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2014年5月2日金曜日

米国ケンタッキー州で地滑りによりタンクから油流出

 今回は、2014年4月3日、米国ケンタッキー州パイク郡パイクビルにあるキンザー・ドリリング社の保有する原油タンクが小規模な地滑りによって内部の油が漏洩し、一部が近くの川へ通じるクリークへ流出した事故を紹介します。
ケンタッキー州パイク郡で起こった油流出事故で封じ込め用のオイルフェンス展張作業 
 (写真はWOWKTV.comの動画から引用)
<事故の状況> 
■  2014年4月3日(木)の朝、米国ケンタッキー州パイク郡にあるタンクから油が漏洩し、川へ流出しているのが発見された。事故があったのは、パイク郡パイクビルにあるキンザー・ドリリング社(Kinzer Drilling Co.)の保有する原油タンクが小規模な地滑りによって損傷し、内部の油が漏洩したもので、一部が近くの川へ通じるクリークへ流出した。

■ パイク郡緊急事態対応部のダグ・タケット部長は、4月2日(水)の晩に地滑りがあり、貯蔵タンクが転倒または損傷を受け、タンク内の油が漏洩してビッグ・サンデー川の支流レバイサ・フォーク川へ通じるクリークへ流出したものだと語った。タケット部長によると、タンクから流出した油の量は4,200ガロン(100バレル、16KL)だという。
クリークに流出した油 
 (写真は左wowktv.com、右 WKYT.comの動画 から引用)
■ キンザー・ドリリング社は、小規模な地滑りによって貯蔵タンクの1基が損傷を受け、油がクリークに流入したと語った。同社によると、ハーモンズ・ブランチ沿いにある石炭会社の作業員が3日(木)の朝、クリークに油が浮かんでいるのを発見したという。パイク郡緊急事態対応部署には午前830分頃に通報された。自治体の関係機関による迅速な対応によって、流出は封じ込められ、水資源系統への影響は回避できていると同社は語った。同社によると、漏洩した原油は75バレル(12KL)で、約3,200ガロン(12KL)が川へ流れ込んだという。

■ キンザー・ドリリング社ダグ・ハイデン部長は、「私どもは液体封じ込めのためクリークに堰を構築し、かなりの量の油を封じ込めましたので、川へ出た量はわずかです」と語っていたが、当局によると、フロイド郡でもキラキラした油膜が発見されたといい、天候の悪化によっては範囲が広がるかもしれないという。ローレンス郡緊急事態対応部によると、アイベル地区とアレン地区の数カ所に油回収用のオイルフェンスが張られたという。油流出から発見までに数時間経っている可能性があり、この間には何も対応されずに流れ出ていたとみられる。
 (写真はグーグルマップ から引用)
■ レバイサ・フォーク川は地元の水源になっており、飲料水源取入れ口がある。パイク郡緊急事態対応部タケット部長によると、油流出はパイク郡の飲料水取り入れ口より下流に当たっており、この地区の飲料水への影響はない見込みだという。当局によると、パイクビル浄水場は念のため取水口のバルブを閉止したという。

■ クリーンアップ作業は、キンザー・ドリリング社、パイク郡緊急事態対応部、パイプビル公共安全、州環境局の各機関によって始められた。しかし、ビッグ・サンデー川への流れ込みが懸念され、相当な努力が必要な状況だった。パイク郡緊急事態対応部のタケット部長は、「フロイド郡緊急事態対応部が合流し、プレストンズバーグ消防署が参加しました。フロイド郡救助隊、キンザー・ドリリング社流出対応チーム、キャトルスバーグ対応チームは私たちに必要な機材を持って作業に当たりました。このように多くの関係機関の共同作業によって事態の制圧に努めました」と語った。作業に当たったメンバーは、終日、オイルフェンスを張り、油のすき取りを行なった。水系の取入れ口が上流にあるアレン地区にも、最終のオイルフェンスが展張された。キンザー・ドリリング社はクリーンアップ作業のためエンヴィロ-プロ社(Enviro-Pro Inc)に請負を要請した。
油流出の対応 
(左:キンザー社の緊急対応チーム、右:ケンターキー州環境対応チームの車両)  
 (写真はWKYT.comの動画 から引用)
■ ポール・メイナードさんは、「私たちはパイク郡だけでなく、フロイド郡分の資機材を持ってきたので、残っている油を回収するために大半を用いています。そして、いろいろな個所で回収できるようにし、すでにすき取りを行い、トラックへ積んで運んでいます」と語った。

■ クリーンアップ作業が行われているが、当局では、油漏洩によって野生生物が影響を受けていないかどうか確認中だという。パイク郡緊急事態対応部のタケット部長は、流出に伴うクリーンアップ作業が完全に終わるまでには2・3日かかるだろうと語った。 
油流出の対応 
(左:クリークでのオイルフェンス展張作業、右:土木機械による堤構築作業) 
 (写真はWKYT.comの動画 から引用)
補 足                  
■ 「ケンタッキー州」(Kentucky)は米国中東部に位置し、人口約430万人で、州都はフランクフォート市である。農業を主とする州であるが、ケンタッキー・フライドチキンを世界に広めたKFC社はケンタッキー州ルイビルに本社がある。
 「パイク郡」(Pike County)は、ケンタッキー州の東部に位置し、人口約65,000人の郡である。
 「パイクビル」(Pikeville)は、パイク郡の郡庁所在地で、人口約6,900人の町である。
(写真はグーグルマップ から引用)

■ 「キンザー・ドリリング社」(Kinzer Drilling Co.)は、ケンタッキー州で天然ガスの供給を展開するキンザー・ファミリー・グループの一員で、油井や水源の掘削に携わっている石油会社である。
 パイク郡パイクビルのハーモンズ・ブランチ沿いに油井関連の原油タンクがあると思われるが、グーグルマップによって調べてみても場所は特定できなかった。
(写真はグーグルマップ から引用)
■ 「エンヴィロ-プロ社」(Enviro-Pro Inc)は、ケンタッキー州を拠点にした環境浄化会社で、24時間体制で環境汚染の緊急対応を行なう会社である。
エンヴィロ-プロ社による環境浄化作業の例 
 (写真はEnviro-Pro Incのウェブサイト から引用)
所 感
■ また、地すべりによる油流出事故が起った。 2013年7月の「中国陝西省で地すべりによってパイプラインから原油流出」、2014年3月の「ニュージーランドの石油ターミナルで地すべりによる油流出」に続く事故である。このように世界の各地で続くと、日本でも、例えこれまでの大雨で問題なかったとしても、丘陵地や斜面に近い貯蔵タンクや配管(パイプライン)が地すべりによって損傷し、油流出が起こるという想定に立った危機管理の必要性は高いといえる。

■ 今回の事故は油井関連(人が駐在していない)の原油タンクだったため、流出の発見が遅れ、予想以上に遠くへ流れたと思われる。おそらく天然ガス田からのコンデンセートでガソリンに近い油と思われ、油膜が識別しずらく、初動でかなり見逃したとみられる。

■ 流出油対応では、地方自治体の緊急事態対応部署や環境保全部署が主導的に協力して対応している。また、発災事業所は社内の対応チームのほか、環境浄化会社へクリーンアップ作業の要請を迅速に行っている。発災事業所のキンザー・ドリリング社は初動でかなり甘い見通しをしていたのが気になるが、大量漏洩でなかったことが幸いだった。油流出事故では、漏洩量によって封じ込め用のオイルフェンス長さ、油吸着マット、油回収ポンプ、回収油タンクローリー車などの資機材の手配に関わってくるので、甘い見通しをもつべきでない。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・WCHSTV.com,  Hundreds of Gallons of Oil Spill into Big Sandy Tributary in Pike County,  April 03, 2014
    WSAZ.com, Oil Spills from Storage Tank in Eastern Kentucky, April 03, 2014   
    ・WKYT.com, Oil Spill in Pike County Leaks into Big Sandy River, April 03, 2014
    ・WOWKTV.com, Oil Ends up in Levisa Fork River after Spill into Creek, April 04, 2014
    WBKO.com, About 4,200 Gallons of Oil Spilled in Pike County, April 14, 2014



後 記: 今回の事故報道では流出の実態がよくわからなかったという感じです。同じ情報源でも伝え方で随分違った印象を持ちました。発災源についてもグーグルマップでかなり調べてみましたが、結局わかりませんでした。場所は山や森林の多いところで、米国らしい大平原ではなく、日本のような感じです。
 周南市大道理の芝桜
 ところで、地元山口県では、桜の花が散り、新緑の葉に変わり、すっかり春の趣きになりました。北海道に住んでいた頃は5月のGW時にも桜が咲かず、本州との季節の差を感じていましたが、今ではすっかり山口県の季節感に戻りました。いろいろな花々が咲き始めましたが、周南市の郊外(?)に大道理という地域があり、地元の人が棚田の法面に植えた芝桜が見頃になっています。ローカルニュースでも取り上がられていましたので、見学に行ってみました。北海道滝上町の芝桜ほどではありませんが、見に行ってよかったと思うようによく手入れされていました。芝桜は雑草の手入れが大変だと聞いており、温暖で草木の成長が早い山口県では大変だろうなと思いつつ、結構な見物客の人たちと一周してきました。 

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