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2018年1月29日月曜日

豪州のリサイクル施設で車の燃料タンクが爆発して火災、負傷2名

 今回は、2017年12月13日(水)、豪州クイーンズランド州ケアンズにあるシムズ・メタル・マネジメント社のリサイクル施設の金属スクラップ置き場で廃車の燃料油タンクが爆発し、火災となった事例を紹介します。
(写真はCairnspost.com.auから引用)
 < 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、豪州(Australia)クイーンズランド州(Queensland)のケアンズ(Cairns)ポートスミス(Portsmith)にあるシムズ・メタル・マネジメント社(Sims Metal Management)のリサイクル施設である。

■ 発災があったのは、コンポート通り沿いにあるリサイクル施設のヤードにあった金属スクラップ置き場である。
ケアンズ市コンポート通り沿いにあるシムズ・メタル・マネジメント社(Sims Metal Management)のリサイクル施設周辺 (矢印が発災場所)     (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年12月13日(水)午前11時50分頃、シムズ・メタル・マネジメント社のリサイクル施設で爆発があり、金属スクラップ置き場が火災になった。施設からは有害なガスを含むおそれのある真っ黒い煙が流れた。

■ 事故に伴い、ふたりの負傷者が出た。ケガの程度は軽いといわれたが、41歳の男性は病院へ搬送され、治療をうけた。このほか、煙を吸って気分が悪くなった人が1名おり、病院に搬送された。

■ 爆発が起ったときに事務所のドアの後ろで作業していた人の話によると、事務所の窓のベネチアン・ブラインドが吹き飛ばされ、怖かったといい、現場で起こっていることが想像できたので、すぐに避難したという。周辺の会社にいた人々も避難した。

■ 発災に伴い、消防隊が出動し、8台の消防車とともに消火活動に従事した。

■ 警察は緊急事態を宣言し、近くの住民には、現時点では室内にいて、煙が入ってこないようにドアを閉め、屋外に出ないよう注意喚起した。また、呼吸が苦しいと感じた人はただちに緊急通報するよう指導した。一方、クイーンズランド消防・救助局は周辺地区の通りで大気(空気質)のモニタリングを行った。同機関は科学専門担当官とハズマット隊と連携して、地域に及ぼす煙の悪影響の有無について監視した。

■ 金属スラップ置き場にはいろいろな種類の材料が置かれており、その中には潜在的に燃え得る性質のものもあり、結果として燃焼したものとみられる。幸い、当該スラップ置き場は細かく区切られており、火災の消火作業にとっては若干有利な条件だった。 しかし、12月13日(水)午後6時の時点でも、火災が続いており、大量の煙が発生した。

■ 消防隊は、一晩中、重機のエクスカべーターを使ってスクラップの山を崩しては火元を露出させて消火活動を行わなければならなかった。

■ 消防隊の消火活動は12月14日(木)午前5時まで行われた。

■ 発災が起こる前に、1台の車両がスクラップ置き場で移動していたという。シムズ・メタル・マネジメント社によると、廃車を押しつぶしたときに、車の燃料タンクに残っていたガソリンがわずかに漏れて、何らかの発火源で引火した可能性があるとみている。 
(写真はChirnspost.com.auから引用)
(写真はcairnspost.com.auから引用)
(写真はcairnspost.com.auから引用)
被 害
■ 事故に伴って負傷者が2名出た。

■ 住民への避難指示は出されなかったが、家のドアを閉めて室内にいるよう注意喚起が出された。

■ 金属スクラップ置き場が焼損した。 損害額は分かっていない。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は特定されていないが、廃車を押しつぶしたときに、車の燃料タンクに残っていたガソリンに何らかの発火源で引火・爆発したとみられる。

< 対 応 >
■ 発災時の煙はケアンズ地域評議会の部屋から見えた。議員のひとりは、音は聞こえなかったが、大量の煙が流れていくのがはっきりと見えたといい、撮影した写真を公開した。 
ケアンズ地域評議会から見えた火災の状況
(写真はNews.com.auから引用)
補 足
■ 「豪州」(オーストラリア)は、南半球に位置し、正式にはオーストラリア連邦で、人口約2,400万人の国である。オセアニアに属し、オーストラリア大陸本土、タスマニア島のほか多くの小島から成る。
 「クイーンズランド州」は、豪州の北東部に位置する州で、人口約503万人の州である。
 「ケアンズ」(Cairns)は、クイーンズランド州の北東部にあり、ヨーク岬半島の付け根付近に広がる珊瑚礁に面する港湾都市で、人口約150,000人である。 
豪州の各州の位置   (図は2m.biglobe.ne.jp から引用)
■ 「エクスカべーター」(Excavator)は、本来、掘削用重機であるが、解体工事分野でも押しつぶしなどの作業に使用している。また、解体専用の機種も製造されている。今回の事例では、消火活動時の写真で使用された機種が分かる。   

所 感
■ 2017年3月に起った「豪州の自動車解体施設でLPG燃料タンクによる火災」によく似た事故である。
 同事故への所感では、「解体作業がどのような工程をとられているか分からないが、かなり荒い作業を行っていたという印象をもつ。しかし、燃料油の場合、燃料タンクからの油の抜き取りは比較的容易であるのに対して、 LPG燃料タンクでは残量が分かりにくい上にLPGの抜き取り(大気放散でなく)はむずかしい。この観点からすれば、LPG自動車の解体作業における盲点だったように思う」と書いた。
 しかし、今回の事故は、起こりにくいはずの燃料油のタンクで発生したとみられる。約8か月前に同じ豪州で類似事故が起こっているのである。事例が活かされない典型的な例だといえる。

■ スクラップ置き場の消火作業が困難だということが分かる事例である。前回は、LPG燃料タンクがどのくらいの数あるかわからない状況から、当初は火災拡大を防ぐ冷却を主とした防御的消火戦略がとられ、その後、爆発がおさまった段階で積極的消火戦略がとられたとみたが、今回は、最初から積極的消火戦略をとっている。しかし、スクラップ置き場の下部で起こっている火災を消火するために、重機のエクスカべーターを使ってスクラップの山を崩して火元を露出させながら対応しなければならなかった。このため、一晩中かかって17時間の消火活動を余儀なくされ、消防隊にとっては大変な作業だったと思う。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Abc.net.au, Petrol Tank Explosion in Cairns Metal Recycling Plant ‘Blew the Blinds off‘,  December  13,  2017
    ・ Dailymail.co.uk, Petrol Tank Explodes at Cairns Metal Scrapyard - Injuring Two People and Sending Thick Black Plumes of Poisonous Smoke into the Sky,  December  13,  2017
     ・Cairnspost.com.au, Spark from Pieces of Metal being Stacked Suspected Cause of Blast and Fire at Sims Metal in Cairns,  December  14,  2017
   ・Mypolice.qld.gov.au, Emergency Declaration due to Industrial Fire in Cairns,  December  13,  2017
     ・9news.com.au, Three Injured after Fiery Explosion Rocks Cairns,  December  13,  2017
     ・Tweeddailynews.com.au, Fuel in Car Suspected of Sparking Metal Yard Blast,  December  14,  2017


後 記: この事故情報に最初に接したとき、リサイクル施設に設置されていたガソリンタンクの爆発・火災だと思いました。しかし、そうではなく、廃車の燃料用タンクで、以前紹介した事例の類似事故だとわかりました。類似事例が起こっていながら、事故防止に活かされていません。情報を調べていて感じたのは、豪州がおおらか(らしい)国ということです。おおらかさは結構ですが、事例は活かしてもらいたいですね。
 ところで、前回のときは貯蔵タンクの事故が無かった(情報が聞こえてこないというのが正しい)ことから、少し異質ですが、紹介することとしました。不思議なことに、今回も貯蔵タンクの事故情報を聞かない状況です。相関はないと思いますが、どうなんでしょうか。まあ、貯蔵タンクの事故が無いということは良いことではあります。


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