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2025年6月7日土曜日

エクアドルの製油所において燃料タンクまわりで爆発・火災、負傷者3名

 今回は、2025526日(月)、エクアドルのエスメラルダス県にある国営石油会社ペトロエクアドル社エスメラルダス製油所の用役エリアにある燃料タンクまわりで火災が発生し、その直後、爆発が起こり、負傷者3名が出た事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、エクアドル(Ecuador)エスメラルダス県(Esmeraldas)にある国営石油会社ペトロエクアドル社(Petroecuador)のエスメラルダス製油所である。製油所の精製能力は11万バレル/日である。

■ 事故があったのは、エスメラルダス製油所の用役エリアにある燃料タンク2基である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2025526日(月)午前1030分頃、エスメラルダス製油所内の用役エリアにある燃料タンクまわりで火災が発生し、その直後、爆発が起こった。

■ 製油所からは大きな黒煙と炎が立ち上った。火災による煙は、海岸沿いのエメラルダス市の上空を覆った。製油所従業員のひとりは「大きな音が聞こえ、みんな走り出した」と語っている。

■ 発災にともない、エスメラルダス消防署は消火資機材とともに消防隊を出動させた。

■ 事故にともない、現場から従業員が避難した。住民は施設から大量の煙が上がり、続いて爆発が起こるのを目撃し、警戒を強めた。エクアドル警察は、近隣住民を避難させた。しかし、避難者の人数は明らかでない。 

■ エクアドルのエネルギー大臣は、状況は制御下にあると述べたが、この声明は住民の懸念を和らげるのにほとんど役立たなかった。

■ 火災による負傷者はなく、5人が煙を吸い込んだことによる軽度の症状で医療処置を受けたと発表されたが、消防署によると、3人が被害を受け、 病院に搬送されたという。

■ 警察と軍の兵士らは、安全を確保し、緊急車両の通行を可能にするため、製油所への道路を封鎖した。

■ ペトロエクアドル社は、製油所の操業を施設と従業員の安全を守るために停止したと発表した。 

■ エスメラルダス製油所付近の学校は休校になった。

■ 火災の原因は不明である。ペトロエクアドル社は、火災発生時にタンク内にあった燃料の量を明らかにしなかった。一方、メディアの中には、貯蔵タンクの故障が起因と報じているところもある。

■ ペトロエクアドル社は、燃料タンク2基と変電所に損傷が確認され、操業能力に影響が出ていると発表した。同社は声明で「発災により主要装置と補助蒸気・電力システムが緊急停止した」と述べた。その後の調査で被害の内容はつぎのとおりだという。

 ●燃料タンクの損傷(タンク番号;Y-T2501および Y-T2502

 ●火災により社内消費用の燃料油システム(配管、計器、ポンプ、その他の関連機器を含む)の損傷

 ●火災の直接的な結果として、変圧器、電気パネル、モーター制御センター、フィーダー、コントローラー、周波数インバーター、配線、計器、その他の関連機器に影響を及ぼし、変電所が全面的な損害が発生

 ●火災現場付近のタンク、機器、ケーブル、配管などを含む機器への熱放射による損傷は検査中である

■ 必要な調査や工事のため、製油所は6月まで稼働停止となる。

■ ユーチューブなどには火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

 YoutubeIncendio en la Refinería de Esmeraldas2025/05/27

 ●YoutubeUn incendio de gran magnitud se registró en la Refinería de Esmeraldas2025/05/27  

 ●Facebook #refineriadeesmeraldas #incendio Refinería de Esmeraldas sale de operación, tras explosión en un tanque de combustible aproximadamente a las 10:00 de este lunes 26 de mayo se registro la detonación2025/05/27

  ●YoutubePetroecuador declaró a la Refinería de Esmeraldas en emergencia2025/05/31


被 害

■ 被害の概要はつぎのとおりである。

 ●燃料タンクの損傷(タンク番号;Y-T2501および Y-T2502

 ●火災により社内消費用の燃料油システム(配管、計器、ポンプ、その他の関連機器を含む)の損傷

 ●火災の直接的な結果として、変圧器、電気パネル、モーター制御センター、フィーダー、コントローラー、周波数インバーター、配線、計器、およびその他の関連機器に影響を及ぼし、変電所が全面的な損害が発生

■ 負傷者は3名発生した。

■ 事故により、製油所従業員が避難したほか、近隣の住民が避難した。製油所の近くの学校が休校になった。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は不明で調査中である。

< 対 応 >

■ ペトロエクアドル社は、事故発生後、直ちに緊急時対応計画を発動し、対応した。

■ ペトロエクアドル社は、火災は午前1130分頃に鎮火したと発表した。

■ エスメラルダス製油所で発生した火災を受け、エクアドル空軍(FAE)の航空機部隊が派遣され、支援および緊急制御活動を実施した。第21戦闘航空団のアルピア・ヘリコプターは、被災地上空を飛行し、上空からの監視と調整作業を支援した。

■ 529日(木)、エスメラルダス製油所は60日間の非常事態を宣言した。今回発生した火災で燃料タンクの一部が損傷したことを受け、1か月で2度目の非常事態宣言となった。

■ 今年4月末、ペトロエクアドル社は、同地域を襲ったマグニチュード6.3の地震による被害を受け、製油所に対し60日間の緊急事態を宣言していた。首都から北西に182km、コロンビアとの国境に位置するエスメラルダス市にあるエスメラルダス製油所では、マグニチュード6.3の地震が発生し、一部の設備が損傷していた。

■ ペトロエクアドル社は、526日に発生した燃料油タンクの火災による被害を受けたエスメラルダス製油所の操業について72日(水)に再開する予定だという。しかし、FCC装置などは7月中に操業を再開することはできないと明言しており、代替変電所への電気接続の計画的な移行に依存しているという。

■ エクアドルは南米有数の石油生産国であり、収入は石油輸出に大きく依存している。2024年には、同国は約475,000バレル/日の原油を生産し、そのうち約4分の3を販売して、86億ドルの石油輸出収入を得ている。

 しかし、昨年は過去60年間で最悪の干ばつに関連した度重なる停電により生産が中断され、水力発電用貯水池の水位が史上最低にまで低下した。今年3月には、大規模な燃料パイプラインの漏れにより、25,000バレル以上の原油が3つの河川に流出し、原油輸出も停止を余儀なくされた。

補 足                                                                          

■「エクアドル」(Ecuador)は、正式にはエクアドル共和国といい、南アメリカ大陸北西部に位置する共和制国家で、人口約1,813万人である。北にコロンビア、東と南にペルーと国境を接し、西は太平洋に面する。本土から西に1,000kmほど離れたところにガラパゴス諸島を領有する。

「エスメラルダス県」(Esmeraldas)は、エクアドルの北部に位置し、人口約53万人の県である。

「エスメラルダス市」は、エスメラルダス県の西に位置する県都で、人口約15万人の都市である。

■「ペトロエクアドル社」(Petroecuador)は、1989年に創設されたエクアドルの国営石油会社である。

ペトロエクアドル社は、精製能力11万バレル/日のエスメラルダス製油所のほかに2つの製油所を保有し、それぞれ45,000バレル/日と20,000バレル/日の生産能力がある。

■「エスメラルダス製油所」は1970年代後半に建設され、エクアドルの主要パイプラインで輸送される同国のアマゾン地域産の原油を原料としている。その生産は国内消費と輸出の両方を目的としており、ガソリン、ディーゼル燃料、国内ガスなどの派生製品が生産されている。

 エスメラルダス製油所はエクアドル最大の約11万バレル/日の原油を処理する能力があるが、通常はフル稼働を下回る稼働率で操業している。製油所の操業を維持し強化するために、技術的検討が行われ、 2019年に新たな改造工事が実施され、昨年9月に新フェーズが完了した。 1年前にも火災があったが、深刻な影響はなかったといわれている。

■「発災タンク」は燃料タンク2基と報じられているが、詳細仕様はわからない。グーグルマップで調べると、被災地区に直径約10mの固定屋根式円筒タンク2基がある。高さを10mと仮定すれば、容量は約780KLである。メディアの中に容量2,544㎥と報じているところもあるが、直径10mのタンクでは高さが30mを超え、高すぎる。被災写真を見ると、タンク側板に保温材が取り付けられているので、油種は重油相当だとみられる。

所 感

■ 今回の爆発事故を撮影した動画を見ると、①最初に白い湯気のような煙が立ち昇ったあと、大きな災が湧き上がっている。②その直後、爆発が起き、炎と黒煙が立ち昇っている。③火災はタンクの屋根部からというより、タンク防油堤のような広い個所から上がっている。④被災写真を見るとタンク屋根は噴き飛んではいない。

 このように見てくると、爆発・火災は燃料タンクの防油堤内または堤外に流出していた油によるものではないだろうか。燃料タンクの油種は重油相当だとみられるので、この油が流出していたとしても爆発に至るとは考えにくい。防油堤外の別な軽質油が流出したのではないかと思われる。しかし、最初に白い湯気のような煙は説明がつかない。

 事故は偶発的に起きたのではなく、日常点検や設備管理の抜けによって発災したように思う。

■ 火災は消火活動約1時間で鎮火したと報じられている。最盛期の火災の写真を見ると、かなり激しい。一方、エクアドル空軍が派遣され、ヘリコプターで上空を飛行し、監視と調整作業を支援したとあり、実際の消火活動はもっと時間がかかったと思われる。しかし、タンク火災というよりプロセス装置の火災に似ており、火災に関与した油量が限定され、この油が燃え尽き、消火活動時間が比較的短かったと思われる。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    Reuters.com, Petroecuador declares emergency at Ecuador's biggest refinery after fire damages,  May  30,  2025

    France24.com, Fire halts production at Ecuador's biggest oil refinery,  May  27,  2025

    Jen.jiji.com, Fire halts production at Ecuador's biggest oil refinery,  May  27,  2025

    Gulfnews.com, Ecuador declares emergency at fire-hit oil refinery,  May  30,  2025

    Hydrocarbonprocessing.com, Petroecuador declares emergency at Ecuador's biggest refinery after fire damages,  May  30,  2025

    Apnews.com, Ecuador declara en emergencia su refinería más importante tras un incendio reciente,  May  30,  2025

    Eluniverso.com, Petroecuador advierte ‘déficit en la oferta de derivados’ como consecuencia del incendio en la Refinería de Esmeraldas, según un informe,  May  31,  2025

    Dw.com, Ecuador: incendio consume parte de mayor refinería petrolera,  May  26,  2025

    Primicias.ec, Refinería Esmeraldas estará fuera de operación más de un mes tras daños por incendio en tanques de combustible,  June 01,  2025

    Jornada.com.mx, Petroecuador declara emergencia en Refinería Esmeraldas,  May  29,  2025

    Gk.city, El incendio en la Refinería Esmeraldas, explicado,  May  30,  2025

    Elcomercio.com, Un incendio se registró en la Refinería Esmeraldas este 26 de mayo de 2025 ,  May  27,  2025

    Teleamazonas.com, Incendio en la Refinería de Esmeraldas está bajo control,  May  27,  2025

    Fae.mil.ec, Helicópteros de la Fuerza Aérea brindan apoyo en incendio registrado en la Petroquímica de Esmeraldas,  May  28,  2025


後 記: 今回の事例は「タンク爆発」という標題を考えていました。しかし、調べていくと、どうも違うようだと思い始めました。結局、タンク爆発・火災を否定するメディアはいませんでした。これは、タンクを含む大きな炎の被災写真に引きずられたためで、発災事業者も状況を把握できず、事故内容は深まりませんでした。

 なお、エクアドルの事故をブログで紹介するのは初めてです。報道の自由化ランキング2024年を調べてみました。エクアドルは世界で110位でした。ちなみに日本は70位です。報道の自由度ランキングは、政治的内容、経済的内容、法的枠組み、社会文化、安全性の5指標を評価してランキング化しています。2024年の大きな変化としては、5つの指標のなかで「政治的内容」が世界的に大きく下落しているといいます。その理由は、政治的圧力により世界中で報道の自由が脅かされ、ジャーナリスト保護の原則が欠如し始めているといいます。

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