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2026年7月12日日曜日

ロシアのモスクワ製油所、無人航空機による攻撃で貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ

 今回は、2026618日(木)、ロシアのモスクワにあるガスプロム・ネフチ社モスクワ製油所内の燃料貯蔵タンクがウクライナ軍の無人航空機(ドローン)による攻撃を受け、タンク屋根が空高く噴き飛んだ事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)のモスクワ(Moscow)にあるガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft)のモスクワ製油所である。この製油所は所在地からカポトニャ製油所(Kapotnya Oil Refinery)とも呼ばれている。

■ 発災があったのは、モスクワ中心部から南東約15km離れた製油所内にある燃料貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026618日(木)早朝、モスクワ製油所にウクライナ軍(Ukrainie)の無人航空機(ドローン)による攻撃があった。

■ 製油所近くのモスクワ南東部の住民のひとりは、早朝、爆発音、濃い煙、それに強い焦げ臭で目が覚めたと語った。同じく、被害を受けた製油所の近くに住む男性は、夜明けに建物が揺れ始めて目が覚め、朝には焦げ臭い匂いがして息ができなかったといい、「本当に恐ろしい。以前はそれほど怖くなかったが、今はほとんどパニック状態だ」と語った。  

■ 目撃者によると、強力な爆発により大型燃料貯蔵タンクの屋根が完全に噴き飛ばされ、激しい火災が発生したという。燃料貯蔵タンクの屋根が数十メートルも空中に舞い上がった。製油所では、少なくとも5か所で火災が発生し、黒煙が空に広がった。

■ 製油所近くの地域一帯に瓦礫が降り注いだ。

■ 市は、影響を受けた地区の住民に対し、窓を閉めておくよう警告し、子供連れの家族、高齢者、喘息患者は速やかにその地域から避難するように勧告した。

■ モスクワ製油所は、この1か月で3度目の攻撃に見舞われたことになる。

■ 無人航空機(ドローン)の破片が建物に落下し、近隣のショッピングセンターが火災に見舞われた。

■ ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始してから4年半が経過したが、ウクライナの最前線での消耗戦は、ロシアの多くの人々の目には触れることなく続いている。ロシア各地の地方当局はドローン攻撃後の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、白昼堂々と空を飛び交うドローンや、モスクワ郊外の工業地帯上空での爆発をとらえた動画が数多く投稿されている。

■ ウクライナ軍は、本格的な空爆を開始する前に、多数の偵察用デコイドローンを発射して、防空網の密度や脆弱な地域を把握するという戦術を常套手段として用いている。

■ ウクライナ国境から約500km離れたモスクワへの無人航空機(ドローン)攻撃は、ウクライナが長距離攻撃能力を開発したことで頻繁になっている。ウクライナによる初の無人航空機(ドローン)攻撃は2023年春にロシアの首都に到達したが、散発的で、使用された無人航空機(ドローン)はごく少数にとどまっていた。それ以来、モスクワ周辺には大規模な防空網が構築されたが、ウクライナが攻撃に使用する無人航空機(ドローン)の数も増加し、一部はそれらの防空網を突破した。

■ ウクライナ軍によると、RVS-10000型タンク3基、RVS-30000型タンク1基のほか製油所のオイルプロセス装置を攻撃で損傷させたと語った。注記;貯蔵タンク RVS-10000型は、主に石油や化学薬品などの液体を大量に保管するために使用される容量10,000KLの円筒形鋼製タンクをいう。

■ モスクワの主要空港は、618日木曜日のフライトが停止された。

■ ユーチューブやフェースブックなどでは、タンク被災の映像などが投稿されている。

 FacebookMoment fuel storage lid blown off as Ukraine strikes Moscow refinery2026/6/18

 ●YoutubeOil storage tank‘s roof launched into the air during Ukrainian attack on Moscow 2026/6/18)     

 ●Facebook A Ukrainian drone strike sends the roof of a Moscow oil refinery's storage tank flying through the air 2026/6/18

被 害

■ 製油所の貯蔵タンク1基が屋根が噴き飛ぶほどの損壊をした。このほかタンク3基やプロセス装置が無人航空機(ドローン)による攻撃で損傷した。また、タンクや装置内にあった油が焼失した。

■ 死傷者は発生していない。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 

< 対 応 >

■ 本格的な戦争開始以来最大規模のウクライナ軍の攻撃で製油所が攻撃され、ロシアの一部に黒い油の粒が降り注いだ。この攻撃では、約200機の無人航空機(ドローン)がロシアの首都に向けて発射された。

ロシアのモスクワ市長によると、首都モスクワを目指していた少なくとも194機の無人航空機(ドローン)を618日(木)未明にかけてロシアの防空システムによって撃墜したという。

 しかし、これは、ここ数か月間のウクライナによる攻撃で使用された無人航空機(ドローン)の数が二桁にとどまっていたことを考えると、はるかに多い数であり、4年以上前にロシアによる本格的な侵攻が始まって以来、ウクライナの無人航空機(ドローン)能力が劇的に向上したことを示す明確な例となっている。

■ 専門家によると、 ロシアの国家予算は歳入の少なくとも3分の1を石油収入に依存しているという。ロシアーウクライナ戦争が始まって以来、欧州連合(EU)と米国による制裁強化により、ロシア産原油の買い手は減少していた。しかし、米国・イスラエルーイラン戦争によって、ロシアには思わぬ幸運となり、世界的な燃料価格の高騰と制裁緩和の恩恵を受けた形になった。

■ ロシア人がソーシャルメディアに投稿した動画は、二つのことを伝えている。ひとつは、首都モスクワの防空網は強固だったが、ウクライナの安価な大量生産の無人航空機(ドローン)によって突破され、製油所の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされたことに代表される複数の火災が猛威を振るったことや環境災害が確実に発生しつつあることである。もうひとつは、モスクワ市民の不満の拡大と、それがもたらす政治的不安定さである。ロシア当局が抑制しようとしてきた動画が数多く投稿され、高まる反体制の姿勢と、最終的に失敗に終わった情報操作を示している。  

■ 現場からの画像や動画はインターネット上で広く拡散されたが、紛争が続いている状況下では、すべての映像の真偽を独自に検証することは依然として困難である。


補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,000万人の連邦共和制国家である

「モスクワ」(Moscow)は、人口約約1315万人のロシア連邦の首都である。また、連邦市として市単独で連邦を構成する83の連邦構成主体のひとつである。

■「ガスプロム・ネフチ社」(Gazprom Neft)は、ロシアの石油企業で国内の石油製造・精製企業としては、5番目の規模をもつ。2005年天然ガス最大手ガスプロムの傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。本社はサンクトペテルブルクである

「モスクワ製油所」(カポトニャ製油所:Kapotnya Oil Refinery)は、1938 年に操業したが、2011年からロシア国営企業ガスプロム・ネフチ社の傘下にある。精製能力は、年間約1,200万トンで、日量換算で約24万~30万バレル/日の規模である。

■「発災(被災)タンク」は油種などの仕様について報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約45mであるので、高さを1520mとすれば、容量は23,80031,800KLとなる。グーグルマップの写真を見ると、ドームルーフ式の固定屋根型タンクである。ウクライナ軍が攻撃でRVS-30000型タンク1基を損傷させてと語っているが、このタンクが発災(被災)タンクとみられる。

所 感

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、基本的にこのブログの調査対象にしていないが、今回の事例はタンク屋根が噴き飛んだというので、調べることとした。

 映像は少なくとも3か所から撮影されたものがあり、実際にタンク屋根が噴き飛んだものとみられる。タンク屋根は水平を保ったままかなりの高さまで飛んでいる。

 一般にコーンルーフ式やドームルーフ式の固定屋根式円筒タンクは、タンク屋根と側板の溶接部の接続箇所が弱く作られており、この点でいえば、適切な設計・製作をされた貯蔵タンクといえる。タンク上部の混合気が爆発するような圧力になった場合、溶断部が破断するが、タンク屋根が水平を保って高くまで飛ぶということはめずらしい。事例のような状況になる要因を推測すると、タンク内部に液が少ない状態のところにタンク上部に無人航空機(ドローン)が突っ込んで爆発したのではないだろうか。このため、無人航空機(ドローン)の爆弾による衝撃的な力がタンク屋根部にかかり、溶断部を破断するが、タンク屋根が水平を保って空高く噴き飛んだのではないだろうか。

■ 2022224日、ロシアがウクライナに侵攻して軍事衝突が起こったが、両国の戦争でミサイルなどに代わって無人航空機(ドローン)によるタンク貯蔵施設への攻撃について、このブログで紹介したのは「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)が初めてだった。その後、無人航空機(ドローン)は飛躍的に発達して、現在は戦争の主要な武器となっている。対ドローン防御設備が開発されても「ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災」20262月)のように無人航空機(ドローン)による武器化の技術進展は、日本のドローンへのテロ対策を根本的に見直す必要性があることはこれまで述べてきたとおりである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Bbc.com, Moscow residents complain of black rain after largest Ukrainian attack hits oil refinery,  June  19,  2026

   Edition.cnn.com, Ukraine launches largest attack on Moscow since start of full-scale war,  June  19,  2026

   English.nv.ua, Satellite images reveal damage at Moscow refinery after Ukrainian drone strike,  June  21,  2026

   Ndtv.com, Video: Ukrainian Drone Hits Russian Refinery, Blows Tank Lid Off,  June  18,  2026

    Apnews.com, Ukrainian drones set a Moscow refinery ablaze in a major attack on the Russian capital,  June  19,  2026

    United24media.com, Moscow Oil Refinery After Ukrainian Drone Attacks: What Satellite Images Show,  June  19,  2026

    Abcnews.com,  Fuel storage tank's lid blown off as Moscow refinery targeted by Ukraine,  June  18,  2026       


後 記: タンク屋根が噴き飛び、メディアで映像が取りあげられましたので、調べることにしました。タンク構造が分かっているひとにとっては自明のことではありますが、このブログの趣旨から取り上げない訳にはいかないでしょう。調べるにあたって、これまでのロシアーウクライナ戦争で紹介したブログを読み返してみました。それで感じたのは、メディアの報道がだんだん希薄になってきたことです。以前は、被害国(今回の場合、ロシア)でも記事がありましたが、今回はありませんでした。フェースブックなどのSNS(ソーシャルネットワーク)の映像が主でした。ロシア国内では無人航空機(ドローン)による被災状況の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、動画が数多く投稿されていました。

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