(写真はAFPbb.comから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があった施設は、東京から南西に40kmほど行った神奈川県相模原市中央区にある在日アメリカ陸軍の相模総合補給廠(U.S.
Army Sagami General Depot)である。施設の敷地はJR横浜線の相模原駅付近の北側約196ヘクタールである。太平洋戦争時の相模陸軍造兵廠の敷地と施設を接収して、1945年から米軍が横浜技術廠 (Yokohama
Engineering Depot)相模工廠として使用していたが、現在は、兵站業務の補給施設として使用されているという。なお、相模原市は用地の日本への返還を長年求めているが、昨年、17ヘクタールが返還されている。
■ 相模総合補給廠の所属部隊は、第35戦闘維持支援大隊司令部、国防再利用販売事務所
(DRMO)、米軍極東科学センター、国防物品販売局配送センター (DECA)で、施設は工場用地として補給関連の保管倉庫や修理工場などが設置されている。施設には、約500人の日本人と約200人の米国の兵士と民間人が働いているという。なお、日本に駐留している米軍の部隊には約50,000人がいる。
■ 相模総合補給廠に駐留している第35戦闘維持支援大隊(The
35th Combat Sustainment Support Battalion)は陸軍の補給と物流を担っており、その中にはケミカルと武器の管理を含んでいる。なお、第35戦闘維持支援大隊は、2011年東日本大震災時の復旧と支援に参画している。
相模原市の米軍・相模総合補給廠付近
(写真はグーグルマップから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2015年8月24日(月)午前0時45分頃、米軍相模総合補給廠の平屋の建物が突然、爆発を起こした。爆発に伴いファイヤーボールが形成され、立ち昇る炎は遠くからも見えた。爆発が複数回起こり、火災は夜の空を照らした。
■ ワシントンの国防総省の広報担当である米海軍ビル・アーバン司令は、日本の相模原にある相模総合補給廠にある建物において爆発があったことを認め、「けが人は報告されていない。近くにある建物へ広がらないように、基地の消防隊と対応部隊が火災と戦っているところである」と、電子メールで発表している。
■ 米軍施設は相模原市のメイン鉄道駅のすぐ向かい側にあり、爆発のあった倉庫の建物は施設の境界フェンスから500ヤード(450m)のところに位置していた。インターネットのユーチューブ(YouTube)では、爆発の状況を示す動画が投稿されている。日本のテレビ局が放送したビデオ映像では、近くの住民が高い場所から撮影したものと思われるが、遠くに火災が見えた後、小規模な火柱を伴った爆発の様子が映し出されている。
ひとりの女性が、それは花火のような音だったと、NHKに語っていた。別な目撃者は、「私は就寝中で、最初は雷鳴だと思いました。ところが10分か15分ほど爆発音が続いてありました。空にはオレンジ色の火柱が立ち昇り、あたりは火薬のような匂いに満ちていました」とNHKに語っている。196ヘクタールの面積をもつ施設は人口密集地域の真ん中にあり、住民の一人は家の中に煙が入ってきたと話している。
(写真はRoundnews.comから引用)
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(写真はRT.comから引用)
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■ 発生した火災は、6時間以上くすぶり続けたのち、次第に消えていったと当局は語っている。相模原市消防局の広報担当によると、火災発生は午前0時45分と報告され、午前7時09分に鎮火したと語っている。
■ 米軍の広報担当は建物に危険物質は保管していないと言い、ケビン・トナー中佐は、「爆発のあった建物は危険物質の保管施設ではない。建物の内容物が何だったかを確認中である。基地には、弾薬や放射性物質を保管していない」と、電子メールで回答している。さらに、トナー中佐によると、昼間は基地に約200名の人間がいるが、基地に居住している部隊はいないという。
■ その後の在日米軍の発表によると、爆発した建物には、圧縮した窒素、酸素、フレオン、空気を保管していたという。夜明け後に撮影され、米軍から公表された写真では、数多くの灰色の金属容器が床の上に転がっており、バラバラになった保管用ラックが見える。米軍による説明では、平屋でコンクリート製の建物の壁はそのまま残っているが、窓と扉は壊され、屋根の一部が吹き飛んでいるという。
当初の米軍発表では、金属容器には窒素とフレオンを含むと言っていたが、多くの問い合わせがあり、これらは除外されると当局は語った。
■ 今回の爆発・火災事故は、在日米軍基地の安全性について日本国内で憂慮すべきこととして大きくとらえられるようになるかも知れない。日本の中で多くの米軍が駐留している南の島の沖縄の人びとは、長年、事故による危険性から住民地域に近い基地を移設しようとしてきた。
被 害
■ 事故に伴う人的被害は無かった。
■ 米軍施設内の保管倉庫が被災しているが、詳細はわからない。
(写真は左:KTBS.comおよび右:Popularmilitary.comから引用)
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(写真はAFPbb.comから引用)
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(写真Stripes.comから引用)
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(写真はAFPbb.comから引用)
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(写真Stripes.comから引用)
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< 事故の原因 >
■ 米軍は爆発の原因を調査している。
■ 爆発事故の米軍による調査について、日本当局から将来に事故の起こる機会を最小にするよう要請を受けて行われていると報じているメデイアもある。米軍の計画では、最終調査報告書を日本政府と共有するとされているが、提示時期について設定されていない。「調査の期間は様々であり、爆発の原因の可能性を調査しようとすると、多くの時間を必要とするだろう」と、8月25日(火)、米軍は話している。
■ 爆発後、米軍駐留部隊には、施設内および500人の日本人と200人の米国人のセーフティ・チェックを行うよう指示が出ている。(米軍の最初の発表では、犯罪行為によって倉庫爆発が始まったという起りえないような話があった)
< 対 応 >
■ 地元の消防署は、“危険物質”を保管しているといわれている米軍の基地で夜中に爆発があったという通報を受け、消防隊を出動させたと言っている。
■ 地元消防署によると、15台の消防車を現場へ出動させたが、火災が住民地区に広がることがないよう、基地のまわりにリング状に配置したという。しかし、周辺地区の住民への避難指示は出されなかった。
■ 米軍基地と相模原市の消防隊は、水で消火活動を行うのではなく、炎が燃え尽きるのを待った。というのは、約9,700平方フィート(900㎡)の建物内にある内容物がはっきり分かっていなかったからである。また、火災が近くの構造物に延焼するおそれがなかった、と当局は語っている。
■ 政府スポークスマンのトップである菅義偉官房長官は8月24日(月)朝の記者会見で、「この種の事故が米軍基地の近くに暮らしている住民にとって不安に思う引き金になるので、私どもは米国に対して事故の情報を提供すること、事故の原因を調査すること、このような事故の再発を防止することを申し入れしました」と語った。
■ 相模原市加山俊夫市長は米軍基地を訪問し、爆発事故に関する対応について司令官ウィリアムズ・ジョンソン大佐と会談した。
■ 神奈川県警は、基地構内で起こった火災であるから、事故原因は米軍によって調べられることになるだろうと語っている。神奈川県警によると、日本の当局は日米地位協定(Japan-
U.S. Status of Forces Agreement)により米軍の基地や施設における事故の調査に関する管轄権をもっていないという。ただし、施設構外へ損害があった場合のみ、日本の捜査当局が参加できるという。
< その後の状況 > (国内報道から)
■ 8月27日(木)、相模総合補給廠であった爆発火災で、相模原市消防局の職員5人が火元の倉庫に立入り、米軍と共同で原因調査を始めた。米軍敷地内の立入り調査は日米地位協定で米国側の同意が必要で、市の調査は1964年に「消防相互援助協約」を結んでから初めてである。
市によると、米軍側は26日に消防局長に手渡した文書で「調査対象は火元や発火物質、火災原因の特定」としているが、具体的な作業の内容は示していない。在日米陸軍は「調査は米軍が主導し、市消防局に捜査権を付与するのではない」としている。
(写真はAsahi.com
から引用)
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補 足
■ 相模原市には、米軍の「相模総合補給廠」のほかキャンプ座間と米軍住宅地区がある。これらの施設の沿革や現況は「市内の米軍基地」(相模原市)を参照。
相模原市の米軍・相模総合補給廠付近
(写真はグーグルマップから引用)
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所 感
■ 前回、「失敗は隠れたがる」と言う話をしたが、今回も、失敗を隠したがる意識を感じる事故である。爆発の映像を見ると、明らかに可燃性(爆発性)の物質が存在している。酸素ボンベで起こる破裂の爆発ではない。この可燃性(爆発性)物質の保管記録がないとすれば、ずさんな管理で軍の補給部隊としてありえない。何らかの理由(日米地位協定の行使、軍事機密など)で情報を開示していないだけだと思われる。
(ボンベの中には破裂したものがあるようだが、おそらく、火炎に曝され、金属材料の強度が低下して噴破したものであろう)
■ 原因調査に関する海外メディアの記事中に、「米軍の計画では、最終調査報告書を日本政府と共有するとされているが、提示時期について設定されていない」という鋭い指摘がある。通常は調査ステップが設定され、プレ、中間、最終案、最終報告書の順番で行われる。ここにも失敗を隠したがる意識を感じるし、そのことを指摘しない日本政府に原因追究への強い意志は感じられない。
相模原市消防局が原因調査として施設に入ったが、3時間ほどの現場確認レベルであったようだ。本格的に捜査するのならば、燃焼生成物などの分析のできる警察の鑑識などを入れる必要がある。日米地位協定の壁は厚いといえよう。
■ 倉庫内の被災状況を示す写真を見ていると、いろいろな疑問が浮かぶ。
● 屋根は局所的に壊れており、この真下には何があったのか。
● 散乱するボンベのほかに、別な金属容器の破片らしいものが見える。
● スプリンクラーが設置されている。初期に作動しなかったのか。
● 被災を免れたように見える木箱類が見える。扉や窓が破壊されるほどの爆発に耐えたのか。
● 床には水が溜まっているし、消火栓らしいものから水が放出されている。なぜ、鎮火後(直前)に水を流しているのか。
通常、花火工場では、爆発したときの影響を最小にするため、建物の壁は強固にされ、屋根部から放爆するように作られる。今回の倉庫も、かなり頑丈な壁のようで壊れておらず、爆風圧は大半が屋根から放出したとみられる。一方、頑丈な壁の下部に明り取りではないような窓がついており、よく分からない構造である。
備考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Reuters.com,
Explosion Rocks Warehouse at U.S. Military Base in Japan, No Injuries
Reported, August 23, 2015
・WSJ.com, Fire
Breaks out at U.S. Army Depot near Tokyo,
August 23, 2015
・IKTBS.com, Explosion at US Base in Japan
Lights up Night Sky, August 23, 2015
・Foxnews.com, Explosion Damages US Army Depot in
Japan, August 24, 2015
・RT.com,
Explosions at US Military Base in Kanagawa, Japan, August 24, 2015
・Japantimes.co.jp, Explosion Rocks Warehouse at U.S.
Military Base in Kanagawa, August 24, 2015
・TheGuardan.com,
Pentagon Confirms Explosion at Sagami US Military Depot in Japan, August 24,
2015
・BBC.com, Fire Breaks out at US-Japanese Base of
Sagamihara, August 24, 2015
・Stripes.com,
Explosion at Sagami Depot Army Facility near Tokyo Draws Criticism from
Japanese, August 25, 2015
・Asahi.com, 軍施設爆発、相模原消防と米軍が共同調査 協約締結後初, August 27, 2015
・Sankei.com, 消防職員5人が米軍施設に派遣 相模原の爆発火災調査, August 27, 2015
後 記: 今回の事故は新聞・テレビで取り上げられました。しかし、大きく報道されたきっかけはインターネットのYouTubeに投稿された爆発を撮影した動画でしょう。もし、爆発映像が無ければ、朝には火災も收まっていましたし、周辺地域に直接の被害が出ていませんでしたので、日米地位協定による米軍の管轄案件として幕引きだったのではないでしょうか。
しかし、大きく報道される割によく分からない事故でしたので、貯蔵タンクに直接関連がありませんが、海外メディアがどのように報じているか調べてみることにしました。海外メディアは冷静で、結果は予想以上に面白い内容になりました。
ところで、今回参照した資料の中で米国のウォール・ストリート・ジャーナル(The
Wall Street Journal)の記事に興味深い文章がありました。政治的になり過ぎるので、本文中には引用しませんでしたが、現在の安保法案に関するアメリカ人の解釈です。日本では、外国から邦人が米国艦船に乘って避難する場合など曖昧な例が議論されていますが、アメリカ人を代表する記者のとらえ方は明解です。原文を紹介しておきます。
「日本の国会では、安倍晋三首相の提唱する重要法案が最終段階にある。この法案は地域紛争で自衛隊を米国とより緊密に協同できるようにするためのものである」(Japan’s
parliament is in the final stages of weighing legislation advocated by Prime
Minister Shinzo Abe that would enable the nation’s
military to cooperate more closely with the U.S. in regional conflicts.)
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