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2020年8月27日木曜日

米国テキサス州ペリカン島の石油ターミナルでタンク爆発、負傷者2名

  今回は、2020年5月19日(火)、米国テキサス州ガルベストンのペリカン島にあるペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社の石油ターミナルでタンクが爆発し、負傷者2名を出した事故を紹介します。

<発災施設の概要>  

■ 発災があったのは、米国のテキサス州(Texas)ガルベストン郡(Galveston)ガルベストン(Galveston )あるペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社(Pelican Island Storage Terminal)の石油ターミナルである。

■ 事故があったのは、ガルベストンのペリカン島にある石油ターミナルの貯蔵タンクである。



< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020年5月19日(火)午後3時20分頃、石油ターミナルの貯蔵タンクで爆発があった。 


■ ガルベストン消防署は、ペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社からタンクが爆発して、負傷者が出ている旨の通報を受け、直ちに出動した。


■ 負傷者は2名で、爆発があった後にケガをした。当時、200万ガロン(7,570KL)の入った重質原油製品のタンクまたは近くで溶接作業をしていたという。負傷者は市内の病院に搬送された。


■ 消防隊は、泡モニターノズルを用いて活動した。火災は1時間ほどで制御下に入った。

■ 石油ターミナルの近くにあるテキサスA&M大学ガルベストン・キャンパスでは、予防措置として避難所への避難指示を出したが、構内にいた人数は限定的だった。

被 害   

■ 石油ターミナル内のタンク1基が爆発で屋根部を損壊した。

■ 事故に伴う負傷者が2名発生した。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、保全/火気工事のミスとみられる。


< 対 応 >

■ 火災は泡消火によって消された。


■ 避難指示は午後430分頃に解除された。


■ ユーチューブやフェースブックでは、ドローンによる映像が投稿されている。

Youtube  LIVE: Air 11 over tank explosion on Pelican Island in Galvestonを参照)

補 足

■「テキサス州」(Texas)は、米国の南部に位置し、人口約2,900万人の州である。

「ガルベストン郡」(Galveston)は、メキシコ湾沿いに位置し、人口約34万人の郡である。

「ガルベストン」(Galveston )は、メキシコ湾に面したガルベストン島とペリカン島からなる人口約5万人の市である。

「ペリカン島」(Pelican Island)は、ガルベストン市の一部で、シーウルフ・パークウェイの道路でつながっている。

 なお、ガルベストンでは、2012年2月「米国テキサス州ガルベストン島でタンクが爆発・火災」の事故が起こっている。

■「ペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社」(Pelican Island Storage Terminal)は、テキサス州ヒューストンに本社を置き、ペリカン島に200万バレル(32万KL)の貯蔵容量を有しており、重質燃料油、カーボンブラックオイル、減圧蒸留流出油、6番燃料油(高粘度残留油)、原油などの重質系を取り扱っている物流石油会社である。 


■「発災タンク」は、200万ガロン(7,570KL)のタンクと報じられている。この数値がタンク容量を指すのか、タンクに入っている量を指すのかは曖昧である。グーグルマップで調べてみると、発災タンクは直径約44mである。被災写真によりタンクの直径:高さの比(4:1)から、タンク高さは約11mである。従って、容量は16,700KLとなる。ペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社にある大きなタンクは約18基である。1基あたり15,000KLとして総容量は27万KL級の石油ターミナルとなり、同社の貯蔵容量と整合する。

 内液は重質原油製品(Heavy Crude Oil Products)と報じられており、重質原油なのか原油の重質油製品なのかは分からない。タンク型式はコーンルーフ式であるが、タンクは保温が施されており、重質系の油が入れられていたのは間違いない。


所 感

■ 今回の事故は、保全/火気工事のミスによるもので、米国CSB(化学物質安全性委員会) 「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」が活かされていない事例である。

 一方、被災写真とグーグルマップの過去の写真を見比べてみると、最近、石油ターミナルのタンク屋根で改造工事が行われていることが分かった。大気開放のタンクベントのひとつを利用して配管が設置されている。発災タンクでは、屋根部の配管が途中で折れて地上に落下している。爆発の影響で折損したのか、配管工事の途中で地上に置かれたものかは分からないが、発災タンクで溶接作業が行われていたので、この配管を通じて可燃性ガスに引火して爆発したものだと思われる。

■ 最近の事例で「米国ニュージャージー州でアスファルト処理工場のタンクが爆発」20206月)でも、「住宅地が近いので、タンクベントを利用して不活性ガスの封入あるいは除害装置への連絡管が設置されているのではないだろうか(爆発しているので、不活性ガス封入ではないと思われる) 」と指摘した事故と同種の事例ではないかと思う。ただし、配管は1箇所のみであり、目的はよく分からない。 


■ タンクの爆発事例としては、タンク屋根が全周的に側板から外れていないので、比較的小規模の爆発だったと思う。消火作業は、タンク屋根と側板のはがれたわずかな隙間部を通して泡を張り込んでいる。消火時間は分からないが、避難指示が発災から1時間後に解除されているので、難航した消防活動ではなかったと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Click2houston.com, 2 workers injured in oil tank explosion in Galveston,  May 19,  2020

      ・Tankstoragemag.com, Tank explosion injures two in Galveston, Texas,  May 20,  2020

      ・Galvnews.com, Explosion rocks Pelican Island tank farm, two injured,  May 20,  2020

      ・Khou.com, 2 workers injured in oil tank explosion near Texas A&M Galveston campus,  May 19,  2020

      ・Hydrocarbonprocessing.com, 2 people injured in oil tank explosion,  May 19,  2020

      ・Firehouse.com, Two Workers Hospitalized Following Oil Tank Explosion,  May 20,  2020

      ・Bicmagazine.com,  Oil storage tank explodes in Galveston, injures two,  May  19,  2020



 後 記: 今回の事故は、最近の事例と同様、新型コロナウィルスの影響で報道記事の内容が乏しいものでした。しかし、さすがに米国らしくドローンによる映像が流され、記事を補完するに十分なものでした。爆発事故の割にタンク屋根が大きく壊れておらず、タンク内液に注目したのですが、“重質原油製品”というあいまいな言葉で、着火から爆発過程の推測に悩みました。しかし、ドローンによる映像をよく見ると、タンク屋根で配管改造工事が行われていることが分かり、タンク内液に執拗なこだわりはなくなりました。また、ペリカン・アイランド・ストレージ・ターミナル社には親会社があり、関係が複雑そうで、ターミナルの貯蔵容量などに混乱がみられましたが、ブログでは触れませんでした。

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