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2024年10月8日火曜日

米国アイダホ州のガソリンスタンドで壊滅的な爆発・火災、死傷者4名

 今回は、2024911日(水)、米国アイダホ州クリアウォーター郡カーディフの山間部にあるアトキンソン・ディストリビューティング社のガソリンスタンドが壊滅的な爆発・火災を起こし、死傷者4名を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国アイダホ州Idahoクリアウォーター郡(Clearwater County)のカーディフCardiffにあるアトキンソン・ディストリビューティング社Atkinson Distributingのガソリンスタンドである。

■ 発災があったのは、アイダホ州道11号線State Hwy 11沿いの山間部にあるガソリンスタンドの受入れ用の燃料タンクなどである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024911日(水)午後3時頃、アイダホ州道11号線沿いの辺鄙(へんぴ)なところにあるガソリンスタンドが爆発し、火災が発生した。

■ ガソリンスタンドは炎につつまれ、空に向かって黒煙を放出し、平穏だった田園風景が一変した。

■ ガソリンスタンドと道路をはさんで反対側にある家の女性は、爆発が起こったとき、「一瞬、気が動転しました」といい、「私は固まってしまってどうしようかと考えました。そして、すぐに緊急通報の911番に電話し、夫の職場にも電話しました。その後6匹の飼い犬を連れて道路沿いにある丘の上に避難しました。そこで、結局5時間ほど待ちました」と語った。住民によると、ガソリンスタンドは1960年頃に建てられたという。

■ 発災に伴い、ふたりの負傷者が出た。負傷者は約400km離れたワシントン州シアトルに救急ヘリコプターで搬送された。シアトルにはクリアウォーター郡の小さな非法人林業の町からヘリコプターで1時間以上かかった。

■ 爆発は、ダブル連結タンクローリーがガソリンスタンドの地上タンクに燃料を補給している最中に起こった。爆発でタンクローリーは損壊し、まわりにはタンクローリーの部品、配管、タンクの破片、ガソリンスタンドの建物の破片などの残骸が、広範囲に飛び散った。ダブル連結タンクローリーとは、2基の燃料タンクトレーラーを連結したセミトラックSemi truck with two fuel tank trailersである。

■ 隣接する近くの建物も爆発と火災で被害を受けた。爆発により現場周辺に撒き散らされた多量の燃料が捜​​査にとって障害となっていることがわかった。危険緩和のため、危険物質対応チームが呼び出され、この危険の制御を支援した。

■ 救急ヘリコプターで搬送されたのは、タンクローリーの運転手とガソリンスタンドの女性店員だった。いずれも、タンクローリーとコンビニエンスストア併設のガソリンスタンドを経営していたアトキンソン・ディストリビューティング社の従業員だった。爆発が起こったとき、ふたりともタンクローリーの近くにいたとみられる。

■ 保安官事務所によると、ガソリンスタンド建物内には他にも人がいたとみられるが、その夜遅くまで火は燃え続けていたため、詳細は分からなかった。

■ 消防署は、米国アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局の特別捜査官の支援を受けていると述べた。人里離れた山間の町には、携帯電話の電波が届かず、情報伝達が困難だった。

■ ユーチューブでは、事故の火災の状況が投稿されている。

 YoutubeGas station explodes in Cardiff, Idaho 2024/09/12

 ●YoutubeTwo confirmed dead after Cardiff gas station explosion, two others in critical condition 2024/09/14

被 害

■ ガソリンスタンドと燃料受入れ用の地上タンクが全壊した。タンク内部の油が焼失した。 

■ 併設のコンビニエンスストアの建物が損壊した。

■ ダブル連結タンクローリーほか、ガソリンスタンドに駐車していた3台の車が損壊した。  

■ 死傷者4名が出た。内訳は死者2名、負傷者(火傷)2名である。

■ 隣接していた建物が被災した。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査中でわかっていない。

< 対 応 >

■ アイダホ州消防局の捜査官は、事故の発生した直後から、火災と爆発の残骸の調査を続けた。912日(木)の朝からは、犠牲者の所在を特定するという困難な作業だった。ガソリンスタンドの瓦礫の中から2名の遺体が発見された。見つかった2名の犠牲者は、クリアウォーター郡検死局に引き渡された。検死局は身元確認を行い、家族に通知する予定だという。検視官は、2名の死因について爆発による鈍的外傷であるという。鈍的外傷とは、打撲や墜落など皮膚を貫通しない強い打撃などによって生じる外傷である。2名の死亡者はガソリンスタンドのすぐ外で発見されたが、事故が始まったとき建物の中にいたのか外にいたのか確認されていない。

■ アトキンソン・ディストリビューティング社のウェブサイトによると、カーディフのガソリンスタンドは林業の伐採シーズン中はスタッフが常駐しており、軽食や飲み物を販売する小さなコンビニエンスストアを併設している。

 住民によると、亡くなったふたりはガソリンスタンドの常連客の伐採業者だという。ガソリンスタンドは地元の人々の待ち合わせ場所であり、人々はそこで店員とおしゃべりするのが好きだったという。

■ 一夜明けたガソリンスタンドでは、ダブル連結タンクローリーの前側がシャーシと煙突型排気管だけ残っているような状態だった。タンクローリーは、4台ある旧式のセルフサービス式給油機の横に駐車されていた。コンクリートブロック造りのコンビニエンスストアは壊滅状態だった。駐車場には小型掘削機のフレーム、ピックアップ・トラック2台のほかもう1台の車が残されていたが、爆撃で破壊されたようだった。

■ ガソリンスタンドの敷地奥にあった地上タンクは、1基が隣接する家の庭に飛ばされ、残りの5基は敷地内外に散らばっていた。

■ 東側に隣接して被害にあった家の持ち主は、事故当時、近くの町に住む親戚を訪ねていた。道路が封鎖されていたため、913日(金)の朝まで家に戻れず、この日初めて家の被害状況を目にした。ガソリンスタンドの燃料タンクの残骸が、本来あるべき場所から約100ヤード(90m)離れた裏庭に転がっていた。家の持ち主は、「ひどい悲劇で、心が張り裂けそうです」と語った。

 家の持ち主によると、州道11号線沿いには数十軒の建物からなる小さなコミュニティで、ガソリンスタンドが唯一の店だったという。通年居住者はほとんどおらず、ガソリンスタンドの客のほとんどは林業の伐採業者やアウトドア愛好家だという。

■ アイダホ州消防局は「2名の犠牲者の家族に心からお悔やみを申し上げるとともに、この壊滅的な事件で負傷した人の早期回復を願っています」と語っている。国家運輸安全委員会 (NTSB) と労働安全衛生局 (OSHA) の調査チームが、爆発と火災の原因に関する調査を支援する。

「この悲劇的な事件の原因を推測するのは、まだ時期尚早です」とアイダホ州消防長官はいい、「爆発と火災に至るまでの出来事を解明するには数週間かかるかもしれない。計画的かつ徹底的に取り組む必要がありますが、10月中にもう少し明確な発表ができると思っています」と語っている。

■ アイダホ州消防長官は、ガソリンスタンドでの爆発はまれだといい、「私はここアイダホ州で19年間、州の消防署長を務めてきましたが、私が知る限りでは、これが初めての事故です。燃料をタンクローリーからガソリンスタンドの貯蔵タンクに移す作業である荷降ろしは、多少リスクがありますが、運転手が正しい手順に従うため、通常は安全な作業です」といい、「正直にいうと、最も危険なのはタバコを吸いながら車に給油したり、ピックアップ・トラックの荷台でプラスチックのガソリン缶にガソリンを入れたりすることだと思います。これは静電気による火花の危険性を高めます。揮発性があるのは実はガスなので、火花が飛ぶと問題が起きることがあります」と語っている。


補 足

■ 「アイダホ州」Idahoは、米国西部の太平洋岸北西部および山岳地帯西部に位置する内陸州で、人口約196万人の州である。

「クリアウォーター郡」(Clearwater County)は、アイダホ州の北部に位置し、人口約9,000人の郡である。

「カーディフ」Cardiffは、クリアウォーター郡にある非法人のコミュニティである。人口は不明である。

■「アトキンソン・ディストリビューティング社」Atkinson Distributingはアイダホ州で事業展開する石油類の運送会社である。アトキンソン・ディストリビューティング社は、2000年にビル&ベティ・アトキンソンから買収した。

「カーディフ」のガソリンスタンドは、林業の伐採シーズン中にはスタッフが常駐しており、軽食や飲み物を販売する小さなコンビニエンスストアを併設している。このガソリンスタンドは1960年頃に建てられたものとみられ、旧式のセルフサービス式給油機が4台設置されている。

■ 発災源は明確になっていないが、ガソリンスタンドの裏側には、燃料受入れ用の地上タンクが6基ある。事故の被災写真では、全基が据付用ボルト位置から外れ、勝手な位置にばらばらになっており、これらが「発災タンク」とみられる。タンクは横型の枕タンクである。これらのタンクの大きさはグーグルアースで調べてもはっきりしないが、直径を23m、高さを45mとすれば、容量は1235KL程度である。地上タンクの油種別は分かっていないが、隣家に飛んだ枕タンクはガソリンだとみられる。


所 感

■ ガソリンスタンドが壊滅的な損壊をしたが、爆発・火災の原因は調査中である。しかし、燃料受入れ用タンクが発災の規模を大きなものにしたのは間違いない。

■ 事故は、つぎのような状況で起こったのではないだろうか。

 ● タンクローリーが燃料受入れ用の地上タンクへの補給中に起きている。今回の燃料受入れはガソリンスタンドの専用の地下にある接続ノズルを通じて地下配管から地上タンクへ移送するあまり見ないタイプだとみられる。通常は、タンクローリーから地下タンクへ補給するか、またはタンクローリーから直接、地上タンクへ補給するタイプである。

 ● ガソリンスタンドは1960年頃に建設され、しかも季節営業である。タンクローリーから地上タンクへの補給配管は経年劣化や休止中の機能低下が考えられ、地上タンクまわりの配管接続部で漏洩があったのでないだろうか。

 ● 地上タンクのうち1基は隣家の庭に飛んでいるほどの爆発だった。このようなタンクはガソリンタンクしかない。しかし、人の動きから考えて、ガソリンスタンドの裏側にあるガソリンタンクが突然爆発した事故とは考えにくい。

 ● 最初にガソリンタンクの接続部から漏洩し、何らかの引火源で火災になったのではないだろうか。火災に気が付き、タンクローリーの運転手とガソリンスタンドの店員が対応処置(タンクローリーからの接続切り離しなど)をしようとしただろう。ガソリンタンクから漏洩した油が防油堤に溜まっており、ある時点で爆発した。

 ● 6基ある枕型の地上タンクがことごとく設置位置から外れており、大量の油流出が起こり、ガソリンスタンドを崩壊するほどの大火災になっている。ガソリンタンクの爆発力で、隣接の他のタンクを据付ボルトから外して、大量流出となり、地上タンク付近で爆発や火災を起こしたのではないか。

 ● 最初の火災発生時、駐車台数から推測して店には数人の客がいたと思われる。このとき、避難せず店外で状況を確認していたふたりが爆発で飛ばされ、鈍的外傷で亡くなったとみられる。

 ● 一連の爆発と火災で、ガソリンスタンドは壊滅的な被害を受けた。

■ 消火活動については報じられておらず、また被災現場の写真を見ても、消火活動を実施した形跡はない。おそらく、手の施しようがない状態だったと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Apnews.com, Explosion at an Idaho gas station leaves two critically injured and others presumed dead,  September 14, 2024

   Abcnews.go.com, Officials identify 2 men killed in Idaho gas station explosion,  September 19, 2024

   Doi.idaho.gov, Cardiff gas station explosion still under investigation,  September 13, 2024

   Ntd.com, Explosion at Idaho Gas Station Leaves 2 Critically Injured and 2 Presumed Dead,  September 13, 2024

   Krem.com, Two confirmed dead after Cardiff gas station explosion, two others in critical condition,  September 13, 2024

   Timesunion.com, Officials identify 2 men killed in Idaho gas station explosion,  September 13, 2024

   Nypost.com, Two presumed dead, customers hospitalized with severe burns after giant explosion at Idaho gas station,  September 12, 2024

   Bigcountrynewsconnection.com, Investigation Ongoing After Deadly Cardiff Gas Station Explosion,  September 14, 2024

   Spokesman.com, Two bodies located in rubble of Cardiff gas station in remote Idaho,  September 16, 2024

  

後 記: 今回の事例は、山間部にあるガソリンスタンドの事故で携帯電話が通じないようなところだという米国にもこんなところがあるのかちょっと驚きの事故でした。このため、メディアの報じた日がバラバラで、いつ時点の話かわかりづらいものでしたし、記者が現地に取材に行っていないのが分かるような記事でした。日にちが経つと、実際に現場へ行き、住民にインタビューした話も出てきました。記事を時系列に並び直して整理しましたが、発災がどのような経緯で推移したのか気になってきました。事故の関係者の証言がなく、設備的な情報も少ないのですが、あえて事故の状況を推察しました。

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