オイルフェンスと油回収作業 (写真はya001.cnから引用)
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本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・English.peopledaily.com, Oil
Pipe in NW China Damaged by Mudslide,
July 15, 2013
・English.sina.com, Landslide
Causes Oil Pipeline Leakage in NW China,
July 16, 2013
・Oximity.com, Landslide Causes Oil Pipeline
Leakage in NW China, July 16, 2013
・Best-News.us, Yanchang
Petroleum 13 t Thrust pipeline Oil Spill Debris, July 16,
2013
・FireDirect.net, Petrochina,
Yanchng Pipelines Shut after Landslide
Damage Causes Huge Spills, July 16, 2013
・Scmp.com, PetroChina
Unit in Shaanxi Shut after Pipeline Rupture Leaks Oil into Reservoir, July
17, 2013
<事故の状況>
■ 2013年7月12日(金)夜、中国陝西省(せんせい/シャンシ-省)延安市(えんあん/イェンアン-市)で豪雨をきっかけに起きた地すべりによって、地下に敷設されていたパイプラインに亀裂が生じ、油が流出する事故が起こった。
■ 7月12日夜、ペトロチャイナ(中国石油天然気)のパイプライン操業会社において石油パイプラインの圧力低下による漏洩検出システムが発報した。5秒後にシステムはパイプラインの2個のバルブを自動的に閉止させ、パイプラインは自動的に停止した。パトロール隊が出動した結果、ハオジアチャンの村近くにあるユージアピンで地すべりによって、パイプラインから大量の油が漏れていると報告された。パイプライン操業会社では救援要請を受けて、ただちに作業隊が編成され、機材を持って急行したが、現場は折からの豪雨でパイプラインの破損箇所へ近づくことができなかった。パイプライン操業会社は、川に流れ込んでいる原油による下流域での汚染を防止するため、川に6箇所のオイルフェンスを張った。
■ 7月13日(土)の午前中、救援作業隊は、雨の中、12km以上先の川まで流出してしまった油のクリーンアップ作業を行なった。作業隊は川の中にはいり、油をすくい取ってとって袋に入れたり、吸着シートで表面に浮かぶ油を吸収させた。昨15日朝に現場を確認したが、近くの村民が川の上流側のクリーンアップを支援するため雇われ、作業を行っていた。川には油回収用装置が導入され、川岸に付着した油が拭き取られ、使用済の吸収シートがトラックに運び込まれていた。
油汚染のあった貯水池
(写真はEnglish.CNTV.cnの動画から引用) |
■ 延安市の志丹県(したん/チータン-県)のワンヤオ貯水池の上流地域を走っている長さ100kmのパイプラインはたびたび発生していた地すべりによって損傷を受け、漏洩していることがわかったと、地方政府は語った。貯水池は、200,000人の住民への飲料水源として使用されているが、どのくらいの量の油が流入したかはわからない。12日(金)の事故でパイプラインから漏れた油の量は13トンと推定されている。
パイプラインの補修準備
(写真はEnglish.CNTV.cnの動画から引用) |
■ ペトロチャイナの300名、地方政府の1,500名を含めて2,000名の作業員が、パイプラインの補修と流出油の囲い込みのため現場へ派遣された。12日の漏れ箇所の補修には11時間かかった。
チャイナ・ビジネス・ニュースによれば、延安市当局は供給水保護のため貯水池近くにある中国石油のパイプライン、油井、貯蔵施設の停止を要請したという。貯水池の油汚染がわかったため、別な貯水池からの水を飲料水として供給し始めたという。
■ ワンヤオ貯水池から飲料水への取水を止めたのは、今回が初めてでなく、2007年の豪雨時に今回と同様、20トンの油が流出した事故のときに取水を停止したことがある。
■ 延安市環境保全当局は、7月14日(日)の水質検査によって、ワンヤオ貯水池の水の安全宣言を出したと華商ニュースは報じたが、詳細はわからない。
■ この2週間は記録的な豪雨に見舞われて各地で地すべりが起こっており、パイプラインを破損させたのもその一つである。延安市には中国石油のチャンジン油田があるが、100年に一度の大雨が降ったと延安市役所のウェブサイトに掲載されている。
陝西省民事局によれば、陝西省では7月7日(日)から記録的な豪雨が続いており、7月15日(月)午前8時時点で27名の死者が出ているという。
水草に付着した油 (写真はya001.cnから引用)
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川岸に付着した油
(写真はya001.cnから引用)
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流出油の拡散防止作業 (写真はya001.cnから引用)
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クリーンアップ作業
(写真はya001.cnから引用)
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クリーンアップ作業
(写真はya001.cnから引用)
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貯水池でのクリーンアップ作業 (写真はEnglish.CNTV.cnの動画から引用)
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■ さらに、2013年7月15日(月)午前4時頃、延安市で豪雨をきっかけに起きた地すべりによって、石油パイプラインに亀裂が生じ、油が流出するという2度目の事故が起こった。
■ 市の広報担当によると、事故があったのは延安市の子長県(しちょう/ズーチャン-県)を通っていたパイプラインが地すべりによって生じた亀裂から油が流出し、約1トンの原油が雨期の川である郝家川(ハオジャーチャン)に流れ込んだという。パイプラインの所有会社である延長石油(ヤンチャン・ペトロリアム)のパイプライン操業会社は、漏れ検出後、ただちに油ラインのバルブを閉止した。パイプラインはアンサイ郡からピンインの町まで通っている。
■ 発災後、クリーンアップ作業のため3,000名の人が動員され、18箇所のフローティングダムが設置され、油の拡散防止が図られ、油の回収が行われた。市の広報担当は、15日月曜午後5時時点において流出は漏れ発生点から21kmに限定していると付け加えた。地方の村民が油に汚染された水草を取り除く作業を行って支援していると、子長県の広報担当は話している。
油に汚染された川は、通常、10月の雨期のときを除いて水が流れておらず、地域住民の飲料水源になっていない。延安市の馮継紅(マ・ホシュー)副市長は、地方当局と石油会社が協力して油の拡散防止と川の汚染物質の除去を行い、成果が上がっていると語った。
■ 7月16日(火)、延安市役所はウェブサイトで、流出した原油が飲料水に混入したとし、王耀(ワンヤオ)貯水池近くにあるペトロチャイナと延長石油が管理するパイプライン、油井、貯蔵施設を停めたと発表した。貯水池は住民200,000人への飲料水を提供しているという。ウェブサイトによれば、延安市の梁宏賢(リァン・ホンジャン)市長は、昨7月15日に、両社に対して所有するパイプラインについて徹底した検査を行い、再び今回のような油流出を起こさないよう指示したという。
7月15日、村民が子長県で油汚染のクリーンアップ作業を支援
(写真および解説はEnglish.sina.comから引用) |
7月15日、村民が子長県の支部にある池に防衛用の堤を構築
(写真および解説はEnglish.sina.comから引用) |
(写真はChinaDaily.comから引用) |
補 足
■ 中国(中華人民共和国)の「陝西省」 (せんせい/シャンシ-省)
は中国のほぼ中央に位置する省の行政区画で、人口約3,700万人である。省内には黄河が流れ、省都は西安市である。
「延安市」 (えんあん/イェンアン-市) は、陝西省にある地級市で、人口約210万人の都市である。
「志丹県」 (したん/チータン-県)は延安市の西北部にある県の行政区画で、人口は約13万人である。 「子長県」 (しちょう/ズーチャン-県)は延安市の北部にある県の行政区画で、人口は約24万人である。
■ 正式には中国石油天然気股份有限公司という「中国石油天然気」は、通常、「ペトロチャイナ」と呼ばれる。親会社が中国石油天然気集団公司(ちゅうごくせきゆてんねんきしゅうだんこうし)で、英語名ではChina
National Petroleum Corporation、通常CNPCと呼ばれ、中華人民共和国の国有企業である。 CNPCは事業再構築の過程で、中国国内の資産や事業のほとんどを子会社の中国石油天然気(ペトロチャイナ)に分割して民営化させた。ペトロチャイナは2000年に香港証券市場およびニューヨーク証券市場に上場しているが、CNPCがペトロチャイナの株式の90%を保有している。
ペトロチャイナは国内では東北部や華北、新疆ウイグル自治区などに油田・ガス田を保有するほか、各地に製油所・石油化学工場を保有する。
最近のペトロチャイナの事故としては、 2013年6月に中国遼寧省の大連石化の残渣油タンク爆発・火災事故があり、当ブログで「中国の大連製油所で残渣油タンクが爆発して死傷者4名」として紹介した。また、2010年7月には、「大連パイプラインの爆発事故」があり、大量の原油が漏れ出し、周辺の施設が延焼したほか、漏れた油が海に流出するという事故がある。
■ 「延長石油」(ヤンチャン・ペトロリアム)は、正式には陝西・延長石油(Shaanxi
Yanchang Petroleum)といい、1905年に設立された中華人民共和国の国有企業で、現在は陝西省(Shaanxi)が直接関与している石油会社である。陝西省を拠点として原油・天然ガスの生産から石油製品・石油化学製品の供給まで総合的に行っている。
4本のパイプラインを保有し、総延長は573kmで、原油350万トン/年、石油製品250万トン/年の移送能力を有している。
所 感
■ 記録的な豪雨や猛暑は日本だけでなく、中国でも同様で、今回の事故は地すべりによる石油パイプラインの破損というこれまでにはない稀な原因である。しかし、今は想定外ということはありえず、どこでも事故の可能性はある。日本の場合、湾岸には石油パイプラインが走っており、豪雨による地すべりのほか、地震による地盤ずれに伴うパイプラインの破損について危険予知しておく必要があることを示す事例といえよう。
■ 今回の事故対応の写真を見ると、資機材が乏しく、人海戦術がとられており、クリーアップ作業をしている人への油防護(服)がなされていないことがわかる。このあたりは、危機管理の対応に対して改善の余地が多いと思われる。一方、パイプラインの破損補修が11時間で終わったというが、印象としては二次災害の危険性を無視し、操業を優先した荒い補修工事だと感じる。
後 記: 今回の事故情報はほぼ同じ頃に発信されており、一つの事故について書かれたものと思って、まとめていると、どうもつじつまが合わないことが多く、悩みました。結局、7月12日と15日の2回、地すべりによるパイプライン破損事故があり、油が流出したものだとわかりました。
カットした油回収作業の写真 (写真はFireDirect.netから引用) |
悩んだもう一つが、巻頭に載せる写真です。油流出事故において油回収作業の困難さを物語るものだったのですが、情報を総合的に判断すると、今回のパイプライン破損に伴うものでなく、例えば、2010年の大連港における油回収作業ではないかという疑問があり、カットしました。また、写真について言えば、肝心の油流出現場の写真を探しましたが、見つけることができませんでした。このあたりは意図“失敗(事故)は隠れたがる”
を感じますね。
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