.com, Videos: así fue la impactante explosión de la refinería de Neuquén que dejó 3 muertos,  September  23,  2022

    Lavoz.com.ar,  Neuquén: días antes de la explosión fatal, se detectaron irregularidades en la refinería,  September  23,  2022

    Rionegro.com.ar,  Incendio en la refinería de NAO en Plaza Huincul: por qué estalló uno de los ocho tanques,  September  23,  2022

    Infobae.com,  Explotó un tanque en una refinería de Neuquén y hay al menos tres muertos,  September  26,  2022

    Lanacion.com.ar,  Neuquén: el momento de la explosión de una refinería que dejó tres muertos,  September  22,  2022


後 記: アルゼンチンのタンク火災の事故情報を取り上げるのはこれで2回目です。前回の事例のときは、情報はたくさんありましたが、事故状況は判然としませんでした。今回も、また、事故状況ははっきりしませんでした。初期の情報(情報源といった方がよいかも)では、消防隊が火災を制御しようと消防活動をやっているときに、製油所の従業員が3名亡くなったとか、消防隊が構内に入ったときに、燃えていたタンクが倒壊するところで、タンクが倒壊したため、避難しなければならなかったというように受け取られる情報があり、当分の間、このような認識でいました。しかし、被災写真をみたり、ほかの情報を読んでいくと、状況が違うように感じました。多分、消火活動をやっているときに従業員が亡くなったという情報を聞いたということだと思います。タンクが倒壊したのは保温外板や保温材が剥がれるのを見たということでしょう。(これらの情報はブログからカットしました)

 一方、報道の自由度ランキング2022では、アルゼンチンは世界29位で、日本の71位はもちろん米国の42位より自由度ランクは高い結果です。報道について自由に伝えることは確かに高いのかも知れませんね。事実より本人がどのように感じたかを伝えるのでしょう。

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