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2020年7月13日月曜日

イランで公共エリアの工業用ガスタンクが真夜中に爆発?

 今回は、2020年6月26(金)真夜中、イラン(Iran)の首都テヘラン(Tehran)に近いパルチン(Parchin)の公共エリアにあるガス貯蔵施設の工業用ガスタンクが爆発した事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、イランIran)の首都テヘラン(Tehran)に近いパルチン(Parchin)にあるガス貯蔵施設である。ガス貯蔵施設は軍事施設の近くになるが、施設は非住宅の山岳地帯に位置していた。


■ 発災があったのは、ガス貯蔵施設にある工業用ガスタンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020626(金)真夜中の午前030分頃、工業用ガスタンクが爆発を起こした。爆発の炎はテヘランの夜空を照らした。

■ 多くのソーシャル・メディア・ユーザーは、タンクが真夜中に爆発した後、イランの首都の東方でオレンジ色の光を見えたと報告している。ビデオによれば、この光は数秒間見られた。


■ 爆発の画像がソーシャル・メディアの間で広く流れたあと、イラン国防省はテヘラン近くで工業用ガスタンクが爆発したと語った。ガスタンクはパルチンの公共エリアで爆発したが、死傷者はいなかったという。

■ パルチンには軍事施設があり、当初、爆発は軍事施設への攻撃ではないかと噂された。しかし、国防省は、爆発した工業用ガスタンクは軍事施設と関係しないと発表した。


■ 爆発は、容量5,000リットル(5KL)3基のガスタンクが漏れて爆発したという。


■ 火災は地元の消防隊が制圧し、原因を特定するために調査中だという。


■ 事故がハッキングではないかという質問が出たが、「この問題については調査結果が出ない限り、ガス施設の爆発がコンピューターシステムのハッキングによって引き起こされたかどうかについてコメントすることはできない。サイバー問題は複雑であり、分析が必要なため、このプロセスが完了しない限り、明確な回答を出すことはできない」と国防省は答えている。


被 害

■ 工業用ガスタンクが爆発して損壊した。その他、タンクの隣接設備が損傷しているが、詳細な被害は不詳である。


■ 事故に伴う負傷者の発生はない。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中である。


< 対 応 >

■ 国防省は軍事施設の爆発ではないと発表しているが、メディアの中には、爆発を詳しく分析すると、パルチンの工業団地ではなく、約40km離れたホジール(Khojir)地域で発生しているのではないかとし、被災地域の事故の前後の衛星画像を紹介している。  

■ 容量5,000リットル(5KL)の3基のガスタンクが漏れて爆発したといわれているが、タンク群は現状の形状を維持し、この種の爆発にしては壊滅的な損傷が見られないという疑問が出されている。


補 足

■「イラン」(Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国といい、西アジア・中東に位置し、人口約7,900万人のイスラム共和制国家である。

「テヘラン」(Teheran)は、イランの首都で、人口約1,360万人の都市である。

「パルチン」(Parchin)は、テヘランの南東約30kmに位置し、イランの軍事施設のある町である。


■「ガス貯蔵施設」は、公共エリアで非住宅の山岳地帯にあるというだけで、施設の目的など詳細は分かっていない。


■ 事故のあった「工業用ガスタンク」は容量5,000リットルで3基あった。ビデオに映っているタンクは横型圧力容器で、直径は1~1.5mほどである。仮に直径を1.2mとすれば、長さは5mくらいになる。タンク内のガスの種類は報じられていない。


所 感

■ 今回の工業用ガスタンクの爆発事故はよく分からないというのが、率直な感想である。国防省が発表している映像では、確かに噴破したようなガスタンクが写っている。事故直後に国が出した一連の情報は、一応、整合性はとれており、事故は調査中ということで終わりであろう。


■ しかし、ガスタンクの爆発にしてはタンクが焼けていないという疑問を提示されれば、そのとおりだと思ってしまう。また、爆発時の閃光画像を分析すると、別な地域で起こったという情報が提示されれば、疑問が深まる。軍事機密といえば、事実でないこともまかり通るので、「貯蔵タンクの事故情報」としての価値は薄いと言わざるを得ない。



備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   ・Theguardian.com, Iran says Tehran blast was industrial gas tank explosion,  June  26,  2020

    ・Aljazeera.com, Explosion at Iran gas storage facility, no casualties: State TV,  June  26,  2020

    ・Tanknewsinternational.com, Iran reports industrial gas tank explosion in Tehran,  July  01,  2020

    ・Youtube.com, Iran: Tehran says Parchin blast caused by gas tank leak,  June  27,  2020

    ・Bloomberg.com, Iran Says Explosion Near Military Site Caused by Gas Tank Leak,  June  26,  2020

    ・English.alarabiya.net, Gas tank explosion caused 'bright light, loud sound' in Tehran: Iranian official,  June  26,  2020

    ・Tankstoragemag.com, Industrial gas tank explodes in Tehran,  June  29,  2020

    ・English.alaraby.co.uk, Iran defence ministry says exploding gas tank caused overnight Tehran blast, no casualties reported,  June  26,  2020

    ・Theiranproject.com, No conclusion on Parchin gas explosion’s link with cyber-attack: Jalali,  June  28,  2020

    ・Theiranproject.com, Everything under control in Parchin area: Defense Ministry spokesman,  June  26,  2020

    ・En.radiofarda.com, What Iranian Authorities Hid About The Big Explosion In East Tehran,  June  27,  2020

    ・Akhbaralaan.net, انفجار غامض يهزّ شرقي طهران,  June  27,  2020



後 記: 今回の事故は、日本でも報道され、真夜中の閃光という映像ということで興味を持ち、海外ではどのように報じられているか調べることとしました。結局は事実は分からないということでした。

 一方、分かったこともありました。それは、イランといえば言論統制されている国と思っていましたが、一概にそうではありませんでした。2020年度報道の自由度ランキングでは、確かに173位(日本66位)と非常に良くないのですが、公共エリアで起こったガスタンク爆発事故で、なぜ国防省が発表するのかという質問が出るくらいのまともさがあります。閃光動画を分析して発災場所を類推したり、タンク被災写真に疑問を持ったり、国内には情報オープン化に対して健全なところが残っていると思いました。

 余談ですが、報道の自由度ランキングでは、2010年に日本は11位になったこともあります・・・

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