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2020年10月30日金曜日

米国ワシントン州のアスファルト・プラントで爆発・火災、タンクへ延焼

  今回は、 20201011日(日)、米国ワシントン州ピアース郡タコマ(Tacoma)にあるガードナー・フィールド社のアスファルト・プラントで爆発・火災が起こり、アスファルト・タンクに延焼した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国ワシントン州(Washington)ピアース郡(Pierce)タコマ(Tacoma)北東部のテーラー通りにあるアスファルト会社のガードナー・フィールド社(Gardner Fields)である。

■ 発災があったのは、アスファルト・タンクを含むガードナー・フィールド社のアスファルト・プラントである。

事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20201011日(日)午前4時頃、アスファルト・プラントで爆発があり、火災となった。

■ 発災に伴い、タコマ消防署の消防隊が出動した。 消防隊が現場に到着すると、爆発音が聞こえ、大きな炎が立ち昇っていた。

■ 消防隊には、ハズマット隊のメンバーが加わった。何度も爆発があり、消防隊は何が燃えているのかを判断するため、現場から距離をおいて準備した。

■ 当初、消防隊は防御的消火戦略をとり、火災の拡大回避策をとった。

■ 火災は、70トンの入ったアスファルト・タンクから火が出た。

■ ワシントン州エコロジー局とタコマ環境部は、流出する消火水などの液が近くの海域に入らないようにするために行動した。燃焼するアスファルトは危険な化学物質を大気に放出する可能性がある。ワシントン州エコロジー局とタコマ環境部は、近くの住民にしばらく屋内にとどまるよう勧告した。

■ 住民の中には、火災から出る濃い煙が有毒ではないかと心配した。ひとりの女性は、「私はすぐに起きて窓を閉め、開いていた他の窓も閉めました。タコマ消防署のツイッターによると、火災はアスファルト・プラントで、アスファルトは石油からできているという話でした。それで、地元にどんな危険がもたらされるのか心配です」と話した。

■ 消防隊は、泡消火を始める準備として、プラント内の天然ガスと電力の供給を止めさせた。その後、消防隊は泡放射による消火活動を実施し始めた。

■ 発災現場から流れていた黒煙は上昇していて、住宅街には落下していないようだった。風は住宅街ではなく、海側に向かう風だった。

■ その後、黒煙は目に見えて減少していった。

被 害

■ アスファルト・タンクや配管などプラント内の設備が焼損した。

■ 負傷者はなく、人的被害は無かった。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因はアスファルト・タンクの供給配管とバルブの機械的な故障だとみられている。しかし、どのようにして火災が始まったかははっきりしていない。 

< 対 応 >

■ タコマ消防署の消防隊は、消火するまでに時間がかかったが、ハズマット隊(Hazmat)の支援によって環境への影響を最小限に抑えた。

1011日(日)午後の早い時間までに、火災は消された。

■ 火が消えたあと、消防隊はプラント内に残っているホットスポットを手動放水銃ですべて消した。

■ 環境保全の請負業者はこの時点でもう一度現場の状況を確認した。消火泡の混合液が流出したときのため、請負業者は、オイルフェンスを展張していた。しかし、プラントの防油堤から流出するものは無かった。

■ 火災が消火された時点で、近くの住民に屋内にとどまるよう出されていた勧告は解除された。   

■ 調査中ではあるが、事故の原因はアスファルト・タンクの供給配管とバルブの機械的な故障だとみられるという。


補 足

■「ワシントン州」(Washington)は、米国の北西端に位置する州で、人口約672万人である。

「ピアース郡」(Pierce)は、ワシントン州の西部に位置し、人口約80万人の郡である。

「タコマ」(Tacoma)は、ピアース郡の西に位置し、コメンスメント湾に面した人口約20万人の都市で、郡庁所在地である。

 なお、ワシントン州では、 202010月になって「米国ワシントン州でポンプ故障でタンクからガソリン流出」に続いて 2件目の事故である。

■「ガードナー・フィールド社」(Gardner Fields)は、アスファルトを取り扱う会社で、ガードナー・ギブソン社( Gardner-Gibson )の系列である。ガードナー・ギブソン社は道路・屋根・防水コーティング材、コーキング材、壁紙用接着材を製造・販売しており、タコマのアスファルト・プラントは、北米における13箇所の施設のひとつである。

■ 火災になったアスファルト・タンクは、70トンが入っていたという情報のほかには、タンクの大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、タコマのアスファルト・プラントには、高さは異なるが、直径が約2.5m3.7mの同じようなタンクがある。直径約3.7m×高さ約16mのタンクは容量が170KLほどである。直径約3.4m×高さ約10mのタンクは容量が90KLほどである。直径約3.0m×高さ約5mのタンクは容量が35KLほどで、直径約2.5m×高さ約5mのタンクは容量が24KLほどである。被災写真を見ると、も最も高いクラスのタンクは火災になっていないとみられる。従って、火災になったと報じられたタンクは、直径約3.4m×高さ約10m×容量約90KLの中程度に高いタンクではないでろうか。

■「ワシントン州エコロジー局」(Washington Department of Ecology)は、1970年に設立されたワシントン州の環境行政機関で、レーシーに本部があり、職員数約1,600人の組織である。水質、水源、大気、海岸線管理、有害物質のクリーンアップ、核廃棄物、有害廃棄物などの環境保全を担当しており、流出事故の対応も所管する。他の州と異なり、環境保全という名称でなく、エコロジー(生態学)という名称を使っている。

所 感

■ 今回の事故は報じられている内容だけでは状況がよくつかめず、アスファルト配管やバルブの異常があっても、火災に至る要因は思いつかない。一方、まわりが暗い朝方の被災写真では、地上付近で火炎が上がっており、当初は、アスファルトの加熱に使用する天然ガス配管で火災が起きたのではないだろうか。

 最近は、配管やポンプを起点とする爆発・火災事故が起こっている。新型コロナウイルスの所為ではないだろうが、現場の点検・検査が甘く、抜けが出ていないことを確認する必要があるように感じる。   

■ 消火活動は、つぎのような点で適切な判断をしている。

 ● ハズマット隊を出動させ、火災の燃料源を特定しようとしたこと。

 ● 爆発が数回続いており、二次災害を避けるため、最初は防御的消火戦略をとったこと。

 ● 天然ガスの供給を止めた後、積極的消火戦略をとり、泡消火を始めたこと。

 ● 消火後、プラント内に残っているホットスポットを手動放水銃で消したこと。

 一方、タコマ消防署は環境への影響を最小限に抑えたと言っているが、火災は午前4時~午後早い時間まで続いている。アスファルトという消火の困難でない液体であり、プラントの配置もアクセスが比較的容易な現場の火災に対して、消火までに10時間以上費やしたことになる。消防資機材の課題か、消火水や泡薬剤の供給課題か、発災現場で想定外のことが発生か、何か問題があったのではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    King5.com, Crews battle flames, explosions at Tacoma asphalt plant,  October 11,  2020

    Komonews.com, Cause of early morning fire at NE Tacoma asphalt plant ruled accidental,  October 12,  2020

    Powderbulksolids.com, Multiple Explosions, Fire Reported at Asphalt Plant,  October 12,  2020

    Unews.com, Mechanical Problems Likely Cause of Industrial Plant Fire,  October 12,  2020

    Industrialfireworld.com, Crews Battle Flaming Asphalt Plant in Washington State,  October 12,  2020

    Kiro7.com, Fire, explosions erupt at asphalt plant in Tacoma, causing damage,  October 11,  2020

    Ien.com, Fire, Explosions at Asphalt Plant Likely Caused by Mechanical Failure,  October 17,  2020

    Manufacturing.net, Fire, Explosions at Asphalt Plant Likely Caused by Mechanical Failure,  October 16,  2020


後 記: 今回の事故は、情報量が少ないということはありませんでしたが、メディアによって少しずつ内容が違っており、状況が今一つはっきりしませんでした。ワシントン州では、202010月になって2件目の事故です。以前、メディアが新型コロナ対応でテレワークを主体とする取材になっているため、内容が希薄になったと書きましたが、メディアだけでなく、現場も点検・検査が希薄になっていないか憂慮して、あえて所感に書きました。









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