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2026年7月5日日曜日

カタールの液化天然ガス施設で誤作動によって爆発・火災、死傷者79名

 今回は、2026621日(日)、カタールのラス・ラファン工業地帯にある国営石油のカタール・エナジー社が運営する液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災があり、死傷者79名の出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、カタール(Qatar)のラス・ラファン工業地帯(Ras Laffan)にある国営石油のカタール・エナジー社(Qatar Energy)が運営する液化天然ガス(LNG)施設である。

■ 事故があったのは、カタール最大の液化天然ガス処理施設の設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026621日(日)夕方、ラス・ラファン工業地帯にある液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災が発生した。

■ 爆発・火災により市内の空がオレンジ色に染まった。爆発は窓ガラスを揺らし、首都のドーハ中心部全域で揺れを感じたといい、ラス・ラファン工業地帯から70km以上離れた住民をもパニックに陥れた。

■ 発災にともない、緊急対応チームが直ちに派遣され、火災対応に従事した。

■ 事故にともない、死傷者が出た。当初、54人が負傷し、18人が行方不明になっていると発表されたが、その後、死傷者は13名が死亡、66名が負傷したと変更された。これは、湾岸諸国のエネルギー施設で発生した事故の中でも、最も死者数の多い事故の一つである。

■ カタール・エナジー社は、犠牲者の家族、友人、同僚に心からの哀悼の意を表するとともに、負傷者の一日も早い回復を祈り、この悲劇の影響を受けた人々への全面的な支援を約束した。 この事件で命を落とした人たちはインド人とパキスタン人の国籍であり、負傷者はカタール人、インド人、パキスタン人、バングラデシュ人、ケニア人、ガーナ人、タンザニア人、ナイジェリア人、ネパール人の国籍である。

■ カタールのエネルギー相は、今回の爆発は同国の輸出に影響を与えないと述べ、「これは事故であり、破壊行為や敵対行為ではない」と語った。

■ 政府は環境へのリスクは無いといい、爆発の原因究明に取り組んでいると述べた。

■ ラス・ラファン港は世界最大の人工港で、世界最大のLNG輸出施設を有している。米国・イスラエルーイランの戦争により、ラス・ラファン港はイランによる攻撃の標的となった。

■ プラントの生産は、202512月から意図的に完全に停止されていたが、2日前に再開されたばかりだった。爆発は作業員たちが中断していた操業を再開しようとしていた際に発生した。前夜、輸出ターミナルの再稼働に向けた作業中、工業地帯内のバルザン・ガス供給施設(液化天然ガス施設)で爆発と火災が発生したという。

■ カタール・エナジー社は、今回の事故は操業上の事故であり、破壊行為や敵対行為ではないと述べた。

■ ユーチューブでは、事故による火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeQatar LNG Explosion: Huge Blast In Qatar‘s Ras Laffan Area; At Least 54 Injured And 18 Missing| WION2026/6/28

●YoutubeExplosion at Qatar’s Ras Laffan LNG facility kills at least 132026/6/23

YoutubeQatar Fire: 12 Indians Among 13 Killed | 66 Injured in Qatar's Ras Laffan Gas Facility Explosion2026/6/23

被 害

■ 液化天然ガス処理施設の設備が爆発・火災で損壊した。

■ 事故にともない、79名の死傷者が出た。内訳は死亡者が13名、負傷者66名である。   

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。要因は操業中の技術的な不具合(誤作動)だという。

< 対 応 >

■ 621日(日)夜遅く、緊急対応チームが派遣された結果、火災は鎮火した。カタール・エナジー社の緊急対応チームとカタールの民間防衛隊が設備の火災を消火した。

■ 2026624日(水)、カタール・エナジー社は爆発・火災事故について調査を開始した。

■ カタール内務省は、事故を“内部爆発”といい、“技術的な誤作動” が事故の原因だと説明した。省は以前の声明で、ラス・ラファン工業地帯にある工場の1つで技術的な事故により内部爆発が発生したと説明していたが、その後、操業中の技術的な不具合が原因だったことを確認した。

■ カタールのエネルギー担当国務大臣であり、カタール・エナジーの社長兼CEOは、ラス・ラファン工業地帯の爆発・火災事故で亡くなった13名のうち12名がインド国民が犠牲になったことを受け、ドーハにあるインド大使館を訪れ、哀悼の意を表した。また、残りのひとりがパキスタン国籍であり、ドーハにあるパキスタン大使館を訪れ、弔意を表明した。

■ 2026626日(金)時点で、専門家のひとりは、つぎのような不明点を指摘している。

 ● 起動時に爆発を引き起こした原因: 特定の装置、進行中の運転、そして爆発を引き起こした故障。

 ● 再起動時に安全計装機能やその他の保護装置がバイパスまたはオーバーライドされたかどうか、また、それらがどのように機能したか。

 ● 約6か月間の停止後、プラントはどのような状態だったのか、そして再稼働手順と変更管理はその状態を考慮に入れていたのか。

 ● 調査結果がいつ報告されるのか、また、そのうちどの程度が公表されるのか。

 ● 長期的な影響や地域的な影響。

■ ラス・ラファン工業地帯の爆発は、世界有数の天然ガス生産国であるカタールにとって世界のエネルギー市場にさらなる混乱をもたらす可能性がある。カタールは、イランがホルムズ海峡を掌握したことで顧客への出荷ができなくなったため、生産を停止していた。イランが戦争の恒久的終結に向けた交渉を続ける中で、カタールは輸出ターミナルの再開に向けて動き出していた。これが液化天然ガス(LNG)施設での爆発と火災を引き起こしたという。

補 足

■「カタール」は、正式にはカタール国(カタールこく)で、中東のアラビア半島北東部に位置するカタール半島を領土とし、人口約250万人の石油生産国である。南はサウジアラビアと国境を接し、残りの領土はペルシャ湾に囲まれている。首都はドーハで国民の8割以上が住み、国土の大部分は平坦な低地の砂漠である。世界第3位の天然ガス埋蔵量と原油埋蔵量を背景に、高所得者層の多い経済国であり、液化天然ガス(LNG)輸出国である。

■「カタールのラス・ラファン工業地帯」はカタール北東海岸にあり、首都ドーハの北方約80kmに位置する都市規模の工業団地で、約115千人が従事している。工業地帯は国営石油会社のカタール・エナジー社が所有・管理しており、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業とカタール・エナジー社の合弁事業によって運営されている。この敷地内には、カタールの輸出用液化天然ガス(LNG)を生産するLNGプラント、ガス液化プラント、製油所、石油化学プラント、港湾、バルザンガスプラント(国内用LNG製造で今回の発災プラント)などがある。

 ラス・ラファン工業地帯は、近海のガス田で生産した天然ガスを移送し、液化天然ガス(LNG)に加工したうえで世界各地へ輸出する世界最大のLNGハブで、世界のLNG供給量の約20%を処理する。ラス・ラファン工業地帯は、米国・イスラエルの軍事行動への報復としてイランの攻撃を受けた後、32日からガス生産を停止していた。今回の爆発事故は、操業が中断されていたラス・ラファン工業地帯の設備を再稼働させる過程で発生したものである。

■「液化天然ガス」(Liquefied Natural GasLNG)は、メタンを主成分とした天然ガスを冷却し、液体にしたものである。マイナス162℃まで冷却することで天然ガスの体積が約600分の1に大幅に減少し、大量輸送や貯蔵するのに便利である。液化天然ガス(LNG)処理施設には、いくつかの種類があるが、一般的なプロセスの例を下図に示す。

所 感

■ 米国・イスラエルーイランの戦争で中東の石油施設が攻撃対象になっているが、今回はカタールの液化天然ガス(LNG)施設が操業上の問題で爆発・火災を起こしたというので、調べることとした。

 事故は、液化天然ガス(LNG)施設を運転立上げ中に、技術的な不具合(誤作動)で起こったという。原料の天然ガス、液化天然ガス(LNG)、冷媒のプロパンガスといった爆発性の高いガスを取扱っており、どこから漏れても大きな爆発が起こりやすい施設である。実際、死傷者79名という大きな人身事故であり、事故の兆候があり、従業員が現場に出て点検していた際に爆発が発生したのだろう。異常の兆候があった場合、必要最小限の人数で且つ物陰に隠れながらチェックするという教訓が活かされていないと感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Bbc.com, At least 13 killed and dozens injured after Qatar gas explosion,  June 21,  2026

     Offshore-energy.biz, Investigation into tragic incident ongoing: 13 dead, 66 injured in explosion and fire at QatarEnergy’s gas asset,  June 24,  2026

     News.yahoo.co.jp,  カタール「LNG拠点」ラスラファンで爆発事故…18人行方不明・少なくとも54人負傷,  June 24,  2026

     Silsafe.net, The Qatar Gas Plant Explosion: What We Know So Far,  June 26,  2026

     Arabnews.jp, Qatar gas plant blast kills 13, injures dozens, says energy minister,  June 23,  2026

     Apnews.com, Qatar says gas export terminal blast killed 13 as workers tried to resume operations,  June 22,  2026

    Abc.net.au, Thirteen killed and dozens injured in blast in Qatar's Ras Laffan gas processing facility,  June 23,  2026

    Euronews.com, 13 killed and 66 injured in explosion at Qatar’s largest energy site, authorities confirm,  June 22,  2026

    Aljazeera.net, قطر تعلن وفاة 13 عاملا وإصابة 66 في انفجار مصنع غاز برأس لفان,  June 22,  2026

    Asharq.com, ضحية وعشرات المصابين في حادث انفجاربمنطقة رأس لفان الصناعية,  June 22,  2026

    Mc-doualiya.com, 54 مصابا و18 مفقودا في انفجار بمنطقة رأس لفان الصناعية في قطر,  June 22,  2026


後 記: 20263月に「アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国で石油タンクが漏洩して火災」事故がありましたが、最近このブログの傾向としてすっかり中東の事例が多くなりました。今回の事例は液化天然ガス(LNG)の世界への供給という点から影響が大きいことから、貯蔵タンク事故では無いようですが、調べることとしました。調べていて一番驚いたことは、亡くなった人が13名で、うちインド国籍が12名、パキスタン国籍が1名という外国人ばかりだったということです。負傷者66名も外国籍の人ばかりです。カタールのラス・ラファン工業地帯もカタール・エナジー社が所有していますが、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業との合弁事業によって運営されているようです。なにかおかしいと思いますし、なにか狂っているように感じます。

 ところで、「報道の自由度ランキング2025年版」においてカタールは180か国中79位ですから、アラブ首長国連邦(UAE) の164位より高く、今回の事例でも事故要因は発表されていますが、依然として事故状況ははっきりしませんね。

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