今回は、2026年3月12日(木)、テキサス州ハリス郡パサデナにあるライオネルバセル社の化学工場で火災が発生して施設内にあったタンク2基が焼損したほかプラント内の配管などが被災し、大量のブタンなどが焼失した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、テキサス州(Texas)ハリス郡(Harris)パサデナ(Pasadena)にあるライオネルバセル社(LyondellBasell)の化学工場である。
■ 事故があったのは、ライオネルバセル社のベイポート・チョート(Bayport Choate)工場のプラントである。 ベイポート・チョート工場では、主にプロピレン(Propylene)とイソブタン(Isobutane)を主要な原料として、プロピレン・オキサイドやターシャリー・ブチル・アルコールなどを生産している。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2026年3月12日(木)午後9時頃、ライオネルバセル社ベイポート・チョート工場で火災が発生した。
■ 火災が起こる前に、ライオネルバセル社は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとした。このフレアは大規模になるため、住民が明るい炎や轟音を目にする可能性があるとして、複数の地域の住民へ注意喚起の連絡を出した。
■ ライオネルバセル社は、当初、この出来事を“フレアリング” と呼ぶ自己申告による地域向けのメッセージを発信したが、近隣住民はそれが事実でないことに気づいた。各所から火災ではないのかという連絡があったが、ライオネルバセル社は“フレアリング” の炎と回答していた。
■ 実際には、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックのパイロットランプによって引火して火災になっていた。別な報道としては、フレア設備が破裂したか、あるいはフレア自体が熱くなり過ぎて激しく燃え上がり、火炎が配管に燃え移り、火災になっていたという。
■ 火災発生の目撃者によると、激しい火災が工場の燃料タンクで起こり、大きな爆発が発生したという。
■ ライオネルバセル社は、消火・災害対応チームが出動した。一方、発災にともない、公的消防の消防隊が出動し、ハズマット隊(HAZMAT)が現場へ到着した。
■ 夜間、工場から煙と炎が上がっているのが見え、近隣住民の間で懸念が広がった。午後9時42分、当局は、火災が起きて炎とともに大きな煙の柱が出ているということをソーシャルメディアに投稿した。
■ テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、工場の敷地境界線沿いで大気モニタリングを実施している。
■ ハリス郡は、消防隊員が化学物質の混合物を放出しているバルブを閉じる作業を続けていると述べた。
■ 工場施設からは夜通し激しい炎が上がっているのが目撃された。火災は夜間にわたって燃え続け、炎と濃い煙は数マイル離れた場所からも確認できた。
■ ハリス郡汚染管理局は、施設周辺地域で大気汚染のモニタリングを実施した。 「現時点で、対策が必要な数値は検出されていません」と発表し、「住民の人たちは空に大量の煙が立ち昇っていることを心配されるのは当然ですが、燃焼している化学物質は地域社会に脅威を与えるものではありません」と述べた。
■ 3月12日(木)午後11時過ぎ、ライオネルバセル社は、 「現時点で地域社会への対応は必要ありません」と発表した。
■ 3月13日(金)午前0時過ぎ、ライオネルバセル社は、今回の出来事を“火災”と呼ぶメッセージを出し、火災は3月12日(木)夜に施設内で発生した操業上の混乱が原因で発生したという。
■ 消防署は、施設内のタンク2基が炎上したが、負傷者は報告されていないと述べた。
■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Unauthorized
contaminants released from LyondellBassell plant at least 36 times, TCEQ says」(2026/03/16)
●Youtube、「Questions After at LyondellBasell
Chemical Plant Fire in Pasadena」(2026/03/14)
●Youtube、「Fire at LyondellBasell‘s Bayport Choate site extinguished, officials say」(2026/03/14)
被 害
■ 施設内にあったタンク2基が焼損したほか、プラント内の配管などが被災した。内部にあったブタンなどの石油が焼失した。
■ 負傷者はいなかった。
■ 火災によって大気環境が汚染された。避難指示は出なかったが、住民に心配をかけた。
< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中であるが、火災は3月12日(木)夜に施設内で発生した操業上の混乱が要因で発生した。
火災が起こる前に、ライオネルバセル社は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとした。しかし、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックのパイロットランプによって引火して火災になったか、あるいは、フレア設備が破裂したり、またはフレア自体が熱くなり過ぎて激しく燃え上がり、火炎が配管に燃え移り、火災になったのではないかとみられる。
< 対 応 >
■ 3月13日(金)午前6時30分頃、当局は主な火災は制圧したが、施設内では引き続き火災活動が予想されると発表した。
■ 3月13日(金)午前8時30分頃、監視ドローンで再び施設上空を飛行したところ、工場の施設内から小さな炎が上がっているのが確認された。
■ 3月13日(金)、ライオネルバセル社は、火災が午前2時に制圧され、全従業員の安全が確認するとともに、事故ともなう負傷者はいなかったと発表した。また、自衛消防隊は、チャンネル産業協同組合(Channel Industries Mutual Aid;CIMA)および公設消防の支援を受けたという。 注;CIMAは、ヒューストン圏内の石油精製・石油化学業界において消防業務および危険物取扱いを専門とする非営利団体である。
■ テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、ライオネルバセル社と連絡を取り合っており、今回の事故について調査を行うと語った。
■ 記録によると、テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、昨年発生した排出事故に関して、ライオネルバセル社のベイポート・チョート施設を以前から調査している。テキサス州環境品質委員会の記録によれば、ベイポート・チョートの施設では、過去5年間に36件の無許可の大気汚染物質の放出事例を発生させており、139,000ドル(約2,200万円)の罰金を科されている。この施設では、昨年、大気汚染物質を放出された事案が7件発生しており、このうち6件は現在も捜査中であるという。
■ 2026年3月19日(木)、大気環境保全団体のエア・アライアンス・ヒューストン(Air
Alliance Houston)は、地元自治体や企業の関係者が事故発生時に懸念されるような大気汚染問題はなかったと言っていたが、夜間の風向き、地域の大気モニタリング、企業自身の排出量報告書の分析からより包括的な詳細が明らかになったと発表した。エア・アライアンス・ヒューストンは、地域最大のコミュニティ大気監視ネットワークを運営しており、10以上の地域に60個を超す低コストの固定式大気センサーを設置し、10分ごとに大気質データを取得して公開している。
●火災発生期間(午後10時~午前6時)中、風はパサデナの北東方向へ吹く傾向にあった。これは、火災による大気汚染物質が工場から離れてベイトンの東部地域へと拡散したことを意味する。
●実際、エア・アライアンス・ヒューストンがベイタウンに設置した地域大気監視装置も、火災発生と同時期に粒子状物質汚染の急増を検知していた。
●施設が提出した予備報告書によると、火災により24時間で23,172ポンド(10,510㎏)の大気汚染物質が放出された。これらの汚染物質は主にブタン、一酸化炭素、窒素酸化物、プロピレン、アセトンなどであり、下の図に示す。これらの化学物質はすべて呼吸器系の刺激、頭痛、吐き気などさまざまな健康被害を引き起こす可能性がある。
地域大気モニタリングプログラムマネージャーは、「だからこそ、地域モニタリングが非常に重要なのです。ベイポート・チョート工場で発生したような事故の影響をより包括的に把握するのに役立ちます。火災の風下側に住む人達が、現場の近くに住んでいた人たちと同じくらい火災の影響を受けた可能性は十分にあります」と述べている。
補 足
■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,170万人の州である。
「ハリス郡」(Harris)は、テキサス州の南東部に位置し、人口約473万人の郡である。郡庁所在地はヒューストンである。
「パサデナ」(Pasadena)は、ハリス郡の南部に位置し、人口は約15万人の都市であり、ヒューストン都市圏に入っている。
■「ライオネルバセル社」(Lyondell Basell)は、オランダで設立された米国の多国籍化学会社で、米国本社はテキサス州ヒューストンにある。2007年、オランダのバセル社が米国のライオネル社と合併して設立された独立系化学メーカーである。液体・気体の炭化水素原料をプラスチック樹脂などに変える大規模処理プラントを運営している。同社はポリエチレンとポリプロピレン技術の最大のライセンサーであり、エチレン、プロピレン、ポリオレフィン、オキシ燃料なども製造している。
■「発災タンク」は、燃料タンクあるいは大型タンクと報じられているが、詳細仕様はわからない。被災写真を見ると、化学プラント施設内の設備と思われるので、円筒式固定屋根型タンクではなく、プラントの圧力容器型のタンクではないだろうか。
所 感
■ 被災があったのは貯蔵タンクではなく、プラントの圧力容器(タンク)ではないかと思われる。
発災の要因は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとしたが、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックによって火災が起きたのではないかと報じられている。大量のブタンをフレアで燃焼させているだが、このフレア燃焼(フレアリング)はプラントを停止させる際に常に行われている操作である。今回、火災に至っているが、たまたまというより、いつかは今回のような火災になるのではなかっただろうかと思わせる工場の安全意識である。
■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回の火災の燃料源は空気より軽いブタン系であり、消火させるのではなく、冷却作業を主体とする防御的戦略をとったものとみられる。
“消防隊員が化学物質の混合物を放出しているバルブを閉じる作業を続けている”というのが、適切な対応である。 3月12日(木)午後9時頃に発災し、翌13日(金)午前6時30分頃に火災を制圧したというので9時間を超える燃焼時間であり、バルブを閉じ、燃え尽きるまでに時間がかかっている。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Abc13.com, Fire chemical
plant in Pasadena contained; emergency officials say cause of incident
unknown, March 14, 2026
・Reuters.com, LyondellBasell
says fire contained at Texas chemical plant,
March 13, 2026
・Houstonpublicmedia.org, Emergency crews, pollution control respond
to fire at Pasadena chemical plant,
March 13, 2026
・Inspectioneering.com, Fire Breaks Out at LyondellBasell Plant in
Pasadena, TX; No Injuries Reported,
March 13, 2026
・Airalliancehouston.org, UPDATED 3/19/26 – Air Alliance Houston
Statement on the LyondellBasell Plant Fire in Pasadena, Texas, “What the Wind
Tells Us”, March 19, 2026
・Fox26houston.com, LyondellBasell industrial fire out in Pasadena; no
air quality concerns reported, March
19, 2026
・Click2houston.com, Fire at LyondellBasell chemical plant in Pasadena
extinguished; air monitoring shows no danger to public, March 13,
2026
・Bicmagazine.com, Flames shoot into sky after fire at Pasadena
chemical plant, March 13, 2026
・Arnolditkin.com, LyondellBasell Fire at Bayport Choate Plant in
Pasadena, Texas, March 12, 2026
・Cw39.com, TCEQ to investigate fire at Lyondell Basell’s Pasadena
site, March 15, 2026
・Aol.com, Fire chemical plant in Pasadena contained; emergency
officials say cause of incident unknown,
March 14, 2026
後 記: 今回の事例はプラントの火災ですが、被災に2基のタンクという情報から調べることとしました。事故の経緯は分かりましたが、肝心の被災したタンクについては報じられておらず、大きさなどの仕様は分かりませんでした。
ところで、地元の徳山港で昨年9月に直径40cm×長さ120cmの不発弾が見つかり、先週の3月25日に海上自衛隊が水中で爆破させたというニュースがありました。午前11時過ぎに爆破させましたが、場所が出光興産の桟橋に近く、防護対策として水中で気泡を発生させて爆破の影響を緩和させる“バブルカーテン” という方法を国内で初めて採用しています。当時私は自宅におり、家が一瞬揺れました。「地震!」と思いましたが、不発弾処理の話は聞いていたので、爆破させたのだと理解しました。現場は終戦まで海軍燃料廠があり、米軍による空襲があっています。徳山海軍燃料廠の爆撃跡の写真は、2018年6月のブログ「米国コロラド州のタンク施設で落雷による火災」の後記に載せています。










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