今回は、米国テキサス州ハリス郡ヒューストンにある石油生産施設で貯蔵タンクが火災となった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ハリス郡(Harris)ヒューストン(Houston)のダウンタウンから北のウォーレンウッド・ドライブ(Warrenwood Drive)12600番地にある石油生産施設である。
■ 事故があったのは、石油生産施設内の貯蔵タンクである。タンクは地中から天然ガスを汲み出した未精製の石油と塩水が入っていたとみられる。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2025年11月26日(水)午後2時頃、ウォーレンウッド・ドライブの近くにある石油生産施設で火災が発生した。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。
■ 火災は複数の商業地区に近い道路脇にある石油生産施設で発生し、多くの住民が爆発音を聞いた。タンク近くの住民のひとりは、「大きな音が聞こえたのですが、どこから来たのか分かりませんでした。姉が2階にいて、家が揺れたので何かが落ちたのかもしれないと思いました」と語っている。
■ 火災になったのは、施設内の貯蔵タンク2基で、天然ガスの未精製の石油製品が燃えた。
■ 消防隊は近くの道路の交差点を封鎖したが、道路の向こう側から消火ホースを展張して回収され次第、交差点は再開する予定だという。
■ 事故にともなう負傷者は報告されていない。
■ 消防隊が現場周辺の空気の状態を監視しているが、当局は煙による健康被害は懸念されておらず、被害の報告もないという。近隣住民は煙が辺り一面に漂う様子を見守った。しかし、大気質への影響は最小限にとどまったようで、当局は屋内退避命令を出さなかった。
■ 火災の原因は調査中である。
■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Fire at
NW Harris County tank farm contained」(2025/11/27)
●Youtube、「Harris County investigators release
footage of juveniles fleeing scene of petroleum storage fire」(2025/11/27)
●Youtube、「Klein-area tank fire | Full report」(2025/11/27)
●Youtube、「Firefighters contain tank fire in
northwest Harris County」(2025/11/27)
被 害
■ 石油貯蔵タンク2基が損傷した。内部の石油が焼失した。
■ 負傷者は出なかった。
< 事故の原因 >
■ 火災の原因は調査中である。当局は、火災発生時にタンクにふたりの少年がおり、原因に関して何らかの関係があるとみている。
< 対 応 >
■ 当初、出動した消防隊は消火を試みず、タンクの冷却のみにとどめていた。しかし、タンク所有者の担当者が現場に到着し、いくつかのバルブを閉めると、消防隊員は泡消火剤を使用して制圧にかかった。
■ 泡消火を始めると、消火用泡剤が不足しそうなので、ほかの消防署から泡薬剤の支援を要請した。
■ 火災は、午後4時20分時点で鎮火した。ハリス郡北西部の消防隊は石油生産施設の火災を消し、ヒューストン近郊の企業や地域住民に危険を及ぼす可能性のあった火災を終息させた。
■ ハリス郡消防局は、火災発生時に石油生産施設から走り去る少年ふたりの動画を公開した。消防局は、医療処置が必要かどうかを見極めるため、ふたりの行方を探している。少年のひとりが近くの調整池で顔に水をかける様子が見られ、医療処置が必要になる可能性があるという。
■ 消防署の緊急無線の録音には、爆発時にタンクに少年が載っていて、そこから投げ出された可能性があるという。
■ この事故は懸念を引き起こした。火災は限定的なものにとどまったが、これらの施設が緊急時に危険をもたらす可能性があることを住民に改めて注意喚起する必要がある。石油や化学物質の貯蔵施設は地域経済に重要な役割を果たしている。一方、これらの施設での火災は、安全当局や地域指導者の迅速な対応を必要とする。これらの事故は、地域全体の産業安全に関する継続的な懸念を浮き彫りにしている。
ハリス郡北西部は、新たな住宅地区やビジネスパークの建設により拡大を続けている。成長が加速すれば、工業地帯の近くに住み、人が増えることになる。迅速な緊急対応はリスクを軽減し、周辺地域を保護するのに役立つ。
補 足
■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,050万人の州である。
「ハリス郡」(Harris)は、テキサス州の南東に位置し、人口約473万人の郡である。
「ヒューストン」(Houston)は、ハリス郡の南に位置し、人口約230万人の都市である。
■「発災タンク」は、石油生産施設内の貯蔵タンクで、地中から天然ガスを汲み出した未精製の石油と塩水が入っていたとみられる。グーグルマップで調べると、ウォーレンウッド・ドライブ近くには2か所の貯蔵タンクがある。いずれも2基のタンクを要するが、メディアのひとつで発災タンクが明確に明示されている。発災タンクの直径は約3.5mであり、高さを4.2mと仮定すれば、容量は約40KLである。タンク2基のうち、火災が早く消えた1基が塩水タンクだろう。
所 感
■ 火災の原因は、「貯蔵タンク事故の研究」(2011年8月)の分類によると、おそらく「故意の過失」だろう。
ハリス郡消防局は、火災発生時に石油生産施設から走り去る少年ふたりの動画を公開し、「医療処置が必要かどうかを見極めるため、ふたりの行方を探している」というが、監視カメラはタンクそばの鉄塔の上にあり、タンク上での少年の行動は撮影されている。少年の保護目的で動画公開を控えていると思われる。
■ この種のいたずらの「故意の過失」によるタンク火災は、「米国オクラホマ州で銃弾によるタンク火災」(2012年2月)以来である。しかし、米国における陸上の小規模な石油生産施設はほとんど安全上の設備や対策がないところが多く、日本から見れば、おかしいくらい無防備である。
いたずらによる「故意の過失」によるタンク火災があったとしても、気に留めないのが石油王国の米国の世情なのだろう。しかし、メディアの中にも住宅地に取り残された石油生産施設に警鐘を鳴らすところがでてきたのは変化の表れである。
■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、当初は冷却放水による防御的戦略をとっている。石油生産施設のタンク火災では、不介入戦略をとることもあるが、さすがにまわりの商業施設や住宅地を考慮して泡消火の積極的戦略をとった。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Fox26houston.com, Klein-area fire,
November 27, 2025
・Abc13.com, Fire marshal's office says they want to talk to 2
juveniles seen running in area of tank farm fire, November
27, 2025
・Bicmagazine.com, Tank fire contained in northwest Harris
County, November 26,
2025
・Click2houston.com, Fire Marshal’s Office searching for 2 juveniles
seen running away from NW Harris County tank farm around time of fire, November
26, 2025
・Houston.com, Houston Crews Extinguish Tank Farm Fire in Northwest
Harris County, November 27,
202
・Msn.com, Firefighters battle tank fire in northwest Harris
County, November 26,
2025
・Hoodline.com, Officials Quell Tank Blaze in Northwest Harris County,
Search for Two Youths Possibly Impacted by Incident, November
27, 2025
後 記: 今回の事例で感じたのは、タンク事故への公的機関の対応とタンク火災の消火戦略のとり方について何かしっくりこない違和感がありました。何かなと思っていたのですが、これが日本だったら違った対処をしているのではないかということでした。それで「所感」のようなことを書きました。











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