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2021年11月20日土曜日

フッ素フリー泡薬剤(F3)への移行で取り組むべき課題

  今回は、2021326日付けのインタネット情報誌の“Gulffire”に掲載された, Transition to fluorine-free foam – a ‘drop in’ replacement? (フッ素フリーフォームへの移行「ドロップイン」代替品?)の内容を紹介します。本ブログは「フッ素フリー泡薬剤(F3)の研究の重大な欠陥を浮き彫り」202110月)と合わせて参照してください。

背 景

■ 20207月に有機フッ素化合物であるペルフルオロオクタン酸のPFOAC8)をベースとした泡薬剤の製造が禁止されたため、現在、C8を使用しないようにするための5年間の移行期間になっている。 C8の泡は長鎖の炭化水素をもつフッ素系の泡薬剤で環境的に有害で持続性がある。

■ その代替品で有害性も少ない短鎖炭化水素のC6の製品も調査を受けている。 C6の泡薬剤は環境への悪影響が低く、生物分解性も高いものの、多くの地域でそれらも禁止しようという考えが出ており、フッ素を含まない、すなわちフッ素フリー泡薬剤(F3)が注目されている。そして、F3泡薬剤への移行の気運にある。

■ 泡薬剤メーカーは、フッ素ベース泡薬剤の代替品であるF3泡を作ろうと努力している。しかし、残念ながら端的にいって容易に代替できるようなF3泡薬剤は現状では無い。つまり、F3泡にフッ素ベースの泡を反映させた試験証明書があるような場合でも、あなた方は泡薬剤を単純に交換することはできないということである。これは、既存の泡設備をF3泡薬剤で作動させるために、適用倍率、泡薬剤の保管、プロポーショニング率、さらには消火技法も見直す必要があることを意味する。F3泡薬剤に求められる機能としては、同じ消火対象の別な泡薬剤と互換性が必要であり、実際の火災場面で消火する能力をもっている必要がある。泡薬剤の利用者としては、新しい技術が有効で役立つという確信や信頼を必要としている。フッ素ベースの泡薬剤の比較として、F3泡薬剤の性能を確認した現実の液体火災の事故は無い。原油が入った大規模な貯蔵タンクの消火ができるだろうか? 蒸気圧の高い油やケミカルが大量の放出しているような事故で本当に機能できるのだろうか?  これらは誰もが感じていることである。

■ ここでは、F3泡薬剤の課題とともに、消火技術の専門会社であるリライオン・ニューテック社(RelyOn Nutec)とその運営に携わっているリライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミー(RelyOn Nutec Fire Academy)のF3泡薬剤への移行の取組みを紹介する。

泡に関する試験の実施要綱

■ 泡薬剤の最終的な用途に応じた試験の実施要綱はいろいろある。UL162UL Standard for Safety Foam Equipment and Liquid Concentrates)やEN1568European Standard Specification for low~high expansion foam concentrates for surface application to water-immiscible liquids)などの一般的な試験、あるいは航空用のICAO (国際民間航空機関)、海上用のIMO(国際海事機関)、常圧式貯蔵タンク用のLASTFIREなどの特別な試験がある。これらの試験は、厳格な試験実施要綱に従って泡薬剤の性能を評価するために認証機関によって用いられている。

■ 現在、EN1568 Part3(低発泡の泡)の規格にもとづいた試験においてすでに最高の1A定格証明を持っているF3泡薬剤がある。これらの試験証明があなたの選んだ泡薬剤の裁可につながるか? 市場には同じ試験評価を有したF3泡薬剤があるが、まったく異なった特性(性質)を持っている可能性がある。つまり、使用時に多くの給水を必要とするものがあったり、消火時間が長かったりするものがあったり、あるいは保水性の還元時間が短いため、泡の覆いの保持に泡を頻繁に補充する必要があったりする。消火時間が長くなるということは燃焼時間が長くなり、結果として大気への汚染物質の排出量が増えたり、炭酸ガス放出が増えることに加えて、必要な泡薬剤の保管のために大きな追加費用がかかる。

■ 一般的な試験の実施要綱のほとんどは消火する試験液としてヘプタンを使用している。このため、「新しい泡薬剤は他の製品にも効果があるのか?」という質問がある。試験結果によると、一部のF3泡薬剤は油汚染度を示す油ピックアップ率が非常に大きい。これは油による汚染によって泡薬剤の性能が低下することを意味する。このような泡薬剤は製品として使用できるのであろうか? また、このような泡薬剤を泡の上にさらに投入しなければならないとき、どのような影響があるのだろうか?

■ BPなどの世界の主な石油会社のプロジェクトから発足した“LASTFIRE” は、常圧式貯蔵タンクを模倣した小規模あるいは大規模な設備で広範な試験を実施できるようにしており、性能証明を提供することができる。LASTFIREでは、現在の泡の適用方法で泡薬剤がタンクの全領域に到達できるかどうかを評価するための流れ試験も実施している。たとえば、タンク側板の固定泡チャンバーによって形成された泡が、タンク表面火災の中央部に到達できるか? このほか、F3泡薬剤の機能を明確に把握するために、この分野で行うべき作業はまだたくさんある。

■ 泡薬剤規格NFPA 11Standard for Low-, Medium-, and High-Expansion Foam)を作成している全米防火協会(NFPA)はすでに広範囲の試験を実施しているが、さらに多くの調査を行う必要があることを認めている。全米防火協会の報告書によれば、大規模な表面火災における消火や抑制能力を見極めるために、泡の品質と吸引性能についてまだ多くの情報が必要だという。試験燃料以外の燃料での性能、非フッ素界面活性剤の適合性、泡薬剤の粘度、泡薬剤の温度による反応性などは優先度の高い課題で、はっきりさせることが必要である。

■ これまで使われてきた泡薬剤でも、それほど多くの試験は行われてきていない。しかし、誰もが環境を保護すべきで、このリスクを制御することができると考えている。この大規模な試験組織はまだやるべきことがたくさんあり、あらゆる質問に答えることはできていない。一方、オランダのロッテルダムに本拠を置くリライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミー(RelyOn Nutec Fire Academy)には、これらの問題のいくつかを調査するための施設がある。リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーは設備投資を行っており、LASTFIREEN1568 Part3Part4などの試験実施要綱に従って試験することができる。

EN1568 Part3 (低発泡の泡)による試験

■ リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーでは、欧州規格の試験用トレイ(パン)であなたが選んだ泡薬剤についてあなたが選んだ油を使用した試験を行うことができる。そして、あなたの施設で取り扱っている油での性能の比較を提供できる。これは認証試験機関の仕事ではないが、試験を実施して、特別な泡薬剤を購入しようとしている顧客に対して貴重な結果を提供することができる。

LASTFIREの実施要綱による試験

■ LASTFIREによる試験用のトレイ(テストパン)とノズルは、大規模な常圧式貯蔵タンク火災の適用を再現するよう特別に設計されたものである。試験用トレイは直径2.44mで、表面における泡の流れを遅らせるために立形バッフルが組み込まれており、適用ノズルは吸引用、半吸引用、固定注入用の3つがある。正確な適用倍率が得られるよう、吐出し量は試験前に較正が行われる。水溶性燃料(アルコール)の試験用トレイには、柔らかい間接的な適用テクニック用の立形バックボードがある。

あなたの使っている機器とあなたの選んだ泡薬剤によるシミュレーションの作成

■ あなたが選んだ泡薬剤に満足している場合にも、調達を確約する前に選んだ泡薬剤があなたの使っている泡システムで機能するかどうかを確認したいと思うだろう。試験結果では、一部のF3泡薬剤は非常に粘性が高く、予混合させるのに極めて難しいことを示している。泡薬剤はどのくらいの割合で効率的に混合できるか? 圧縮空気式消火泡の技術によって実施できるようになるか? この実際的な課題は、リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーの施設にある実務的なシミュレーターや試験用トレイで調べることも可能である。

チーム・トレーニング

■ 泡薬剤を使用する消防隊は長年にわたって経験と技量を身につけてきただろう。しかし、F3泡薬剤では、泡を有効に機能させるためには別な適用技術が必要になる。F3泡薬剤は、一般的な水性膜泡(AFFF)に対して同じ水性膜層を持っていない場合があり、油汚染度を示す油ピックアップ率が増加し、油汚染に対する耐性が低くなる場合がある。従って、泡が油に汚染されにくい泡消火技術が必要となる。これまで泡は応用技術でうまく機能していたが、今からはさらに重要になってくる。泡の品質が異なる場合、吸引式でないノズルを使用すると、どのような影響があるのだろうか? 異常事態対応者にとって事故時や事故後の対応時に安全上の問題はあるのだろうか? 安全性の問題や変更した応用技術について担当者をトレーニングさせたい場合、私どものインストラクターは、シミュレーターを使って知識や技量の隙間を埋めるようなトレーニングができるだろう。

泡消火スクール

■ 2021年に、リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーは、F3泡薬剤への移行に関する顧客の懸念に焦点を当て、解決しようという試みのために、いくつかの泡消火スクールを開催する予定である。泡薬剤メーカーは当社の施設を利用して泡の性能の説明や宣伝をすることができる。あるいは、リライオン・ニューテックは、泡薬剤の移行の全容をカバーする独立したセミナーを提供できる。あなたは泡薬剤のメーカーや供給者か? あるいは、あなたのリスクをカバーするために泡薬剤の在庫を補充するために大きな投資をしようとしている顧客か? リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーは泡薬剤の移行への取組みを手伝うことができる。

補 足

■ 日本では、有機フッ素化合物であるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を含有する泡消火薬剤は、2010年に化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により第一種特定化学物質に指定され、PFOSを含む泡消火剤の製造・輸入が禁止されている。しかし、PFOSを含む消火器や泡消火設備など既設の機器や設備等の使用は、適切な取り扱いや表示を行うことで引き続き使用が認められている。

 なお、全国の消防本部・消防署が保有しているPFOS含有泡消火薬剤については、消防庁通知(202061日)に基づき、2022年の年度末までに計画的に廃棄することとされている。

■ 日本でPFOSを含有する泡消火薬剤を使用している消防機関、空港、自衛隊関連施設、石油コンビナート等の施設を対象とした調査が環境省で行われ、その結果、全国合計の泡消火薬剤量は338.8万リットルである。なお、泡消火薬剤中のPFOS含有量は全国合計17.82トンとなる。都道府県ごとの泡消火薬剤の量は「令和2年度PFOS含有泡消火薬剤等全国在庫量調査結果(泡消火薬剤量)」を参照。

■ リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミー(RelyOn Nutec Fire Academy)は1985年に設立され、オランダのロッテルダムに本部をもち、リライオン・ニューテックが親会社で、火災や危険物に関するトレーニングなどを専門に行う会社である。本資料の筆者であるスティーブ・ワトキンス氏(Steve Watkins)は英国消防署の消防士を経験したあと、リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーでビジネス開発マネージャーとしてコンサルタントを行っている。

所 感

■ フッ素フリー泡薬剤(F3)について比較的肯定的な考えをもつ筆者(スティーブ・ワトキンス氏)であるが、「泡薬剤メーカーは、フッ素ベース泡薬剤の代替品であるF3泡を作ろうと努力している。しかし、残念ながら端的にいって容易に代替できるようなF3泡薬剤は現状では無い。つまり、F3泡にフッ素ベースの泡を反映させた試験証明書があるような場合でも、あなた方は泡薬剤を単純に交換することはできないということである」と述べている。問題点については「フッ素フリー泡薬剤(F3)の研究の重大な欠陥を浮き彫り」202110月)も参照。

■ 筆者は、「既存の泡設備をF3泡薬剤で作動させるために、適用倍率、泡薬剤の保管、プロポーショニング率、さらには消火技法も見直す必要がある」と指摘し、消火技術の専門会社リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーとしてF3泡薬剤への移行に関わる問題の解決策を一緒に探ろうという。“LASTFIRE” では、タンク側板の固定泡チャンバーによって形成された泡が、タンク表面火災の中央部に到達できるかなどのF3泡薬剤の機能について調査を続けているという。米国に多い半固定式泡チャンバーでは、外から来た消防署が保有している泡薬剤が有効に働くのだろうかなど、考えれば多くの課題がある。このような課題をすべて解決できるのだろうか。

■ 消火泡の目的は火を消すことである。消火泡をフッ素フリー泡薬剤に変更したが、消火機能が低下し、火災の消火ができず、消防隊を危険な状況にさらしたら、本末転倒である。このような状況になった場合、責任は誰(メーカー、事業所、自治体、政府)にあるのか曖昧な点が気がかりである。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Gulffire.mdmpublishing.com, Transition to fluorine-free foam – a ‘drop in’ replacement? (フッ素フリーフォームへの移行「ドロップイン」代替品?),  March  26, 2021


後 記: 欧州の消火・保安技術の専門会社リライオン・ニューテックを初めて知りました。米国では、テキサス州AMTEEXがよく知られており、このブログでも「エクソンモービルとテキサスA&M大学は消防士のための訓練を提供」(20215月)を紹介しました。リライオン・ニューテック・ファイアー・アカデミーは消火トレーニングだけでなく、エンジニアリングも業務範ちゅうのようです。これまで、どうしても米国の情報が主になり、欧州の情報はこぼれやすくなっていたように感じます。米国では、新型コロナウィルスのパンデミックでメディアの取材や情報が減ってきていますので、欧州の情報が入りやすくなっているように感じます。

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