今回は、2025年4月24日(木)、米国オクラホマ州パーセルにある石油生産関連の塩水処理施設で落雷によるタンク火災が起こった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ郡パーセル(Purcell)にある石油生産関連の塩水処理施設である。
■ 事故があったのは、パーセル170番通り26536番地付近にある塩水処理施設のタンク設備である。施設内には塩水タンクなど8基のタンクがあった。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2025年4月24日(木)午前6時頃、オクラホマ郡パーセルにある塩水処理施設でタンク火災が起こった。パーセル地域では早朝から雷雲が通過していた。
■ 午前6時10分頃、 170番通り付近にある塩水処理施設で塩水タンクが火災になっているという通報が警察に寄せられた。
■ 通報を受け、パーセル消防隊が出動して現場に10分かからず到着した。現場は激しい炎に包まれていた。消防隊は、塩水処理施設で炎上している複数のタンクを目にした。
■ 火災現場ではタンク2基が火災になっていた。
■ 当初、消防隊は火がついていないタンクの冷却を行った。泡消火剤の放射準備ができたあと、消防車による泡消火活動を行った。
■ 火災は落雷によるものとみられる。
■ ユーチューブやフェースブックには、塩水処理施設の火災を伝える動画が投稿されている。
●Youtube.com、「Large
tank battery fire at oil well site in Purcell sparked by lightning, fire chief
says」(2025/04/24)
●Youtube.com、「Sky 5 shows aftermath of tank
battery fire sparked by lightning in Purcell」 (2025/04/24)
●Facebook.com、「Earlier this morning, firefighters responded to a tank battery in Purcell that caught fire after being struck by lightning」 (2025/04/24)
被 害
■ 塩水処理施設にあった塩水タンク2基が焼損した。 タンク内にあった油が焼失した。
■ 負傷者は出なかった。
< 事故の原因 >
■ 火災の原因は落雷とみられる。
< 対 応 >
■ 火災は午前7時20分までに鎮火した。
■ 消防隊は火災を鎮火させたのち、午前7時50分頃に現場を離れた。
補 足
■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中部にあり、州の南隣はテキサス州で、人口約409万人の州である。
「マクレーン郡」(Mclain)は、はオクラホマ州中部に位置し、人口約41,600人の郡である。
「パーセル(Purcell)は、マクレーン郡の南部に位置し、人口約6,600人の都市であり、同郡の郡庁所在地である。
■ 「塩水処理施設」は、天然ガス井の生産で付随してきた塩水をタンクローリー車などで集積して、油水分離し、水(塩水)はポンプで地下に戻すプロセスである。事故のあった「塩水処理施設」のプロセスの詳細はわからないが、一般的な塩水処理施設のプロセスフローの例は図のとおりである。
■「発災タンク」は塩水処理施設内の円筒タンクである。一般的に塩水タンクはFRP製が使用されるが、熱に弱い。被災写真を見ると、タンクの半分以上が溶けて無くなっている2基のタンクがFRP製とみられる。発災タンク2基を除けば、そのほかのタンクは自立しており、鋼製とみられる。これらのタンクの中にFRP製の塩水タンクがあれば、消防活動による冷却放水が効いたのかもしれない。
グーグルマップで発災タンクを調べると、直径は約3.5mで、高さを5.0~7.0mと仮定すれば、容量は48~67KLとなる。なお、被災写真では円筒タンク(固定式屋根タンク)が8基あるが、グーグルマップではタンクが9基ある。グーグルマップの撮影以降に1基が取り外されている。新しい設備が建設されているが、その設備に1基が転用されているのではないだろうか。
所 感
■ 塩水処理施設といっても油や天然ガスが含まれており、落雷によるタンク火災は起こり得る。ただ、今回の事例は、発災以前にタンクの1基が取り外されて、タンク内の可燃性ガス条件が変化しており、引火しやすくなっていたのではないかという疑問がある。
石油生産関連の中で塩水処理施設のタンク火災を紹介した主なブログはつぎのとおりである。今は従来より異常気象が多く、落雷の頻度が増えていると思われ、石油生産関連の施設では認識しておく必要があろう。
●「米国テキサス州カーンズ郡の石油生産関連施設で落雷によるタンク火災」( 2015年5月)
●「米国ノースダコタ州で塩水処理施設のタンクが爆発・火災」(2019年2月)
●「米国テキサス州ノットの塩水処理施設でタンク爆発、死傷者4名」( 2024年11月)
■ 消防隊は現場に10分足らずで到着し、消火活動を始めている。このため、最初は隣接タンクへの冷却を行い、泡消火の準備ができたあと、泡消火活動を行っている。この種の施設では、燃え尽きさせる方法をとることも少なくないが、積極的消火戦略が成功している稀な事例である。消防隊は1時間ほどで鎮火させ、1時間半後には現場を後にしている。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Koco.com, Large Tank battery
fire at oil well site in Purcell sparked by lightning, fire chief
says, April 24,
2025
・Okenergytoday.com, Tank battery struck by lightning near
Purcell, April 24,
2025
・Purcellregister.com,
Lightning causes oil tank blaze,
May 01, 2025
後 記: 今回の事例は、テキサス州でなくオクラホマ州で起こったタンク火災ということでまとめることとしました。最近、テキサス州のこの種のタンク火災のメディア情報は味も素っ気もない報道が多くなってきました。しかし、オクラホマ州での情報でも事故内容に迷わされました。最初は石油生産施設という風に理解していましたが、その後、石油生産関連の塩水処理施設だとわかりました。つぎに発災場所ですが、グーグルマップでなかなか特定できませんでした。被災写真とグーグルマップの写真では施設に違いがあります。結局、設備配置が変化しているのが正解だと認識しました。(こんな小さい?ところを気にするのは、狭い日本に住んでいるからだと言われそうですが)
0 件のコメント:
コメントを投稿