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2020年2月12日水曜日

アルゼンチンでバイオディーゼル用タンクが爆発・火災、死傷者3名

 今回は、2020年2月6日(木)、南米アルゼンチンカタマルカ州レクレオ近郊にある工場の建屋内にあるバイオディーゼル用のタンクで爆発・火災があり、死傷者3名を出す事故を紹介します。
(写真はInfobae.comから引用)
< 施設の概要 >
■ 事故があったのは、南米アルゼンチン(Argentina)カタマルカ州(Catamarca)レクレオ(Recreo)近郊にある工場である。

■ 発災があったのは、レクレオ郊外の国道11号線と州道5号線の交差点近くにある建屋内にあるバイオディーゼル用のタンクである。
   カタマルカ州レクレオ近郊の発災場所付近(矢印が発災場所) (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年2月6日(木)午前9時頃、バイオディーゼル用のタンクが爆発して火災になった。

■ 事故に伴い、1名が死亡、2名が負傷した。負傷した2名は400mほど離れたところにある総合病院に搬送され、治療を受けている。

■ タンクがある建屋に延焼し、火が舞い上がり、黒煙が立ち昇った。炎と黒煙は遠い場所からも確認できた。近くの住民によると、火災中、少なくとも6回ほど爆発音を聞いたという。

■ 発災に伴い、消防隊が出動し、消防士が消火活動に従事した。

■ 警察は、発災現場から1kmの範囲にいる住民に避難をさせた。

■ 建屋などは1時間ほどで崩壊し、残骸になった。

■ 火災発生時の動画がユーチューブに投稿されている。
 (YouTube「Incendioen Recreo」を参照)

被 害
■ バイオディーゼル用のタンクが損壊し、内部のバイオディーゼルが焼失した。タンクを囲っていた建屋も焼失した。

■ 事故に伴い、3名の死傷者が出た。うち死亡者は1名である。

■ 発災場所の近隣住民に避難指示が出された。 

< 事故の原因 >
■ 原因は明らかでない。
 しかし、現地メディアの中に、火災は作業員が使用した溶接機の火花から発生したのではないかと報じているところがある。
(写真は、左; Infobae.com右;Radioeme.comから引用)
(写真はRosarionuestro.comから引用)
(写真はTn.com.arから引用)
             焼失した建屋  (写真はElciudadanoweb.comから引用)
補 足 
■「アルゼンチン」(Argentina)は、正式にはアルゼンチン共和国で、南アメリカ南部に位置し、人口約4,100万人の連邦共和制国家である。首都はブエノスアイレス(首都圏人口約1,550万人)である。
「カタマルカ州」(Catamarca)は、アルゼンチンの北西に位置し、人口約37万人の州である。
「レクレオ」(Recreo)は、カタマルカ州の南東にあり、12,000人の市である。市民は主に農業に従事している。
            アルゼンチンの位置  (写真はGoogleMapから引用)
■「バイオディーゼル」は、植物油を原料とし、化学処理などの方法により製造されたディーゼルエンジン用の液体燃料である。ディーゼルエンジンは、もともとピーナッツ油等の植物油を燃料としていたが、原油による軽油が主流となっていた。しかし、1970年代のオイルショックを契機に、再びバイオディーゼルが注目されるようになった。
 バイオディーゼルの原料は、欧州では菜種油・ひまわり、中南米では大豆油、東南アジアではパーム油が主な原料になっている。日本では、廃棄物の有効利用の観点から、廃食用油が用いられている。
 製造方法にはいろいろな種類があるが、一般的な方法としては、アルカリを触媒としてメタノールと化学反応させることにより、原料油を脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)にする方法である。
 バイオディーゼルに関わる事故としては、つぎの事例がある。
 
■「発災事業所」の業種などは分からない。グーグルマップで調べると、発災場所情報と被災写真から何かの工場だと分かったが、バイオディーゼルを作っているのか、あるいは使用しているのかまでは分からない。
                  発災事業所(事故前)  (写真はGoogleMapストリートビューから引用)
            発災事業所(矢印は事故前の火災建屋)  (写真はGoogleMapから引用)
■ バイオディーゼルの「貯蔵タンク」の仕様も分からない。建屋内に入れられたタンクなので、大型のタンクではない。

所 感
■ 爆発の原因は特定されていないが、情報でいわれているように溶接作業のようなタンク周辺の火気工事だと思われる。米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)のつぎの項目のいずれかが欠けたと思われる。
  ①代替方法の採用、  ②危険度の分析、 ③作業環境のモニタリング、
  ④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督

■ バイオディーゼルは本来爆発を起こすような液でないので、原料油タンクの運用に問題があったと思われる。バイオディーゼルと軽質の石油を混合したタンクだったのではないだろうか。
 受入れるべき原料油で問題のあった事故としては、つぎのような事例がある。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Industrialfireworld.com, Biofuel Tank Fire Kills 1, Injures 2 in Argentina, February  06, 2020
    ・M.en24.news, B Explosion and fire in a biofuel tank in Santa Fe, February  06, 2020
    ・Infobae.com, Explosión e incendio en un depósito de biocombustible en Santa Fe, February  06, 2020
    ・Lanacion.com.ar, Explotó un depósito de combustible en Santa Fe: al menos un muerto y tres heridos, February  06, 2020 


後 記: アルゼンチンのタンク火災の事故情報を取り上げるのは初めてです。バイオディーゼルのタンクで爆発・火災らしいというので、情報を調べましたが、事故状況は判然としませんでした。発災事業所など基本的な事故情報さえ分かりませんでした。意識的に企業の名を公表しない(隠す)国もありますが、アルゼンチンはそういう国情なのでしょうか。バイオディーゼルが火災を勢いづけ、1時間ほどで建屋を全焼させていますので、一地方の火災事象といった印象の事例でした。





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