2013年11月30日土曜日

中国・青島で原油パイプライン漏れに伴う爆発で、多数の死傷者

 今回は、2013年11月22日、中国山東省青島市黄島区の青島経済技術開発区において、中国石油化工(シノペック)関連会社の保有する地下に埋設された原油パイプラインで流出事故があり、この対応中に大爆発したもので、この爆発によって市民に多数の死傷者が出た事故を紹介します。
(写真はCBC.caから引用)
 <事故の状況> 
■  2013年11月22日(金)午前10時半頃、中国山東省(さんとう省/シャントン省)青島市(ちんたお市/チンダオ市)で石油パイプラインの漏れに伴って大爆発が起こる事故があった。事故があったのは、山東省青島市の中心地から膠州湾(こうしゅうわん)を挟んで約4km離れた黄島区(こうとう区/ファンダオ区)の青島経済技術開発区に位置し、中国石油化工(シノペック)関連会社の保有する地下に埋設された原油パイプラインで、22日午前3時頃に漏れがあり、対応中に爆発したものである。この爆発によって市民に多数の死傷者が出た。11月25日時点の情報では、死者55人、負傷者166人、行方不明9人となっている。

■ 青島市当局によると、22日午前3時頃、黄島区の秦皇島通りと斎堂島通り交差点付近において中国石油化工(シノペック)の子会社が保有する石油パイプラインが破裂し、路面1,000㎡の範囲にわたり原油が漏れ出し、対応作業が行われていたという。原油は、シノペックの黄島石油基地のバルブが閉止されるまでの約15分間、流出し続けたという。漏れた原油が市当局が管理する別系統の雨水管渠へ流れ込み、午前10時半頃、海河通りと斎堂島通りの交差点付近を中心に爆発を起こしたとみられる。作業員が流出のクリーンアップ作業を行っている際、油に火がつき、2箇所で爆発が起きたと市当局はみている。

■ 当局によると、原油は雨水暗渠を通じて膠州湾に流出し、原油による水質汚染の範囲は約3,000㎡にわたる。 爆発は、午前10時半頃、地下と海面で起きたという情報や、原油が近くの河口へ流出した後、複数の爆発がほぼ同時に起こったという情報がある。100名を超える消防士が出動し、爆発後に起きた火災は22日午後2時までに消し止められた。

■ 当局は、テロによる破壊の可能性はないとしたが、事故原因は調査中だと語っている。青島環境保護局は、海へ流出した油を囲い込むためオイルフェンスが張られたが、雨水暗渠へ流れた油とガスの混合気が爆発し、海上で火災となったと話している。ある当局者は、油が地下のユーティリティ・パイプの中へ漏れ込んだのが爆発の一つの要因だと言っているが、詳しくは述べていない。当局は、爆発が海浜地区の石油化学プラントや軍事施設に影響を与えていないし、事故後の大気状況も良好な状態を維持していると、市民に対して発表している。

■ 新華社は黄島区の地図上に爆発影響区域を報じている。これによると、直径約1,500mが爆発影響区域になっている。
「爆発影響範囲」は日本新華夏の情報を地図上に写したもの
(写真はグーグルマップから引用)
■ 中国メディアは、コンクリートの破片が散乱し、陥没した地面の上で横転するトラックや避難する住民の写真を掲載している。目撃した男性は、 まるでパニック映画を見ているようだったと話している。物流会社で働いている高さんは、黄島区を運転中、爆発を感じた瞬間、目の前の地面が無茶苦茶に壊れたという。高さんは、外はつんとした刺激臭がし、道路の両側にはたくさんの車がひっくり返り、真っ黒い煙が空高く立ち昇っていたといい、「地震かと思った。びっくりして、口が聞けなかったよ」と語った。路上には、人々がパニックで右往左往していたと付け加えた。
 青島市内からも黄島区の空の黒煙が見え、こげた臭いがしたという。飛行機の乗客が撮影した写真をインターネットで投稿しているが、その写真では黒煙が雲層を貫通しているのがわかる。

■ シノペックは、マイクロブログ「微博(ウェイボー)」を通じて傳成玉会長が「青島市民の生命と財産に巨大な損失をもたらした。犠牲者に深い哀悼をささげる」と謝罪した。また、事故原因は調査中で、原油汚染や二次災害を防ぐために同社従業員が現場で対応していると発表した。

■ 名前を伏せることを条件に取材に応じた黄島病院の従業員によると、負傷した160名近くの人たちが3つの病院で緊急の手当てを受けており、黄島病院では半数以上の人を受け入れているといい、「重傷を負った3名は私どもの病院で亡くなり、残りの患者も治療を受けるために入院しています」と語った。
 事故の起きた場所の一帯では、水や電気の供給が止まり、住民約18,000人が避難しており、事故を起こした石油大手や地元政府への批判が広がっているという。

■ 習近平主席は地方当局に対して、行方不明の人の捜索、負傷した人の治療、そして事故の原因追究を指示したと中国テレビ(CCTV)が報じている。救助活動は翌23日(土)も続けられ、24日(日)は激しい雨の中で行われている。24日(日)には、習主席が青島の病院を訪問し、負傷者と医療スタッフを慰問した。

■ 今回の事故は、石油パイプラインに付随する安全と環境のリスクについて中国国民の多くに懸念を抱かせることになった。
 黄島区の住民の一部は、事故が起こるまで、自分たちが住んでいる近くに石油パイプラインが通っていることを知らされていなかった点について不満を口にしている。ほかの住民は、爆発の起こる2時間前に油の臭いを感じたが、何が起こっているのか知らされなかったと抗議している。爆発場所から数ブロック離れたところに住んでいる女性は、「有毒ガスが発生した最初の漏れの時点で、事故のあった近くの住民は何も知らされなかったわ。わかっていたのに7時間もの間、何をやってたの? もし、何事か起こっていると知らされていれば、少なくとも、あの場所から逃げ出す機会があっただろうし、こんなにひどいことにはなっていないわ」と語った。

■ 青島市政府の副事務総長の郭氏は、別な石油パイプラインや危険なパイプが集まっていると言い、「今回、発災のあったパイプラインの爆発によって近くにあった他のパイプに影響を及ぼしています。私たちは、現場で他のパイプラインの何本かははっきり変形しているのを見ました」と語っている。
 シノペックのパイプライン貯蔵・輸送会社で働く興さんは、パイプラインの漏洩現場で手2つ分の穴を見たと語っている。興さんは、雨水暗渠を通じて海へ流れる油の処理対応のため、現場を離れてから数分後に、2・3秒の間隔で2回の大きな爆発音を聞いたという。

■ 被災者は一般市民であるが、原油漏れの対応に当たっていたと思われる人もいる。亡くなった人のうち6名はシノペックの黄島石油基地にいるプロの消防士だったという情報や、石油パイプラインの修復作業に当たっていた万田公司(本社:河北省)の従業員13名が含まれるという情報がある。

■ 原油の流出した膠州湾の海はほとんどきれいになったが、まだ油膜が残っており、すべて回収することが難しい状況である。青島海事局の劉氏は、海事関係者が漏洩事故の起こったという報告を受けたのは、事故後、数時間経ってからであり、清掃作業を行うには遅すぎたと語っている。

■ シノペックは、漏れのあったパイプラインは27年間使用していると発表した。パイプラインは1986年7月から使用され、直径711mm(呼び径28B)、全長248.52kmで、年間1,000万トンの送油能力を有している。パイプラインは青島市黄島区から東営市まで結ばれている2番目のパイプラインだという。シノペックは、8月の操業中にパイプラインから漏れがあったというメディアの報道を否定した。

■ 中国メディアの財新は、パイプラインが住宅地から15m以上離さなければならないとする法規制に合っていないと指摘した。さらに、シノペックは、2年前にセキュリティ上のリスクがあることやパイプラインの経年劣化について把握していたにもかかわらず、改善計画を進めなかったと指摘している。

■ 青島は、中国における最も大きい原油輸入基地の一つであり、シノペックの石油プラント(青島製油所および斉魯石化製油所)や独立系の製油所などに供給している。
 青島では、1989年8月2日、黄島区にある石油タンクに落雷があり、死者を伴う爆発事故があった。この事故では、消火活動に当たっていた19名の消防士が亡くなっている。

■ 青島市の警察当局は、26日(火)までに、シノペックの関係者7人と地元の経済開発区関係者2人を拘束、本格的な事情聴取を始めたことを「微博」を通じて明らかにした。事故をめぐっては、パイプラインの管理の仕方や破裂から爆発までの間に周囲の住民に危険が知らされていなかったことなどが問題視されていて、警察当局は今後、安全対策や事故後の対応に問題がなかったか、9人を追及するものとみられる。
       (写真はXinhuaxia.jpから引用)                                     (写真はEpochtimes.comから引用)
 (写真はNews.xinhauanet.comから引用)   
(写真はNews.xinhauanet.comから引用) 
  (写真はNews.sina.com.から引用)                         (写真はbbc.co.ukから引用)
 (写真はNews.xinhauanet.com から引用)                                    (写真はbbc.co.ukから引用)
     (写真はBBC.co.ukから引用)                                              (写真はNews.sina.com.から引用) 
  (写真はNews.xinhauanet.com から引用)                                      (写真はChinasmack.comから引用)
 (写真はChinasmack.comから引用) 
 (写真はChinasmack.comから引用) 
 (写真はNews.xinhauanet.com から引用)  (写真はChinasmack.comから引用)    (写真はChinasmack.comから引用) 
 (写真はNews.sina.com.から引用)      
(写真はNews.sina.com.から引用) 

補 足                                                        
■ 「中国」は、正式には中華人民共和国で、1949年に中国共産党によって建国された社会主義国家である。人口約134千万人で、首都は北京である。
 「山東省」(さんとう省/シャントン省)は、中華人民共和国の東部にある省で、北に渤海、東に黄海があり、黄河の下流に位置する。人口は約9,500万人、省都は済南である。
 「青島市」(ちんたお市/チンダオ市)は、山東省の東部に位置する港湾都市で、市区人口約370万人、総人口約870万人と東部沿岸の重要な経済と文化の中心であり、近代的な製造業やハイテク産業基地がある。
 「黄島区」(こうとう区/ファンダオ区)は青島市の市轄区で、膠州湾入口の西側に位置し、青島市街地と海を隔てて向かいあっている。人口約130万人で、青島経済技術開発区を有している。

■ 「中国石油化工」は、正式には「中国石油化工集団公司」(ちゅうごくせきゆかこうしゅうだんこうし)といい、国務院国有資産監督管理委員会が監督・管理する国有企業である。英語名はChina Petrochemical Corporationで、通称「Sinopec(シノペック)」と呼ばれる。1998年、国務院の機構改革のもとに当時の中国石油化工総公司と中国石油天然気総公司が事業を再編され、中国石油化工集団公司(シノペック) と中国石油天然気集団公司(CNPC)の二大石油企業が誕生した。2000年、中国石油化工集団公司のうち、油田・工場・販売などの現業部門が分割民営化され、「中国石油化工股份有限公司」が誕生し、香港、上海、ロンドン、ニューヨークの各証券取引所に上場している。
 シノペックは、青島市黄島区に精製能力20万トン/日の青島製油所と石油化学プラントを有する。また、黄島区の北部には、黄島国家石油備蓄基地(10万KLタンク×32基、貯蔵能力320万KL)がある。2008年には青島港とシノペックの共同出資で設立された30万トン級の原油埠頭が完成している。この原油埠頭は最大45万トン級の大型タンカーの停泊が可能といわれ、世界でもトップ級にランクされる。同埠頭はパイプラインで製油所とつなぎ、これはシノペック青島錬化支社と黄島国家石油備蓄基地有限責任会社が事業を行っている。
中国石油化工の青島製油所    (写真はグーグルマップから引用
黄島国家石油備蓄基地(10万KLタンク×32基、貯蔵能力320万KL)
(写真はグーグルマップから引用)
■ 事故の写真などから、原油が海へ流れたのはカルバート式の「雨水暗渠」だと思われる。一方、「ユーティリティ・パイプ」という表現をしている当局者がいる。通常、ユーティリティ・パイプというのは、写真のような専用の管渠の中に複数のパイプを敷設しているものをいう。今回、原油パイプラインが地下にどのように敷設されていたか、パイプラインと雨水暗渠の位置関係がどのようになっていたかはっきりしない。今回の状況を見ると、雨水暗渠の中に原油パイプラインが敷設されていた可能性もある。
     カルバートの例                       ユーティリティ・パイプの例

所 感
■ 今回の事故は、原油パイプラインの漏れに伴い、雨水暗渠に流出した原油が広範囲に爆発混合気を形成し、何らかの着火源で引火・爆発したもので、過去に例の無い大事故である。事故の状況が知られるに従い、メディアが報じるように油漏れという異常事態の危機管理対応ミスであったことがわかった。パイプラインの補修を急ぐという明らかに操業優先の判断があったと思われる。直径711mmの配管の破損箇所から相当量の原油が流出しており、清掃作業を行いながら、補修工事という非常に危険性の高い作業が行われている。実際に、補修工事に従事した作業員が被災しているとみられる。
 このように安全のリスクを冒して操業を優先するのは、今回の事故だけでなく、中国の経済発展の裏にある陰の部分である。例えば、2013年7月12日に起こった「中国陝西省延安市の地すべりによるパイプラインから原油流出」の事故では、パイプラインの破損補修を11時間で終わらせるという二次災害の危険性を無視し、操業を優先した荒い補修工事が行われている。このときは、幸い二次災害は起きず、けが人が出なかったが、このような安全より経済優先は今回のような事故を招くことになる。

■ 原油パイプラインの敷設がどのように行われていたかは明確ではないが、日本国内にも油やガスなどの危険性流体がカルバート(またはユーティリティ・パイプ)に敷設されている例は少なくない。今回の事例の教訓としては、カルバート内に危険性流体が流出した場合の危機管理対応である。爆発混合気の形成をどのように防止するか、雨水系への流出拡大をどのように防止するかである。そして、最も大切なことは住民への情報提供である。この住民への広報は、事故当事者の企業(あるいは組織)と地方自治体との共同作業になる。特に、地方自治体は役所、警察、消防など関係機関が多く、どの部署が主導して行うかということを明確にしておかなければ、今回(7時間の時間余裕があった)と違って時間余裕のない場合、対応が遅れることになる。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Xinhuaxia.jp,  青島中石化のパイプライン爆発で22人が死亡、40人余が負傷, November 22, 2013
  ・Jiji.com,  中国青島・石油パイプライン爆発事故写真特集, November 22, 2013  
  ・Sankei.jp.msn.com, 中国・青島 油送管爆発の死者47人に 市民多数犠牲, November 23, 2013
  ・Jp,wsj.com,  中国・青島で原油漏れ爆発、死者35人以上, November 23, 2013
  ・朝日新聞,  青島の爆発事故関連記事, November 22~27, 2013
    ・CBC.ca,  China Oil Pipeline Blast Kills 44, Injures 166, November 22, 2013
      ・BBC.co.uk,  China Oil Pipeline Blast: Qingdao Pipeline Blast ‘Kills 44’, November 23, 2013
      ・Edition.CNN.com,  Pipeline Explosion Kills 44 near Chinese Port City, November 23, 2013
      ・News.xinhuanet.com,  Pipeline that Leaked in Use for 27 years: Sinopec, November 23, 2013
      ・News.xinhuanet.com,  Death Toll from China Pipeline Blast Rises to 52, 11 Missing, November 24, 2013
      ・GlobalTimes.com,  Qingdao Pipeline Explosion Kills 35, November 23, 2013
      ・News.xinhuanet.com,  Death Toll from China Pipeline Blast Rises to 52, 11 Missing, November 24, 2013
      ・Chinasmack.com,  Oil Pipeline Explosion in Qingdao, Chinese Netizen Reaction, November 25, 2013
      ・Time-az.com, 青島市で、オイルパイプ漏れによる大爆発が発生!, November 22, 2013
      ・24inchina.com, 死亡人数还将上升,   November 25, 2013



後記: 今回の情報の中に取材に応じた市民の言葉があります。この話言葉を翻訳するときに、最近、朝日新聞に載った書評を思い出しました。著書は「翻訳がつくる日本語 ~ヒロインは“女ことば”を話し続ける~」(中村桃子著)で、三浦しをん評です。書評の冒頭を紹介しますと、「現代日本で暮らしていて、“私は賛成ですわ”  “俺はかまわないぜ”といった言葉づかいをするひとに、私は遭遇したことがない。しかし、日本語に翻訳された外国人の発言(あるいはセリフ)で、過剰な“女ことば”や“気さくな男ことば”、どこの方言だか不明な“ごぜえますだ”といった言葉が使われていても、なんとなく受け入れている」 書評の最後に「言語がはらむ差別や権威性の問題をも視野に収めた一冊だ」という書籍です。 面白いというか興味ある指摘です。確かに、小津安二郎監督の日本映画で使われているような優しい女ことばは、現在では聞かれません。まして、日本でも、メディアの取材に応じた女性が女ことばを使うはずはないのですが、翻訳すると、やはり、女ことばを使いたくなります。女ことばを使うと話者の性別を簡単に明確化でき、話し手の表情を想像しやすくなると思うからです。

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