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2013年12月12日木曜日

フィジーのモービル社オイルターミナルでタンク屋根が一部外れ

 今回は、2013年12月3日(火)、フィジー共和国スバのワル湾にあるモービル社フィジー・ターミナルにおいて、タンクの屋根が一部外れるという事故を紹介します。
(写真はFBC.com.fjから引用)
<事故の状況> 
■  2013年12月3日(火)午前11時30分頃、フィジー共和国スバのワル湾にあるモービル社(エクソンモービル)フィジー・ターミナルにおいて、タンクの屋根が一部外れるという事故があった。
                   スバ市ワル湾付近   (写真はグーグルマップから引用)

■ モービル社の声明によると、午前11時30分頃、通常の給油作業を行っているとき、大きな音が聞こえ、燃料貯蔵タンクのふた部が外れていたという。モービル社は、この事故によるけが人はなく、現時点において住民や従業員の安全についてリスクはないと発表している。オイル・ターミナルは一時的に操業を停止している。同社によると、このため燃料供給に最小限の影響が出るかもしれないという。

■ 消防と警察がアルゴ通り沿いにある現場に出動し、公共地区に立入り制限区域を設けた。アルゴ通りは全面閉鎖され、オイル・ターミナル前のフォスター通りは部分的に制限され、迂回道路を使用して通行する交通規制が行われた。

(写真はFBC.com.fjから引用)
■ 現段階では、事故の原因はわかっていない。国家消防庁は、現在の状況を監視していると語っている。 国家消防庁最高執行責任者のジョン・オコーネル氏は、道路脇に2台の消防車両を待機させていると語った。オコーネル氏は、「現在はモービル社によってコントロール下にありますが、事態が悪化した場合には、我々が対処します。しかし、重大な損傷の発生、火災の発生あるいは負傷者の発生がなければ、いつでも対応できるように待機状態を維持します。ワル湾とアーゴ通りは交通規制を行っていますし、各消防署には、いつでも出動できるように指示しています」と語った。国家消防庁によると、当該タンクには油が入っているという。

■ 原因調査はこれから本格的に始められる。
                                                         

補 足
■ 「フィジー」は、正式には「フィジー共和国」で、南太平洋のオセアニアにある300余の島と珊瑚礁からなる人口約86万人の国である。元はイギリス連邦加盟国であった。
 「スバ」は、ビチレブ島の南部にあり、フィジーの首都で、人口約85,000人の都市である。
 フィジーは年間を通して温暖で安定した天候に恵まれている。雨期(12~4月)と乾期(5~11月)の区別があるが、実際には1年のうちいつでも熱帯地方特有のスコールが降る。

■  「エクソンモービル社」(ExxonMobile Corp)は米国テキサス州に本拠地をもつ総合エネルギー会社で、スーパーメジャーの一つである。世界200ヵ国以上で展開し、21ヵ国に37の製油所を持ち、生産能力540万バレル/日、販売量640万バレル/日の巨大企業である。1999年、エクソン社とモービル社の合併で生まれた会社であるが、元々二社ともロックフェラーが1870年に設立したスタンダードオイルの流れをくむ企業である。
 フィジーにおけるエクソンモービル社が「エクソンモービル・フィジー」(ExxonMobile Fiji)であるが、フィジー内では一般にモービル社と呼ばれている。スバのワル湾にフィジー・ターミナルを有しており、グーグルマップでは数基のタンクが見えるが、詳細はわからない。アルゴ通りが全面閉鎖、フォスター通りが一部閉鎖という情報からすれば、アルゴ通り沿いの一番大きなタンクの屋根が一部外れたものと見られる。 
                  モービル社のフィジー・ターミナル   (写真はグーグルマップから引用)

所 感
タンク屋根の放爆構造の例
■ タンク屋根の一部が外れるということは、一般的には、タンク屋根の放爆構造が働いた、すなわち過剰な圧力がかかったことが考えられる。しかし、爆発以外で放爆構造が働くのは、水が沸騰して一気に水蒸気に膨張するときであるが、おそらく取扱い燃料油はガソリンまたはディーゼル燃料と思われ、アスファルトタンクのように水の沸騰する条件には該当しないと思われる。通常の操油(給油)作業におけるタンク液位の出し入れで放爆構造が働くことは考えづらい。

■ フィジーは比較的雨が降る地域なので、タンク屋根の放爆構造部が腐食によって外れることはありうる。タンクの写真を見ると、かなり汚れが目立ち、タンクの保守状態は必ずしも良いとはいえないので、腐食が放置されていた可能性はある。しかし、屋根を支える部材(ラフタ)があり、この部分も脱落することは考えづらい。

■ 考えられるのは複合要因の仮説である。タンク屋根の放爆構造部が腐食によって減肉し、強度がさらに弱くなったところで、通常より少し速い速度で液を受け入れ、過剰ガス分が大気ベントで抜けきれず、タンク屋根の放爆構造が働いたという仮説である。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・FBC.com.fj,  NFA Monitors Fuel Tanks Incident, December 03, 2013
  ・FBC.com.fj, Investigation Underway at Fuel Terminal Incident, December 03, 2013   
  ・Fijivillage.com, Mobil Clarifies Incident at Walu Bay Terminal, December 04, 2013
  ・FijiSun.com.fj,  Fuel Tank Incident Raises Alert, December 04, 2013 


後 記: 今回の情報はインターネットの検索からたまたまひっかかったもので、通常は見過ごすようなローカルなニュースです。フィジーというこれまでよく知らない国に興味もあり、調べることにしました。タンク屋根が一部外れという特異な事象でしたが、結果的には、原因推測につながる状況はわかりませんでした。ところで、フィジーは気候が温暖、一年中泳げるという海の観光が有名で、ラグビーが盛んなところです。ガソリンスタンドはモービルのほかトタールがあります。トタールはシェルから譲り受けたもののようです。メジャー・オイルは世界各国に展開していますが、事故があると、こんなところにも進出していたのかということもわかりますね。


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