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2026年2月2日月曜日

豪州のケミカル・リサイクル関連施設で爆発、化学薬品タンク吹き飛ぶ

 今回は、20251129日(土)、豪州シドニーにある環境廃棄物リサイクル会社のクーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社のケミカル・リサイクル関連施設が火災・爆発した事例を紹介します。爆発時、消防隊が消火活動を行っており、爆発によって大きな化学薬品タンクが空中に吹き飛ばされ、こぶし大のレンガやコンクリート片が消防隊員数十人の上に降り注ぎましたが、奇跡的に死傷者は出ませんでした。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、豪州(Australia)シドニー(Sydney)のノース・セント・メアリーズ(North St Marys)にある環境廃棄物リサイクル会社のクーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社(Coopers Environmental Waste Recycling Pty Ltd)のケミカル・リサイクル関連施設である。

■ 事故があったのは、クラジョン通り沿いにあるケミカル・リサイクル施設の保管設備である。施設には、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む危険な化学物質を保管しており、ニューサウスウェールズ州環境保護局(EPA)の認可を受けている。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20251129日(土)午後11時頃、ケミカル・リサイクル関連施設で火災が発生した。

■ 発災にともない、ニューサウスウェールズ州消防隊(FRNSW)が出動した。

■ 消防隊の初期対応にもかかわらず、火は急速に広がった。

■ 火災が続く中、突如、施設が爆発し、猛烈な熱とともに巨大ファイアボールが敷地上空150mまで上がった。爆発によって大きな化学薬品タンクが空中に吹き飛ばされ、こぶし大のレンガやコンクリート片が消防隊員数十人の上に降り注いだ。

■ 事故にともない消防士2名が手に軽傷を負った。その他の負傷者は報告されていない。

■ 爆発は激しいもので、消防士らはこれほど大規模な爆発火災は見たことがないと語った。火災は大規模な爆発のほか複数回の爆発を伴った。

■ 隣接する建物の壁が火災で吹き飛ばされ、消防隊は隣の建物内から消火活動を行い、炎が広がらないよう努めた。

■ 消防隊員は火災エリアの四方から炎と戦い、シドニーで長年に渡って発生した最大級の火災の一つの制圧にあたった。火災は、いろいろな化学物質が燃料になっているとみられた。

■ 当局は化学センサーを搭載したドローンを用いて炎や煙の監視を行った。ニューサウスウェールズ州環境保護局(EPA)は、有毒物質の流出や大気汚染物質が周辺の土地や水路に影響を与える可能性について調査を行った。

■ シドニー大都市圏全域から集まった50以上の消防隊が現場に派遣され、出動した消防士は200名以上にのぼり、上空から炎と戦うための屈折はしご付き消防車5台を出動させ、消防車をリレー方式で放水して制圧にあたった。ハズマット隊(HAZMAT)も現場に出動し、火災で発生した化学物質の処理にあたった。

■ 環境保護局(EPA) 、警察、ニューサウスウェールズ州救急隊も現場に出動した。

■ 火災現場から200mの立入り禁止区域が設定され、車両は当該地域を避けるよう呼びかけられた。

火災現場から500m以内に住む住民は、有害な煙を避けるため、屋内に留まり、ドアや窓を閉めておくよう求められた。

■ 火災の原因は不明だが、火災は翌日の日曜中ずっと続くと予想された。

■ 1130日(日)の午後遅くに建物は火災で全壊した。隣接する建物の壁は吹き飛ばされた状態だったが、消防隊は内部を何とか救った。火はまだくすぶっており、黒い煙がもくもくと噴き出していた。

■ ユーチューブやフェイスブックでは、爆発・火災を伝える動画が投稿されている。 

   ●YoutubeMassive blaze engulfs waste facility in Western Sydney | ABC NEWS2025/11/30

   ●YoutubeWestern Sydney factory fire fuelled by toxic chemicals | 7NEWS2025/11/30

   ●FacebookCCTV Captures Moment Flaming Tank Smashes Triggering Major Factory Fire In Sydney | 10 News2025/12/02

被 害

■ ケミカル・リサイクル関連施設の建物や内部の設備が損壊した。設備の中の燃焼物が焼失した。

■ 火災現場から200mの立入り禁止区域が設定され、車両は通行閉鎖された。

■ 火災現場から500m以内に住む住民は屋内に留まり、ドアや窓を閉めておくよう要請された。

< 事故の原因 >

■ 火災・爆発の原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 州環境保護局(EPA)は、現場で有害物質が発見されたことを確認し、地域住民に近づかないよう呼びかけた。

■ 消防隊員は、火が完全に鎮火するまでには数日かかるだろうと語っている。

■ 激しい爆発を目の前にして、消防隊員が無事でいられたという事実は奇跡的である。消防隊は優れた消火活動により隊員の安全が確保され、優れた消防判断と専門知識を活用した指揮官によって実現したと評価されている。

 消防関係者は、「貯蔵タンクが弾丸のように飛び出し、約200m飛んで線路のすぐ手前まで落下した」と述べ、「使用していた屈折はしご付き消防車のプラットフォームの一つは爆発の10分前に位置を変え、3040mほど後方に移動した。そのおかげで消防隊員は間違いなく最悪の事態を免れ、爆発の衝撃に耐え、安全を保つことができた」と語っている。

■ ハズマット隊(Hazmat)は現場に残り、火災で発生した化学物質の処理にあたった。 

■ 火災の原因究明のため、火災調査官、ニューサウスウェールズ州警察、州環境保護局(EPA)による調査が開始された。「今日から数日かけて、火災がどのように始まったのかを評価する予定だ」といい、「それはできないかもしれないが、入手可能な証拠や情報を確認し、火災調査官や警察の調査と合わせてすべてをつなぎ合わせて、原因を究明する」と語った。

■ 2025122日(火)、州環境保護局(EPA)はクーパーズ・エンバイロメンタル社に対して最初の浄化通知を発行し、同社は敷地内からの汚染物質の移動を防止し、影響を受けた地域から油を回収するよう求めた。委託を受けた清掃業者はサウスクリーク/ウィアナマッタ川と近くの支流からタンクローリー120台分、計84万リットルの油と油に汚染された水を回収した。清掃作業員は油除去のために油回収機、オイルフェンス、バキューム車などを使用した。

■ 州環境保護局(EPA)は、近隣の小川の水質モニタリング、土壌、塵埃、灰のサンプリングなど、この地域で包括的なサンプリングを実施した。この作業には、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の検査も含まれている。

現場に残った廃棄物や油の残留物にはPCBが含まれており、直接接触すると危害を及ぼす可能性がある。PCBは、変圧器の冷却剤として歴史的に使用されてきた有害な化学物質であり、1980年代以降禁止されており、古い電気機器からは段階的に廃止されている。

■ 州環境保護局(EPA) は、引き続き清掃作業を厳重に監視しており、クーパーズ・エンバイロメンタル社に対して2度目の清掃通知を発行し、周辺地域で進行中の汚染に対処するための追加措置を同社に要求した。

■ 州環境保護局(EPA) は住民に対して、清掃作業が行われている間、施設に隣接するクラジョン通りにある名前の無い小川、キングスウェイ・ラグビー場とダンヘヴェド・ゴルフコースの間にあるサウスクリークとの接触を避けるよう呼びかけた。

補 足

■「豪州(オーストラリア)」(Australia)は、正式にはオーストラリア連邦で、オーストラリア大陸本土、タスマニア島、多数の小島からなり、世界で最も平坦で乾燥した有人大陸で人口約2,780万人の国である。

「シドニー(Sydney)」は、豪州の東海岸に位置し、ニューサウスウェールズ州の州都で人口約555万人のある。

「ノース・セント・メアリーズ」(North St Marys)は、シドニー西部の郊外のある地区で、人口約4,100人の町である。

■「クーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社」(Coopers Environmental Waste Recycling Pty Ltd)は、1997年に設立された豪州の環境廃棄物リサイクル会社で、廃棄物の回収と処分が含まれる。クーパーズ・エンバイロメンタル社は、 PCB(ポリ塩化ビフェニル) 、六フッ化硫黄(SF6)、変圧器油を専門とし、幅広い資源回収、プラントの除染、危険物輸送業務を提供している。また、シドニー大都市圏における環境緊急事態に対応するため、24時間体制の緊急対応サービスを提供しており、廃棄物管理において企業が迅速かつ効率的に対応できるよう緊急対応サービスを行っているという。

■「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」は無色透明な油状で不燃性、電気絶縁性、耐熱性に優れ、難分解性(環境中で分解されにくい)の特性があり、変圧器やコンデンサ等の絶縁油として広く使用されていた。しかし、日本でも、強力な毒性と環境残留性が判明し、1972年以降製造・使用が禁止されている。 20015月、PCB2028年までに全廃することを含む国際条約であるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)が調印された。  

所 感

■ 事故原因は不明である。原因だけでなく、何が保管され、何が火災になり、何が爆発したのかという事故の要因状況も分かっていない。発災事業所は環境廃棄物リサイクル会社で廃棄物の回収と処分が含まれるという。しかし、主に取り扱っているPCB(ポリ塩化ビフェニル) 、六フッ化硫黄(SF6)、変圧器油は爆発性や可燃性でなく、最初の火災は保管していた別な可燃性の油やケミカルと思われる。

 本来、保管対象でない可燃性の油やケミカルが容器や配管から漏れ出し、何らかの引火源によって火災になったとしか考えられない。さらに、爆発性の液体の入った容器が火災の炎にさらされ、容器の機能を失い、爆発に至ったのではないだろうか。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、初めから積極的戦略で消火を試みていると思われる。報道では、「激しい爆発を目の前にして、消防隊員が無事でいられたという事実は奇跡的だった。消防隊は優れた消火活動により隊員の安全が確保され、優れた消防判断と専門知識を活用した指揮官によって実現したと評価されている」と報じられているが、この評価には疑問がある。

 この火災対応をみて思い出すのは2012年に起こった消防士1名の死亡を含め37名の死傷者を出した「日本触媒でアクリル酸タンクが爆発・火災、死傷者37人」の消火活動の対応である。当時のブログの中では、「消防局の消防車が放水を予定していた場所が約20m近すぎたのではないかという疑問視する声があり、消防局主幹は危険な場所からは距離を開けるべきという考えは当然あるが、1015mだった自衛防災隊の消防車とタンクの距離が目安になったはずと説明した。その上で、化学物質が燃えるような特殊な事情の場合、事業所側(の情報)に頼らざるを得ない” と述べ、情報の提供が不十分だったとの認識を示した」という。

 今回の事例でも、消防隊は爆発のリスクを想定していなかったように思う。事業者側(クーパーズ・エンバイロメンタル社)からの情報提供が不十分で、消防隊の“善意の行動”があやうく死傷者を出す危険性のあった事例だった気がする。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Bbc.com, Watch: Moment huge fireball destroys Sydney waste facility,  November  30,  2025

     Fire.nsw.gov.au, Huge fireball destroys waste facility as firefighters battle inferno - St Marys,  November  30,  2025

     Abc.net.au, Violent explosion during St Marys fire described as 'once in a career type of experience‘,  November  30,  2025

     Hazardexonthenet.net, Fire and explosion destroy waste facility, chemical tank blown into the air,  December  02,  2025

     Epa.nsw.gov.au, North St Marys fire,  January  16,  2026

     News.com.au, EPA investigating inferno at recycling centre in North St Marys, Sydney, December 3, 2025

     Skynews.com.au, Jaw-dropping footage captures moment huge fireball erupts, sending flames 150 metres into sky at factory in Sydney’s west,  November  30,  2025

     Joiff.com, AUSTRALIA – Major Chemical Waste Blaze in North St Marys Sparks Explosion,  December 01,  2025

     9news.com.au, Massive industrial fire in Sydney's west could burn for days, explosions felt kilometres away,  November  30,  2025

     Smh.com.au, Factory explosion blasts chemical tank into air, huge fireball erupts,  November  30,  2025


後 記: 今回の事例は、化学薬品タンクが吹き飛ばされたことは昨年から分かっていましたが、タンクが直接的に関係している事故ではなかったので、ブログの対象にするかどうかは迷っていました。しかし、画像と見ると、かなり激しいので、異例な事故ニュースとして取り上げることとしました。情報を調べていくと、あまりにも分からないことの多い事例でした。爆発時の画像だけはよく撮っていたなと感心します。最近、SNS(ソーシャルネットワーク)の画像情報がよく出ますが、今回もそうです。しかし、撮影者は消防関係者です。考えてみれば、現場の一番近くにいるわけですので、当然といえば当たり前ですよね。