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2020年7月15日水曜日

米国ミシシッピ州の油井施設のタンク火災をフォーム・トレーラーで消火

 今回は、2020年7月7日(火)、米国のミシシッピ州ジェファーソン・デイビス郡バスフィールドの南にある油井施設で落雷によって起こったタンク火災をフォーム・トレーラーで消火した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国のミシシッピ州(Mississippi)ジェファーソン・デイビス郡(Jefferson Davis)バスフィールド(Bassfield)の南にある油井施設である。

 

■ 発災があったのは、油井施設にある容量350バレル(55KL)の貯蔵タンクである。 

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020年7月7日(火)午後5時頃、油井施設にある貯蔵タンクが落雷によって火災となった。

■ 発災に伴い、コリンズ消防署(Collins)が出動したほか、プレンティス消防署(Prentiss )、グッドホープ消防署(Goodhope)、グランビー消防署(Granby) が支援に駆け付けた。


■ 消防隊が現場に到着すると、4基あるタンクの1基が破損して火災になっており、隣接する3基のタンクが危険にさらされていた。火災タンクにもっとも隣接しているタンクは、激しい炎の衝突に見舞われていた。

■ コリンズ消防署はフォーム・トレーラー(泡モニターノズルと泡薬剤を搭載したトレーラー)を持ち込み、ほかの消防隊は給水を担当し、消火活動を行った結果、鎮火することができた。


■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

被 害

■ 油井施設のタンク(FRP製塩水タンクとみられる)が火災で損壊した。


■ 事故に伴う負傷者の発生はない。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は落雷とみられる。

補 足

■「ミシシッピ州」(Mississippi)は、米国の南東部に位置する州で、人口約1,280万人である。 

 「ジェファーソン・デイヴィス郡」(Jefferson Davis)は、ミシシッピ州の南部に位置し、人口約11,000人の郡である。  

 「バスフィールド」(Bassfield)は、ジェファーソン・デイヴィス郡の中央部に位置し、人口約250人の町である。

 「コリンズ」(Collins)は、コビントン郡(Covington)の中央部に位置し、約2,500人の町ある。


■「発災タンク」の容量は55KLであり、報道では書かれていないが、類推すると、直径約3.8m×高さ約5.0mほどの大きさとなる。発災タンクは火災の熱によって座屈しており、油井施設の油混じりの塩水タンクでFRP製だとみられる。FRP製の塩水タンク1基以外の残りの3基は鋼製の油タンクと思われる。なお、発災タンクの所有者(事業者)は報じられておらず、分からない。


■「フォーム・トレーラー」 (Foam Trailers)とは、泡モニターノズルと泡薬剤タンク(トート)を搭載したトレーラーである。日本の大容量泡放射砲はトレーラーに設置されているが、泡薬剤タンク(トート)は別な搬送手段となっている。これをもっと汎用的なものとして、泡モニターノズルと泡薬剤タンク(トート)をいっしょのトレーラーで搬送できるようにしたもので、米国では、石油火災に対応する機材として広く使用されている。2015年には、ニューヨーク州知事が州内19箇所の消防署に戦略的に配備して話題になった。搬送が容易で機動性があり、大型化学消防車を配備するより安価である。一方、給水方法を別にとる必要があり、規模の小さな消防署では、相互応援体制をとる必要がある。逆に、相互応援体制を確立しておけば、消防署は多くの機材(および人員)を保有しなくてもよい。

フォーム・トレーラーの例

所 感

■ 今回の事故で注目されるのは、フォーム・トレーラーと相互応援体制である。泡モニターノズルと泡薬剤トートを搭載したフォーム・トレーラーが実際の消火活動に使われた情報は初めてである。これまで、油井施設の塩水タンクの火災は燃え尽きるのを待つことが少なくなかった。今回は油タンクが火災タンクに近く、延焼の恐れが高いことと、消防機材としてフォーム・トレーラーを持っていることから、積極的消火戦略をとったものと思われる。


■ この消火戦略が成功したのは、消防署の相互応援体制である。発災した現場はジェファーソン・デイヴィス郡バスフィールド(人口約250人)である。一方、フォーム・トレーラーを搬送してきたのは、隣の郡であるコビントン郡コリンズ(人口約2,500人)の消防署である。給水の支援に携わったのは、近隣の町のプレンティス消防署、グッドホープ消防署、グランビー消防署である。このように郡や町を越えた相互応援体制はその日の思い付きでやれるものではなく、事前の周到な計画に基づいていると思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com, Lightning Touches Off Crude Oil Storage Tank in Mississippi,  July  07,  2020

    ・Wjtv.com, Lightning causes oil fire in Jefferson Davis County,  July  08,  2020

    ・Dailydispatch.com, Collins Fire Department, Jefferson Davis County put out oil tank fire in Bassfield,  July  09,  2020

    ・Wdam.com, CFD, Jefferson Davis Co. put out oil tank fire in Bassfield,  July  08,  2020



後 記: 今回の油井施設のタンク落雷事故では、発災現場の地理と消防活動を指揮した消防署や支援した消防署が随分バラバラで離れているなと疑問を感じていました。調べていくと、実際のフォーム・トレーラーと相互応援体制について知ることができました。この消防機材の発想とそれを運用する相互応援体制は米国らしさを感じました。消防活動を指揮した消防署(コリンズ消防署)は撮影した消防活動の画像をメディアに提供しており、理解を深めました。米国ではよくあることですが、このような情報公開を望みますね。

 ところで、 「Foam Trailers」 を日本語に訳そうと考えてみましたが、「泡牽引車」では泡薬剤を牽引する車のようです。もともと泡モニターと泡薬剤の2つの言葉を省いた用語で、 これを理解しやすくするには長い文章(例えば、「泡薬剤トート付き泡モニター設置トレーラー」になるので、安易に「フォーム・トレーラー」としました。  


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