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2025年9月26日金曜日

米国ワイオミング州の製油所でアスファルトタンク火災

 今回は、2025920日(土)、米国ワイオミング州シンクレアにあるHFシンクレア社の シンクレア製油所でアスファルトタンク火災が起こった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ワイオミング州(Wyoming)カーボン郡(Carbon County)シンクレア(Sinclair)にあるHFシンクレア社(HF Sinclair Corp.)の シンクレア製油所(Sinclair Refinery)である。シンクレア製油所の精製能力は94,000バレル/日である。

■ 事故があったのは、シンクレア製油所内にあるアスファルトタンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025920日(土)正午頃、製油所のアスファルトタンクで火災が起こった。

■ 黒煙が立ち昇り、何マイルも離れた遠い場所からも濃い煙が見えた。

■ 住民の間には、町や製油所が危険にさらされているのではないかという不安が広がっていた。一方、カーボン郡緊急管理コーディネーターはメディアに対し恐れる必要はないと語った。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 当局は、製油所付近のワイオミング州道76号線の東側を封鎖した。

■ この地域の元ボランティア型消防署長は、「製油所内やその付近で火災が発生することは稀です。ここ数年、ここで火災があったという話は聞いていません」といい、「臭いがきつい。あまりいい匂いじゃないね。煙が人に危険でないことを願っています」と語った。

■ 緊急管理当局は、煙が町まで到達しない限り、火災による健康被害はないと発表した。

緊急管理当局は、国立気象局と協力して、この地域の風速を監視し、3時間ごとに煙が移動する速度と方向をモデル化して予測した。緊急調整官らは、シンクレア製油所とシンクレアの町とも直接連絡を取っており、「現時点では懸念はない」と語った。

■ 消防隊は泡消火剤を使って消火活動を行った。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

■ 当局は火災の原因を調査中だという。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画は投稿されなかった。

被 害

■ アスファルトタンク1基が焼損した。

■ 負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ 消防隊は泡消火活動によって午後1時までに火災を鎮圧した。シンクレア警察は緊急警報で午後110分に鎮火したと報告した。

■ シンクレア製油所はメディアに対し、消防隊員が午前1115分にタンク火災の現場に駆けつけ、対応計画に従って消火したと語った。また、シンクレア製油所は、「人々と地域社会の安全は依然として私たちの最優先事項です」と述べた。

補 足

■「ワイオミング州」(Wyoming)は、米国西部の山岳地域に位置し、人口約57万人に州である。

「カーボン郡」(Carbon County)は、ワイオミング州の南部に位置し、人口約14,500人の郡である。

「シンクレア」(Sinclair)はカーボン郡の中部に位置し、人口約400人の町である。

■「 HFシンクレア・コーポレーション」HF Sinclair Corp.は、ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料、再生可能ディーゼル、特殊潤滑油、特殊化学品、特殊アスファルト・改質アスファルトなどの製品を製造・販売するエネルギー会社である。米国テキサス州ダラスに本社を置いている。同社は7つの複合製油所を運営しており、総原油処理能力は1日あたり678,000バレルである。ワイオミング州シンクレア(94,000バレル/日)のほか、ワイオミング州シャイアン(52,000バレル/日)、カンザス州エルドラド(135,000バレル/日)などである。

■ タンク火災と報じられているが、タンクの仕様や被災写真は無く、「発災タンク」は分からない。アスファルトタンクということなので、容量はそれほど大きくなく、1,0003,000KL程度の固定屋根式円筒タンクと思われる。

所 感 

■ タンク火災の状況は分からない。事故の写真を見れば、結構大きな炎が出ており、タンクは大きな損傷が発生しただろう。黒煙の幅が大きく、タンクから防油堤に漏れ、堤内火災になっていることも考えられる。

 アスファルトは重質分であり、火災を起こしにくいと考えがちであるが、アスファルトタンクで注意すべきことは、水による突沸、軽質油留分の混入、運転温度の上げすぎ、屋根部裏面の硫化鉄の生成などにより火災を引き起こすことの多いタンクである。最近の事例を下記に示す。

 ●「米国イリノイ州の石油プラントでアスファルトタンクが爆発、死傷者2名」20235月)

 ●「米国ワシントン州のアスファルト・プラントで爆発・火災、タンクへ延焼」 202010月)

 ●「米国ミズーリ州セントルイスでアスファルトタンクが火災」 20226月)

■ 一方、消火活動は消防隊が出動し、泡消火活動を行ったという。消火活動は1時間程度で制圧したと報じられている。大容量泡放射砲システムは必要なく、放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車で消火できると規模だったとみられる。通常、消火活動は泡放射後20分以内に制圧できなければ、難しいタンク火災だとみられるが、この点、適切な消火活動だったと思われる。ただ、炎が大きく、本当に1時間程度で消火できたか疑問は残る。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Cowboystatedaily.com, Asphalt Tank Catches Fire At Sinclair Refinery, Black Smoke Seen For Miles, September 21, 2025

     Timesnownews.com, Sinclair Refinery Fire Captured On Video, Thick Black Smoke Seen For Miles | Watch, September 21, 2025

     Bigfoot99.com, Black Smoke Plume Concerns Residents of Sinclair, September 22, 2025


後 記: 今回の事例は歴史のある製油所のタンク火災です。住民約400人のシンクレアという町で起こったもので、グーグルマップで見ると、製油所の隣に住宅地があり、おそらく住人は製油所に勤務していると思われます。23年前に従業員の一部が解雇され、住民数は350人程度に減っているようです。日本から見れば、こんなところに製油所があるの?という気がします。安価な原油を通油できるから成り立っているので、日本だったらとうの昔に無くなっているでしょう。世の中、景気が良くなると、事故が増えるように感じていますが、今回の事故はそうではなく、モチベーションの下がった人為的な要因があるのではないでしょうか。それにしても、製油所のタンク火災でありながら、ドローンによる空撮画像が無いのは久方ぶりのニュースです。

2025年9月21日日曜日

米国テキサス州のITCの貯蔵タンク火災の状況と原因

 今回は、2025910日(水)、米国化学物質安全性委員会(CSB)が“Terminal Failure: Fire at ITC(ターミナル事故:ITCにおける火災)をユーチューブに投稿した。この事故は、20193月に起こった米国テキサス州ディアパークのインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)のタンク大火災の原因を調査した結果をアニメーションの動画にまとめたものです。

 ●Youtube, Terminal Failure: Fire at ITC”2025/09/10Youtubeの動画は、画面の設定ボタンを押して字幕をオンにして自動翻訳を日本語にすれば、画面上に和訳の文章が出てきます)

 今回のブログはユーチューブ動画の画面を静止画にして和訳の説明を付けたものです。一部和訳の文章がおかしいところは修正しました。なお、詳細はCSBの調査報告書をもとにまとめたブログ「米国テキサス州ディアパークのタンク大火災の原因(2019年)」20238月)を参照してください。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国のテキサス州(Texas)ハリス郡(Harris County)ディアパーク市(Deer Park)にあるインターコンチネンタル・ターミナル社(Intercontinental Terminals Company; ITC)のタンク施設である。インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は様々の企業石油製品や化学製品を保管するために使用されているバルク液体貯蔵ターミナルである。

■ 発災は、ヒューストン(Houston)都市圏にあるターミナル施設のタンク設備で起こった。ターミナル施設には合計242基のタンクがあり、石油化学製品の油やガス、燃料油、バンカー油、各種蒸留油を貯蔵しており、総容量は1,300万バレル(207KL)である。


< 事故の状況および影響 >

■ 2019317日の事故当日、ポンプが壊滅的に故障し、貯蔵タンクから周囲の防油堤区域に大量の可燃性液体が漏れ出した。可燃性液体が発火して大規模の火災が発生し、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は流出を遮断したり、止めたりすることができなかった。




■ 火災は燃え広がり、勢いを増し、同じ防油堤内にある14基に燃え移り、最終的に3日後に鎮火した。インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)の事故は施設におけるいくつかの重大な問題が原因だった。特にインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)には、ポンプが故障したことをオペレーターに警告するためのモニターが無かった。


■ また、可燃性液体の放出を安全に止めることのできる遠隔操作の緊急遮断弁が無かった。タンク貯蔵所の設計は他のタンクも非常に脆弱であることを意味していた。ポンプが故障すると、壊滅的な火災を防ぐには手遅れだった。

■ 事故当時、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)のディアパーク・ターミナルには、242基の貯蔵タンクが設置されていた。それらのタンクの1基はTank80‐8と呼ばれていた。それは地元企業がリースした地上式常圧貯蔵タンクだった。このタンクは容量80,000バレル(12,700KL)で、ブタンとナフサの可燃性液体混合物でブタンリッチのナフサ製品を貯蔵するために使用されていた。

■ 2019年、316日夕方、ブタンを積んだタンクローリー2台がターミナルに到着した。これらのタンクローリーから360バレル(57KL)のブタンがTank80‐8に降ろされた。タンク循環ポンプは新たに追加されたブタンをすでにタンク内にあるブタンリッチのナフサと混合した。ポンプは一晩中オンのままだった。



■ その日の荷下ろし後、Tank80‐8はほぼ満杯になった。インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は翌日正午頃、タンク内液をケミカルタンカーに移送する予定だった。しかし、317日午前725分頃、タンクのデーターが一連の予期せぬ変化を示した。これらには、ポンプの作動圧力、タンクの平均流量、およびタンク全体の容量の変化が含まれる。しかし、これらの変化はいずれも中央制御室で警報を鳴らすほど重大なものではなかった。そのため、中央制御室のオペレーターには発生しつつある問題について警告されなかった。


■ のちに実施した調査時、米国化学物質安全性委員会(The U.S. Chemical Safety Board ; CSB)は、ポンプシャフトのモーター側に取付けられた軸受が故障していることを発見した。これにより、ポンプの位置ずれが生じ、ポンプが作動し続けると、大きな振動が発生した。振動により、ポンプのメカニカルシールを固定していたグランドナット4個が緩んでしまった。グランドナットの緩みが大きくなって、午前930分までにメカニカルシールが部分的に開いてしまった。ポンプがまだTank80‐8内の液体を循環させていたため、タンク内のブタンリッチのナフサ製品が部分的に開いたシールから漏れ始めた。




■ 945分頃までに4個のグランドナットが完全に外れ、ポンプのメカニカルシールが完全に機能を失った。故障したポンプからさらに多くの可燃性液体が漏れ出した。漏れた液体はポンプ周囲に溜まり、可燃性ベーパーが地面近くに漂い、低地に集まった。しかし、Tank80‐8付近の屋外で作業していたオペレーターは異常なことに気が付いていなかった。また、ターミナルには、可燃性ガスモニターやポンプの過剰な振動を記録する機器モニターなどオペレーターに問題を警告できるようなモニターは設置されていなかった。

■ さらに、タンク容量の減少によって中央制御室で警報が鳴ることもなかった。その結果、Tank80‐8からの流出を隔離または安全に保つための措置は講じられなかった。30分で流出した可燃性液体の量はコンクリートミキサー車3台分に相当した。


■ 午前10時、ポンプ付近の可燃性ベーパーが引火し、大きな火災が発生した。数分以内にインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)の緊急対応チームのメンバーが現場に到着したが、タンクには遠隔操作の緊急遮断弁が装備されていなかった。


■ また、火災が周辺地域を包囲していたため、緊急対応要員はタンクのメインバルブにアクセスして手動で締めることができなかった。そのため、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)はTank80‐8内の大量の可燃性液体の流出を阻止することができなかった。このタンクは共通の防油堤区域内にある他の貯蔵タンク14基に囲まれていた。各タンクを区切る区画がなかったため、これらのタンクは地面に沿って広がる大規模の火災に対して無防備だった。




■ その日遅く、他の緊急対応要員が追加の消防設備と資機材をもって到着し、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)の緊急対応チームを支援した。しかし、彼らの懸命な努力にもかかわらず、火災は拡大し続けた。最終的には防油堤区域内にある他の14基の貯蔵タンクに広がった。


■ 翌日の318日の夕方までにインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は追加の資機材が必要だということを認識した。彼らは緊急対応サービス・プロバイダーに支援を要請し、プロバイダーは、翌朝319日に現場に到着した。救助隊が到着すると、事態は収拾し、残りのタンク火災を消火し、再燃を防ぐことができた。火災は最終的に320日の午前3時頃に消し止められた。

■ 3日間燃え続けた大規模の火災により、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)の職員や緊急対応要員に負傷者は出なかった。しかし、地元コミニュティは深刻な混乱を経験した。これには、ベンゼンに関連する空気質に関する懸念による何回かの屋内退避命令が含まれている。322日午後1215分頃、タンク貯蔵所を囲む二次防油堤の壁が部分的に崩壊した。放出された炭化水素製品、消火泡、汚染水の混合物が漏れ出し、最終的にヒューストン船舶航路に到達した。その結果、ヒューストン船舶航路の7マイル(11km)区間と近隣の多くのウォーターフロント公園が閉鎖された。汚染を除去する作業は数週間にわたって続いた。




< 事故の原因(安全上の問題点 >

■ 米国化学物質安全性委員会(CSB)は調査を開始し、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)における事故の重大性に5つの安全上の問題が影響していることを突き止めた。これらはポンプの機械的完全性、可燃性ガス検知システム、遠隔操作の緊急遮断弁、タンク貯蔵所の設計、PSMRMPの適用性である。

■ 最初の安全性の問題は、ポンプの機械的な完全性である。機械的な完全性は、重要なプロセス機器が正しく設計・設置され、適切に操作および保守されていることを確認するための管理として定義される。機械的な完全性により、不十分なメンテナンスや頻度の少ないメンテナンスによる予期しない機器故障の可能性が軽減される。米国化学物質安全性委員会(CSB)はインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)がポンプを含む特定の機器に対して機械的完全性手順を実施していたものの、その手順にはメンテナンス手順、ポンプの交換および再構築のトレーニング、定期的な予防保全活動など、ポンプの管理に関する具体的な要件が記載されていないことを発見した。

■ さらに、同社の機械的完全性の手順は、同社が規制化学物質としてリストした物質を取扱う、または保管するために使用される機器にのみ適用され、そのリストにはNAPAとブタンは含まれていなかった。従って、Tank80‐8とそれに関連するポンプは同社の機械的完全性検査手順の対象ではなかった。すべてのポンプに対する正式な機械的完全性プログラムと非常に危険な化学物質のサービスがあれば、この事故は防げたはずである。この種の予防保全プログラムによりインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は、循環ポンプが壊滅的に故障する前に、循環ポンプの問題を特定して修正する追加の機会を得ることができたはずである。




■ インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)で発見された2番目の安全上の問題は、可燃性ガス検知システムである。ガス検知システムは多くのプロセス産業において、事故による放出の潜在的な影響から人、財産、近隣コミュニティを保護するために使用されている。たとえば、ガス検知システムはガスまたはベーパー濃度が通常よりも高いことを感知すると、警報を発する。この場合、火災や爆発が発生する前に放出を止める措置を講ずることができる。


■ インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)では、2014年に危険性検討チームが、Tank80‐8の近くに可燃性ガス検知システムを設置することを推奨したが、米国化学物質安全性委員会(CSB)は、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)がこの推奨を実施しておらず、設置を行わなかった理由を文書化していなかったことを発見した。そのため、2019年には可燃性ガス検知システムが設置されていなかったため、タンクから可燃性液体が最初に放出されたことを職員に知らせる警報は鳴らなかった。その結果、誰も気づかず、止めようともせず、火災が発生するまで約30分間、放出が続いた。大量の可燃性物質または非常に危険な物質を扱うターミナルやその他の貯蔵タンク所では、施設に可燃性ガス検知システムを設置する必要がある。


■ こうしたタイプのシステムは、可燃性物質の存在についてオペレーターに警告を発し、大規模の火災や爆発が発生する前に対策を講じることができる。そのため、米国化学物質安全性委員会(CSB)はAPI(米国石油協会)に対し、ターミナルおよびタンク施設のAPI規格を更新し、可燃性ガス検知システムに関する説明を含めるよう勧告した。

■ 米国化学物質安全性委員会(CSB)が発見した3番目の安全上の問題は、遠隔操作できる緊急遮断弁である。インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)の火災に関したタンクには、遠隔操作の緊急遮断弁が装備されていなかった。これらのバルブは、液体漏出の際に地上貯蔵タンクの内容物をポンプなどの関連機器から隔離するために使用される。その代わりにTank80‐8 には手動遮断弁が装備されていたが、タンクの周囲で火災が発生すると、安全にアクセスすることができなくなった。その結果、タンク内の可燃性液体が故障したポンプを通って流れ続け、拡大する火災に燃料を供給してしまった。

■ 可燃性物質または非常に危険な物質を地上の大気圧貯蔵タンクを所有する企業は、遠隔操作の緊急遮断弁をせっちする必要がある。これらのバルブは安全な場所から遠隔的に迅速に放出を停止できるように設計されており、それによって、より大きな事故を軽減することができる。

■ インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)で発見された4番目の安全上の問題は、タンク貯蔵所の設計である。全米防火協会(NFPA)は、NFPA30“Flammable and Combustible Liquids Code”と呼ばれる引火性および可燃性液体の基準で、タンク貯蔵所の設計に関する最低要件を定義している。米国化学物質安全性委員会(CSB)調査中に、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)のタンク貯蔵所が、建設当時適用されていたNFPA30の要件にほぼ準拠して設計されていたを発見した。 しかし、タンク貯蔵所の設計上の要素により、緊急対応者が最初の火災を遅らせることが困難になり、タンク貯蔵所内の他のタンクに火災が広がることになった。これらの要素には、多数のタンクが密集していることや、封じ込めエリア内に区画がないことなどが含まれる。その結果、炭化水素や化学製品、消火泡、汚染水が、タンク貯蔵所内に溜まってしまい、最終的に施設内の二次防止堤の壁を破壊し、地元の水路を大規模に汚染してしまった。

■ 米国化学物質安全性委員会(CSB) は、NFPA30がタンク貯蔵所の設計と間隔に関する最低要件を定義している一方で、FM GlobalAPI(米国石油協会)によるその他の自主的な業界ガイドライン文書では、より堅牢なタンク貯蔵所の設計基準が提供されていると指摘している。 

 インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)は、追加の業界ガイダンスの推奨事項が自主的なものであり、また、それらの多くがタンク貯蔵所の建設後に制定されたものであるため、実施する必要はなかったという。しかし、制定された基準どおりにすることで、この事故の拡大を防ぐことができたかもしれない。


 そのため、米国化学物質安全性委員会(CSB) は、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)に対してディアパーク・ターミナルのすべての新規および既存のタンクについて、タンク貯蔵所の設計評価を実施するよう勧告した。評価では、消火活動の影響を考慮して、封じ込め設備の壁と排水システムの設計の妥当性を評価する必要がある。

■ 最後に、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)で特定された5番目の安全性の問題は、PSM Process Safety Management)とRMP(Risk Management Program)の適用性である。Tank80‐8のような常圧貯蔵タンクは、米国労働安全衛生局(OSHA) のプロセス安全管理またはPSM基準の対象外である。これは、タンクの危険性を効果的に特定し、制御する正式なプロセス安全管理プログラムを実施する必要がインターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)に無かったことを意味する。たとえば、Tank80‐8が米国労働安全衛生局(OSHA)PSM基準の対象であった場合、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)には、故障する前に循環ポンプの問題を特定できる機械的完全性プログラムが必要になっただろう。また、同社は、可燃性ガス検知システムを設置するという2014年の勧告に従い、その解決策を適時に文書化する義務があった。

■ 米国化学物質安全性委員会(CSB)は、別な2件の事故についても調査を行い、常圧貯蔵タンクの免除が事故の重大性に影響したと判断した。これらの事故により、死者、多数の負傷者、そして重大な環境被害が発生した。米国化学物質安全性委員会(CSB)は、この免除を廃止されるべきだと考える。その結果、米国化学物質安全性委員会(CSB)は米国労働安全衛生局(OSHA) に対して、PSM基準から常圧タンクの免除について勧告した。さらに、米国環境保護庁(EPA)のリスク管理計画または RMP基準はTank80‐8に適用されなかった。これは、この基準は全米防火協会(NFPA)のNFPA30の可燃性等級が4の材料にのみに適用されるのに対して、ナフサとブタンの混合物は3と評価されているため、免除されたからである。米国労働安全衛生局(OSHA) PSM基準と同様、米国環境保護庁(EPARMP規則がタンクに適用されていれば、たとえばポンプが漏れていたとしても追加の安全対策が講じられていたはずである。これらには、可燃性ガス検知装置や遠隔隔離装置が含まれる。放出をすばやく特定して止め、大規模の火災を防ぐことができたはずである。

■ NFPA3の定格材料は重大な爆発や火災を引き起こしており、そのうちのいくつかは米国化学物質安全性委員会(CSB) によって調査している。米国化学物質安全性委員会(CSB)は、これらの材料がRMP基準の対象になるべきだと考えている。そのため、米国化学物質安全性委員会(CSB)は米国環境保護庁(EPA)に対して RMP基準の適用範囲をNFPA3以上の可燃性等級を持つすべての可燃性液体(混合物を含む)にまで拡大するよう勧告した。

■ これは非常に大規模かつ混乱を招く出来事だった。大規模の火災は3日間燃え続け、施設に150百万ドル以上の物的損害を与え、周辺地域に深刻な危険をもたらした。環境にも大きな影響を与えた。施設に適切な安全対策が講じられていれば、この悲惨な出来事は防ぐことができたはずである。連邦規制における重大な欠陥も、この事故の深刻さの一因となった。米国化学物質安全性委員会(CSB) は、特に米国労働安全衛生局(OSHA) と米国環境保護庁(EPA)に対して、こうした種類の化学物質や施設に対する規制監督の拡大を勧告することで、今後、同様な事故が発生しないようにすることができると信じている。米国化学物質安全性委員会(CSB) の安全ビデオをご覧いただきありがとうございます。