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2026年2月15日日曜日

ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災

 今回は、20251231日(水)、ロシアのヤロスラヴリ州ルイビンスク市にあるテンプ石油貯蔵所の貯蔵タンクがウクライナの無人航空機(ドローン)の攻撃によって被災した事例を紹介します。被災した貯蔵タンクは無人航空機(ドローン)の防御設備を有していました。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)ヤロスラヴリ州(Yaroslavl)のルイビンスク市(Rybinsk)にあるロシア連邦国家準備金庁 (Rosrezerv) に従属するテンプ石油貯蔵所である。ルイビンスクはロシア軍の主要な物流・輸送拠点であり、石油貯蔵所はロシア北東部全域にわたる石油製品の貯蔵と配送の重要な拠点となっている。

■ 発災があったのは、テンプ石油貯蔵所内にある無人航空機(ドローン)の防御設備を有した燃料用の貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20251231日(水)早朝 、テンプ石油貯蔵所の貯蔵タンクがウクライナの無人航空機(ドローン)の攻撃によって火災が発生した。

■ 火災は大規模で数km先の遠いところでも見えた。地元住民によると、ルイビンスクでは空襲警報が発令された後、爆発音が鳴り響き、続いて火災が発生したという。

■ 被害のあったのは石油貯蔵所の南西地区で、2基の大型貯蔵タンクが損傷した可能性があるという。

■ これらのタンクは金属製のフレームとグリッド(メッシュ)で囲まれ、タンクから離れた場所で無人航空機(ドローン)を起爆させるよう設計された防御設備を有していた。この防御設備は前線の戦車(装甲車両)に装備されたものから派生したものである。

 石油貯蔵所の西側のタンクには、新しい防御設備によって防護されているのが20256月時点の衛星画像によって確認されていた。 1231日(水)に損傷したのはこの防護されたタンクだった。攻撃の標的は、ロシアが2024年から追加した防御設備で防護しようとしていた石油タンクだったとみられる。

被 害

■ 対ドローン防御設備を有していた貯蔵タンクが無人航空機(ドローン)の攻撃で火災となり、損傷した。

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 

< 対 応 >

■ 石油貯蔵所の火災は11日(木)には鎮火した

■ 202615日(月)、ドローン攻撃を受けたテンプ石油貯蔵所の衛星画像が公開され、大型燃料タンク1基が火災により全焼したという。火災が拡大したため、隣接する複数のタンクが大きな被害を受けた可能性がある。

■ ウクライナは数か月にわたり、ロシアの製油所や燃料貯蔵所を正当な軍事目標と称し、組織的に攻撃を続けている。これらの施設では、軽油やガソリンなどの石油がロシア軍への供給に利用されるか、海外に売却され、その収益はロシアの対ウクライナ戦争遂行の維持に役立てられているという。

補 足

■「ルイビンスク」は、ヴォルガ川流域に位置し、鉄道が通っており、交通と物流の中心地として機能している。

■「テンプ」(Tempo)は、ロシアの連邦国家予算機関でロシア連邦国家準備金庁 (Rosrezerv) に従属する国営機関である。この機関の主な機能は、緊急事態や動員の必要が生じた場合に備えて、国家備蓄品(物質的資産)を戦略的に保管・蓄積することである。テンプのプラントは、ロシアの国家備蓄システムであるロスレゼルブの一部であり、燃料貯蔵に使用されている。

■「対ドローン防御設備」は、戦車などの装甲車両から離れた場所でドローンを起爆させるために設計された金属フレームとメッシュ構造である。

一般にはコープ・ケージ(Cope Cage)やマンガル(Mangal)」と呼ばれる。ロシアのウクライナ進行の際に広く採用され、無人航空機(ドローン)の爆発物や投下された弾薬が戦車などの上部装甲に直接接触する前に起爆するよう設計されている。

 当初は、強力な対戦車ミサイルに対しては効果が薄いとされていたが、現代のドローン戦においては一定の効果があるとして、現在では米国や韓国など世界各国の戦車で採用や技術が進んでいるという。設計は単純な溶接鉄筋グリッドから高度な多層金属シートへと進化し、ドローン制御信号を無効にする電子戦 (EW) 妨害装置と組み合わせられることが多くなっている。

 ロシアがウクライナとの戦争で対ドローン防御の先駆者であったが、ウクライナ軍も自国の車両に対ドローン防御設備を模倣し始めている。

■ 戦車の 「対ドローン防御設備」は、同様の対策が製油所や石油貯蔵所でも講じられている。モスクワ近郊の製油所や石油貯蔵所では、インフラストラクチャー施設の広範囲を覆う金属ケーブルによる防御措置が実施されている。この設計は、直径8mmの金属ケーブルをかなりの高さに固定し、ケーブル同士の間隔を60cmにしてネットワーク状に敷設するという。標題の貯蔵タンクの対ドローン防御設備は戦車と同様、金属フレームとメッシュ構造で構成されている。

■「被災タンク」の大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、被災タンクの直径は約22.5mであり、高さを1520mとすれば、容量は6,0008,000KL級の貯蔵タンクである。油種は分からない。 

所 感

■ 貯蔵タンクの対ドローン防御設備が無人航空機(ドローン)の攻撃で突破され、タンクが火災になった事例である。もともと戦車の対ドローン防御として使用されていたものを貯蔵タンクに応用したものとみられる。ロシアーウクライナの戦争においてミサイルに変わって無人航空機(ドローン)による燃料タンク攻撃が主流になってきたことから、ロシアで開発されたものである。

「ロシア連邦タタールスタン共和国の石油タンクが長距離攻撃用無人機で被災」20251月)では、所感の中で「このような状況にあり、日本の貯蔵タンクを運営する一(いち)事業者にとっては、テロ対策をとろうにも限界を越えている。公的機関による無人航空機(ドローン)によるテロ対策を考えていく必要がある」と書いた。ロシアは、戦争遂行上、戦車の対ドローン防御方法を応用したのだろう。

 標題の画像の貯蔵タンクへの対ドローン防御の実施策を見ると、既設タンク群への対応はコストの高いものになっている。しかし、新しいタンク建設時に考慮すれば、コストは下がるだろう。しかし、一番の欠点はタンク火災時の消火活動に支障があることだと思われるが、今回の事例では、消火活動について一切報じられていない。(戦争事なので、報道されないだろうが)


備 考

  本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Uv.ua, Спутниковые снимки подтвердили значительные разрушения «защищенной» части нефтебазы в Ярославской области РФ,  January  01,  2026

   English.nv.ua, SBU strikes major Rosrezerv oil depot in Russia’s Yaroslavl Oblast with long-range drones,  January  01,  2026

  English.nv.ua, Satellite Images Show Damage From Strike on Oil Depot in Yaroslavl Region on December 31,  January  06,  2026

  Pravda.com.ua, Ukraine's Security Service hits oil storage facility in Russia's Yaroslavl Oblast – Ukrainska Pravda sources,  January  01,  2026

  Ukrinform.net, SBU hits major oil depot in Russia's Yaroslavl region – SBU,  December  31,  2025

   Uawire.org, Ukrainian drones strike Russia’s Rosrezerv fuel depot in Yaroslavl region, sparking major fire,  December  31,  2025

  Babel.ua, SBU drones attacked a large oil depot in the Yaroslavl region of the Russian Federation,  December  31,  2025

  Militarnyi.com, Satellite Images Show Damage From Strike on Oil Depot in Yaroslavl Region on December 31 ,  January  07,  2026

  Dw.com, ВСУ: Украинские беспилотники атаковали нефтебазу Росрезерва,  December  31,  2025

  Pravda.com.ua, Нефтебазу в Ярославской области поразили дроны СБУ – источник,  December  31,  2025

   24tv.ua, “Защищенная” часть нефтебазы в Ярославской области России значительно разрушена: спутниковые снимки ,  January  01,  2026


後 記: 1年ぶりにロシアーウクライナ戦争によるタンク事例をブログに取り上げました。2022年の「ウクライナ各地で石油貯蔵所が攻撃によってタンク火災」を報じて以来、両国のタンク事例をときおりに取り上げ、ブログで紹介してきましたが、この12年でドローン戦争はますます激化し、貯蔵タンクなどのインフラストラクチャーの対ドローン防御設備が実施されていることにびっくりします。戦争は技術を進歩させるというのを感じますが、人が疲弊し、国を荒廃する見返りとしての技術進歩ってありえないでしょう。

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