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2018年7月29日日曜日

米国ニューメキシコ州の油井用貯蔵施設で爆発・火災、死傷者2名

 今回は、2018年7月18日(水)、米国ニューメキシコ州エディ郡ラビングにあるWPXエネルギー社の油井関連のタンク施設で起こった爆発・火災事故を紹介します。
(写真はZehllaw.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国ニューメキシコ州(New Mexico)エディ郡(Eddy County)ラビング(Loving)にあるWPXエネルギー社(WPX Energy Inc.)の施設である。 WPXエネルギー社は、オクラホマ州タルサを本拠にした石油・天然ガスの掘削・生産会社であり、ニューメキシコ州には70名の従業員がおり、ペルミアン盆地での事業に携わっている。

■ 発災があったのは、ラビング郊外のリファイナリー通りにある油井関連のタンク施設である。
ラビング郊外リファイナリー通り付近(四角な場所が油井)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年7月18日(水)午後12時45分頃、ラビングから東へ数マイル(数km)離れた油井関連のタンク施設で爆発・火災が起こり、施設内は危険な状況となった。

■ 発災に伴い、午後1時頃に緊急対応部隊が招集された。

■ 施設には11基のタンクがあった。火災によって施設周辺に近づくことができないほどだった。施設には、抽出作業による塩水処理井、注入ポンプ、貯蔵タンクが含まれている。

■ 事故に伴い、1名が爆発によって死亡し、別な作業員1名が火傷で負傷した。被災した作業員は請負会社の従業員だとみられる。

■ 施設担当者によると、設備から少なくとも1マイル(1.6km)の地区では安全が確保されているという。しかし、同日午後4時頃まで火災は消火できていなかった。タンクはすべて火災によって損壊した。

■ 事故当時、油井の掘削作業は実施していなかった。11基のタンクのうち、8基は油井からの塩水を保持していた。2基が油を保有し、もう1基は油分離ユニットの設備だった。すべての油井は遠隔地から操作され、7月18日(水)に停止され、その晩はその状態で保持された。

被 害
■ 火災に伴い、油井用貯蔵施設が損壊した。貯蔵施設には、油タンクのほか塩水タンクなど11基が被災したとみられる。

■ 事故に伴い、死者1名、負傷者1名が出た。 

< 事故の原因 >
■ 爆発の原因は、調査中である。

< 対 応 >
■ 出動した消防隊員など緊急対応人員の人数や活動の詳細は分からない。

■ WPTエナージー社は、火災原因を特定するため、地元関係機関と米国労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration)と協力している。

補 足
■ 「ニューメキシコ州」(New Mexico)は、米国南西部に位置し、北はコロラド州に接し、東側にはオクラホマ州とテキサス州、西側はアリゾナ州、南側はメキシコとの国境に接する人口約206万人の州である。ニューメキシコ州の原油と天然ガスの生産は米国で第3位である。パーミアン盆地(ミッド・コンティネント油田の一部)とサンフアン盆地が州内に掛かっている。特に、最近では、液化天然ガスの生産が好調である。
 「エディ郡」(Eddy County)は、ニューメキシコ州の南東部に位置し、人口約57,000人の郡である。
 「ラビング」(Loving)は、ラビング郡の中央部に位置し、人口約1,400人の村である。

 なお、 ニューメキシコ州エディ郡では、昨年、今回と同じような事故が起こっている。
               米国ニューメキシコ州の位置    (図はGoogleMapから引用)
■ 「WPXエネルギー社」(WPX Energy)は、2011年に設立され、オクラホマ州タルサを本拠にした石油・天然ガスの掘削・生産会社である。WPXは、Williams Production and Explorationからとっている。従業員は約650名である。
 WPXエネルギー社はウェブサイトを保有しているが、今回の事故に関しては何も発表していない。
WPXエネルギー社の石油・天然ガス掘削生産の例
(写真はWpxenergy.comから引用)
所 感 
■ 今回の事故は、状況や原因がはっきり分からないが、昨年の「米国ニューメキシコ州の石油施設で爆発・火災、死者3名」と類似の事故であると思われる。
 米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」、すなわち、
   ①火気作業の代替方法の採用  ⑤着工許可の発行
   ②危険度の分析        ⑥徹底した訓練
   ③作業環境のモニタリング   ⑦請負者への監督
   ④作業エリアのテスト 
の7つの教訓が活かされていない。死者が出ているにもかかわらず、WPXエネルギー社の冷めた対応に違和感を覚える事例である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Usnews.com,  2 People Injured in Battery Tank Fire in Southern New Mexico,  July  18,  2018
    ・Hazmatnation.com,  2 Injured after Refinery Tank Battery Fire in New Mexico,  July  18,  2018
    ・Currentargus.com,  One Dead in Tank Battery Fire near Loving,  July  18,  2018
    ・Zehllaw.com, Oilfield Worker Tragically Killed at WPX Energy Permian Basin Refinery in New Mexico,  July  18,  2018
    ・Isssource.com , 1 Killed, 1 Hurt in NM Battery Tank Blaze,  July  18,  2018



後 記: 米国ニューメキシコ州のタンク事故の情報を紹介するのは、昨年に続き、2回目です。前回の後記で、「今回、3名の死者を出した事故の割に、メディアによる事故情報の中身が薄いと感じます。(中略) ただ、最近感じるのは、(米国の)メディアの体制や組織が弱体化しつつあるのではないかという危惧です」と述べました。今回は、この危惧が増したと感じます。前回は被災写真があったので、事故の状況が伺えますが、今回は遠くで煙の出ている写真が一枚だけです。
 さらに、多くのメディアが採用しているAP通信社の情報が正確でないということです。情報は、「製油所のタンク火災」、「負傷者2名」、「6基のタンクが火災」 というような内容です。WPXエネルギー社のウェブサイトでも、何も発表されていません。負傷者だけ(実際は1名死亡)だと大したことはないと思ったのでしょうか。米国は、現在、石油・天然ガス業界が活況を呈しているといいます。「経済最優先」になってしまった米国を見ているように感じました。

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