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2019年5月13日月曜日

米国フロリダ州のプロパンボンベ充填所で爆発・火災、負傷者1名

 今回は、2019年4月29日(月)、米国フロリダ州ハイランズ郡セブリングにあるコーサン・クリスプラント・ミズーリ社のプロパンボンベ充填所で爆発・火災があり、負傷者1名を出した事故を紹介します。
(写真はFox13news.comから引用)
 < 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国フロリダ州(Florida)ハイランズ郡(Highlands County)セブリング(Sebring)にあるコーサン・クリスプラント・ミズーリ社(Kosan Crisplant Missouri, Inc.)のプロパンボンベ充填所である。

■ 発災があったのは、ハイウェイ27号線近くのツイッティ通りにある充填所に保管していたプロパンボンベである。当充填所は2014年から稼働しており、約20人の従業員がいて、20ポンド(9kg)用プロパンボンベの充填作業を行っている。事故当時、充填所内にはプロパンボンベが6,000本あったとみられる。
ハイランズ郡セブリングのハイウェ27号線沿い付近 (矢印部が発災場所) (写真はGoogleMapから引用) 

コーサン・クリスプラント・ミズーリ社のプロパンガス充填所付近(矢印部) (写真はGoogleMapから引用)

< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019429日(月)午後215分頃、プロパンボンベ充填所で爆発があり、火災となった。充填所から炎と黒煙が上がる中、時おり、プロパンボンベが誘爆して200フィート(60m)ほどの高さへ上がり、落ちてきた。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。ポップコーンのトウモロコシ穀粒がはじけるようにプロパンボンベが空中へ高く舞い上がる中、消防隊は為す術(すべ)もなかった。プロパンボンベの誘爆は活動する消防士の安全上の支障になった。プロパンボンベ充填所の火災については防御的消火戦略として燃え尽きる戦略をとった。

■ 事故に伴い、プロパンボンベ充填所の所長が重傷を負った。当日の作業が終わった後、所長が棚卸しを実施しているときに火災が起こったという。所長は全身火傷を負い、ヘリコプターで病院へ搬送された。 

■ 道路の向かい側にモービル・ホーム(トレーラーハウス)の敷地を保有しているオーナーによれば、「ボンベが爆発し、空に飛んでいました。プロパンボンベ充填所が近くにあるため、人がこの土地を望まない理由でした。空に舞い上がったボンベが、こちら側にも飛んできました。モービル・ホームに住んでいる人はいましたが、外出する時間帯でした。それで、みんな無事だったのです」と語った。

■ プロパンボンベ充填所からの炎や熱くなって飛んだボンベが隣接する建物類に延焼した。多くのモービル・ホームの資産を破壊した。ホームのほとんどは空いていたが、3家族は避難しなければならなかった。道路の反対側には、モービル・ホームのほか、動物病院があり、消防隊は病院への延焼防止に努めた。

■ 消防署長は、「充填場の裏には、大型の貯蔵タンクが設置されていました。幸い、タンクは巻き込まれませんでした。もし、タンクが延焼していていたら、さらに壊滅的な事故になっていたでしょう」と語った。  

■ 現場から1マイル(1,600m)以内の住民たちは、火災の消火活動の間、避難したが、午後9時頃に被災しなかった住民は帰宅した。

■ 被災した建物類は17軒に及んだ。14台のモービル・ホーム、2戸の固定住居と1つの小屋である。プロパンボンベの破片は1/4マイル(400m)離れたところでも見つかった。

■ ハイウェイ27号線は午後9時まで閉鎖され、ツイッティ通りは翌朝まで閉鎖された。 

■ 当該プロパンボンベ充填所の安全記録の実績に問題なく、これまでトラブルの報告は無かった。

■ 多くの住民は、プロパンボンベ充填所が住宅地の近くで設置許可されたことに不満を表している。一方、コーサン・クリスプラント・ミズーリ社は、この充填所が厳格な安全手順を受けて設置されており、州法および現地の法令に準拠していると述べている。

■ 事故の状況は米国のメディアが報道しており、ユーチューブにも投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。
 ● YouTube「Fireat Propane Warehouse in Sebring」(2019/04/29)

被 害
■ プロパンボンベ充填所が火災で損壊した。

■ 近隣のモービル・ホームなどの建家に延焼して、17棟の被害が出た。また、火災時に1マイル(1,600m)以内の住民が避難した。

■ 事故に伴う負傷者が1名出た。
(写真はHazmatnation.comから引用)
(写真はWflaorlando.iheart.comから引用)
(写真はWtsp.com.から引用)
(写真はWtsp.comから引用)
(写真はWtsp.comから引用)
(写真はFox13news.comから引用)

< 事故の原因 >
■ 火が出た原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 火災が消えた後、消防隊は現場に残り、ホットスポットの冷却を続けた。

■ 原因究明のため、430日(火)、4名の捜査官が現場に立ち入り調査を行った。施設の破壊が激しく、発災箇所を特定できず、調査が続けられた。危険区域の評価を行うとともに、まだ危険な状態にある10本のプロパンボンベをただちに取り外し、管理区域で安全に燃焼させた。
(写真はWtsp.comから引用)
ホットスポット(右は熱画像)
(写真はSmfr.comから引用)
          火災後のプロパンボンベ充填所全景 (写真はSmfr.comから引用)
ドローンによる上空からのプロパンボンベ充填所全景
(写真はsmfr.comから引用)
火災を受けなかったプロパン貯蔵タンク
(写真はBradenton.comから引用)
爆発して飛んだプロパンボンベや破片
(写真はFox13news.comから引用)
(写真はSmfr.comから引用)
モービルホーム側の被災状況
(写真は左;Wfla.com 右;Yoursun.comから引用)
補 足 
■ 「フロリダ州」(Florida)は、米国南部に位置し、メキシコ湾と大西洋にはさまれるフロリダ半島の全域を占め、北はジョージア州とアラバマ州に接しており、比較的温暖で人口約1,880万人の州である。州都はタラハシー (Tallahassee)である。
 「ハイランズ郡」(Highlands County)は、フロリダ州の中央部に位置し、人口約99,000人の郡である。
 「セブリング」(Sebring)は、ハイランズ郡の西部に位置し、人口約10,500人の町である。
              フロリダ州と周辺  (写真はGoogleMapから引用)
■ 「コーサン・クリスプラント・ミズーリ社」(Kosan Crisplant Missouri, Inc.)は、プロパンガスのボンベ充填を行う会社で、外資系企業である。液化ガス産業を展開しているデンマークのコーサン・クリスプラント社(Kosan Crisplant)の系列会社と思われる。セブリングの充填所は2014年から稼働しており、約20人の従業員がいて、20ポンド(9kg)用プロパンボンベの充填作業を行っている。
 なお、コーサン・クリスプラント社の液化ガスの充填設備については、ユーチューブ(YouTube「Flexspeed,HPCL Gas Filling Plant, Oct 2010」)で紹介されているが、セブリングの充填所で採用されているかは分からない。

■ プロパンガス充填所における事故例としては、つぎのような事例がある。
 ● 「LPガス充てん所においてボンベに過充填したプロパンの液のままの放散による大爆発」(1986年5月) プロパンガスの充填中、過充填をしたため、ボンベを横倒して弁を開き大気放出した。放出ガスが着火し、漏出ガスが燃え続けて、付近にあった充填済みボンベを熱し、誘爆し、大災害になった。  
 ● 「LPG工場におけるボンベ残液の室内放散による爆発とボンベの破裂による火災の拡大」(1988年8月) 充填所において、ボンベの検査のため、ボンベに残ったLPGの液とガスの回収作業を行っていた。その作業が集中したため、室内に放出したため、電気火花などで着火爆発し、充填所の他のボンベに誘爆して被害が拡大した。

■ 「モービル・ホーム」(Mobile Home)は、日本ではトレーラーハウスという和製英語の方が一般的である。元来、米国でハイウェイを利用した旅行から始まったといわれ、日本でもキャンピングカーとして富裕層の乗り物で知られており、車のない豪華なものも作られている。
 一方、近年、米連邦政府が公営住宅への補助金を打ち切った1980年代以降に、低所得者層の間で広まり、今でも補助金の交付を受けない住宅としての利用者は全米で840万人以上いる。このほか、いろいろな理由でモービル・ホームに暮らす人は多く、米国では2010年代に推定2,000万人といわれる。老朽化したモービルホームは、住宅よりも安価に入手することが可能であるため、現在では、貧困層の象徴とされている一面があるのも米国の実情である。
いろいろなモービル・ホームの例
(写真はEn.wikipedia.org Balatontourist.hu Kafgw.comから引用)
セブリングのプロパンボンベ充填所の向かい側にあるモービル・ホームのパーク(事故前)
(写真はGoogleMapのストリートビューから引用)
所 感
■  今回の事故は、何らかの原因でプロパンボンベからガスが漏洩して、室内に滞留し、着火して火災になったものとみられる。ほかのプロパンボンベが誘爆して、さらに構外のモービル・ホーム(トレーラーハウス)などの建家に延焼したものである。
 日本で起きたLPガス充てん所においてボンベに過充填したプロパンの液のままの放散による大爆発」「LPG工場におけるボンベ残液の室内放散による爆発とボンベの破裂による火災の拡大」の事故のように過充填や残存ガスの放出と違って、ボンベの充填作業は行っていない時間帯らしいので、プロパンボンベの部品の故障や損傷で漏れたものではないだろうか。ガス検知が発報していると思われるが、様子を見に行った所長が爆発に遭遇して重度の火傷を負ってしまったのだろう。
 プロパンガス充填所の火災事故では、ボンベの漏れの火災がほかのボンベの誘爆に至って、被害が拡大することを示す事例である。

 プロパンボンベ充填所の火災は、ボンベの誘爆による消防士の安全保護のため、防御的戦略として燃え尽きることを選択し、近隣のモービル・ホームや動物病院の延焼防止に努めたとみられる。この選択は妥当だったと思う。プロパンボンベが漏れて火災となった場合、プロパンガスの火を消してしまうと、ガスが放散して再着火して被害が大きくなる恐れがある。
 プロパンボンベではないが、プロパンタンクの消防活動訓練に関するユーチューブの動画(Youtube「propanetank fire」(2011/10/26))を紹介する。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  Hazmatnation.com, Fire at Propane Warehouse Destroys 17 Buildings; Seriously Injures One,  April  30,  2019
    Wfla.com,  Fire at Sebring Propane Warehouse Destroys 17 Buildings, Seriously Injures Worker,  April  30,  2019
    Abcactionnews.com, Propane Warehouse Fire Spreads to Several Mobile Homes in Sebring, One Person Airlifted to Hospital,  April  29,  2019
    Fox13news.com, Propane Warehouse Catches Fire in Highlands County,  April  29,  2019
    Yoursun.com, Propane Fire Cause Unknown,  May  07,  2019
    Fox13news.com, Massive Propane Warehouse Fire Gutted Mobile Homes; Cause under Investigation,  April  30,  2019
    Wflaorlando.iheart.com, One Hurt, 16 Homes Destroyed in Sebring, Florida Inferno,  April  30,  2019
    Bradenton.com, Manatee Firefighters Help Put out Sebring Propane Warehouse Fire That Destroys Several Homes ,  May  02,  2019
    Wnky.com,   Massive Propane Fire Destroys Florida Homes,  April  30,  2019
    Wwlp.com,   Massive Propane Fire Destroys Florida Homes,  April  30,  2019
    Smfr.com, Hazmat Team is Deployed to Highland County to Assist Highland County Fire Rescue on a LPG Storage Fire ,  May  01,  2019



後 記: 米国フロリダ州の事故を紹介するのは初めてです。フロリダ州といえば、豪華別荘や観光地で有名ですが、原油・天然ガス油田や石油産業が少なく、タンク事故が無いためでしょう。プロパンボンベの事故を紹介するのも初めてで、米国でプロパンボンベ充填所があるんだって意外に思いました。油田や石油産業がないことと関係がありそうですね。
 また、今回の事故に関連して、モービル・ホーム・パークといってモービル・ホームを貸したり、ホームを設置する場所を提供する不動産業があることを初めて知りました。米国の映画を見ていると、モービル・ホームで暮らす人の場面が出てくることがありますが、これまで気にしたことはありませんでした。今回のフロリダ州で起こった火災の被害者であるモービル・ホームの住民は富裕層の人ではないようです。2007年の住宅バブル崩壊をきっかけにしたリーマン・ショックの影響を感じる事例でした。

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