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2020年8月3日月曜日

中国福建省のバイオマスプラントでタンクが爆発・火災、負傷・不明5名

 今回は、2020年7月12日(日)、中国の南東部に位置する福建省龍岩市にある龍巌卓越新能源股彬有限公司(龍岩卓越新エネルギー社)のバイオマス・プラントのタンク地区にあるタンク群で爆発・火災が起こった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、中国の南東部に位置する福建省龍岩市新洛区町東宝山にある龍巌卓越新能源股彬有限公司(龍岩卓越新エネルギー社、Longyan Zhuoyue New Energy Co Ltd)のバイオマス・プラントである。同社は、主にガターオイル(廃食用油)などの廃油から再生可能エネルギーを製造している。


■ 発災したのは、バイオマス・プラントのタンク地区にあるタンク群である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020712日(日)午前1010分頃、バイオマス・プラントで爆発があり、火災となった。


■ プラントからは大きな炎が空に向かって舞い上がった。その後、高温の炎によるタンク内の圧力上昇により、小爆発が何回か聞こえた。現場から300mほど離れたところにいた住民のひとりは、突然、複数の爆発音を聞いたあと、プラントは炎に包まれたと語っている。

■ 発災に伴い、龍岩市の消防署が出動した。

■ タンク地区では、機械のメンテナンスが行われていた。このメンテナンス中に誤って事故を起こしたとみられる。検査と修理作業中に、突然、爆発し、その後、火災を引き起こした。火災源はディーゼル燃料で、タンクで発生したとみられる。タンク地区には約150KLのタンクが3基あり、バイオディーゼル、廃油、植物油のタンクのほか、周辺には大小様々なタンクが27基あった。爆発したタンクは上部が噴き飛んでおり、激しく炎と黒煙が舞い上がり、つぎつぎと延焼していき、火災エリアは3,900㎡に達した。 

■ 一方、最初の発災源の液体ついては、ディーゼル燃料のほか、灯油、ホルムアルデヒド、グリセリンとメディアによって異なった液名が報じられている。

■ 事故に伴い、少なくとも3人が負傷し、2人が行方不明となっている。けが人についても、多くの負傷者が治療のために病院に送られたと報じているメディアもある。

■ 近隣の住民数百人が避難した。なお、近くの工場は事故の影響を受けていない。

被 害

■ バイオマス・プラントのタンク地区にあるタンク複数基が火災で損壊した。

 タンク内に入っているバイオディーゼル、廃油などが焼失した。


■ 事故に伴い負傷3名、行方不明2名が出た。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、発災前に機械のメンテナンスが行われ、このメンテナンス中に誤って事故を起こしたとみられるので、保全工事関連のミスだと思われる。

< 対 応 >

 ■ 火災の状況を聞いて支援部隊が出動し、8時間後には、130名を超す消防士と40台の消防車が配備された。


■ 消防活動は、燃焼物の特性や救急条件に応じて、冷却制御をとり、延焼防止に努めた。消火活動では、消防車、高所放水車(スクアート車)、大容量送水装置、大容量泡放射砲などが配備されたたほか、プラントの中核部分の消火活動には、消火用ロボットが使用された。しかし、事故現場の特別な場所、水源の不足、タンク間距離の短さ、タンクの長時間燃焼による輻射熱によって消火活動と救助活動は難航した。


■ 7月14日(火)午前3時30分頃、タンク地区の火災は制圧された。

補 足

■「中国」は、正式には中華人民共和国で、東アジアに位置し、人口約14億人の社会主義共和制国家である。

 「福建省」(ふっけん/フーチェン・省)は、中国の東南に位置し、台湾海峡をはさみ台湾と面しており、人口は約3,900人の省である。

 「龍岩市」(りゅうがん/ロンイェン・市)は、福建省の西部に位置し、人口約276万人の地級市である。


■「龍巌卓越新能源股彬有限公司」(龙岩卓越新能源股份有限公司、Longyan Zhuoyue New Energy Co Ltd)は、2001年に設立し、福建省龍岩市に本社を置き、バイオマス製品の研究・開発・製造・販売を行っている。バイオディーゼル、工業用グリセリン、バイオエステル可塑剤、水性アルキド樹脂などのバイオマス製品の製造に焦点を当てた再生可能エネルギー会社である。

 同社は20年近くの開発期間を経て、3箇所のバイオディーゼル生産拠点を保有しており、龍岩東宝山工場、龍岩平林工場、厦门卓越生物质能源有限公司で、年間生産能力は24万トン超である。

■ バイオマス・プラントは各種あり、龍巌卓越新能源股彬有限公司龍岩東宝山のプロセスは分からないが、廃食用油からバイオディーゼル燃料のプロセス例を下記に示す。

■「発災タンク」は、内液がディーゼル燃料(または灯油、ホルムアルデヒド、グリセリン)というだけで、はっきり分からない。150KLタンクが近くにあるようなので、直径6m×高さ6mクラスのタンクとみられる。グーグルマップで調べても、龍巌卓越新能源股彬有限公司の詳細マップは出てこないので、分からない。同社のウェブサイトでは、タンク地区を中心としたドローン映像があるが、詳しい大きさは推測できない。


■「龍巌卓越新能源股彬有限公司ウェブサイトのタンク地区ドローン映像」を「被災写真」と見比べたものが下記写真である。北の端にあるタンクは、屋根板が外れ、側板が座屈している。これが発災タンクなのか、あるいは高温の炎によるタンク内の圧力上昇によって小爆発が生じたタンクなのか判別はつかない。タンク地区は広く黒煙で覆われており、被災は複数基どころではない。また、タンク以外に南側にある建物や機器の損傷状況がひどい。

所 感

■ 事故は日曜の午前10時頃に起こっており、プラントで何らかの異常があり、保全員が呼び出されたものだと思われる。機械のメンテナンス中に誤って事故を起こしたとみられるので、保全工事関連のミスだと思われる。事故の初期段階と思われる爆発的な火炎は広範囲にわたっており、タンクから漏れ出した油が一気に火災になったのだろう。


■ 事故現場の特別な場所、水源の不足、タンク間距離の短さ、タンクの長時間燃焼による輻射熱によって消火活動と救助活動は難航したと消防隊が語っているように、 山の斜面の段々畑のような場所にタンクがひしめいて建てられており、消防アクセスは最悪である。150KL級のタンクを大きいと見るか、小さいと見るかによって変わるが、このようなプラントが設置されていることに驚く。


■ 初期段階の消火戦略は防御的戦略をとったと思われるが、消防アクセスの悪さによって積極的戦略をとろうにも泡消火の消防資機材を配置できなかっただろう。このため、2台の消火ロボットを使用している。日本の千葉県市原市が保有している放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」(泡放射能力4,000リットル/分、有効射程70m)に比べると放水性能は落ちるが、福建省の消防隊員が操作しており、同省では実際の一般火災で使用していると思われる。


■ 消火までに41時間超を要しており、泡消火活動も実施しているようだが、実質的には燃え尽きるのを待たざるを得なかったものと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Tasnimnews.com, Massive Fire Erupts after Explosion at Biofuel Plant in China,  July  13,  2020

     ・Reuters.com, Two missing in south China biofuel plant blast - state media,  July  12,  2020

     ・Baike.baidu.com,龙岩卓越新能源股份有限公司,  July  14,  2020

     ・News.cgtn.com, 2 injured, 2 missing after fire at new energy firm in SE China,  July  12,  2020

     ・Garda.com, China: Blast reported at biofuel plant in Longyan (Fujian province),  July  12,  2020

     ・Industrialfireworld.com, Flames Spread Through Tank Farm at Chinese Biofuel Plant,  July  12,  2020

     ・Mrcplast.com, Explosion rocks at biofuel plant in south China,  July  14,  2020

     ・Argusmedia.com, Three-month closure at Dongbao biodiesel plant: Update,  July  15,  2020

     ・Theunionjournal.com, Several injured & missing after explosion, massive fire at biofuel plant in China (VIDEOS) — RT World News,  July  13,  2020

     ・Xinhuanet.com,  福建龙岩一新能源公司发生火灾 已有多人受伤,  July  12,  2020

     ・News.fznews.com.cn,  卓越新能源公司火灾救援:现场救援有序展开 火情得到初步控制,  July  12,  2020



後 記: 今回の事故では、中国国内外の多くのメディアが報じています。海外メディアは早い一報だけですが、中国ではドローンによる映像の写真がありますので、事故の状況を視覚で知ることができます。中国では、消防署が積極的にドローンを活用していますので、おそらく、消防署から提供されたものだと思います。一方、事故の状況は多くの関係者が語っているようですが、つじつまが合わないことが多々あります。発災の液名や負傷者の人数などです。これは、中国の事故に関する報道の特徴のような気がします。事実を知っている人が被害にあっていると思われるので、本当のことが分からないこともあるでしょう。ただ、続報が出されません。行方不明者がどうなったか気になりますが、あまりにも大きな事故ニュースになったためか、報道規制がかかったものと思っています。

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