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2020年10月25日日曜日

タイの石油精製所で機器のテストラン中にタンク爆発、死者2名

  今回は、 2020929日(火)、タイの中部にあるサムットサーコーン県にあるGRDエナジー社の石油精製所の建屋内にあるオイルタンクが爆発して、火災になり、死者が2名出た事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、タイの中部にあるサムットサーコーン県(Samut Sakhon)にあるGRDエナジー社(GRD Energy Co.)石油精製所である。サムットサーコーンは首都バンコク(Bangkok)の南西約30kmにあり、石油精製所は2か月ほど前にできたばかりで、使用済のモーターオイルを代替燃料に精製する。

■ 事故があったのは、石油精製所の建屋内にあるオイルタンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020929日(火)午前8時頃、石油精製所の建屋内で新しい設備をテストしているときに爆発が起こり、火災となった。

■ 929日(火)に新しい設備のテストを行うため、朝から社内の技術スタッフ8名が石油精製所で作業を行っていた。45歳と27歳の技術スタッフは、蒸留ユニットの隣にあったオイルタンクの前に立っていた。そのとき、爆発が起こって火災となり、火災に巻き込まれてふたりは死亡した。そのほかの技術スタッフは別な場所にいて、けがは無かった。

■ 発災は、容量800リットルのオイルタンクと蒸留ユニットの接続部で起こったとみられる。蒸留ユニットはオイルタンクの油を200℃以上に加熱するためのもので、接続部が損傷していた可能性があり、内部の圧力が爆発を引き起こしたとみられている。損傷でなく、溶接していなかったと報じているメディアもある。

■ テストランは、数週間前に設置された2台の新しいマシン(設備)について行われていた。

■ 爆発によって、幅1.5m×長さ3mの蒸留ユニットの蓋が飛び散り、建屋の屋根と壁の一部が剥がれ落ちた。

■ 発災に伴い、消防隊が消防車2台とともに出動した。

被 害

■ 爆発・火災によって2名の従業員が死亡した。

■ 石油精製所のオイルタンクなどの設備が損壊した。所有者によると、全損害額は1,000万バーツ(320,000米ドル=3,500万円) になるとみられている。

■ 設備のほか、石油精製所の建物の壁や屋根の一部が剥がれ落ちた。  

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中である。

■ 発災はオイルタンクと蒸留ユニットの接続部で起こったとみられるが、接続部が損傷していた可能性があり、内部の圧力が爆発を引き起こしたとみられている。損傷でなく、溶接していなかったという情報もある。

< 対 応 >

■ 火災は消防隊によって20分ほどで消された。 

■ 地元タイにおける事故のテレビ放送の情報はユーチューブに投稿されている。Youtubeถังเครื่องกลั่นน้ำมันโรงงานระเบิดไฟคลอกดับ 2」を参照)

補 足

■「タイ」(Thailand)は、 正式にはタイ王国で、東南アジアに位置し、人口約6,680万人の立憲君主制の国家である。首都は人口約825万人のバンコクである。

「サムットサーコーン県」(Samut Sakhon)は、タイの中部に位置し、タイランド湾に面した人口約52万人の県である。

 タイにおけるタンクの事故としては、つぎのような事例がある。

 ● 20104月、「タイで石油タンクに擲弾(てきだん)によるテロ攻撃(2010年)」

■「GRDエナジー社」(GRD Energy Co.)は、タイのクリーンエネルギー会社である。 検索すると、住所は、19/16, . พระราม 2 Khok Krabue, Mueang Samut Sakhon District, Samut Sakhon 74000 Thailandと表示されるが、このあたりに該当するような建物は見当たらないし、会社の詳細を示す情報は出てこない。報道では、この会社の石油精製所(Oil Refinery)は2か月ほど前にできたばかりで、使用済のモーターオイルを代替燃料に精製するとあり、大々的な製油所ではなく、廃油の再生設備、すなわち廃油の蒸留による燃料製造を行っていると思われる。

■ 発災した「廃油の蒸留による燃料製造装置」がどのような製造フローか分からないが、廃油をディーゼル燃料に精製する装置の例を図に示す。(この動画は、ユーチューブのDOING waste oil to diesel oil refining distillation machineを参照)

■「発災タンク」は容量800リットルのオイルタンクとあるが、常圧式円筒タンクではなく、横型の圧力タンクではないかと思う。容量からすれば、直径0.7m×長さ2mほどの容器である。被災写真の中に、鏡板が噴き飛んだ横型タンクがあるが、これが発災のオイルタンクではないだろうか。

所 感

■ 今回の事故は今一つ状況がはっきりしないが、つぎのような推測をした。

 ● 事故があったのは、廃油の再生設備、すなわち廃油の蒸留による燃料製造装置と思う。

 ● テストランの目的は2台の新しい機械だったが、運転は廃油の蒸留による燃料製造装置全体について実施されていた。

 ● オイルタンクは常圧式円筒タンクではなく、横型の圧力タンクと思う。

 ● 発災は「オイルタンクと蒸留ユニットの接続部の損傷」とある。一方、被災写真をみると、鏡板が噴き飛んだ横型容器があり、これがオイルタンクではないかと思う。このような破裂状況はオイルタンク本体(鏡板と胴体)の溶接不良ではないだろうか。

 ● 被災写真によると、横倒しになった機器が多く見られ、オイルタンクの爆発とその後の火災で被災したものだろう。建屋の壁がはげ落ち、一部の屋根が吹き飛んだ状況が見られ、爆発時の激しさがうかがえる。

■ 消火活動時間は20分ほどだったというが、これも状況がはっきりしない。消防車2台ということで、消防隊は数人ほどではないだろうか。また、公的な消防署か、会社または地区の消防隊なのかは分からない。消火活動の写真が報道されており、石油火災に対して水噴霧で対応しているようにみえるが、これは最終段階だと思われる。火災は燃料源が尽きたことで消火されたものだと思う。 

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Thethaiger.com, Explosion at new oil refinery kills 2 technicians,  September  29,  2020

      Hazardexonthenet.net, Explosion kills two at recently opened refinery in Thailand,  September  30,  2020

      Industrialfireworld.com, Explosion at Used Oil Refinery in Thailand Kills 2,  October  07,  2020

      Poandpo.com, Explosion kills two in recently opened refinery in Thailand,  September  30,  2020

      Thairath.co.th, แค่เปิด "ทดลอง" เครื่องกลั่นน้ำมันเครื่องเก่าบึม ย่างสด 2 คนงาน,  September  30,  2020

      News.thaipbs.or.th, ระทึก! ไฟไหม้โรงงานกลั่นน้ำมันเก่า เสียชีวิต 2 คน,  September  29,  2020

      Khaochad.com,ไฟไหม้โรงงานกลั่นน้ำมันทางเลือก คนงานถูกย่างสดตาย 2 ศพ คาดสาเหตุเกิดจากรอยเชื่อมทำให้ฝาถังกลั่นน้ำมันเกิดการระเบิดระหว่างการทดลองเครื่อง,  September  29,  2020


後 記: 今回の事故は、“タイの製油所でタンク爆発”という情報から、最初は屋外のタンク地区の事故だと思いました。事故写真を見て屋内事故だと分かりました。しかし、情報を整理したのですが、事故状況ははっきりしませんでした。意図的に事故を隠そうとしているのではなく、情報公開はオープンですが、理解が十分でない関係者のコメントを聞いて、理解が十分でない記者が記事を書いたという印象を持ちました。世界報道自由度ランキング2020では、タイは日本(66位)より悪い140位ですが、事故情報に限れば、被災写真を見る通り、日本よりオープンのような気がします。消防活動のノズルマンをサポートするホースマンを近くの別な工場の人がやっているのは、タイの国情を表しているのでしょうね。

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