2013年12月18日水曜日

中国・貴州省でパイプラインが破損してガソリン2,000トン流出

今回は、2013年11月27日、中国貴州省安順市の高速鉄道建設現場で建設用タワークレーンが倒壊する事故をきっかけに、シノペック所有の石油パイプラインが破損してガソリンの流出する事故について紹介します。
漏洩したパイプラインと補修工事を行う作業員
(写真はNews-qbnews.cnから引用)
 <事故の状況> 
■  2013年11月27日(水)午前0時40分頃、中国貴州省(きしゅう省/グイヂョウ省)で石油パイプラインの破損によってガソリンが流出する事故があった。26日(火)午後10時頃、貴州省安順市の建設現場で事故があり、この後、石油パイプラインが破損してガソリンが流出しているのが判明した。

■ 26日(火)午後10時頃、貴州省安順市(あんじゅん市/アンシュン市)ピンバ郡の高速鉄道の建設現場において建設用タワークレーンが倒壊する事故があった。この事故の後、 27日(水)午前0時40分頃、破損したガソリン配管からの漏洩が始まった。この配管は中国石油化工(シノペック)の所有する西南成品油パイプラインである。この事故によるガソリンの流出量は2,000トンに昇るとみられる。現場は、上海-昆明鉄道から約30m離れたところで、近くには民家もある場所だった。

■ 地方政府は、パイプラインのバルブ閉止など漏れ停止の緊急措置をとる一方、現場から半径2km以内の住民に対して避難するよう指示を出した。地方政府は漏洩現場の立入り禁止の措置を行い、漏洩油を回収するための配管の敷設を行った。環境担当は、ガソリン蒸気の刺激臭が漂う地区の環境モニタリングを開始した。貴州省労働安全監督局の李上官局長は、当面の優先作業は漏洩油の回収と二次災害を回避するため漏洩によるリスクを排除することに焦点を絞っていると語った。公安警察500名、武装警察370名が動員され、周囲3kmが封鎖され、発災地区近くの住民1,350名が避難した。

■ 倒壊事故によって3名の人が負傷し、近くの病院で治療を受けている。 油漏洩事故後、貴州省消防本隊114名が消防車18台で、消火用水130トン、泡薬剤15トンを搬送して現場へ出動した。 続いて、安順市消防署の消防隊89名が、消防車15台と30倍高発泡の泡放射装置を持って現場へ到着した。110名以上の作業員が動員され、破損した配管の補修と現場の清掃に携わった。

■ 鉄道当局は、安順市から省都の貴陽市までの運行を一時停止した。このため、約8,000人の乗客が足止めの影響を受けた。地方政府の合同調査チームが編成され、事故の原因究明が始められた。また、当地区全線で安全点検が行われてた。

■ 11月28日(木)午後7時50分、漏洩箇所の配管の溶接作業が終了した後、午後8時8分、上海-昆明線の貴陽地区の鉄道が運行を再開し、午後8時24分頃、貨物列車が現場を通過した。29日(金)午前0時、石油パイプラインの油供給が再開された。

■ 今回の事故は、シノペックにとって先週の11月22日に起こった山東省青島市における事故に続いて2番目の石油パイプライン事故であった。
建設用タワークレーン倒壊事故のあった高速鉄道の建設現場
(写真はNbd.com.cn から引用)
                  油回収作業  (写真はChina.org.cnから引用)
                倒壊した建設用タワークレーン  (写真はNbd.com.cn から引用)
             油回収用機材を手渡しする作業員  (写真はNbd.com.cnから引用)
油回収作業 
   (左写真はNbd.com.cnから引用)  (右写真はJzpilgas.comから引用)
構築された土のう                    避難した住民
  (写真はNbd.com.cnから引用)  
 (写真はEnglish.peopledaily.com.cnから引用)            (写真はGglobaltimes.cnから引用)

 (写真はEnglish.peopledaily.com.cnから引用)

<パイプラインの補修作業状況>
■ 建設用タワークレーンが倒壊し、石油パイプラインの上部にカウンターウェイトの重量物が落下した。このため、直径400mmの配管に長さ20cm、幅2cmの割れが生じていた。この破損部からガソリンが漏れ出し、300mほど流れてから畑の中に拡散した。この流出面積は約2,000㎡で、現場では、流出拡散防止用に深さ0.5m、幅1.2m、長さ110mの溝が掘られ、回収作業が行われた。

■ 油漏洩が続く現場では、落下した建設用タワークレーンの部品を撤去する作業が行われた。漏洩箇所からの漏れ止め対策がとられ、流出量は減少し、28日(水)午前6時、溶接補修を行うことが決定された。バックアップのため、高発泡の泡が張り込まれ、消防隊による消火体制がとられ、午前10時から工事が開始された。溶接作業員は、安全帯のロープをクレーンのフックに固定し、ぶら下がる形で補修箇所に降りて、消火器を持った消防士の見守る中、作業を行なった。午前10時20分頃、突如、現場から火の手が上がり、溶接作業員は緊急脱出した。火は周囲の土壌に浸透したガソリンに着火するためで、このためアスベストや不浸透性の素材を敷き詰めたあと、溶接工事を行なった。小さな火を含めると22回の中断をしながら、約9時間後の午後7時50分、破損部の当て板溶接工事が完了した。
                 高発泡の泡放出   (写真はNews-qbnews.cnから引用)
       工事作業員の降下  (写真はNbd.com.cnから引用
                    作業員による工事開始  (写真はNbd.com.cnから引用)
                        火災発生     (写真はNews-qbnews.cnから引用)
             当て板溶接補修された石油パイプライン (写真はNews-qbnews.cnから引用)

補 足                                                          ■ 「中国」は、正式には中華人民共和国で、1949年に中国共産党によって建国された社会主義国家である。人口約134千万人で、首都は北京である。
 「貴州省」(きしゅう省/グイヂョウ省)は、中華人民共和国の南西部に位置し、人口約3,900万人である。省都は貴陽市である。
 「安順市」(あんじゅん市/アンシュン市)は、貴州省の西方に位置し、人口約260万人の地級市である。

■ 「中国石油化工」は、正式には「中国石油化工集団公司」(ちゅうごくせきゆかこうしゅうだんこうし)といい、国務院国有資産監督管理委員会が監督・管理する国有企業である。英語名はChina Petrochemical Corporationで、通称「Sinopec(シノペック)」と呼ばれる。1998年、国務院の機構改革のもとに当時の中国石油化工総公司と中国石油天然気総公司が事業を再編され、中国石油化工集団公司(シノペック) と中国石油天然気集団公司(CNPC)の二大石油企業が誕生した。2000年、中国石油化工集団公司のうち、油田・工場・販売などの現業部門が分割民営化され、「中国石油化工股份有限公司」が誕生し、香港、上海、ロンドン、ニューヨークの各証券取引所に上場している。
 シノペックは、雲南省から広東州まで全長1,700kmの石油製品用の「西南成品油パイプライン」を敷設している。これはシノペック最初の石油製品用長距離パイプラインといわれ、石油供給ネットワークの動脈になっている。
 2013年11月22日、 シノペック所有の原油パイプラインにおいて「中国・青島で原油パイプライン漏れに伴う爆発で、多数の死傷者」を出す事故が起こっている。

所 感
■ 今回の事故は、建設用タワークレーンが倒壊して地下埋設の石油パイプラインを破損させたという。通常、地下埋設であれば、上からの荷重に耐えられるはずである。写真を見ると、配管まわりに石が点在しており、かなり荒い埋め戻しがされていると思われる。このため、配管の上にあった石を通じてカウンターウェイトの重量が瞬間的に集中してかかったことによって、段差のような割れが入ったのではなかろうか。現実の世界では、このような考えもつかない事故が起こるという事例である。

■ 避難情報が出されず、多くの死傷者を出した11月22日の青島・原油パイプライン事故があったばかりで、さすがに住民避難が優先的に行われたようだ。迅速に実施されたかわからないが、大量のガソリンの漏洩中、引火・爆発しなかったことは幸いだった。

■ 一方、相変わらず、油のクリーンアップ作業が完了していない段階で、溶接補修工事という非常に危険性の高い作業が行われている。今回は、倒壊した建設用タワークレーンの撤去作業や掘削作業なども油漏洩の中で実施されている。油漏洩が判明してからわずか一日半で補修工事を開始している。土壌に浸透していたガソリン蒸気に火が着くなどの問題がありながら、工事を続行している。
 今回は、鉄道が止まり、ガソリン供給の動脈が途切れるという経済への大きな影響がある中での判断だったにしても、安全やリスクに関する意識の違いがあり、日本における認識の差は大きい。中国では、このような緊急事態は戦時下と同じ認識だと思われ、軍隊と同じように補修に従事する作業員のリスクは覚悟するという考え方が根底にあると感じる。今回のパイプライン補修工事の写真を見ると、そのように感じざるを得ない。地方政府は、今回の対応を英雄的な行動として讃えている。その意味では、我々にとって危機管理に関する参考にはならないといえる。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・English.PeopleDaily.com.cn,  Gasoline Pours from Broken Pipeline in SW China, November 27, 2013
      ・News.Xinhuant.com, Gasoline Pours from Broken Pipeline in SW China, November 27, 2013
      ・GlobalTimes.cn, Gasoline Pours from Broken Pipeline in SW China, November 27, 2013
      ・Guizhou.ChinaDaily.com.cn,  Gasoline Leak Strands 8,000 in SW China, November 27, 2013
      ・GlobalTimes.cn, 3 Injured, Oil Pipe Broken in Site Accident, November 28, 2013
      ・GlobalPost.com,  SW China Oil Pipe Broken in Construction Site Accident, November 29, 2013
      ・English.PeopleDaily.com.cn,  Guizhou Rail Line Reopens after Gasoline Leak, November 29, 2013
      ・Firedirect.net,  2,000 tonnes Gasoline Leaks as Pipeline Ruptures, November 29, 2013
      ・MPS.gov.cn,  贵州11・26事故抢险救援 50小时虎口拔牙通管道,  December 10, 2013
      ・News-qbnews.cn,  西南成品油“动脉”泄漏 46小时应急处置的贵州样本,  December 12, 2013
      ・Nbd.com.cn,  西南成品油“动脉”泄漏 46小时应急处置的贵州样本,  December 12, 2013



後 記: 今回は安全やリスクに関する意識の違いを感じる事例でしたが、最近の朝日新聞にこの種の興味深い記事が掲載されていました。特派員メモ「山火事取材の資格」と題し、郷富佐子さんが書いた記事で、内容はつぎのとおりです。「シドニー郊外で大きな山火事があり、現場に行ったら消防隊員に“山火事取材の認定証を見せて”と言われた。“何のこと?”と聞いたら、“お前はそれでもプロの記者か。試験を受けて出直して来い”と怒られてしまった。 オーストラリアでは山火事取材の講習を受け、さらに試験を合格しないと記者は現場に入れないという。 (中略) 試験はなんとか合格。認定証を首にかけ、指定の断熱防具を着てみた。乾燥した大陸で頻発する山火事の怖さが、少しわかったような気がした」  講習は、無線で使う符号や警報の意味、火の回る速さなど内容の濃いものだとのことです。もちろん、これは取材を制限するためでなく、人命を大切にするという意識が背景にあるわけで、国によって差があることを感じますね。


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