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2015年7月3日金曜日

中国南京市の化学プラントの爆発によって貯蔵タンクへ延焼

 今回は、2015年6月12日、中国江蘇省南京市にあるダイナミック(南京)ケミカル工業社の化学プラントのエポキシエタン装置で爆発が起こり、隣接していたアルコール用タンクに引火して火災となった事故を紹介します。
(写真はEn.peaple.cn から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、中国江蘇省(こうそしょう)の省都である南京市(なんきんし)にあるダイナミック(南京)ケミカル工業社(Dynamic Nanjing Chemical Industry Co.)の化学工場である。
 ダイナミック(南京)ケミカル工業社は、香港の投資会社であるダイナミック・インターナショナル・エンタープライズ社(Dynamic International Enterprises Limited)が所有している。

■ 発災したのはエポキシエタン装置で、アルコール用タンクが隣接していた。アルコール用タンクが6基あり、貯蔵容量はいずれも1,000KLだった。
              江蘇省南京市の化学工業地域付近   (写真はグーグルマップから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2015年6月12日(金)午後9時15分頃、エポキシエタン装置で爆発が起った。この爆発によって、隣接していた貯蔵容量1,000KLのアルコール用タンク6基のうち、3基のタンクに引火して火災となった。

■ 目撃者によると、最初に爆発した後も、数回の爆発があったという。

■ 火災発生に伴い、地元消防署の消防隊が出動し、火災の拡大防止に努めた。

■ 消防隊は、6月13日(土)午前2時55分、火災を制圧し、消火させることができた。その後も、消防隊はタンクを消火用水による冷却を続けた。

■ 当局によれば、ダイナミック・ケミカル社の従業員4名が軽いやけどを負い、病院に搬送され、治療を受けたという。

■ 地方政府の環境保全部署によると、爆発・火災が環境汚染へ影響する要因にならないと言っている。

事故による被害
■ 当初、作業員は爆発後に安全な場所に避難したと報じられたが、ダイナミック・ケミカル社の従業員に4名の負傷者がいたことが分かった。

■ 爆発によって、貯蔵容量1,000KLのアルコール用タンク6基のうち、3基のタンクが被災した。エポキシエタン装置で爆発が起っており、装置内の機器類に損傷があるとみられるが、詳細は不明である。

■ 爆発・火災による大気への環境汚染について深刻な影響は無かったとみられる。

< 事故の原因 >
■ エポキシエタン装置の爆発原因およびタンクへの延焼原因は分かっていない。

< 対 応 >
■ 事故に伴い、地元消防署が出動し、消防隊による消火活動が行なわれた。出動した消防車は少なくとも30台以上で、消防士は200名以上だった。

(写真はEn.peaple.cn から引用)
(写真はEn.peaple.cn から引用)
(写真はRinf.com の動画から引用)
(写真はRinf.com の動画から引用)
補 足 
■ 「江蘇省」 (チャンスー ション/こうそしょう)は、中国東部にあり、人口約7,800万人の省である。江蘇省は長江の河口域であり、黄海に面している。
 「南京」(ナンジン/なんきん)は、江蘇省の西に位置する省都で、人口約335万人の中華人民共和国の副省級市である。古くから長江流域・華南の中心地で、かつては三国・呉、東晋、南朝の宋・斉・梁・陳、十国の南唐や明といった王朝や南京国民政府の首都であった。14世紀から15世紀にかけて、世界最大の都市であった。
(写真はグーグルマップから引用)
■ 「ダイナミック(南京)ケミカル工業社」(Dynamic Nanjing Chemical Industry Co.)は 2004年に設立され、ハイテク素材とファイン・ケミカルに特化した化学会社で、グリコールエーテル系溶剤の生産では中国最大の会社であるといわれている。エポキシエタン、グリコールエーテルなどを製造している。

■ 「エポキシエタン」(Epoxy ethane)は、エチレンオキシド (Ethylene oxide)や 酸化エチレン (Ethylene oxide) とも呼ばれる有機化合物の一種で、化学式は C2H4O、分子量 44.05 である。一般にエポキシエタン(酸化エチレン)はエチレンから製造される。
 エポキシエタンは引火性の高いガスで、漏洩ガス火災の場合、漏洩が安全に停止されない限り、消火せず、供給源を遮断することが肝要である。それが不可能でかつ周辺に危険が及ばなければ、燃え尽きさせる。消火のする場合は、粉末消火薬剤、水溶性液体用泡消火薬剤、水噴霧、二酸化炭素を用いる。水を噴霧して圧力容器を冷却する。凍るおそれがあり、漏洩部や安全装置に直接水をかけてはならない。
 エポキシエタン(酸化エチレン)装置の爆発事故は、つぎのような事例がある。
  ● 1997年6月、「A社の施設でのエチレンオキシドによる爆発」(失敗事例データーベース)

■ 発災タンクは貯蔵容量が1,000KLである。タンク仕様は分からないが、直径11m×高さ11mクラスのタンクと思われる。

所 感
■ 発災は、エポキシエタン装置において何らかな要因でガス爆発が起こり、近くにあったグリコールエーテル装置のアルコール用タンクに引火したものと思われる。
 印象としては、コンパクトなプラント配置であり、装置で爆発や火災が起これば、タンクに延焼する可能性の高い化学工場ではないかと思う。2015年4月に起った「中国福建省でパラキシレン装置爆発によって貯蔵タンクへ延焼」よりも危険性の高い配置だったのではないだろうか。

■ エポキシエタンやアルコールなど種類の違う危険物質が存在する火災であり、かなり難しい消火活動ではなかったかと思う。火災写真を見ると、消火用水による冷却が主だったと思われる。アルコール用とみられるタンクから激しく炎が噴き出すような火災に対して、消火までに約5時間半と意外に早く制圧できている。この点、消火活動の詳細状況を知りたいところである。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Newscontent.cctv.com, China Plant Explosion,  June 12, 2015  
    ・Newscontent.cctv.com, China Plant Explosion/Extinguishment,  June 13, 2015   
    ・En.peaple.cn, Explosion and Fire Hit Chemical Plant in East China,  June 13, 2015   
    ・Firedirect.net, Explosion and Fire Hit Chemical Plant in East China,  June 13, 2015


後 記: 大阪に行く機会があり、このブログ投稿に少し間が出ました。ところで、新大阪から山口まで新幹線を使いましたが、乗った日(時間)がちょうど新幹線でガソリンをかぶった焼身自殺事件の直後でした。午後1時過ぎに新大阪駅に行ったら、長蛇の列に遭遇しました。払い戻しのために窓口に並んでいた人たちでした。この時点で駅による説明では、新幹線に乗った「お客」が車内に油をまいたため、警察の現場検証で東海道新幹線は運転していないとのことでした。この事件の詳細は報道されてご存知のとおりです。
 新大阪発のJR西日本の新幹線は平常どおり運転しているとのことだったのですが、混乱が波及してくるかも知れないと思い、早めの出発便に乗りました。その後、運転再開され、30分遅れののぞみを優先して駅で少し通過待ちはありましたが、10分ほどの遅れで帰ってきました。JRの安全対策云々が言われていますが、その日の車両運行部門は大変だったでしょう。このような混乱の中、影響を最小限にとどめることができる日本の鉄道会社はさすがだと感じる旅でもありました。

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