(写真はKhou.comから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)チェンバース郡(Chambers
County)ビーチ・シティ(Beach City)にある石油施設である。石油施設はヒューストン(Houston)から約48km離れたところに当たる。
■ 発災があったのは、石油施設に設置されている容量400バレル(64KL)の原油タンクである。タンクはグラスファイバー製だった。
チェンバース郡ビーチ・シティ付近 (矢印は発災した石油施設)
(写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年5月12日(金)午前3時30分頃、石油施設に落雷があり、原油タンクが火災になった。当時、雷を伴った嵐がヒューストン地域を通過していた。
(写真はTwitter.comから引用)
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■ 4基あるタンクのうち少なくとも3基のタンクが火に包まれた。2基のグラスファイバー製タンクが火災によって溶け、内部の油が流出した。しかし、流出した油は施設内に留まり、構外に出ることはなかった。
■ 住民のひとりは、「窓の外を見たら、高くて大きい炎が我が家に迫っているようでした。私たち家族はびくびくでした」と語っている。
■ タンク火災の発生によって、午前4時、発災場所から約半マイル(800m)以内にある住宅に避難指示が出され、約100世帯が避難した。避難所としてはビーチ・シティ・コミュニケーション・センターが当てられた。
チェンバース郡消防保安官によると、火炎が立ち昇り、黒煙が空に舞い上がる中で、空気中に毒性の成分が含まれることを懸念したという。ボランティア型消防隊は迅速にその旨を戸別に伝えてまわった。なお、ビーチ・シティは約2,500人の町である。
■ 発災に伴うケガ人は出なかった。
■ 火災は発災から3時間を経た頃に封じ込めが見え始めた。このため、出されていた避難指示は夜が明けた午前7時頃に解除された。最終的に、火災はちょうど正午に鎮火した。
被 害
■ 爆発・火災によって施設内の原油タンクが複数基焼損した。タンク内の原油が焼失した。被害の範囲や程度は明らかでない。
■ 事故に伴う負傷者は無かった。近くの住民100世帯が避難した。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は落雷による貯蔵タンクの可燃性ガスへの引火とみられる。
< 対 応 >
■ 火災発生に伴い、ボランティア型消防署から消防隊が出動した。
■ 当局は、発災場所から約半マイル(800m)以内にある住宅に避難指示を出すとともに、環境モニターを設置し、大気質を計測した。
(写真はKhou.comから引用)
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(写真はKhou.comから引用) |
(写真はKhou.comから引用) |
(写真はKhou.comから引用) |
(写真はKhou.comから引用) |
補 足
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,700万人である。
「チェンバース郡」(Chambers
County)は、米国テキサス州東南部のメキシコ湾岸地域に位置し、人口約35,000人の郡である。
「ビーチ・シティ」(Beach
City)は、チェンバース郡の西部に位置し、その名のとおり海に面した細長い面積を有し、人口約2,500人の町である。
テキサス州チェンバース郡
(図はWehitoil.com
から引用)
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■ 「発災タンク」は容量64KLという情報がある以外、施設保有者を含めて詳細はわかっていない。容量から推定すれば、直径3~4m×高さ5~9mクラスのタンクと思われる。グーグルマップで石油施設を見ると、隣接するプラントはあるが、被災したタンク群は写っていないので、最近になって設置されたものとみられる。
報道では、「4基あるタンクのうち少なくとも3基のタンクが火に包まれた」とあるが、発災写真を見ると、防油堤の広さから設置されていたタンクは5~6基あったと思われる。また、火災制圧後に損壊せずに残っているタンク3基はグラスファイバー製でなく、鋼製と思われる。これらのことから、設置されていたタンクは5基で、うち2基がグラスファイバー製で熱によって損壊し、ほかの3基の鋼製タンクが残ったものとみられる。
発災した石油施設の周辺 (被災タンク箇所は矢印部であるが、写っていない)
(写真はGoogleMapから引用)
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火災制圧後の石油施設 (写真はKhouから引用)
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所 感
■ 発災を知って、今年もテキサス州における落雷によるタンク火災の時期を迎えたというのが第一印象である。
これまでの事例から推測すれば、石油施設は原油または天然ガスの生産設備とみられ、発災はグラスファイバー製の油混じり塩水タンクで起ったものではないだろうか。グラスファイバーは熱で損壊し、タンクに入っていた原油が一気に放出されて堤内火災となったものと思われる。最近の米国における油井施設の落雷によるタンク火災の典型的な例だといえる。
■ 小型タンクの火災であれば、住民が避難するまでには至らないと思うが、堤内火災になれば、火災面積の広い大きな火災となり、夜であれば、さらに大規模な火災の印象を受け、避難指示を出すことになったとみられる。
消火活動に関する情報はほとんどないが、初動から積極的戦略がとられたと思う。内陸地にある石油施設では、消火水源を確保する課題があるが、当該施設は比較的海に近く、海水を使用すれば、水源確保の問題は無かっただろう。グラスファイバー製タンクは溶けて形が無くなってしまっているが、鋼製と思われるタンクは損壊を免れており、消火活動はうまく展開されたと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Khou.com,
Lightning Caused Tank Fire out in Beach City,
May 12, 2017
・Theweathernetwork.com, Lightning Sparks Fire at Texas Oil Plant,
Forces Evacuations, May 12,
2017
・Usnews.com, Texas Oil Storage Tank Fire Forces
Evacuations, Nobody Hurt, May 12,
2017
・Tankstoragemag.com, Homes Evacuated after Texas Oil Storage Tank
Fire, May 17,
2017
・Abc13.com, Evacuation lifted after tank farm fire in
Beach City, May 12, 2017 click2houston.com
・Click2houston.com,
Evacuation order lifted in Beach City after oil tank fire, May 12,
2017
後 記: 今回のタンク事故情報では、上空からの映像がありました。ヘリコプターからのものではないと思われますので、ドローンによる撮影でしょう。火災が制圧されていますので、時間は昼前でしょう。準備が整わなかったのか、夜(夜明け前)の撮影は避けたのかわかりませんが、上空からの映像は状況を俯瞰でき、語られていない情報を伝えてくれます。この映像によって発災場所が地図上で特定できました。最近、いろいろなテレビ番組でも、ドローンによると思われる映像が使われてきており、広く普及していることを感じますね。
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