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2019年5月24日金曜日

茨城県常総市のリサイクル廃材置き場で火災、6日間燃え続ける

 今回は、2019年5月15日(水)、茨城県常総市のリサイクル業者立東商事の中古家電製品を回収する廃材置き場で起こった火災事故を紹介します。
(写真はAsahi.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、茨城県常総市坂手町のリサイクル業者の立東商事(りっとう商事)の廃材置き場である。

■ 発災があったのは、常総市坂手町にある中古の家電製品を回収する廃材置き場である。発災当時、廃材置き場では約7,500㎡のエリアに、高さ10mほどに電子レンジや冷蔵庫が約50,000㎥積まれていた。
           茨城県常総市(枠内)と周辺地域 (写真はGoogleMapから引用)
常総市坂手町の廃材置き場周辺 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年5月15日(水)午前6時頃、廃材置き場から火が出ているのを出勤してきた従業員が見つけ、消防署に通報した。

■ 発災に伴い、消防隊が出動し、消防車15台が出て消火活動に当たった。付近には金属などの燃える臭いが立ち込め、マスクを装着した消防隊員らが消火に当たった。

■ 廃材置き場には冷蔵庫や扇風機などの家電製品が高さ10mほどに積み上げられていて、発生から5時間ほどがたっても、黒煙や炎が激しく立ち上っている。県が、現場から50mの場所で採取した空気を調べたところ、有害物質のベンゼンが環境基準を上回っていたという。しかし、現時点では、周辺の住民に健康上の影響はないとしている。

■ 火災原因はわかっていないが、常総警察署によると、発災現場は廃品となった家電や金属類を解体する場所で、敷地内に積まれていた電子レンジや冷蔵庫などから出火したとみられる。 

■ 火災発生に伴うけが人は出ていない。

■ 現場は常総市の南にある工場や農地が点在する地域で、この火事を受けて常総市は市内にあるすべての小中学校などに対して、屋外での活動を控え、窓を閉めるように通知した。近くの小学校に通う小学生24人と幼稚園児1人の合わせて25人が、登校中に煙を吸うなどして、のどや目の痛みを訴えているという。

■ 5月16日(木)から消防隊は、重機2台を投入し、廃材をかき出しながら消火活動を行っており、17日(金)も継続して作業を続行している。消火のめどは立っていないという。消防隊によると、燃えているのは廃家電などの金属くずやプラスチック類で、保管量は推定で約50,000㎥に上る。現場周辺は、終日、黒い煙と臭いが立ち込めた。現場で消火活動に従事している隊員のひとりは、「煙でマスクが黒くなり、目も痛む。気温も高いので、体力的に厳しい」と語っている。一方、近くの住民は「洗濯物を外には干さないようにしている」という。

■ 5月16日(木)、煙の影響で、目や喉の痛みを訴える児童生徒がこの日も相次ぎ、常総市で41人、隣の坂東市で39人に上った。

■ 5月17日(金)の朝の時点で、目や喉の痛みを訴える児童生徒が相次ぎ、常総市と坂東市合わせて53人に上った。 

■ 火災は続き、発生から6日目、130時間以上を経過した5月20日(月)午後6時半過ぎ、消防隊は火の勢いが収まり、これ以上の延焼はないと判断し、鎮圧したと発表した。
515日(1日目)の火災状況(まだ柵から遠い)
(写真はNews.tv-asahi.co.jpから引用)
廃材の火災と放水の状況
(写真はNhk.or.jpから引用)
               火災状況(柵内はすべて火に包まれている)
(写真はAsahi.comから引用)
(写真はAsahi.comから引用)
(写真はAsahi.comから引用)
夜の火災の状況
(写真はYoutube.comから引用)
被 害
■ 廃材置き場にあった約50,000㎥の廃家電製品が焼損した。

■ 火災に伴う煙による大気汚染があった。近くの児童・生徒など住民に目や喉の痛みを訴える被害が出た。

■ 事故に伴うけが人は無かった。住民への避難指示は出なかった。  

< 事故の原因 >
■ 火災の原因は調査中である。

■ 事故の要因は特定されていないが、敷地内に積まれていた電子レンジや冷蔵庫などから出火したとみられる。

< 対 応 >
■ 5月15日(水)午後、常総広域消防本部は、近隣広域消防本部、埼玉県、福島県防災ヘリコプター等を応援要請した。茨城県の防災ヘリコプターが定期整備に入っていたため、埼玉県などに防災ヘリコプターの応援を要請した。

■ 5月16日(木)、常総広域消防本部は、消防車両19台を投入するとともに、埼玉県、栃木県の防災ヘリコプターが前日に引き続いて加わり、空からの放水を繰り返した。
防災ヘリコプターによる消火活動
(写真はSankei.comから引用)
■ 517日(金)午前530分、茨城県広域応援隊が到着した。17日は県内16の消防本部から応援隊が入り、消防車両は20台、人員は延べ約170人に増強された。

■ 5月17日(金)、取手市消防本部は消防隊を応援に出した。同消防隊によると、火災は鎮火に至っておらず、不眠不休の消火活動が行われているという。今回の火災では、堆積している廃材の下に火が回っているため、重機で堆積物を除去して消火を行わなければならず、消火活動に時間を要しているという。
消火活動の状況 
(写真は、左;Ibarakinews.jp、右;City.toride.ibaraki.jpから引用)
■ 発災から75時間が経っても火災が収まらず、煙が広がっていることから、518日(土)、常総市は健康への影響や農作物の被害などの相談を受けるための窓口を設置した。

■ 5月18日(土)午後2時時点で、茨城県広域応援隊13隊が消火活動中である。さらに、福島県、埼玉県、栃木県の防災ヘリコプターが空中消火を行っている。出動している消防車は19台で、消火活動を行っている。

■ 茨城県県民生活環境部において大気影響調査を行っている。5月18日(土)午後2時時点で、常総保健所などの固定観測点では大気について異常はなく、移動系については15日採取分の結果に加え、16日採取分(常総市内2か所など)の分析の結果、住民への健康影響はないという。

■ 5月17日(金)、茨城県廃棄物対策課が明らかにしたところによると、2018年8月に現場にあった廃家電の保管状況が廃棄物処理法の施行規則に違反しているとして改善指導していたという。この資材置き場は野積みした廃家電などの高さを5mより低くしなければならないが、県が立入り検査したところ、実際には10mほどに達していた。茨城県の指導に対して、立東商事は、2018年9月、約7か月かけて保管量を減らすとの改善計画書を提出していた。その後、県は検査に入っておらず、2019年5月22日(水)に状況を確認する予定だったという。

■ 発生から6日目、130時間以上を経過した5月20日(月)午後6時半過ぎ、消防隊は、消火活動の結果、火の勢いが収まり、これ以上の延焼はないと判断し、鎮圧したと発表した。鎮火には至っていないため、再燃の可能性を除去するために、冷却のための放水活動等を継続している。

■ 5月20日(月)までに県内からの応援を含め、消防隊員など1,000人以上が従事し、消防車やポンプ車は延べ160台以上、ヘリコプターが13機が出動したという。

消防広域応援隊の解散式
(写真はTwitter.comから引用)
■ 5月21日(火)、火災が鎮圧したのを受け、消防広域応援隊の解散式が水海道総合体育館で行われた。地元を除く県内23の全ての消防本部で結成され、発生2日後の17日午前から消火活動に当たっていた。解散式では、常総地方広域事務組合管理者の守谷市市長が「5日間にわたる皆さんの活動で火災を鎮圧できた」と謝辞を述べ、常総市市長も「夜通し活動してくれたことに、市民も感謝している」と語った。一方、現場では、常総広域消防本部が再発火防止の放水を継続しており、鎮火まではあと数日かかる見通しである。

■ 5月22日(水)、今回の火災は改正廃棄物処理法の基準を超えて廃家電を積み上げるなど不適切な保管が被害を拡大させた可能性があることから、茨城県は県内同業他社に対する調査に乗り出した。茨城県内の同業者は約70社あり、このうち県に届け出を済ませたのは発災事業所を除く13社という。残りは保管方法の基準強化を受け、廃業を申し出たが、処分が終わっていない事業者もあるとみられる。このため、改めて約70社の確認調査に乗り出し、保管の高さや火災防止策が講じられているかなどを調べる。

■ 5月22日(水)、対応にあたった常総広域消防本部の消防長は、長引いた消火活動に対して、「燃えた量が膨大だった。消火したがれきを敷地外に運び出したかったが、出せる場所もなかった」といい、「発生当初は黒煙で全く前が見えない状態だった。その後、重機が入り、隊員たちが突入できる道を作り、一つ一つの山を重機で崩しながら放水して、冷やしたがれきを別のところによける、という作業を繰り返した」と語っている。
消火活動の状況
(写真はTwitter.comから引用)
(写真はAsahi.comから引用)
5162日目)の火災の状況
(写真はAbema.tvから引用)
5173日目)の火災の状況
(写真はNews.livedoor.comから引用)
5206日目)の火災の鎮圧状況
(写真はNewstopics.jpから引用)
5228日目)の鎮圧後の冷却作業の状況
(写真はIbarakinews.jpから引用)
補 足
■ 「常総市」(じょうそう市)は、茨城県南西部に位置し、東京都心から約50km、茨城県の県庁所在地である水戸市からは約70kmの圏内にあり、人口約60,300人の市である。

■ 「立東商事」(りっとう商事)は「リサイクル業者」としたが、メディアによっては「古物業」といい、茨城県では「集積物 雑品,プラスチック類,金属等」となっている。立東商事は株式会社の法人登録をしているが、会社の詳細は分からない。

■ 「常総広域消防」は常総地方の広域事務組合に属する広域消防で、つくばみらい市、守谷市、常総市(旧水海道市地区)を管轄地域とする。消防本部は水海道消防署内に設置されている。

油圧ショベルの例
写真Ja.wikipedia.orgから引用)
■ 今回の火災の消火活動で使用された「重機」は、映像で見ると「油圧ショベル」だとみられる。2017年12月にあった「豪州のリサイクル施設で車の燃料タンクが爆発して火災、負傷2名」で使用されたのは「エクスカべーター」(Excavator)という名称だったが、映像を見ると、同じ種類の重機である。豪州の火災事故では、「金属スラップ置き場にはいろいろな種類の材料が置かれており、その中には潜在的に燃え得る性質のものもあり、結果として燃焼したものとみられる。幸い、当該スラップ置き場は細かく区切られており、火災の消火作業にとっては若干有利な条件だった。しかし、消防隊は、一晩中、重機のエクスカべーターを使ってスクラップの山を崩しては火元を露出させて消火活動を行わなければならなかった」とあり、リサイクル施設や廃材置き場の消火活動には、油圧ショベルのような重機が必要である。

所 感 
■ 発災現場が廃品となった家電や金属類を解体する場所で、敷地内に積まれていた電子レンジや冷蔵庫などから出火したとみているようだ。通電していない電気機器からの出火はありえるのかという疑問は出る。しかし、冷蔵庫の冷媒ガスは、従来フロンが使用されてきたが、地球温暖化対策の代替フロンとして2002年以降から可燃性の炭化水素系ガス(イソブタン)が使用されているものがある。冷媒フロンは回収・適正処理の義務があるが、炭化水素系の冷媒は義務付けられていない。経年劣化した冷媒系統でイソブタンが漏れ、何らかの引火源があれば、出火する可能性は否定できない。
 また、考えにくいことであるが、廃材の中に油を拭いたウェスがあれば、酸化重合して発熱し発火する可能性はあるし、木くずなどの有機物が堆積して発酵が促進され、酸化反応が起こり、自然発火する可能性もある。廃材置き場は長年放置されてきていると思われ、自然発火物質が形成したこともありうる。 

■ さらに、冷蔵庫の断熱材発泡剤には炭化水素系のシクロペンタンが使われているものがある。近年、断熱材に代替石綿(アスベスト)材として繊維系断熱材のグラスウールやロックウールなどに代わり、さらに発泡プラスチック系断熱材が使用されるようになっている。2018年7月に起こった「多摩市の建設中のビルでウレタン製断熱材の火災、死傷者48名」のように炭化水素系の断熱材は一旦火が付くと急速に広がり、被害を大きくする。このように廃材置き場の廃材の物質をよく調べる必要のある事例といえよう。

■ スクラップ置き場の消火作業が困難だということは、「豪州のリサイクル施設で車の燃料タンクが爆発して火災、負傷2名」(2017年12月)で分かった。当事例では、最初から積極的消火戦略をとり、スクラップ置き場の下部で起こっている火災を消火するために、重機のエクスカべーター(油圧ショベル)を使ってスクラップの山を崩して火元を露出させながら対応しなければならなかった。このため、一晩中かかって17時間の消火活動を余儀なくされた。しかし、今回の廃材置き場の消火活動は鎮圧までに132時間かかっており、消防隊にとっては大変な作業だったと思う。

■ 一方、今回の廃材置き場の消火活動には、つぎのような分からない点がある。廃材置き場は日本中にあり、貴重な経験や知見は他部署に残してもらうことを期待したい。
 ● 廃材置き場の消火活動は、油圧ショベルを使用して廃材の下部にある火元を掘り出しながら消火を進める必要があると思われる。油圧ショベルの使用判断の時期や台数は適正だったか。運転者は消防隊員だったのか。今回の教訓と知見は何か。
 ● 6日間に及ぶ長期の消火活動では、隊員の休息が必要であると思われる。当初から応援要請されており、2日目(5月17日)に170名に増強されたが、消防隊の体制(編成)をどのようにとったか。また、6日間という長期になることを想定されたか。今回の教訓と知見は何か。
 ● 消火は水に頼るしかないと思われる。放水ノズルはどのようなタイプがもっとも有効だったか。高所放水車(スクアート車)は使用されたか。大容量(泡)放射砲システムの放水砲を使用すれば、有効だったか。
 ● 大量の消火水を消費することになると思われる。消火水が構外へ出ることへの排水対策はどのような方法をとったか。(消火泡でないので、水質は悪化しなかったか)
 ● 当初から防災ヘリコプターの使用を計画されていたと思われる。山火事と異なり、防災ヘリコプターの効果は薄かったのではないか。(特に初期は火災の熱風と黒煙の上を避けるように消火剤を撒くことになる)


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Asahi.com, 資材置き場の廃材燃える 児童ら25人がのどや目の痛み,  May  15,  2019
   ・Nhk.or.jp,  常総市資材置き場火災 消火続く,  May  15,  2019
    Nagoyatv.com ,  学校の屋外活動が中止に廃材置き場で火事 茨城,  May  15,  2019
    Nishinippon.co.jp, 資材置き場で家電燃え黒煙、茨城 小学生ら約20人が目や喉の痛み,  May  15,  2019
   ・City.joso.lg.jp , [速報・鎮圧報]坂手町その他火災対応状況,  May  20,  2019
    Ibarakinews.jp,  常総火災 廃家電保管で業者指導 県が昨夏、改善怠った可能性も,  May  16,  2019
    Ibarakinews.jp,  常総・廃材火災 鎮火めど立たず 24時間態勢、消火活動続く,  May  16,  2019
   ・Ibarakinews.jp,  常総・廃材火災 応援入り消火続く 夜通し活動、隊員疲弊,  May  18,  2019
    News.tv-asahi.co.jp, 茨城の廃材火災まだ消えず 有害物質の値も上がる,  May  17,  2019
   News.tv-asahi.co.jp, 廃材火災、4日目も消えず 大気中の有害物質は・・・,  May  18,  2019
   ・Tokyo-np.co.jp, 常総火災 廃家電保管で業者指導 県が昨夏、改善怠った可能性も,  May  17,  2019
   ・Headlines.yahoo.co.jp, 廃材置き場火災4日目鎮火めどたたず 茨城,  May  18,  2019
   ・News.tv-asahi.co.jp,  130時間以上が経って・・・廃材置き場の火災ほぼ鎮火,  May  21,  2019
    City.toride.ibaraki.jp, 常総市坂手町の火災応援出場,  May  20,  2019
   Ibarakinews.jp,  常総の廃材火災 広域応援隊解散 守谷市長ら謝辞,  May  22,  2019
   Mainichi.jp, 常総の火災6日目で鎮圧 鎮火まではあと数日も,  May  22,  2019
    Ibarakinews.jp,  常総火災1週間 廃材の山、消火阻む  保管不備、被害拡大か,  May  23,  2019


後 記: 今回の火災はテレビなど多くのメディアで大きく報道されました。このブロブの対象である貯蔵タンクに関係する事故ではないようでしたが、 2017年12月にあった「豪州のリサイクル施設で車の燃料タンクが爆発して火災、負傷2名」の火災事故でリサイクル施設の廃材置き場における火災事故が困難なことを理解していましたので、調べることとしました。
 調べ始めたのは、火災が鎮圧されつつある頃からですが、発災から1週間も経たないのに、インターネットでは、エラーメッセージ(「ページを表示できません」という)になるサイトが多いのにがっかりしました。日本人は「熱しやすく、冷めやすい」国民性だと言われますが、当たっているように感じます。外国の報道サイトでは、エラーメッセージが出てくるものは極めて稀です。( 「ページを表示できません」というような記事は最初からサイトに出さないからかも知れません) また、記事の内容について言えば、深みがないというか、表層的だと感じました。例えば、地元の声を記事にしたものが極端に少なかったですし、もっとも苦労した現場の消防士の記事が無かったですね。だた、東京に近いため、報道ヘリはよく飛ばされていましたが、ドローンによる映像は無かったですね。
 結局、参考になったのは、地元の茨城新聞であり、常総市のウェブサイトでした。火災が消えたので、これで終わりということでなく、今回の火災事故の教訓を残してほしいという希望で締めくくりました。


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