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2023年2月13日月曜日

米国テキサス州の貯蔵タンク地区でプロパンが爆発して、死傷者6名

 今回は、2023117日(火)、米国テキサス州ハッチンソン郡ボーガーにあるWRBリファイニング社の石油精製所のタンク地区で爆発・火災があり、6名の死傷者を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ハッチンソン郡(Hutchinson)ボーガー(Borger)にあるWRBリファイニング社(WRB Refining LP)の石油精製所である。 WRBリファイニング社は、米国のフィリップス66社(Phillips 66)とカナダのセノバス・エナージー社(Cenovus Energy)の合弁会社である。

■ 事故があったのは、 WRBリファイナリー社のボーガー石油精製所のタンク施設で、通称ジョンソン・タンク地区と呼ばれている。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023117日(火)午前1015分頃、ジョンソン・タンク地区で爆発があり、火災が起こった。

■ 現場からは炎とともに渦巻く黒い煙が立ち昇った。タンク地区の近くにいた人によると、2回の爆発音を聞いたという。

■ 発災に伴い、バーガー消防署が出動して消火活動を行った。

■ 事故により作業員6名が負傷し、病院に搬送された。うちふたりは危篤状態で、UMC 熱傷センターにヘリコプターで移送された。被害者はいずれも特定されておらず、 WRBリファイナリー社で直接働いていたのか、外部の請負業者に雇われていたのかは分かっていない。その後、122日(日)、入院していた被災者ひとりが亡くなったと報じられた。死亡したのは、 建設会社のオースチン・インダストリアル社(Austin Industrial inc)の従業員である。

■ 近くの住民のひとりは、「タンク地区で火災と黒煙を見たのは初めてでした。救急ヘリコプターが飛んできたので、何かが起こったのだろうと思いました」と語っている。

■ 発災に伴い、製油所の近くの高速道路136号線の閉鎖が実施された。

■ 1月18日(水)、フィリップス66社がテキサス州環境品質委員会に提出した報告書によると、火災とそれに伴うプロパンの放出は複合施設のジョンソン・タンク地区で発生したといい、プロパンが放出した部分は塞がれているという。放出したプロパンは5,000ポンド(2,268㎏)といわれているが、プロパンが気体の状態なのか、圧縮された輸送可能な液体の状態なのかは明らかではない。

被 害

■ タンク地区内において構造物が爆発・火災で損傷した。

■ 爆発・火災により、死傷者6名が出た。内訳は死者1名、負傷者5名である。

■ 現場近くの高速道路が6時間にわたって閉鎖された。

< 事故の原因 >

■ プロパンの放出による爆発とみられるが、どのような構造物から放出されたのか、引火源は何かなどは分かっていない。

< 対 応 >

■ 火災は消防署などの消防隊の消火活動によって午後230分頃消された。

■ 閉鎖されていた高速道路は6時間後の午後430分に再開された。

■  WRBリファイニング社や親会社のフィリップス66は、テキサス州と地方自治体の当局と緊密に協力して対応している。

補 足

■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約2,900万人の州である。

「ハッチンソン郡」(Hutchinson)は、テキサス州の北部に位置し、人口22,000人の郡である。

「ボーガー」(Borger)は、ハッチンソン郡の南部に位置し、人口約12,500人の市で同郡の最大の都市である。

■「WRBリファイニング社」(WRB Refining LP) は、2006年に設立され、ボーガー石油精製所(Borger Refinery)を運営している。同社はテキサス州ヒューストンに拠点を置き、テキサス州ボーガーとイリノイ州ウッドリバーに石油精製所がある。 WRBリファイニング社は、米国のフィリップス66社(Phillips 66)とカナダのセノバス・エナージー社(Cenovus Energy)の合弁会社である。

■「ボーガー石油精製所」は、1926 年に建設され、テキサス州ハッチンソン郡ボーガーにある。精製施設は、約 6,000 エーカーの土地にあり、920 人以上の従業員を雇用している。ボーガー石油精製所の精製能力は146,000バレル/ (23,200KL/日)である。石油精製所は、主に中程度のサワー原油と天然ガス液を処理し、原料油はパイプラインを通じてテキサス州西部やカナダなどから移送されている。主な製品は、燃料(ガソリン、航空燃料、ディーゼル)、天然ガス液、溶剤、石油化学コークスと硫黄などである。

■「オースチン・インダストリアル社」(Austin Industrial inc )は1918年に設立された建設会社で、本部はテキサス州ダラスにある。現在は3つの子会社をもち、従業員7,000名をかかえ、土木、商業、産業部門の多様な建設工事を請け負っている。

所 感

■ 事故要因は、タンク地区で行われていた工事の設備で使用されていたプロパンに引火して爆発が起こったものと思われる。近くに貯蔵タンクがあるが、このタンクに損傷や火災が起きていないようなので、建設工事の施設だけの問題だとみられる。何かの施設が建設されているようだが、通常のタンク地区にあるような施設ではなく、はっきり分からない。 

■ 貯蔵タンクに関連する「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」20117月)を参考にする以前の問題で、死傷者6名を出すような不適切な工事管理があったとみられる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Reuters.com , Six injured in fire at Phillips 66 Texas refinery tank farm,  January  18,  2023

      Newschannel10.com, Highway reopens 6 hours after fire at Phillips 66 Borger Complex,  January  18,  2023

      Abc7amarillo.com, Refinery Fire: At least 6 injured, Highway 136 between Borger, Stinnett closed for hours,  January  18,  2023

      Marketwatch.com, Phillips 66: Fire at Texas Oil Refinery Injured Six, 5,000 Pounds of Propane Released,  January  18,  2023

      Dailymail.co.u, Three people are injured in 'major' explosion and fire at fuel storage facility in northern Texas,  January  17,  2023

      Hydrocarbonprocessing.com, Six injured in fire at Phillips 66 Texas refinery tank farm,  January  18,  2023

      Zehllaw.com, Phillips 66 Refinery Fire Injures 6 Workers Near Borger, Texas,  January  18,  2023

      Arnolditkin.com, At Least 6 Injured in Phillips 66 Refinery Fire Near Amarillo, Texas,  January  18,  2023

      Metro.co.uk, Three injured after explosion sets fuel storage facility on fire,  January  17,  2023

      Mrchub.com, Six injured in fire at Phillips 66 Texas refinery tank farm,  January  18,  2023

      Myhighplains.com, 6 hospitalized, traffic impacted after Tuesday Johnson Tank Farm fire,  January  18,  2023

      Fox8live.com, 6 injured in fire at Texas oil refinery,  January  18,  2023

      Tankstoragemag.com, Six injured at Texas refinery,  January 18,  2023

      Amarillo.com, Man dies from injuries received in Borger Complex fire,  January  24,  2023


後 記: タンク地区で火災があり、負傷者が出たという一報から調べ始めました。どうやらタンク火災ではないようなのですが、メディアの記事によって内容に違いがありました。悩ませたのが、発災場所でした。石油精製所内ではないのは分かりましたが、“ジョンソン・タンク地区”がはっきりと別な道路名を明記しているところもあり、グーグルマップで探しましたが、それらしいところはありません。やっとストリートビューで被災写真と同じ工事施設が写っているので、特定できました。発災要因もほとんどの記事は調査中ということで分かりません。プロパンが放出したと報じているメディアがあり、事故要因としました。タンク地区でもプロパンを扱うような設備や配管があるように思いませんでしたし、工事でもプロパンを使用する設備は聞いたことはありませんが、タンク地区の工事で爆発性のあるプロパンを使用することは避けるべきだという思いから採用しました。6名の死傷者が出るような事故でしたが、取材記事は曖昧な点が残り、まだ新型コロナの影響があるのでしょうかね。

 

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