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2022年5月29日日曜日

ガボンの石油ターミナルで原油タンクから大量流出

 今回は、2022428日(木)、アフリカ西海岸のガボンのポールジャンティ北方のロペス岬にあるペレンコ社のキャップ・ロペス石油ターミナルにおいて原油貯蔵タンクから油が大量に流出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、アフリカ西海岸のガボン(Gabon)のポールジャンティ(Port Gentil)北方のロペス岬(Cape Lopez)にある石油会社ペレンコ(Perenco)のキャップ・ロペス石油ターミナル(Cap Lopez oil terminal)である。

■ 事故があったのは、石油ターミナルにある容量90,000KLの原油貯蔵タンク(タンク番号R17)である。当時、高さ18mのタンクは容量の60%で、50,000KLの原油が入っていた。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022428日(木)朝遅い時間帯に、石油ターミナルにある原油貯蔵タンクで油が漏洩する事故があった。

■ ペレンコ社によると、428日(木)に原油貯蔵タンクから原油が漏洩したが、構外に流出していないという。流出量は、ガボンの1日あたりの原油生産量を超える30万バレル以上とみられる。

■ 漏洩発見後、ペレンコ社すぐに別な貯蔵タンクへ送油を開始した。しかし、漏洩が拡大し、2基のタンクの防油堤内に流出してしまった。

■ ペレンコ社は原油の受入れ・貯蔵・出荷の業務を停止した。通常、石油ターミナルには1日あたり13万バレルの原油を受け入れている。

■ ペレンコ社は、「施設の安全確保と環境破壊を防ぐため、不可抗力の事態を宣言しました。海洋への汚染はまだ検出されていません」という声明を出した。「流出した原油をポンプでタンクへ回収するには数日かかる可能性があります」と広報担当は補足説明した。

■ ペレンコ社は、海上への流出拡大の予防策としてオイルフェンスを展張したと語っている。

■ 現場は原油臭が立ちこめ、かなり広い地域に流れていた。岬近くの漁村の住民は、428日(木)午後11時頃、避難したと語っており、電気が遮断され、爆発の危険性があるため、火を使うことやタバコに火をつけないようにいわれたという。

■ 流出の原因はまだ明らかではなく、ペレンコ社は調査を始めた。

■ 流出のあった翌日に撮影されたドローンによる航空写真では、被害の大きさを示しており、2基の貯蔵タンクが防油堤内に漏れた原油の巨大なプールに囲まれているのがわかる。1台のバキューム車が原油の中に没しているのがわかる。原油の深さは1.52.0mとみられる。また、タンク防油堤の一部から構内エリアに流出しているのがわかる。原油が流出した防油堤と大西洋の海までの距離はわずかしかない。


被 害

■ 原油タンクが漏洩して、内部の原油(5KL)が防油堤内に流出した。

■ 原油が大気に曝露して大気を汚染した。

■ 負傷者はいなかった。岬近くの漁村の住民が避難した。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ ペレンコ社は、「管轄当局と緊密に協力して、状況を迅速かつ安全に解決できるようにしています。貯蔵タンクからの漏れ原因については、できるだけ早く完全な調査を実施する予定です」と述べている。

■ 発災から1週間が経ったが、当局は流出した原油による海への環境汚染は発生していないと語っている。大規模な環境災害はわずかに回避されたとみられる。一方、市民社会組織は依然として懐疑的である。

■ 地元の環境組織が、2020年にトタール社(トタール・ガボン)からキャップ・ロペス石油ターミナルを買収したペレンコ社が、複数の環境問題で訴えられているときに、今回の事故が発生した。

補 足

■「ガボン」(Gabon)は、正式にはガボン共和国で、中部アフリカに位置し、大西洋のギニア湾に面する人口約222万人の共和制国家である。17世紀にフランスが影響力を強め、フランスの植民地時代を経て、1960年に独立した。建国以来、旧宗主国であるフランスとの関係が非常に強い。ガボンは林業による豊富な物産があったため、古くから豊かさで知られていたが、独立後も原油の資源開発による産油国であり、人口の少なさもあいまって国民所得はアフリカ諸国では高い部類に属する。しかし、原油生産量は1997年の1日あたり約37万バレルから減少傾向にあり、現在は1日あたり20万バレル程度に落ちている。

■「ポールジャンティ(Port-Gentil)は、ガボン西部に位置し、人口は約13万人の港湾都市である。 1956年にポールジャンティ南の海上で原油生産が始まり、以後急速に発展し、石油産業が主産業となっている。ポールジャンティから北方にあるロペス岬(Cape Lopez)にペレンコ社(Perenco)のキャップ・ロペス石油ターミナル(Cap Lopez oil terminal)がある。

■「ペレンコ社」(Perenco)は、1975年にシンガポールを拠点とする海洋サービス会社として設立した。その後、16か国で事業を展開し、6,000人以上の従業員を擁し、ロンドンとパリに本社を置く石油企業である。1992年にガボンで操業を開始し、ポールジャンティの南にある4つの海洋油田を買収した。2020年にトタール・ガボン(Total Gabon)からキャップ・ロペス石油ターミナルを買収で得た。

■「発災タンク」は、容量90,000KLの原油貯蔵タンク(タンク番号R17)で、発災時、高さ18mのタンクに容量の60%の50,000KLの原油が入っていたと報じられている。グーグルマップで調べると、直径は約82mで、高さ18mとすれば約90,000KLの浮き屋根式タンクである。

 原油タンクの大量流出事故は、つぎのような事例がある。

 ●20071月、「フランスで原油タンク底部が突然破れて油流出」

 ●20153月、「ベルギーで原油タンク底部が裂けて油流出」

 今回の事故は、側板の油による汚れ状況から見て、上のベルギーの事例と類似しており、おそらくタンク底板部の破損によるものとみられる。


■ 防油堤の大きさをグーグルマップで調べると、約320m×160mである。防油堤は真四角でなく、一部が切り欠いた形をしており、面積は約49,300㎡である。タンクが2基あり、1基は滞油に寄与しないので、防油堤の滞油面積は約44,100㎡となる。滞油している原油の深さは1.52.0mと報じられているが、50,000KLを滞油面積で割ると、深さは約1.13mとなる。バキューム車の浸漬状況(発災翌日に撮影)から見て、深さは1.52.0mとないと思われる。

所 感

■ 今回の事故は、側板の油による汚れ状況から見て、タンク底板部の破損によるものと思われる。発災当初の漏れは大した量ではなく、バキューム車を使って油回収を試みたのではないだろうか。そのうち、漏洩が大きくなり、バキューム車を放置したものだろう。海への流出がなかったとともに、よく火がつかずに済んだものだと感じる。(ガボンは赤道直下で、4月の平均最高温度は30℃、最低温度は24℃だという) しかし、広い防油堤内に原油が直接曝露しており、臭気や環境汚染・土壌汚染の問題を引きずっていると思われる。 過去の類似事例では、20153月に起こった「ベルギーで原油タンク底部が裂けて油流出」の原因と教訓がよくまとめられている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com, Perenco shuts Gabon oil terminal after 300,000-barrel leak,  April  30,  2022

      Observers.france24.com, 'This is the final straw': Gabonese activists outraged at yet another oil spill by Perenco,  May  03,  2022

      Gabonreview.com, Incident pétrolier du Cap Lopez : le communiqué de Perenco Oil & Gas Gabon,  April  29,  2022

      Tankstoragemag.com, Major leak closes Perenco’s Gabon terminal,  May 03,  2022

      Devdiscourse.com, Anglo-French Perenco declares force majeure after oil terminal leak in Gabon,  May 06,  2022

      Theenergyyear.com, Perenco contains oil leak in Gabon,  May 02,  2022

      Greenmatters.com, Major Oil Spill in Central African Country of Gabon Averted After 300,000 Barrels Leaked,  May 03,  2022

      English.news.cn, Operations suspended at Gabon oil terminal after leak,  April  30,  2022

      Oilfieldafricareview.com, PÉRENCO CONFIRMS CRUDE LEAK AT GABON’S CAP LOPEZ TERMINAL,  May 03,  2022

      News.alibreville.com, Gabon: la société civile s’inquiète malgré le ton rassurant de Perenco sur une fuite pétrolière,  May 06,  2022

      Gabonreview.com, Incident au Cap Lopez : Le gouvernement annonce «une enquête complète»,  April  29,  2022

      Upstreamonline.com, Massive 300,000-barrel oil spill disaster averted at Perenco site in Gabon,  May 02,  2022


後 記: 今回一番時間がかかったのが、グーグルマップで探した石油ターミナルの場所でした。ガボンのポールジャンティ市の近くにあると報じられていたので、市内を探すと簡単に貯蔵タンク群のある場所がわかりました。その後、発災タンクはどれだろうと地図をいろいろな角度から見ましたが、ぴったり合いません。市内をさらに探しましたが、ありません。市内から北方のロペス岬(Cape Lopez)にまで足を延ばした(?)ところ、やっとキャップ・ロペス石油ターミナル(Cap Lopez oil terminal) が分かりました。あとから考えると、 Cape Lopezという地名からCap Lopezという名称をつけたというのが理解できました。

 ところで、ガボンという国があることを初めて知りました。ガボンにはメディアの検閲は存在していませんが、反面で政府を批判するメディアはしばしば法的な影響に直面することから、報道の自由が制限されてしまっているというので、報道の自由度ランキング(2021年)をみると、117位でした。ちなみに、日本(67位)、ウクライナ(97位)、ロシア(150位)です。

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